ソーシャルビジネスで起業して社会貢献。通常のビジネスとの違いとは
最終更新日:2023/07/12
作成日:2023/01/31
最近耳にする機会が増えたソーシャルビジネスとはどのようなビジネスを指すのでしょうか?ソーシャルビジネスとコンサルタントとの関わりや定義、具体的な事例を紹介します。
ソーシャルビジネスとは?
「ソーシャルビジネス」(社会的事業)とは、営利目的ではなく社会問題の解決を目指して行うビジネスのこと。少子化や高齢化対策、地域活性化につながるビジネスとして政府や地方自治体なども注目しています。
最近ではビジネスパーソンが「もっと社会に役立つ仕事がしたい」と考え、自らソーシャルビジネスを起業する「社会起業家」も増加しています。ソーシャルビジネスといっても、ジャンルは多岐に渡ります。子育てや介護など普段の生活に関わることや、商店街の活性化や観光の強化など地域性の高いテーマのビジネスも。2011年の東日本大震災以降は、復興支援や防災などに取り組むソーシャルビジネスが増加傾向にあります。
国内だけではなく、海外の社会問題を扱うケースもあります。「途上国のものづくりを支援する」「海外の環境保護活動をサポートする」といったミッションのソーシャルビジネスも立ち上がっています。
コンサルタントは、今後ソーシャルビジネスと関わりを持つ機会が増えると予想できます。例えば、ソーシャルビジネスを起業したい方向けのコンサルティング、ソーシャルビジネス関連のシステム構築に関わるなどです。コンサルタントとして、押さえておきたいソーシャルビジネスの基本、ソーシャルビジネスの定義や事例などをまとめました。
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ソーシャルビジネスの定義とは?
経済産業省の『ソーシャルビジネス研究会』がまとめた資料では、ソーシャルビジネスを以下のように定義しています。
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ソーシャルビジネス(SB)とは、障がい者支援、子育て支援、貧困問題、環境保護、まちづくり・まちおこし等の社会的課題の解決を目的とした持続的な事業活動である。
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また、ソーシャルビジネスでは以下の3つの要素が必要と定義づけています。
出典:経済産業省「ソーシャルビジネスWG報告~ソーシャルビジネスの現状と課題~」
■ソーシャルビジネスに必要な3つの要件
1)社会性
社会的課題に取り組むことを事業ミッションとしていること
2)持続性
社会的課題の解決だけではなく、関連するビジネスを継続していくこと
3)革新性
従来の仕組みでは解決できていないことを、新しいアイデアで解決を目指すこと
■ソーシャルビジネスとボランティアとの違い
社会問題の解決が目的といっても、「ボランティア活動との違いがよくわからない」という方も多いかもしれません。
ソーシャルビジネスでは、活動資金をビジネスで得るのが基本です。ボランティアスタッフに協力を仰ぐ場面があっても運営全体をボランティアで賄うのような、無償の奉仕活動だけでは完結しません。あくまでビジネスとして、収益を上げる仕組みを考える必要があります。
■ソーシャルビジネスと一般的なビジネスとの違い
一般的なビジネスでは営利が目的となりますが、ソーシャルビジネスでは「社会問題の解決」を目的とする点が大きな違いです。とはいえ、ソーシャルビジネスも事業を続けていくためには収益を上げることも求められます。
現状日本のソーシャルビジネスでは、寄付を募って事業の運営資金に充てるケースが主流です。とはいえ、社会問題の解決につながる方法で商品・サービスを販売して売上を立てる、行政や自治体から業務を受託して売り上げを立てる、といった方法で収益を上げているところもあります。
ソーシャルビジネスで起業するなら、NPO法人がよい?
ソーシャルビジネスで起業する場合、NPO法人を立ち上げるというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。実際に、ソーシャルビジネスを行う事業者の約47%がNPO法人というデータもあります。
■NPOの定義とは?
NPO(Non-Profit Organization)は「非営利で活動する組織」という意味です。社会問題解決のために活動する組織なので、法人に限らず市民活動団体もNPOと呼びます。NPOのうち、法人格を持つ組織がNPO法人です。法人化するためには、さまざま手続きが必要です。
なお、NPO法人のみソーシャルビジネスができるというわけではありません。NPO法人ではなく、株式会社としてソーシャルビジネスを行っている企業もあります。
■NPO法人のメリット・デメリット
NPO法人を立ち上げてソーシャルビジネスを行う大きなメリットは、株式会社にはない優遇措置がある点。NPO法人では、法人設立にかかる印刷代など費用の一部免除や、利益にかかる税金が免除になる場合があります。
優遇措置がある一方で、NPO法人としての制約事項もあります。例えば、株式会社では利益を出資者に配当として還元することができますよね。一方、NPO法人では、社会的利益が優先なので利益還元はできません。利益は、事業に役立てなければならないと規定されています。
ほかにもNPO法人を設立・運営する際には、以下のルールがあります。
- ・法律で活動範囲があらかじめ20分野に限定されている
- ・審査があるため、NPO法人立ち上げまでに数か月かかる
- ・1人では設立できない(理事3名以上などの規定がある)
- ・所轄庁へ事業報告など情報公開する義務がある
ソーシャルビジネスが抱える2つの課題
社会問題を解決しつつ、ビジネスとしても発展性をもって運営できるソーシャルビジネス。人気も高まっていますが、課題があるのも事実です。
■ソーシャルビジネスでは、ビジネスと社会貢献のバランスが難しい
社会問題の解決をメインにしているため、なかなか売上がアップしづらいというのがソーシャルビジネスの大きな課題。顧客となるユーザー層が経済的に豊かではないケースが多く、運営資金が不足しがちという問題を抱えています。
■ビジネススキルを持った人材が不足している
資金不足という課題は、スキルを持った人材の確保が難しいということにつながります。ソーシャルビジネス事業者の多くは、「求人広告を出しても集まらない」「スタッフのビジネススキルが不足している」という課題を抱えています。
NPO法人の中には、ボランティアスタッフや学生インターンスタッフが中心のケースも多く見られます。ビジネススキルを持つ人材が足りないため、「事業のプランニングまで手が回らない」「プロモーションや広報活動が十分にできない」「ITに詳しいスタッフがいないので業務の効率化が難しい」といった問題に直面することも多いようです。
まとめ
行政や自治体では対応しきれないような、社会問題の解決につながることが期待されているソーシャルビジネス。一方で社会貢献がメインのため、ビジネスマネジメント面では資金や人材の不足という課題もあります。
ただし、新しい手法で、こうした課題に取り組んでいるソーシャルビジネス事業者も。例えば資金の問題を解決するために、インターネットを利用して活動資金を調達する「クラウドファウンディング」を利用するケースも増えています。
人材不足に対しては、社会貢献したいビジネスパーソンが、スキルや経験を生かしてボランティア活動をする「プロボノ」を利用するケースもあります。さらに今後ソーシャルビジネスを始めたい方向けの起業支援も増えています。例えば横浜市では起業時につかえる助成金や起業や経営の相談窓口を設けています。こうした取り組みによって、ソーシャルビジネスの市場規模はこれからも大きくなってくることが予想されます。
※クラウドファンディングについては、以下の記事で詳しく解説しています。
・インターネットで起業資金を調達できる、クラウドファンディング
https://freeconsultant.jp/column/c124
※プロボノについては、以下の記事で詳しく解説しています。
・コンサルティング会社も導入!専門スキルで社会貢献する「プロボノ」とは?
https://freeconsultant.jp/column/c134
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)