目指すのは「自分にとっての“ちょうどいい”」家族と幸せな暮らしを実現するために独立したワーキングマザーに聞く「人生の楽しみ方」とは
「人生の主役は自分—」。魅力的に響く一方、多忙な日々の中ではつい忘れてしまいがちになるこの言葉。今回は、まさにそんな生き方を実現すべく新たな一歩を踏み出した女性にお話をお聞きしてきました。
みらいワークスがお届けする「プロフェッショナリズム」、今回のインタビューは中山綾子さん。1年前に広告代理店から独立し、現在はフリーランスのイベントプロデューサーとして活動する傍ら、以前に当コーナーでご紹介した平田麻莉さんと共に、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会でも活動されています。
家族の幸せを最優先することを自らの軸に据えながら、ビジネスにも、社会を変えるための活動にも精力的に邁進する中山さんに、独立のきっかけやフリーランスという働き方のメリット、今後目指している生き方など、独立を志すビジネスパーソンにとってためになるお話をたくさんお伺いしてきました。
中山 綾子
今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント
飲食系企業での新業態開発を経て広告代理店に勤務後、2017年1月に独立し、現在はフリーランスとして複数社のプロモーションの企画や新規事業支援を手がける。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事としても活動する一方、北欧の暮らしをヒントに“ちょうどいい幸せのカタチ”を見つけるプロジェクト「北欧くらしラボ」も主宰している。 ◆一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 https://www.freelance-jp.org/ ◆北欧くらしラボ https://hokuokurashilabo.wixsite.com/hokuokurashilabo
中山 綾子
「自分の軸で仕事をしたい」という想いから独立を決意
フリーランスになられてまだ1年(2018年2月当時)という中山さんですが、独立を決意された理由は何だったのでしょうか?
中山さん(以下、敬称略):もともとはイベントのプロデュースなどを手がける小さな広告代理店にいたのですが、子どもを産み、そして復帰してからも1から10まで企画して、コーディネートして・・・という「一人事業部」のような働き方をしていました。
そんな中で、次第に個人として仕事のお話を打診していただくことが増え、会社として受けたり、社員としての業務バランスで断ったりするシチュエーションが増えてきました。その過程において「会社員でいるよりもフリーランスになった方がストレスなく働けるのではないか?」と感じるようになったのが、独立を考え始めたきっかけです。
勤めていた会社には子育て中の女性の先輩もたくさんいらっしゃったので、働き方に関する理解は一般の企業に比べれば十分にあったと思いますし、実際にわがままも聞いていただいていたのですが、それでもやはり自分の興味関心や“おせっかい欲”にどこかでブレーキがかかる感覚が残っていたので、思い切って独立したという感じですね。
なるほど。現在は一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の理事としても活動していらっしゃいますが、協会のことは独立前からご存知だったのですか?
中山:ええ、現在協会の代表理事を務めている平田とは以前からの友人で、協会設立の構想を聞いていました。
前職で出産後に子育て関連のプロモーションを担当する機会が多くなったことで、子育て中・育休中の方々や子育てを機に独立した女性起業家とのつながりも増え、業務の値付けの悩みや保活の難しさなど、フリーランスとして働く上での課題を耳にすることも多くありました。それらの課題を解決してライフステージに合わせ柔軟に働き方を選択できるようなサポートができれば、という想いで独立後すぐにフリーランス協会を手伝うようになり、今に至っています。
独立するにあたり、「フリーランスになってもやっていける」と思えたきっかけはあったのでしょうか?
中山:きっかけは、企画を提案して、予算を確保して、先方に発注していただいて、その仕事をいろいろな人に切り出してプロジェクトを進行させて・・・という業務を一貫してやっているうちに、「一人でもできるな」と思えた瞬間があったのですよね。ここは後になって会社のおかげでできていたのだと反省した面もあります・・・笑。
会社員時代から副業として個人的に仕事を受けることは何度かあったので、その経験も大きかったのかもしれません。「個人でも一緒にやってくれるチームさえあればできる」ということがわかった時に、それであれば興味を持てる仕事を自分で選んでやっていく方が自分には合っているな、と思いました。会社員時代に我慢していたわけでは決してないのですが、より柔軟に自分軸で考えられる方がいいな、と。在籍していた会社の仕事は独立後もスポットで受けさせていただいているので、結果的にいい形でお手伝いできているのかなと思っています。
なるほど。独立後、新規のお仕事はどのような方法で獲得なさったのですか?
中山:ある程度固定的な収入になる部分についてはマッチングプラットフォームを通じて獲得し、その合間にお声かけいただいた単発のイベントの仕事を入れていくという感じで始めました。会社員時代からいろいろな企業様との窓口になる仕事を担当させていただいていたので、そこで得られたネットワークには独立当初から非常に助けられています。過去に手掛けた仕事で知り合った方と思いがけないところでつながったりすることもあるので、本当に“ご縁”というのはありがたいなと、この立場になってつくづく感じますね。
仕事のやりがいとプライベートの充実の両方を実現できるフリーランスという働き方
実際にフリーランスになってみて、独立前に思い描いていた通りの働き方は実現できていますか?
中山:まだまだ課題は尽きないです。ただ、心に余裕ができて子どもとの関係が良好になったことは、独立してよかったと思う一番のポイントですね。正直「通勤時間もなくなるのだから、もっと子どもと一緒に過ごす時間を増やせるだろう」と思っていたのですが、実際には時間があればあるだけ常に仕事をしている状態になりがちです。なので車送迎ではなく、おしゃべりしながら歩いて登園したり、帰りも日によっては早めに迎えに行ってお茶したりする時間を意識的に作るようにしています。
仕事のやりがいという点では、独立した今の方が圧倒的に充実しています。会社員だった頃も自分の担当している仕事は“自分にしかできない仕事を”と思ってやっていましたが、今の方がよりその手応えが強いというか、クライアントとの信頼関係を実感しながら仕事ができる喜びは大きくなりましたね。
指名でお仕事を受けること自体は会社員時代にもあったそうですが、それでもやはり個人として受ける今の方が達成感は大きいということでしょうか?
中山:そうですね。会社員である以上は、個人が責任を負わない分、クライアントからの信頼も報酬も“会社に対するもの”ですから、その両方を100パーセント自分自身にいただける今の方が、やりがいも強く感じるようになりました。
もともと仕事がとても好きなので、できる限りお応えしたいという想いから「頑張ればやれるはず」と仕事のボリュームが大きくなりがちなのが課題です。とはいえ、そもそもこの働き方を選んだのは「家族と幸せに暮らしていくため」なので、今後どこかのタイミングでは、いただけるお仕事の中から選択するフェーズも経験しないといけないのだろうなと感じています。これは個人で仕事をしていると誰しも通過するところですよね。できればお断りするのではなく、仲間とチームを組んで対応するようなスタイルを目指しています。
フリーランスとして活躍されている方は仕事が好きで働くことを楽しんでいらっしゃる方が多い印象がありますが、中山さんの周りにもやはりそういう方が多いですか?
中山:今はフリーランス協会にも関わっているので、なおさらそういうタイプの人が周りに増えたというのはあるかもしれません。ただ、私もですが「休みの日も子どもといる時もオンオフ混同で過ごしている」という人もいれば、「オフは完全にオフ。自分のリソースをフル活用せざるを得なくなるような仕事は敢えて受けない」という人もいるので、各々が「ライフステージに合わせて働き方のポートフォリオを持っている」と言った方が正しい表現なのかなと。
働いた分だけ見返りがほしいと考えるのは誰しも同じだと思いますが、フリーランスの場合はその見返りをお金以外のもの、例えばやりがいや社会貢献度などで得ることもできるので、それぞれの良さを分かったうえで自律的に選択することが楽しく働くために大事なのかなと思いますね。
「自分にとってのちょうどいい」を目指して
中山さんから見た時に、フリーランスに向いているのは一言でいうとどんな人だと思いますか?
中山:企業や個人のお役に立てるプロフェッショナルスキルがあることを
それは人生に対してもそうですし、仕事に関してもそうですよね。フリーランスの場合は、会社員と違い誰からの指導もないので、スキルアップ一つ取っても自分で目標を定めてスケジュールを立てて実行する必要がある。そう考えると、やはりモチベーションの維持も含めて自分を律することのできる人でなければ難しいのではないかと思います。まぁ、やりすぎるとショート寸前に生き急いでいるようにもなりかねないので、発電量もセルフコントロールできることが重要なのだと思います!
自家発電力というのは新しい言葉ですね!たしかに生き急いでいると言うと語弊がありますが・・・フリーランスとして活躍している方からは「とにかくやりたいことをたくさんやっている!」という印象を受けることが多い気がします。
中山:多動力があると言うのでしょうか、少なくとも受け身では続けられない世界だと思いますね。どんな職種でも提案力は必要でしょうし、旅行に行っても海をボーっと見ただけでは終わらせないというか、何を持ち帰るか目的を設定できることは大事かもしれません。何か不都合なことがあっても自分で変えればいい、変えられるはずだという想いが持てる人の方がフリーランスには向いていると感じます。
自家発電力がもともと強い人はさておき、そうではない人が後天的に自家発電力を身に付けることはできると思いますか?
中山:クライアントからの指名で仕事を受け、やりがいや課題を感じていく過程で“フロントである自分”に免疫がつき、結果として自家発電力も強くなるということは十分あり得るのではないでしょうか。いずれにせよ、「人生の主役は自分なのだから、まずは思うように行動してみれば、自分らしいシナリオは後からついてくる」というのが私の考えです。
確かにおっしゃる通りですね。それにしても、さすがプロモーションを本業になさっているだけあって耳に残る表現がたくさんあり、私たちにとっても非常に勉強になります。
中山:ありがとうございます(笑) 表現と言えば、最近スウェーデン語の「ラーゴム(lagom)」という単語をとても気に入っているのですが、これは「自分にとってちょうどいい」という意味になります。他人と比べてどうこうではなく、自分にとってちょうどいい。英語の「ベスト(best)」とも違い、「自分が納得できればそれが正解だしハッピーなのだ」という考え方です。自己肯定感の高さはスウェーデンに限らず北欧全般に根付いているのですが、こういった考え方を子育て中の女性含め日本でもたくさんの方に知ってほしいという想いから、余暇を使って友人と一緒に「北欧くらしラボ」というプロジェクトも進めています。
私自身も、本業とフリーランス協会、そして北欧くらしラボという三足の草鞋を履きながらの毎日を、「自分にとってのちょうどいい」を探しながら楽しんでいきたいですね。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
「本業でも、フリーランス協会でも、まだまだやりたいことがたくさんある」とおっしゃる一方で、ご家族とのエピソードもとても幸せそうに話してくださった中山さん。大事にしたい生き方を最優先しながらご自身のやりたいことも諦めない中山さんの姿には、男女問わず多くの方が勇気づけられるのではないでしょうか。
中山さんは「フリーランスとして働く道と会社員として働く道を、ライフステージに応じて自由に行き来する働き方がこれからは当たり前になってくると思う」、「自分が楽しいのが一番なので、その時々で自分に合った道を選べる社会が理想」ともおっしゃっていました。私たちみらいワークスも、まさにそのような社会の実現を目指し、未来を見据えて新たな選択をするビジネスパーソンを支えていきたいと考えています。