サバティカル休暇とは?意味や事例、企業のメリット・デメリットを解説

最終更新日:2025/12/06
作成日:2019/01/21

サバティカル休暇という言葉を聞いたことがあるものの、どのような制度か具体的に分からず、導入に悩んでいませんか。

 

サバティカル休暇は、従業員と企業双方に多くのメリットをもたらす一方で、デメリットや注意点も存在します。

 

本記事では、サバティカル休暇の意味や企業の導入事例、企業にとってのメリット・デメリットを詳しく解説します。

 

サバティカル休暇への理解を深めて、導入を検討する際の参考にしてください。

 

目次

■サバティカル休暇の意味とは?

 

■サバティカル休暇の主な制度内容
(1)休暇期間
(2)給与の有無
(3)取得条件

 

■従業員にとってのサバティカル休暇のメリット・効果
(1)新たなスキル習得や学び直しができる
(2)心身のリフレッシュにつながる
(3)キャリアプランを再考する機会になる

 

■企業にとってのサバティカル休暇のメリット
(1)属人的業務を減らす体制作りに役立つ
(2)従業員のスキルアップにつながる
(3)離職率を減らせる

 

■サバティカル休暇のデメリット・注意点
(1)従業員の収入減少やキャリアの停滞
(2)復職への不安
(3)他の従業員への負担増

 

■会社がサバティカル休暇を導入する時のポイント
(1)制度の目的や利用条件を明確化する
(2)休暇中のサポートと復職支援体制を整える
(3)制度を周知し、取得しやすい雰囲気を作る

 

■日本でサバティカル休暇制度を導入している企業事例
(1)LINEヤフー株式会社
(2)MSD株式会社
(3)ソニーグループ株式会社

 

■まとめ

 

サバティカル休暇の意味とは?

オフィスでノートパソコンやタブレットを持って並ぶ4人の男女

サバティカル休暇とは、企業に一定期間勤続した従業員に付与される長期休暇制度を意味します。

 

元々は1880年にアメリカのハーバード大学で研究のための有給休暇として始まり、その後ヨーロッパなどへの広がりを経て、近年では日本企業でも導入が進んでいます。

 

経済産業省の報告書でも、学び直しを促す有効な施策の1つとしてサバティカル休暇が挙げられており、注目が高まっています。

 

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0 ~

 

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サバティカル休暇の主な制度内容

パソコンやタブレットを囲んで会議をする男女

サバティカル休暇は企業が独自に制度設計を行うため、その内容は多岐にわたります。

 

以下では、「サバティカル休暇の主な制度とはどのような内容か」を解説していきます。

 

(1)休暇期間

サバティカル休暇の期間は、企業によって様々ですが、一般的には1ヶ月から1年程度が目安とされています。中には2年以上の休暇取得を認める企業もあります。

 

数日や1週間程度の短期休暇は、リフレッシュ休暇や勤続休暇として運用されるのが一般的です。

 

休暇の期間や取得条件、給与の有無などは、企業が自由に設定できます。

 

(2)給与の有無

サバティカル休暇は法律で定められた制度ではないため、給与を支給するかどうかは企業が決定できます

 

多くの日本企業では、サバティカル休暇中の給与は無給とするケースが多いです。

 

しかし、従業員の生活負担を考慮し、原則無給としながらも休暇手当を支給したり、社会保険料の本人負担分を会社が支給したりする企業もあります。

 

休暇中の収入減少は従業員にとって大きな懸念事項であるため、企業は給与や手当に関する規定を明確にし、事前に従業員へ周知することが大切です。

 

(3)取得条件

サバティカル休暇の取得条件は、法律で定められていないため、企業が独自に設定します。

 

多くの企業では、従業員が一定期間勤続していることを条件としています。具体的には、勤続3年、5年、10年といった長期間の勤続を条件とするケースが多いです。

 

また、休暇を取得する目的に制限を設けない企業もありますが、資格取得や学び直しといったスキルアップを奨励する場合もあります。

 

従業員にとってのサバティカル休暇のメリット・効果

窓際でノートパソコンを見て微笑む男性

サバティカル休暇は、従業員にとって多くのメリットと効果をもたらします。

 

ここからは、従業員にとってのサバティカル休暇の主なメリットと効果を詳しく解説していきます。

 

(1)新たなスキル習得や学び直しができる

サバティカル休暇は、従業員が新たなスキルを習得したり、学び直しをしたりする機会を提供します。

 

長期の休暇を活用して、業務では得られない専門知識や技術を習得し、自己成長を促進できます。

 

資格取得や異文化体験など、多様な学習機会を通じて自身の市場価値を高めることも可能です。

 

結果として、従業員はより高いパフォーマンスを発揮できるようになり、企業全体の競争力向上にも貢献します。

 

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(2)心身のリフレッシュにつながる

サバティカル休暇を取得する大きなメリットの1つは、心身のリフレッシュにつながることです。

 

長期の休暇によって日々の業務で蓄積されたストレスや疲労を解消し、心身ともに健康を取り戻せます。リフレッシュ効果は従業員のメンタルヘルス対策としても有効で、過労や燃え尽き症候群の防止にも役立ちます。

 

また、長期休暇中に普段の生活では得られない体験や経験を積むことで、仕事に対する意欲やモチベーションが向上すると考えられます。

 

(3)キャリアプランを再考する機会になる

サバティカル休暇は、従業員が自身のキャリアパスや将来について深く考える機会となり得ます。

 

日々の業務から離れ、自分自身と向き合う時間を確保しやすくなり、本当にやりたいことや目指すべき方向性を再確認できます。

 

また、休暇中に新たな視点や価値観に触れ、これまでのキャリアを客観的に見つめ直す中で、今後のキャリアプランをより具体的に描きやすくなるでしょう。

 

自身の成長やキャリアアップへの意識が高まり、職場復帰後の仕事に対するエンゲージメント向上も期待できます。

 

企業にとってのサバティカル休暇のメリット

オフィスで笑顔で談笑する4人のビジネスパーソン

サバティカル休暇は、従業員に長期的な視点での自己成長とキャリア形成の機会を提供するだけでなく、企業にとっても多くのメリットをもたらします。

 

以下では、企業におけるサバティカル休暇の主なメリットについて解説していきます。

 

(1)属人的業務を減らす体制作りに役立つ

サバティカル休暇の導入は、特定の従業員に業務が集中し、その人が不在になると業務が滞る「属人化」のリスクを低減するのに役立ちます。

 

長期休暇に入る従業員がいる場合、業務の引き継ぎや棚卸しが必須となり、業務プロセスの見直しやマニュアル化の対応が進みやすくなるためです。

 

その結果、業務の標準化が図られ、特定の従業員がいなくても業務が円滑に進む体制を構築できます。

 

また、業務の標準化が進むことで、従業員は安心して休暇を取得できるようになり、有給休暇の取得率向上にもつながり得るでしょう。

 

(2)従業員のスキルアップにつながる

サバティカル休暇は、従業員のスキルアップに大きく貢献する制度です。

 

従業員が長期休暇を活用し、専門知識やスキルを習得したり、新たな資格取得に挑戦したりする機会を作り出します。

 

このような学び直しやスキルアップは、従業員個人の市場価値を高めるだけでなく、企業全体の知識や技術レベルの向上にもつながります。

 

結果として、企業の競争力強化やイノベーション創出に貢献し、組織全体の持続的な成長を促進すると考えられます。

 

(3)離職率を減らせる

サバティカル休暇は、従業員のエンゲージメント向上を通じて離職率の低下に貢献します。

 

長期休暇を付与する企業側の姿勢は、従業員に「大切にされている」という安心感を与え、企業への信頼とコミットメントを高めます。

 

従業員の定着率の向上につながり、企業は優秀な人材の流出を防止できるでしょう。

 

また、サバティカル休暇制度の存在は、採用活動において企業の魅力としてアピールでき、優秀な人材の獲得にもつながります。

 

サバティカル休暇のデメリット・注意点

オフィスで腕を組んでポーズをとるスーツ姿の男性

サバティカル休暇は、従業員と企業双方に多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかのデメリットや注意点もあります。

 

導入を検討する際には、サバティカル休暇の注意したい側面を十分に理解し、対策を講じることが重要です。

 

(1)従業員の収入減少やキャリアの停滞

サバティカル休暇中の収入については、多くの企業が無給としているため、従業員の収入が減少する場合があります。

 

また、長期の休暇取得は、一時的なキャリアの停滞につながる可能性も考えられます。

 

休職期間が長くなるほど、復職後の業務への適応や、同僚との差が開くことへの不安を感じる従業員も少なくありません。

 

そのため、サバティカル休暇を取得する際は、事前に従業員自身がキャリアプランをしっかりと考慮し、企業が提供するサポート体制を確認する姿勢が大切です。

 

(2)復職への不安

長期休暇後の復職は、業務内容の変化や新たなシステムへの対応、同僚との円滑なコミュニケーションなど、多岐にわたる不安を従業員にもたらす場合があります。

 

従業員の不安が解消されないと、退職や転職を検討する可能性も出てきてしまいます。

 

企業側は、復職前の面談や情報提供、復職後の研修、メンター制度などを整備し、従業員が安心して職場に戻れるようなサポートが必要です。

 

(3)他の従業員への負担増

サバティカル休暇の取得者が長期不在になることで、残された従業員の業務負担が増加する可能性があります

 

特に、特定の従業員しか遂行できない「属人化」している業務がある場合、情報共有の不足やマニュアル化の遅れが原因となり、業務の停滞や効率の低下を招く恐れがあります。

 

このような状況は、他の従業員の残業増加やストレスの原因となり、不公平感からモチベーションの低下にもつながりかねません。

 

そのため、休暇取得前に業務の引き継ぎやマニュアル化を徹底し、組織全体で業務をサポートする体制作りが重要です。

 

会社がサバティカル休暇を導入する時のポイント

オフィスで笑顔を見せるカジュアルな服装の男女5人

会社がサバティカル休暇を導入する際には、制度の目的や利用条件の明確化が不可欠です。また、休暇中の従業員に対するサポートと復職支援体制の整備も重要となります。

 

ここでは、サバティカル休暇を導入する際の具体的なポイントについて解説していきます。

 

(1)制度の目的や利用条件を明確化する

サバティカル休暇制度を導入する際には、導入の目的と利用条件を具体的に就業規則で定めましょう

 

企業がサバティカル休暇にどのような効果を期待しているのか、従業員がどのような目的で休暇を取得すべきかについて、就業規則に明確に記載することで、企業と従業員双方に誤解が生じづらくなります。

 

例えば、勤続年数や取得回数、期間、給与の有無など、利用条件を提示すると、従業員は安心して休暇計画を立てられます。

 

制度を公平に運用するためには、対象となる従業員の範囲や選考基準も明確にしておく必要があります。

 

(2)休暇中のサポートと復職支援体制を整える

サバティカル休暇を効果的に運用するためには、休暇中の従業員に対するサポートと、復職後の円滑な職場復帰を支援する体制を整える点も重要です。

 

休暇中の従業員が安心して過ごせるよう、会社は定期的な情報共有や相談窓口の設置など、心理的なサポートを提供する必要があります。

 

復職支援としては、復職前の面談や、業務内容の変化に対応するための研修、メンター制度の導入などが挙げられます。

 

休暇中や復職の支援体制を整備することで、従業員は休暇を取得しやすくなり、復職後もスムーズに業務へ移行できます。

 

(3)制度を周知し、取得しやすい雰囲気を作る

サバティカル休暇制度を導入するだけではなく、従業員が実際に休暇を取得しやすい雰囲気作りも大切です。

 

制度の内容を社内報や説明会を通じて積極的に周知し、取得事例を共有すると、休暇取得に対する従業員の不安を軽減できます。

 

また、上司が率先して休暇の取得を推奨したり、業務の属人化を防ぐための仕組みを構築したりする配慮も必要です。

 

このような取り組みを通じて、企業文化としてサバティカル休暇が浸透し、従業員が気兼ねなく利用できる環境が育まれていくでしょう。

 

日本でサバティカル休暇制度を導入している企業事例

広々とした開放的なオフィスの内観

日本企業においても、従業員のワークライフバランスの向上やスキルアップを目的として、サバティカル休暇制度を導入する企業が増えてきています。

 

以下では、実際にサバティカル休暇制度を導入している企業事例をご紹介します。

 

(1)LINEヤフー株式会社

LINEヤフー株式会社では、従業員の自律的なキャリア形成を支援するために、サバティカル休暇制度を導入しています。

 

勤続10年以上の正社員を対象として、2ヶ月から3ヶ月の長期休暇取得を認めています。

 

休暇中の自己啓発やスキルアップを推奨している点が特徴です。

 

リフレッシュだけでなく、新たな視点や経験を通じた創造性や生産性の向上が期待されています。

 

参考:LINEヤフー「働く環境

 

(2)MSD株式会社

MSD株式会社では、サバティカル休暇に相当する「ディスカバリー休暇」を導入しており、年間最大40日まで、連続または断続的に無給で取得できます

 

従業員の心身のリフレッシュや自己成長を目的としており、休暇中の過ごし方は個人の裁量に任されています。

 

ディスカバリー休暇によって従業員のワークライフバランスの実現を支援し、長期的なキャリア形成に貢献しています。

 

参考:MSD「人事に関する制度や取り組み
参考:厚生労働省「特別休暇制度導入事例集2020 MSD株式会社

 

(3)ソニーグループ株式会社

ソニーグループ株式会社は、従業員の多様なキャリア形成を支援するため、サバティカル休暇相当の長期休職制度「フレキシブルキャリア休職制度」を導入しています。

 

配偶者の海外赴任や留学への同行、私費での就学など、目的別に最長2年から5年の休職が可能です。

 

休職期間中は無給ですが、ソニーグループでは育児、介護、病気の治療などライフイベントに応じた様々な休暇制度や支援制度も充実しています。

 

個々の事情に合わせた柔軟な働き方を尊重し、従業員が長期的な視点でキャリアを継続できるようサポートする体制を整えています。

 

参考:ソニーグループ「多様性を推進する取り組み

 

まとめ

デスクでノートパソコンを操作する黄色い服の女性

サバティカル休暇は、従業員の心身のリフレッシュやスキルアップ、キャリア形成を促すための長期休暇制度です。

 

企業は、従業員満足度の向上や離職率の低下、属人的業務の削減といった多くのメリットを享受できます。

 

サバティカル休暇制度を導入する際は、目的や利用条件を明確にし、休暇中のサポートや復職支援体制を整えることが重要です。また、従業員が気兼ねなく休暇を取得できるような社内の雰囲気作りも欠かせません。

 

従業員のエンゲージメントを高め、企業全体の生産性向上につなげたい企業は、ぜひサバティカル休暇の導入を検討してください。

 

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(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)

 

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