フリーランスに最適なパラレルキャリア(複業)の始め方

作成日:2018/07/23

 

政府の働き方改革で副業やパラレルワークが注目される中、現在では新たに「パラレルキャリア」という考え方が広まっています。特に、フリーランスにとってパラレルキャリアは、リスクが分散されたり、本業にプラス効果があったりとメリットがあります。今回は主にフリーランス人材に向けて、パラレルキャリアを始める際のメリットとデメリット、具体的なパラレルキャリアの始め方や事例をご紹介します!

 

 

目次

■パラレルキャリアの意味・定義とは
(1)パラレルワーク・副業とパラレルキャリアの違い

 

■フリーランスがパラレルキャリアをはじめる3つのメリット
(1)今のキャリアにはないスキルアップやチャレンジができる
(2)今のキャリアとシナジー効果も期待できる
(3)安定した収入につながり、長く働き続けることができる

 

■パラレルキャリアを始める前に知っておきたい3つのデメリット・注意点
(1)明確なモチベーションがないと続かない
(2)情報セキュリティスキルが必要
(3)本業での役職・肩書に固執しすぎない

 

■フリーランスにおすすめしたいパラレルキャリアの始め方
(1)やりがいを求めて社会貢献活動から始めるパラレルキャリアなら、プロボノがおすすめ
(2)大学や大学院での学び直しや起業講座を活用して、パラレルキャリアにつなげる

 

■フリーランスのパラレルキャリア事例
(1)ビジネススクール進学をきっかけにパラレルキャリアを実践
(2)出産・子育てをきっかけにパラレルキャリアを実践

 

■まとめ

 

 

パラレルキャリアの意味・定義

パラレルキャリアの意味・定義_1

 

収入アップを目指す副業やパラレルワークとは違って、第2のキャリアとして中長期的に育てていくのがパラレルキャリア。今の仕事とは全く違うキャリアを目指したり、元々目指していたキャリアに再チャレンジしたりできるのがパラレルキャリアの大きなポイント。パラレルキャリアによって本業とは別のビジネスで起業したり、NPOなどの団体設立したり、新しいキャリアにつながる可能性が高まります。

 

パラレルキャリア(parallel career)という考え方は、実は以前からあります。パラレルキャリアというワードは、1999年に出版された経営学者ピーター・ドラッカーの著書「明日を支配するもの」の中にも登場します。ドラッカーは著書の中で、これからの時代はひとつの組織に所属してひとつの仕事だけするのではなく第2のキャリアを築いて新しい世界を切り開くべき、と述べています。

 

パラレルキャリアの考え方において、第2のキャリアはビジネスに限らないというのがポイント。社会貢献活動や地方創生活動などのボランティア活動に参加して「自分のキャリアを他の世界で役立てたい」というキャリアもあれば、以前から続けていた趣味の世界で「好きなことを続ける」というキャリアもあります。こうしたパラレルキャリアの意味を踏まえ、副業ではなく「複業」と表現するケースも増えています。

 

(1)パラレルワーク・副業とパラレルキャリアの違い

いわゆる副業やパラレルワークと言えば、収入アップにつなげたいという目的が一般的です。一方パラレルキャリア(複業)では、収入アップだけが目的ではない点が大きな違いです。やりがいや好きなことを続けたい、という目的で第2のキャリアを築く方も多くいます。また、パラレルワークや副業は、基本的に本業がある中で空いた時間を使って行なうもの。ところがパラレルキャリアでは、第2のキャリアを中長期的に成長させいずれ本業になることもあります。企業の経営においても主力事業だけではなく、時代に適応するため新規事業を将来の主力事業へ成長させるという戦略がありますが、パラレルキャリアはこれとよく似ています。

 

フリーランスの方は、すでに複数のビジネスを持つ方も多いかもしれません。さまざまなビジネスを並行して行なうだけではなく、それぞれのビジネスでどんなキャリアを積み、組み合わせていくか。また自分のライフスタイルや周囲の環境にあわせていくか。こうした計画を立てていくことが、パラレルキャリアの考え方です。

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フリーランスがパラレルキャリアをはじめる3つのメリット

フリーランスがパラレルキャリアをはじめる3つのメリット_2

 

フリーランスにとって、パラレルキャリアを始める3つの代表的なメリットを紹介しましょう。

 

(1)今のキャリアにはないスキルアップやチャレンジができる

本業で収入があれば、収入面を気にせず自由なキャリアにチャレンジできるのがパラレルキャリアのメリット。以前からチャレンジしたかったことも、自分のペースで始められます。もちろん、ずっと無収入でキャリアを積むとは限りません。例えばボランティア活動から始めた活動が、ソーシャルビジネス(社会的課題を解決する事業活動)として事業化につながるケースも。中にはNPO法人設立に発展することもあります。他にも、趣味ではじめた創作活動に人気が集まり、EC事業に発展するケースもあります。最初はスモールスタートでも、パラレルキャリアを増やしたり、続けたりすることで新たなビジネスに成長させることができます。

(2)今のキャリアとシナジー効果も期待できる

パラレルキャリアでは、現在の本業と第2のキャリアでうまくシナジー効果(相乗効果)が出ることも多く、それぞれのキャリアにとってプラスになるというケースもあります。

 

<パラレルキャリアのシナジー効果の例>
・第2のキャリアによって新しい人間関係が広がる
・第2のキャリアで得た知識や経験が本業に活用できる

またひとつの組織の中で仕事をしていると、仕事の進め方などの問題点にどうしても気づきにくいこともあります。パラレルキャリアは、他社の進め方・やり方・プロセスを経験できる機会。それまで当たり前だと思っていたことの問題点や課題の解決策に気づけるというメリットもあります。

(3)安定した収入につながり、長く働き続けることができる

子育てなど家庭の事情で本業を一定期間休むことになっても、第2のキャリアは自分のペースで続けられるというメリットがあります。プライベートにおける体験が、第2のキャリアにつながることも。例えば育児経験を生かして子育て支援に関わり、パラレルキャリアをスタートさせる人もいます。

 

また第2のキャリアを持つことで、今の仕事と切り離した自分自身のキャリアについてあらためて考え直す機会が持てるという点もメリット。フリーランスでも複数のキャリアがあるということは、ひとつのキャリアがうまく行かないときのリスクヘッジにもなります。つまり収入面での安定性にもつながります。こうしたパラレルキャリアのメリットに注目が集まり、20代・30代だけではなく、50代・60代の人がパラレルキャリアに取り組むケースも増えています。

 

 

パラレルキャリアを始める前に知っておきたい3つのデメリット・注意点

パラレルキャリアを始める前に知っておきたい3つのデメリット・注意点_3

 

多くのメリットがある一方、パラレルキャリアには注意したいポイントもあります。始める前におさえておきたい3つの注意点をまとめました。

(1)明確なモチベーションがないと続かない

パラレルキャリアでは、それぞれの仕事が忙しくなるとどうしても管理が難しくなります。収入につながる本業を優先することが多くなり、パラレルキャリアとして取り組んでいる活動まで手が回らなくなる、ということも起こりがち。それぞれのキャリアに充てる時間をどうスケジューリングするか、タイムマネジメントスキルが必要となってきます。

 

またボランティア活動などをパラレルキャリアとして取り組む場合、副業やパラレルワークと違って収入に直結するわけではありません。そのため収入以外のモチベーションをしっかり持っておかないと、持続しづらい一面もあります。短期的な仕事だけではなく、第2のキャリアとして中長期的に考えたいところ。どのように本業と並行してパラレルキャリアに取り組むか、自分自身をマネジメントしていけるかどうかが大きなポイントと言えます

 

あわせて家族に理解してもらうことも大切です。第2のキャリアにかかる時間が長くなれば、家族と過ごす時間が減るという影響が出ます。しかしパラレルキャリアでは、ボランティア活動だったり、起業準備だったり、スタート当初は収入アップにつながらないケースもあります。「家族との時間が減ったのに収入は増えない!」と、家族が不満を持ってしまうとトラブルになることも。なぜ自分がパラレルキャリアに取り組みたいか、家族にとってどんなプラス効果があるかについて、事前に説明しておきましょう。

(2)情報セキュリティスキルが必要

シナジー効果が期待できるパラレルキャリアですが、一方で情報の扱いには注意が必要です。本業で得た情報を第2のキャリアで活用したいと思っても、場合によっては情報漏洩になってしまうこともあります。こうした事態を招かないためには、まずは自分自身でしっかり情報をコントロールできるスキルが必要。パラレルキャリアを進めていくために、例えば「データの保管場所を分ける」「メールアドレスやグループウェアのアカウントを分ける」「キャリア間で出せる情報・出せない情報を整理しておく」という対策は少なくとも行っておきましょう。

 

また、パラレルキャリアに取り組んでいることを、できるだけ周囲にオープンにしておくことも重要です。「本業の仲間には知られたくない」というケースもあるかもしれませんが、パラレルキャリアをしていることを隠していると、かえって情報を不正に扱っているのでは?と疑われてしまう可能性があります。

(3)本業での役職・肩書に固執しすぎない

パラレルキャリアでは、本業での肩書が第2のキャリアでそのまま通用するとは限りません。特に本業で大きなプロジェクトを管理していると、第2のキャリアでもマネージャーのように振る舞ってしまう人がいますが・・・これはNGです。もちろん本業での経験や知識を活用することは、パラレルキャリアにとって重要ではあります。とはいえ第2のキャリアでは、全く別の肩書を持つこともありますし、人間関係も一新されることもあります。年齢や肩書にとらわれすぎず、新たなキャリアを築くという意識を持ちましょう。

 

 

フリーランスにおすすめしたいパラレルキャリアの始め方

フリーランスのパラレルキャリア事例_5

 

フリーランスの方は就業規則などに縛られないため、会社員の方よりは自由にパラレルキャリアを始めることができるのが強み。とはいえ「パラレルキャリアをしたいと思っても何から始めたらいいかわからない」という方も多いかもしれません。

2016年に行なわれたアンケート調査によると、「パラレルキャリアを始めたい」と考えている方が約6割という結果に対し、実践している人は3割に満たないという結果が出ています。また、パラレルキャリアを実践していない人に理由を聞いたところ「明確に何がしたいか定まっていない」「どう始めていいかわからない」という回答が上位にきています。(※)

出典:パラレルキャリア意識調査(エン・ジャパン)

そこで、代表的な2つのパラレルキャリアの始め方をご紹介しましょう。

 

(1)やりがいを求めて社会貢献活動から始めるパラレルキャリアなら、プロボノがおすすめ

「地方創生に関わりたい」「社会的問題を解決する活動がしたい」という方がパラレルキャリアを始めるなら、まずは「プロボノ」として活動するのがおすすめです。プロボノとは、ビジネス経験や専門スキルを活用したボランティア活動のこと。NPOなどの団体で働くかたちが一般的です。日本でも大手コンサルティング企業などで、CSR活動の一環として社員のプロボノ活動を推進する動きが広がっています。

 

プロボノは原則として無報酬ですが、気軽に始められるというメリットがあります。NPOとプロボノ活動をしたい人をマッチングプラットフォームもあり、直接やりとりするよりも選択肢が多かったり安心感があったりすることがメリットです。最近では、地方自治体が、地元の社会貢献活動を増やすためのプロボノ育成プログラムを主催することも。こうした活動経験がない人でも、プラットフォームや育成プログラムに参加することでスムーズにプロボノ活動が始められます。

 

基本的にプロボノは期間が決まっているプロジェクトが多いため、まずは短期間のプロジェクトで体験してみるのもおすすめです。

(2)大学や大学院での学び直しや起業講座を活用して、パラレルキャリアにつなげる

フリーランスの方は主体的に動くことに慣れている方が多く、第2のキャリアでやりたいことが明確になっている方がほとんどではないでしょうか。とはいえパラレルキャリアをはじめるには何かしらのきっかけが欲しいところ。

 

そこでパラレルキャリアを始めるきっかけとしておすすめしたいのが、社会人の学び直し。最近では政府も社会人の学び直しを推奨しており、社会人が働きながら学べる大学や大学院も増えています。社会人の学び直しを実践することで、新しいキャリアに必要な知識やスキルが身につくのはもちろん、本業とは違う新しい人脈が広がるというのも大きなメリット。フリーランスの方でも仕事や家庭の都合で通学が難しい場合がありますが、こんなときはオンライン講座を利用して学ぶという方法もあります。

 

もしパラレルキャリアとして「起業する目標」が明確な場合には、起業講座もきっかけのひとつとして活用できます。自治体が主催している起業講座やセミナーであれば、受講後、実際に起業するときにもさまざまなサポートを受けることができます。また、同じく起業を目指す仲間と出会えるというのも大きなメリット。フリーランスのパラレルキャリアを築く際には、どうしてもひとりでの活動になりがちです。起業を目指す仲間は、その後長きにわたってつながる存在になるかもしれません。

 

 

フリーランスのパラレルキャリア事例

フリーランスにおすすめしたいパラレルキャリアの始め方_4

 

すでにフリーランスとして活躍している方の中には、パラレルキャリアを実践している方も増えています。今回はみらいワークスがこれまでにインタビューした方の中から、パラレルキャリアを実践している事例を2つご紹介します。

(1)ビジネススクール進学をきっかけにパラレルキャリアを実践

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の代表理事を務める平田麻里さん。理事の立場だけではなく、フリーランスとして企業の広報責任者として活躍。他にもビジネスコラム執筆など、パラレルキャリアを実践しています。平田さんがパラレルキャリアをはじめたきっかけのひとつが、ビジネススクールへの進学。ビジネススクールで学ぶだけではなく、職員として働くことで新たなキャリアをスタートさせました。

※平田さんのパラレルキャリア事例のインタビューはこちら
https://freeconsultant.jp/workstyle/w055

(2)出産・子育てをきっかけにパラレルキャリアを実践

平田さんと同じく、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会で活動する中山綾子さん。こちらもパラレルキャリアをスタートさせたフリーランスのひとりです。

 

協会の理事の他、企業のプロモーションを担当するフリーランスとしても活躍。さらに北欧流のライフスタイルを広める「北欧くらしラボ」も主宰するというパラレルキャリアの持ち主です。中山さんは、出産・育児をきっかけにフリーランスとして独立。その経験がパラレルキャリア・フリーランス協会を手伝うきっかけになったそうです。こうしたライフスタイルの変化をプラスにとらえることで、自分らしいパラレルキャリアにつながっているのではないでしょうか。

※中山さんのパラレルキャリア事例のインタビューはこちら
https://freeconsultant.jp/workstyle/w057

 

収入アップを目指す副業やパラレルワークと違い、人生の新しい目標として考えるパラレルキャリア(複業)。今のキャリアとは違うやりがいが得られたり、さらなるキャリアアップにつながったりというメリットがあります。その一方でパラレルキャリアを実践するには、時間や情報に対する管理スキルや、セルフマネジメントスキルが求められます。

 

とはいえフリーランスの方の多くは本業のペースをある程度自分でコントロールできることも多く、会社員と比べるとパラレルキャリアに取り組みやすいと言えるのではないでしょうか。パラレルキャリアをすでに実践しているフリーランスの方々の事例を見ると、「社会人としての学び直し」「出産や子育てなどライフスタイルの変化」といったこともパラレルキャリアにとってはむしろプラスに働くことがわかります。

 

つまり、ひとつの組織・仕事に限定するのではなく、さまざまなキャリアを持つことがフリーランスの仕事の幅を広げたり、経験やスキルを生かせる仕事につながったりというメリットもあります。これからも、年代・性別を問わずパラレルキャリアに取り組むフリーランスの方が増えていくことが予想されます。

 

プロボノや社会人の学び直しを通じて、パラレルキャリアにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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