【監修】失敗例から学ぶリモートワークのファシリテーションのコツ

作成日:2020/08/07

新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務やリモートワーク(テレワーク)を導入する企業が急増しています。こうした状況の中、Web会議をする機会が増えた方も大勢いらっしゃるでしょう。実際に「テレワークをする人の約8割がWeb会議システムを利用した」という調査結果もあります(※1)。

 

PMなどプロフェッショナルスキルを持つ方の中にも、オンラインのWeb会議の進行役をしてみたら戸惑うことがあったという方、多いのではないでしょうか?やはり対面の会議とオンラインのWeb会議では、いろいろと勝手が違います。ある調査によれば、Web会議経験者の約5割の人が「対面の会議よりWeb会議の方が疲れる」と回答しています。その理由としては「Web会議だと発言しにくい」「事前に社内でのすり合わせや相談がしにくい」といった声が多かったそうです(※2)。

 

そこでリモートワーク中にオンラインで行なうWeb会議について、ありがちな失敗例と成功するために必要なファシリテーションのコツをご紹介します!

 

 

目次

■リモートワーク中のWeb会議にありがちな失敗例
事例1:通信や音声・映像の不具合で会議が進まない
事例2:Web会議ツールの操作方法がわからない
事例3:参加者がWeb会議に集中できない
事例4:資料の準備・管理ができていない
事例5:開始時間に参加者全員が集まらない

 

■Web会議が成功するかは事前準備で決まる!準備をするときの4つのコツ
(1)参加者の通信環境やマイク・ビデオの設定をチェックしておく
(2)リハーサルをしてツールの操作方法をマスターしておく
(3)会議の目的やトピックを資料にして参加者全員と共有しておく
(4)会議の目的にマッチする参加者に絞り込む

 

■Web会議中にファシリテーションをスムーズに進める3つのコツ
(1)参加者全員が会議に集中するように促す
(2)要点や論点など、途中で情報を整理するタイミングを設ける
(3)ファシリテーション以外のタスクを他の参加者に任せる

 

■Web会議終了後、次回の会議進行をスムーズにするための3つのコツ
(1)会議内容をまとめて、参加者と共有する
(2)次回のWeb会議日程を決めておく
(3)録画を見て会議のファシリテーションについて振り返る

 

※本コラムは、弊社コンサルタントが監修しています。

 

リモートワーク中のWeb会議にありがちな失敗例

 

Web会議で思わぬトラブルを経験した方も多いのではないでしょうか?ここではよくあるWeb会議の失敗例として、5つの事例をご紹介します。

事例1:通信の不具合で会議が進まない

オンラインで行なうWeb会議では、参加者の通信環境次第で音声や画像が不安定になるケースが多くなります。これはリモートワークならではの課題と言えますね。会議中に頻繁に音声や映像が途切れてしまうと会議の進行に支障が出るため、対策が必須です。 Web会議を実施しても意思疎通ができていないと、結論が出なかったり参加者で情報共有が十分できなかったりして生産性が大きく低下してしまいます。

 

音声関連のトラブルでは、参加者(発言者ではないいわゆる傍聴者)のマイクがオンになっていたという失敗例もよくあります。傍聴者本人はマイクがオンになっているという認識がないまま、個人的な発言がWeb会議の参加者全員へ伝わってしまう可能性もあり、気を付けたいところです。

事例2:Web会議ツールの操作方法がわからない

ファシリテーションを担う進行役がWeb会議のツールの操作方法に慣れていないと、会議進行が滞ってしまいます。あるケースでは進行役が画面共有の方法がわからず、誤って非公開ファイルを開いた状態で画面共有してしまった!なんて失敗例もあるようです。

事例3:参加者がWeb会議に集中できない

参加者の画像や背景画像がWeb会議に影響して、失敗例となってしまうケースも実はあります。「背景にプライベートな情報や家族(ペット)が映り込んでしまい、他の参加者が集中できなくなる」「室内が暗すぎたり逆光だったりして、参加者の様子がわからない」といった経験を持つ方も多いかもしれません。

 

また会議の目的が参加者に浸透していないため、参加者の集中力や参加意識が落ちてしまうこともあります。目的が明確になっていないと「そもそもその会議に自分は必要?なんで参加しているの?」と考えてしまうメンバーも出てきてしまいます。これも会議の生産性は下がってしまう原因になりますので注意が必要です。

事例4:資料の準備・管理ができていない

参加者それぞれで、独自に会議資料を用意するケースも多いと思います。ただしファシリテーションを行なう進行役が事前に資料を管理できていないと、大きな混乱を招いてしまうことも。あるケースではWeb会議に使う資料をメンバー1人しか持っておらず、そのメンバーが通信不具合でログアウトしてしまい資料が使えなくなってしまったという失敗例もあります。不測の事態に備えて、できる限りリカバリできるよう事前準備を整えておきたいですね。

事例5:開始時間に参加者全員が集まらない

開始時間に参加者全員が集まらないのは、対面の会議でもよくありますよね。ただWeb会議の場合、進行役が遅刻するのは致命的です。特に、進行役以外は初対面のメンバーという状況で進行役が開始時間に遅れてしまうのはできる限り避けたいところ。初対面の人同士で会議を始めるわけにもいかず、進行役が参加するまで気まずい雰囲気になってしまいます。

 

またセキュリティの観点から「主催者が承認しないと他のメンバーが参加できない」という設定になっているケースも多いですよね。この場合主催者が遅刻してしまうと、他の参加者はWeb会議自体に参加できずじっと待つことになってしまいます。他の部分で会議の効率化を目指しても、開始時間が遅れてしまったら意味がありません。

全員が参加しなければ成り立たない会議実施の際などには、主催者は参加者の電話番号等を把握しておき、必要に応じて参加してきていないメンバーに別途連絡を取って状況確認をすることで対応することもできます。

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Web会議が成功するかは事前準備で決まる!準備をするときの4つのコツ

 

対面での会議では、会議室の予約と参加者への招集告知、資料を用意すればほぼOKです。一方オンラインで開催するWeb会議では、通信環境やツールの設定などさまざまな準備をしておく必要があります。ファシリテーションがスムーズにできるかどうかは、事前準備次第と言っても過言ではありません。そこでWeb会議の進行役として、事前準備をするときに意識したい4つのコツをお伝えします。

(1)参加者の通信環境やマイク・ビデオの設定をチェックしておく

失敗例にも多い通信や音声などのトラブル。これを防ぐにはやはりテストが重要です。事前に「送ったID・パスワードでWeb会議に参加できるか」「音声や映像のトラブルはないか」「通信環境は安定しているか」をチェックしておく必要があります。

 

在宅勤務や他の場所でリモートワークをしている参加者の中には、自宅の通信環境が良くないということもあります。その場合「使っているデバイスを変えてみる」「Wi-Fiではなく携帯電話の通信回線に切り替える」などいくつかの方法を試してみましょう。

(2)リハーサルをしてツールの操作方法をマスターしておく

進行役として、Web会議ツールの操作方法や設定方法は事前に確認しておくべき。あらかじめリハーサルをしておくと安心です。またWeb会議ツールといっても「Zoom」をはじめ「Google ハングアウト/Google Meet」「Skype」「Chatwork」など多くの種類があり、それぞれ機能や操作方法が違います。取引先企業によって導入しているツールが異なるケースもありますので、新しいツールを使うときは事前に操作方法をチェックしておきましょう。

 

例えば発言者が話している間、主催者側で他の参加者のマイクをオフにできる機能が搭載されたツールもあります。こうした機能を進行役が理解していれば、会議がよりスムーズになるのではないでしょうか。また最近はWeb会議ツールも頻繁にアップデートをしています。例えば「Googleハングアウト」は2020年「Google Meet」と名称が変更になり、機能も一部変更されました。こうした最新情報を収集しておくことも大事なコツです。

 

ほかにも音声でのやりとりだけではなく、チャット機能を使うのもコツ。たいていのWeb会議ツールには会話でやり取りする以外に、文字でやりとりするチャット機能も付属しています。ディスカッションにはあまり向いていませんが、要点をまとめて参加者で共有する時や、参加者から質問を受け付ける時などにチャットを活用するとスムーズです。

(3)会議の目的やトピックを資料にして参加者全員と共有しておく

参加者が実際の会議室に集まっていないWeb会議では、参加者の集中力や参加者意識を維持することも進行役にとって重要なタスクです。そのためにも、会議を行なう目的(何を話し合うのか)ゴール(会議で何を決めたいのか)を明確にしておきたいところ。そこで会議の目的や議題をアジェンダにまとめ、事前に参加者へ配布しておくのがおすすめです。

 

アジェンダには会議の目的と合わせて、おおまかなタイムスケジュールも載せておきましょう。参加者が目的や議題、ディスカッションできる時間などを事前に把握できれば、より参加者意識、当事者意識が高まるはずです。また事前に参加者それぞれが準備できるので会議の生産性が上がり、効率化につながります。

(4)会議の目的にマッチする参加者に絞り込む

会議開催時、「とりあえず関係しそうな人全員に声を掛けておこう」ということも多いのではないでしょうか?

しかしWeb会議の場合は、人数が増えると進行が難しくなるという課題があります。画面にメンバーの映像が多くなるほど、参加者の表情もわかりづらくなってしまいます。また人数が多いと発言者の数はどうしても限られるので、参加しても発言できない人が多くなってしまい、当事者意識が薄れてしまう原因にもなるでしょう

 

会議の目的に合わせて参加者を絞り込むのは、活気のあるWeb会議にするための大事なコツです。とりあえず聞いておいてほしいという方がいるなら、録画を後で見てもらうという方法も検討しましょう。

 

 

Web会議中にファシリテーションをスムーズに進める3つのコツ

 

Web会議では、参加者と直接会えないことを踏まえた状態でファシリテーションをしていく必要があります。特に進行役として、Web会議中に意識したいコツを3つにまとめました。

(1)参加者全員が会議に集中するように促す

Web会議の参加者は、それぞれ自宅でリモートワーク中という状況が多いでしょう。失敗例にもありましたが、自宅の環境やスキルによって会議中に集中力が落ちてしまう人が出てくる可能性もあります。またWeb会議では発言するタイミングが難しいので、発言者が偏ってしまう傾向があります。発言が少ないと集中力も落ちますし、参加意識が低くなってしまいますよね。

 

準備の時点でできるだけ参加者を絞り込むこともコツのひとつですが、会議中も進行役として参加者が集中しているか気を配っておきたいところです。集中力が落ちていそうな人や発言が少ない人には、適切なタイミングで発言者になってもらうよう発言を促しましょう。

(2)要点や論点など、途中で情報を整理するタイミングを設ける

対面と比べ、オンラインでは参加者の状況がわかりづらかったり、発言者の声が聞こえにくかったりすることも多いもの。そのため会議が終わってみたら、一部の参加者はディスカッション内容を把握できていなかった…ということもあり得ます。

こうした状況を防ぐには、会議中に参加者全員の認識に齟齬がないかを確認する場を設けましょう。

Web会議ツールにはホワイトボード機能がついているものもあります。こうしたホワイトボード機能を使ってディスカッションの論点や要点などの情報をまとめれば、会議の動きがわかりやすくなって生産性が向上します。

(3)ファシリテーション以外のタスクを他の参加者に任せる

プロジェクト管理が得意なプロフェッショナルでも、Web会議ではさまざまなタスクがあるため、ファシリテーションをしていると他のことに手が回らないなんてこともあるのでは?例えば会議中の議事録作成や、限られた時間で会議を終わらせるための時間配分など。

 

ファシリテーション以外のタスクについては、議事録作成担当やタイムキーパー担当などを決めて、できるだけタスクを分散しましょう。この方が間違いなく生産性は上がりますし、参加者にとっては自分の担当タスクがあることで会議への参加意識が高まるメリットもあります。

 

またWeb会議ツールを使って開催されるオンラインセミナーなどでは、質問をチャットで行なってファシリテーター以外の運営スタッフが答えるといったように、役割分担をすることでセミナーを中断せずに生産性を上げている企業も見掛けるようになりました。

 

 

Web会議終了後、次回の会議進行をスムーズにするための3つのコツ

 

Web会議が終わりおおよそまとまったというときでも、進行役としては気が抜けません。次回のファシリテーションをスムーズにするためにやっておきたいことがいくつかあります。

(1)会議内容をまとめて、参加者と共有する

会議を開始する時に、目的について共通認識を持つ時間を設けるというのもコツですが、会議の最後に決定事項や会議内容をまとめることもファシリテーションを行なう上で重要です。

以前「若手コンサルタントに必要!ファシリテーションスキル習得のコツ(https://freeconsultant.jp/column/c202)」というコラムでも解説しましたが、議事録を作成した後で参加者の認識のズレが分かったとなると、会議をした時間がムダになってしまいますよね。ですからWeb会議の最後にまとめを行なう時間を見込んでおきましょう。

決定事項を合意すると共に、会議で決まったTo Doを確認することによって参加者も次のアクションを起こしやすくなります。

(2)次回のWeb会議日程を決めておく

1回のWeb会議で結論が出なかった場合や定期的にWeb会議を開催する場合、できるだけ会議の最後に次回のミーティング日程を決めておきたいところです。参加者が集まっているときに次回の日程を決めてしまった方が効率的ですし、次回のスケジュールが決まっていればすぐに準備をはじめることができます。

(3)録画を見て会議のファシリテーションについて振り返る

Web会議が終了した後は、進行役としてファシリテーションの振り返りを行ないましょう。Web会議ツールにはたいてい録画機能がついています。あとから録画したデータを見て振り返りをすれば、客観的にどんなシーンに課題があったかがわかります。会議中に気づけなかった他の参加者の動きなどもわかりますので、今後のファシリテーションスキルの向上につながるはずです。

 

 

新型コロナウイルスの影響をはじめ、働き方改革などの背景からリモートワーク(テレワーク)や在宅勤務を導入する企業が増えてくるでしょう。こうした状況の中、Web会議はこれからますますビジネスシーンで欠かせないものになってくるのではないでしょうか。これまでもファシリテーションスキルを磨くポイントを解説してまいりましたが、今後はリモートワークに対応したスキルがより求められるはずです。

また最近ではプロジェクトチーム内での会議だけではなく、リモートワーク中のスタッフとの面談や研修、オンラインセミナーなどもWeb会議ツールを使って開催されるようになってきました。

つまりWeb会議の進行役としての経験・スキルがあれば、Web会議以外にも幅広いシーンで役に立つはずです。

 

※1出典:https://japan.zdnet.com/article/35156332/
※2出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000038247.html

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

< 監修者プロフィール >
伴田 典子(ともだ のりこ)

戦略・業務改革コンサルタント。早稲田大学卒業後、現アクセンチュア株式会社に入社。その後、外資系流通業、外資系金融および外資系コンサルティング会社を経て現職(株式会社みらいワークス所属コンサルタント)。専門は、経営計画立案、組織再編を含む企業変革の支援。

 

 

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