高度プロフェッショナル制度の対象年収は?職種は? 制度のポイントを解説!

作成日:2019/03/01

 

2019年4月より施行が決定した法案「高度プロフェッショナル制度」。働き方改革関連の法案として注目が集まっています。略して「高プロ」とも呼ばれるこの制度は「ホワイトカラー・エグゼンプション」という法案が前身でコンサルタントも対象職種に含まれています。対象となる職種、業種に関わる労働者、雇用主には、制度への理解が求められます。高プロ制度が施行されることによって、どのような人材、職種、業種に影響があるのでしょうか。高度プロフェッショナル制度とはどのような制度なのか、働き方改革関連の制度でもある同一労働同一賃金や裁量労働制など、類似した制度との違いやメリットデメリットまで詳しく解説します。

 

 

目次

■高度プロフェッショナル制度の対象者、条件
(1)同制度の対象者となる年収と業種・職種
(2)医師は対象外。その理由は高プロ制度のそもそもの考え方にある

 

■高度プロフェッショナル制度とは?創設の目的や経緯から、制度の詳細を知る
(1)創設までの流れ
(2)評価基準は「成果物」

 

■「同一労働同一賃金」「裁量労働制」との相違点
(1)同一労働同一賃金
(2)裁量労働制

 

■高プロ制度導入のメリットデメリット
(1)メリット:“プロフェッショナル”という新しい働き方が日本で認知され始めた
(2)デメリット:「残業代ゼロ法案」反対の声があがるそのわけとは

 

■まとめ

 

 

高度プロフェッショナル制度の対象者、条件

高度プロフェッショナル制度の対象者、条件-1

 

働き方改革関連の法案として数年前からメディアで目にするようになり、2019年4月には施行が決定している高度プロフェッショナル制度。この制度は、「特定の対象となる業務を行なう職種において、一定以上の年収を得る労働者が、一定の条件を満たした場合に時間に縛られずに柔軟に働く事ができる」というもの。裏を返すと、「残業代の支払い対象ではなくなる」とも言うことができ、残業代を支払わずに働かせ放題になり、過労死を助長するのではないか等、懸念の声も上がっています。

 

コンサルタントも対象職種に含まれている高プロ制度。まずは、「一定以上の年収」や「特定の対象となる業務を行なう職種」が具体的にどのような人材を指すのか見ていきましょう。

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(1)同制度の対象者となる年収と業種・職種

◆年収

対象年収は「1075万円以上」です。これは「平均給与額の3倍を上回る水準」を基準とし検討され、最終的に「1075万円以上」で決定しました(※)。

 

◆業種・職種

高プロ制度が適用となる業種・職種については、『「高度の専門的知識等を必要とする」とともに「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる」』とあり、具体的には、厚生労働省により省令で規定するとして下記職種が想定されており、2018年12月に下記職種に決定しました(※1)。

・金融商品の開発、金融商品のディーリング

・企業・市場等の高度な分析を行なうアナリスト

・事業・業務の企画運営に関する高度な考案またはアドバイスをするコンサルタント

・研究開発等の業務を行なう職種

※SEも場合により対象となる可能性がある。

出典:「労働基準法等の一部を改正する法律案」について

(2)医師は対象外。その理由は高プロ制度のそもそもの考え方にある。

プロフェッショナルや高収入という単語を聞くと「医師」を想像する方も多いと思いますが、医師は適用対象外です。対象外である理由は、そもそもの高度プロフェッショナル制度の考え方にあります。

 

高プロ制度とは「専門知識が必要」であると同時に、「働いた時間と得た成果の関連性が高くない職種や業種」と定められています。

 

具体的に考えてみましょう。例えば飲食店で10時~17時で働いて報酬を得る場合、「時間の対価」として給与が支払われます。来客数が何名であれ、その人材は7時間、店を営業するために「自分の7時間をお金と交換」しているのです。そのため、勤務を予定していた“時間”をオーバーすれば、その時間の対価として“残業代”が支払われます。

 

一方コンサルタントを例に挙げると、コンサルは時間単位で働くことでミッションを果たせるわけではなく、「クライアントの課題を解決すること」で初めて目的を達成したことになります。言い方を変えると「コンサルが対価とするのは、時間ではなく成果」ということ。

 

高プロ制度が適用される基準の一つとして「時間の縛りがあるかどうか」という点がありますが、医師は通常、診療時間などを自分では決められません。高度な知識を必要とする上、成果がすべてである職種のように感じますが、“出勤時間に自由がない”という点でこの法案の適用外となっているのです。

 

 

高度プロフェッショナル制度とは?創設の目的や経緯から、制度の詳細を知る

高度プロフェッショナル制度とは?創設の目的や経緯から、制度の詳細を知る-2

 

人によってさまざまな捉え方をされている「高度プロフェッショナル制度」。メリットデメリットも見る人の角度によって異なるため、反対意見も上がっています。「残業代ゼロ法案」「脱時間給制度」とも言われるほど課題意識を持たれていることも事実です。

 

コンサルタント人材によっても見解が分かれるであろう「高度プロフェッショナル制度」ですが、実際のところはどのような制度なのでしょうか。創設された背景や経緯から改めて振り返り、メリットデメリットを含めた制度への見解を深めましょう。

(1)創設までの流れ

そもそもアメリカの制度である「ホワイトカラー・エグゼンプション」。ホワイトカラーの労働者に対して労働時間の規定を適用しないという制度です。日本でも導入が検討されていましたが、残業代を払わない過重労働への懸念などのデメリットの声が多く、導入には至りませんでした。

その後、数年たった2018年に「高度プロフェッショナル制度」と名称を変え、働き方改革関連法案に盛り込まれました。そして再度検討された結果、2019年4月の施行が決定しました。

ホワイトカラー・エグゼンプションは高度プロフェッショナル制度の前身として語られることが多く、制度の内容としてもほぼ同等と言えます。

(2)評価基準は「成果物」

前述したように、「対価とするのは時間ではなく成果」というのが高プロ制度の基本的な考え方。

 

年収1,075万円以上証券アナリスト研究開発職コンサルタントといった高度な専門知識を必要とする労働者に適用される制度で、労働時間の規制対象から除外するという仕組み。2019年4月に施行されます。

 

コンサルタント業などの、従来のように時間で区切る働き方が向かない職種の一部が、今回の高度プロフェッショナル制度の対象として選ばれています。

 

例えばシステム刷新プロジェクトをコンサルタントとして任された場合、そのコンサルタントにとってのミッションはあくまでシステムを入れ替え、スムーズに稼働させることです。毎日定量的に働くことがミッションではありません。

 

またシステム刷新となると、プロジェクトを行なうクライアントの現状把握から始まり、現場の要望をヒアリング、導入システムの必要可否を選択、要件定義の取りまとめ等、フェーズによって行なう業務やその比重も異なります。

 

このようにプロジェクトを俯瞰すると、時期によってコンサルタントの必要工数が大きく変わることも往々にしてあるため、時間ではなく成果主義の方が理にかなったメリットのある考え方だと言えます。それが、高度プロフェッショナル制度という仕組みの根本的な考え方です。

 

 

「同一労働同一賃金」「裁量労働制」との相違点

これも押さえておきたい、高プロと類似した「同一労働同一賃金」「裁量労働制」との相違点-3

 

社会の新しい概念は、高度プロフェッショナル制度だけではもちろんありません。「同一労働同一賃金」「裁量労働制」という制度について、名称は耳にしたことがあっても詳細まではわからない、制度の中身が整理しきれていないというコンサルタントの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

ここでは、同一労働同一賃金、裁量労働制について改めて振り返り、どのような制度なのか今一度整理します。

(1)同一労働同一賃金

働き方改革関連法案の要のひとつでもある、同一労働同一賃金。この制度は、「同様の仕事をする限り、正規雇用、非正規雇用にかかわることなく同一の賃金を支給する」というものです。雇用形態による不合理な待遇差という人材側のデメリットをなくし、多様な働き方を柔軟に選択できる社会の実現を目指すため制定されました。

 

◆施行時期は?

同一労働同一賃金を含む改正法の施行開始時期も正式に決定しています。大企業と中小企業で運用開始時期が異なり、大企業は2020年4月1日から、中小企業はそこから1年間の猶予期間が設けられており2021年3月31日から施行開始となります。施行後は、賃金や休暇の他、各種手当や定期昇給などで正規雇用と非正規雇用を同条件で雇うことが求められます。

 

◆高度プロフェッショナル制度との違いは?

高度プロフェッショナル制度は「時間給ではなく成果給の適用が向いている職種/業種」に焦点を当てた制度であるのに対し、同一労働同一賃金は「雇用形態による格差の是正」に焦点を当てています。国連の専門機関が発行している『同一賃金 同一価値労働 同一報酬のためのガイドブック』(※2)では、能力が同一の男女間において、報酬の格差をつけるべきではないという意味合いのことが書かれており、『同一賃金同一労働』というのは、もともと男女格差をなくすことを目的に生まれた概念であると言えます。能力を発揮したのにもかかわらず、雇用形態や性別が物差しとなり格差が生まれることのないよう、あくまで「仕事の価値を基準とした対価が支払われるべき」という考え方です。

出典:同一価値労働 同一報酬のためのガイドブック

(2)裁量労働制

裁量労働制という制度は、もともとは労働者が「効率的に働いて、正当な評価を得る」ことを目的として作られた制度です。「働いた時間の長さは、実働時間に関わらず契約を結んだ時に決定した労働時間分を働いたものとする」という考えの制度で、裁量労働制は別名「みなし労働時間制」とも言われています。

 

◆メリットデメリット

裁量労働制は、徹底した自己管理のもと仕事の処理能力を高められれば、勤務時間を短くできるのがメリットと言えます。「〇時~〇時は会社にいなければならない」という“拘束”がなくなり、自身の時間単価を上げることにもなります。その反面、実質的な時間で管理されているわけではないので、長時間労働が常態化する恐れもあり、拘束されないことが裏目に出てしまう可能性もはらんでいます。

 

◆高度プロフェッショナル制度との違いは?

裁量労働制は『実働時間に関わらず、契約を結んだ時に決定した労働時間分を働いたものとする』という考え方を持っていることから、高プロ制度の「時間に縛られない(自分の裁量で決定する)」という点は同じです。基本的に「労働時間をどう使うか」に関して裁量を与えられている制度のため、「時間外」という概念はありません。しかし高プロ制度と裁量労働制で大きく異なるのは、裁量労働制は、深夜手当や休日手当については概念を持っていること。これらの割り増し手当の支払い対象なのです。

 

 

高プロ制度導入のメリットデメリット

高プロ制度導入のメリットデメリット-4

 

“人生100年時代”。この言葉がマスコミをにぎわすようになりしばらく経ちました。これは、世界的にもベストセラーになった「LIFE SHIFT」が起因となっています。この本では、これから人間は100歳まで健康に生きる時代が到来し、ライフステージの変化の流れが大きく変わると予見されています。

特に日本人は世界一の長寿国とも言われており、英国のリンダ・グラットン教授によれば、2007年に生まれた子供が107歳まで生きる確率は50%もあるというのです。

 

これまで当たり前だった「人生の過ごし方」が大きく変化すると予想されていて、そんな今だからこそ、“プロフェッショナル”として生きていくことの重要性が増してきました。

昭和22年に制定された労働基準法では盛り込まれていなかった、「量より質」で働くことも考える時代に移りかわりつつあるということなのです。そのような社会背景も踏まえて、高度プロフェッショナル制度のメリットデメリットを見ていきましょう。

(1)メリット:“プロフェッショナル”という新しい働き方が日本で認知され始めた

これまでの日本では、20歳前後まで教育を受け、その後仕事に就き60歳前後で引退するという流れが人生設計の基本、そして理想的な形とされてきました。また、一つの会社で長く働くことが正しいとされ、独立し自分の力で挑戦することに対して懐疑的で、「組織で働けない人」というレッテルを貼られてしまうこともありました。

 

今でもその考え方を持ち続けている大企業は少なくないと思われますが、人生100年時代が現実味を帯びてきた今、昔に比べ働き方に対する多様性が広がってきたことも確かと言えるでしょう。

 

では、何をもって“プロフェッショナル”というのでしょうか。考え方は人それぞれですが、「組織にぶら下がるのではなく、個人個人が自分の強みを理解し活かして、自ら働き方や働く場所を選ぶこと」という考え方も、プロフェッショナルとしての働き方の一つと言えます。

 

また、高度プロフェッショナル制度の導入は、そのような社会を迎えることに対して国が認知し始めたということでもあり、それは同時に、自分らしい働き方を自分で選択する社会作りの第一歩だとも言えるのです。

 

ライフステージに合わせた働き方を自分でコントロールし、時間給ではなく結果(成果)で報酬を得ること。コンサルタントの仕事に当てはめて具体的に考えるならば、プロジェクト全体を俯瞰して「今日はここまで」と自分で働き方を決められるということ。これはプロフェッショナルとして働くことのメリットと言えるのではないでしょうか。

(2)デメリット:「残業代ゼロ法案」反対の声があがるそのわけとは

もっとも懸念されているのは「企業側が残業代を払わずに済むため、長時間働かせやすい。過労死を助長するのではないか」という点。なぜそのような心配の声が上がるのかというと、高度プロフェッショナル制度が「成果型労働制」だからです。

 

年間104日以上、かつ4週で4日以上の休日確保と、「健康管理時間」の把握と必要に応じた医師による面接指導などの労働者保護の規定を守れば、身体に悪影響を及ぼしてしまいそうな長時間労働をさせても違法ではないと解釈できる背景があります。

 

残業代や休日出勤の割増賃金という概念そのものがなくなるため、「残業代ゼロ法案」とも言われ、懸念する声が上がっているのです。

 

さらに、成果型労働制であるならば評価軸をどのように設定するのかが大変重要になります。同じ職種でも、企業ごとに異なる評価基準で報酬を算定した場合、賃金格差が生まれる可能性もあり、これらは高度プロフェッショナル制度の課題の一つと言えるでしょう。

 

 

 

「時間」ではなく「アウトプットベース」で仕事をするのが“高度プロフェッショナル制度”です。「量より質」で収入を得るというプロフェッショナルとしての働き方を、国も認知し始めました。ひと昔前にくらべ働き方も生き方も多様性が広がっている今、戦後に作られた労働法だけでは対応しきれない時期に来ているとも言えるでしょう。制度の解釈やその人の技量によって、“高度プロフェッショナル制度”がメリットデメリットどちらに感じられるかは意見が分かれるところかもしれません。

 

2019年4月には施行される“高度プロフェッショナル制度”。まずは、雇用主、労働者双方の対象者となる方はメリットデメリットどちらも把握することが大切です。高プロ制度が自由な働き方を促進する制度の一つになることを願ってやみません。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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