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新規事業×リーンスタートアップ=時代遅れ?その理由とは

最終更新日:2020/08/14
作成日:2017/01/30

起業や新規事業立ち上げのフレームワークとして、日本でも海外でも人気の高いリーンスタートアップ。リーンスタートアップとは、必要最低限の製品を作って市場に出し、仮説を検証するというやり方。もし仮説が違っていれば、修正するプロセスをスピーディーに繰り返すという点が特徴です。

スタートアップ企業はもちろんですが、大企業の新規事業や新サービスの開発などにもリーンスタートアップの手法は使われています。例えばアメリカの大手企業GE(ゼネラル・エレクトリック)。新規事業開発にリーンスタートアップを採用した結果、組織体制や人事制度の見直しにもつながったそうです(※1)。

 

日本企業にも採用事例が増えています。例えば全日空ではスマートフォンアプリ開発をはじめ、業務改善や新規事業開発などにリーンスタートアップを採用した事例があります(※2)。事業開発などのコンサルティングでも、リーンスタートアップという用語を聞く機会は多いかもしれません。

しかし「リーンスタートアップは、もはや時代遅れ」という声も聞かれます。スピードを重視するところなど、今の時代にマッチしているように見えますが、なぜ時代遅れと言われているのか気になるところ。そこでリーンスタートアップという用語について、基本的な考え方や過去の成功事例をまとめた上で、時代遅れと言われる理由について解説します。

 

 

目次

 

■シリコンバレーでブームになったリーンスタートアップは何がスゴイ?
(1)リーンスタートアップの考え方
(2)リーンスタートアップのサイクル
(3)リーンスタートアップは「トヨタ生産方式」が起源

 

■リーンスタートアップのポイント1 ムダを省いて仮説検証するためのMVPとは?

 

■リーンスタートアップのポイント2 あの有名サービスも方向転換(ピボット)で成功

 

■もはやリーンスタートアップは時代遅れって本当?
(1)MVPでネガティブな情報がSNSですぐに広まってしまう
(2)顧客の意見に左右されすぎてしまう
(3)最新テクノロジーを使うと、イニシャルコストがかかる

※本コラムは、2020年8月14日に「新規事業の成功率をアップ!リーンスタートアップとは」を再構成したものです。

 

 

シリコンバレーでブームになったリーンスタートアップは何がスゴイ?

 

リーンスタートアップのリーン(Lean)とは「無駄のない」という意味のワード。つまりムダを省いて、効率的に新規事業開発を進めるための手法です。2000年代後半、アメリカの起業家であるエリック・リースが提唱し、シリコンバレーを中心に大きなブームとなりました。その後日本でも書籍が出版されリーンスタートアップという用語が広まりました。現在では起業や新規事業開発などを中心に多く使われているフレームワークです。

(1)リーンスタートアップの考え方

新しいビジネスモデルを考える時、まず「顧客のニーズが本当にあるか?」を知ることが重要ではないでしょうか。とはいえ顧客の求めているものを完璧に作ろうとすると、時間もコストもかかりすぎてしまいます。また綿密な市場調査をする方法もありますが、これもかなりの時間と労力を費やしてしまいます。

 

時間とコストをかけても、そのビジネスモデルが成功するとは限りません。一般的には起業や新規事業開発が成功する確率はかなり低いと言われていますよね。

つまり時間とコストをかけてしまうと、ムダになりやすいということ。資金やリソースが限られているスタートアップ企業の場合、1回の失敗が大きなダメージになりかねません。ムダを減らして新規事業にかかるリスクを減らし、ビジネスの成功率を上げる。これがリーンスタートアップの基本的な考え方です。

(2)リーンスタートアップのサイクル

①仮説構築(Build)

リーンスタートアップという用語を広めた第一人者のエリック・リースは「ビジネスのアイデアは、すべて仮説でしかない」と言います。新規事業開発や起業は、アイデアの時点でうまくいくかどうかは全くわかりません。そこで必要となってくるのが仮説検証。計画をしっかり立てるよりも、まず必要最低限のものを作ることを重視しています。

 

リーンスタートアップは、アイデアをビジネスにつなげるための手法。アイデア自体を生み出すためのものではありません。リーンスタートアップがあればイノベーションが実現するわけではない、ということは知っておきたいポイントです。

 

②計測(Measure)

仮説検証を行なうため、実際に顧客へ提供してみるのが「計測」のステップ。顧客にとって価値があるかどうかを確認します。ただし、どんな顧客でもOKというわけではありません。いわゆる新しい物好きな人、新しいアイデアを受け入れやすく、他のユーザーへの影響力を持つ人がふさわしいとされています(このような顧客を、マーケティング用語では「アーリーアダプター」と呼びます)。

 

③学習(Learn)

顧客からフィードバックを集め、その情報をもとに改善を行なうのが「学習」のステップ。もし大きな課題があれば、新規事業開発を進めるかどうか見直すこともあります。

 

この「仮説構築」「計測」「学習」という仮説検証のサイクルを、できるだけスピーディーに繰り返すというのがリーンスタートアップの流れです。

(3)リーンスタートアップは「トヨタ生産方式」が起源

高品質なものづくりのためのフレームワークとして、世界で注目されるトヨタ自動車の生産方式。実はリーンスタートアップは、このトヨタ生産方式がベースになっています。トヨタの生産方式は「ジャストインタイム」「自働化」という2つの柱で成り立っていますが、どちらも徹底的にムダを省くことを重視しています。

 

トヨタ生産方式では、「各工程で必要なものを必要なだけ小ロットで作り、ムダを減らす」という方法が基本です。これはリーンスタートアップの「小さな単位で作って仮説検証を繰り返す」というプロセスのベースになっていると言えます。トヨタ生産方式のコンセプトや手法を、起業や新規事業開発のプロセスに応用したのがリーンスタートアップというわけです。

 

 

リーンスタートアップのポイント1 ムダを省いて仮説検証するためのMVPとは?

 

リーンスタートアップで重要な要素のひとつが、小さな単位で必要最低限の製品を作って顧客に提供するということ。まず仮説検証をするために作る製品を、「MVP(Minimum Viable Products)」という用語で呼びます。ちなみにViableは「実行可能な」という意味です。

 

MVPは実際の製品とは限りません。例えばオンラインストレージサービスのDropboxは、サービス紹介動画をMVPに活用した有名な事例です。

Dropboxではオンラインストレージサービスのニーズが高いという仮説を立てました。仮説検証のため、開発する前にサービスを説明する動画を作成。この動画を公開した結果、事前登録ユーザーは5千人から7万5千人に急増したそうです。

この結果を見れば、当初の仮説が正しいということが明確にわかります。ユーザーはMVPをもとにその価値を理解したというわけですね。

 

また、一見完成したプロダクトに見えるものの、実際は見えないところでムダを省くというケースもあります。

ある通販サイトではビジ
ネスを立ち上げた当初、発注や発送などをすべて人手で対応。顧客のニーズを把握できてから、システム構築に取り組んだそうです。
いずれの事例も、実際のプロダクトやサービスができていない段階で、MVPによって仮説検証するという点が大きなポイントでしょう。新規事業開発を先に進めてしまうと、もし間違っていた時に方向転換が難しくなります。

 

 

リーンスタートアップのポイント2 あの有名サービスも方向転換(ピボット)で成功

 

リーンスタートアップは3つのステップを繰り返して仮説検証していくわけですが、仮説そのものを見直す、つまり方向転換するケースもあります。これも実はリーンスタートアップの重要な要素。リーンスタートアップの著者であるエリック・リースは、仮説検証サイクルにおける方向転換を「ピボット」という用語で表現しています。

 

顧客から得る情報をもとに、仮説を見直すというケースもあります。もしズレが大きければ、仮説構築からやり直しということも。リーンスタートアップは最初に小さい単位で進めるため、ビジネスそのものをピボットしやすいメリットがあります。

 

実際にYouTubeInstagramといったサービスも、ピボットを経て人気サービスに成長したという経緯があります。

例えばYouTubeは、立ち上げ当初は動画でデート相手を探すマッチングサービスでした。しかしデートと関係ない動画が増えていったことをきっかけに、動画をシェアするサービスにピボット。その結果、世界最大規模の動画サービスへ成長しました。

Instagramもサービス開始当初は、スマートフォンの位置情報を使って情報共有するサービスでした。その後写真の共有に特化。簡単に写真を加工できたりスピーディーに画像をアップできるようにするなど改善に取り組み、現在のような人気サービスになったというわけです。

 

こうした事例を見ると、起業や新規事業開発においてピボットがいかに重要かということがわかります。なおYouTubeは顧客セグメントを変え、より幅広い人をターゲットにしたピボットのケース。一方Instagramは写真共有機能にフォーカス。他の写真アプリにない機能や使いやすさを重視していったというピボットです。それぞれ異なるアプローチがあることがわかります。

 

 

もはやリーンスタートアップは時代遅れって本当?

 

現在でもさまざまな企業で採用されているリーンスタートアップ。ところが一部では「もはやリーンスタートアップは時代遅れでは?」と言われることもあるようです。

(1)MVPでネガティブな情報がSNSですぐに広まってしまう

先述したように、リーンスタートアップでは、仮説検証するために短期間・低コストでMVP(Minimum Viable Product。市場売り出し前の実用最小限の製品)を作るのがポイントです。

従来なら仮説検証のため、一部の顧客に限定してMVPを出すということもできましたが、今はSNSがあるためそうもいきません。中途半端なプロダクトを出してしまうと、ネガティブな意見がSNSですぐに広まってしまうというわけです。これがリーンスタートアップは今の時代にマッチしないと言われる理由のひとつです。

 

ただ、そもそもMVPは不完全な製品をとりあえず世の中に出すということではありません。あくまで必要最低限のものを設ける、という位置づけです。またDropboxのようにプロダクトそのものではなく、説明動画などで仮説検証をするパターンもあります。そのため一概にMVP自体が今の時代に合わないということにはならないでしょう。ただMVPとして公開したものが、独り歩きしてしまう可能性はあり、これは現在の課題と言えます。SNSを意識したMVPの作り方、公開の仕方を考える必要はあるでしょう。

(2)顧客の意見に左右されすぎてしまう

リーンスタートアップは、顧客のニーズにあわせてビジネスの課題を判断して改善するというのが基本。そこで陥りがちなのが、仮説検証をひたすら繰り返してしまうというパターン。顧客の意見に基づいて方向転換しすぎると、信頼性が下がります。アメリカのある研究では、仮説検証のテストを繰り返すリーンアプローチよりもゆるぎない戦略のほうが重要、と結論付けているものもあります。

 

リーンスタートアップにこだわって仮説検証をとにかく多くやればいい、ということではないわけですね。このあたりは認識しておきたい課題でしょう。

(3)最新テクノロジーを使うと、イニシャルコストがかかる

モバイルアプリなどのプロダクトを開発する場合、もともとコストがかからないためリーンスタートアップに取り組みやすいのではないでしょうか。一方、最新のテクノロジーを活用したものづくりはそうもいきません。どんなにムダを省いてもそれなりにコストがかかるため、リーンスタートアップには向かないとも言われます。

 

とはいえ、最新テクノロジーを駆使したスタートアップ企業が増えているのも事実。例えば電気自動車(EV)の分野。EVは通常の自動車と比べて部品を約6割減らせるため、スタートアップ企業にもチャンスがあると言います。

実際にいくつかのEVスタートアップ企業が、バングラデシュやタイなど海外で新たなビジネスをスタートさせています(※3)。今後も幅広い分野でスタートアップ企業が増えるのに伴い、リーンスタートアップに取り組むケースも増えていくはずです。

 

 

コストや時間をなるべくおさえ、効率的に起業したり新規事業を立ち上げたりするためのリーンスタートアップ。YouTubeやInstagram、Dropboxといったサービスも、リーンスタートアップをうまく使ってビジネスを成長させました。しかし、起業家であるエリック・リースがリーンスタートアップを提唱してから約10年。最近ではリーンスタートアップは時代遅れ、限界がある、という意見もあります。

 

しかしポイントをおさえれば、リーンスタートアップは今でも十分価値のある手法。実際に、今でもリーンスタートアップを採用してイノベーションにつなげている企業は多くあります。事業開発や起業のほか、人事や組織改革など経営の課題解決に用いるケースもあります。もちろんリーンスタートアップを採用すれば、すべてうまいくいくというわけではありません。あくまで手法のひとつして考え、状況に合わせてうまく応用していきましょう。

 

※1参照:https://www.foresight.ext.hitachi.co.jp/_ct/16935442
※2参照:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44815010V10C19A5000000/?n_cid=SPTMG053
※3参照:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27980720R10C18A3X13000/

 
 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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