真のBPR実現に有効なフレームワークとは何か

最終更新日:2024/02/02
作成日:2019/06/25

 

業務フローの再構築「BPR」。

有効なフレームワークの活用は、事業推進に大きな力を発揮します。今回は有効なフレームワークの代表として、「シックスシグマ」「4C」「ECRS」「SWOT分析」の4つを紹介します。

 

目次

■BPRスタート時に明確にすべきポイント
(1)BPRの特徴は「プロセス自体に問題がある」視点からスタートすること
(2)BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が「業務プロセス改革」と言われる理由

 

■BPRプロジェクトを効率良く進めるための手法とは
(1)戦略を立てるために持つべき視点は、「組織」「人」「システム」の3点
(2)BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という考え方

 

■BPRを推進するために有効なフレームワーク
(1)有効なフレームワークへの理解を深め、BPRを円滑に進める
(2)BPRに有効なフレームワーク「シックスシグマ」
(3)BPRに有効なフレームワーク「4C」
(4)BPRに有効なフレームワーク「ECRS」
(5)BPRに有効なフレームワーク「SWOT分析」

 

■再度注目を集めるBPRフレームワークの「エンタープライズアーキテクチャ」とは
(1)生活やビジネスのグローバル化によって、再度EAに視線を集まっている
(2)経営コンサルティングとなったEA

 

■まとめ

 

 

BPRスタート時に明確にすべきポイント

BPRスタート時に明確にすべきポイント

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、ご存知の通り抜本的な働き方改革を意味します。人員の長時間労働を解消し、ワークライフバランスを整えるために、今多くの企業が働き方改革に取り組み始めています。抜本的な改革は通常の業務改革や業務改善とは一線を画すことになりますので、実施にあたってはあらかじめ戦略を持って取り組む必要があります。

 

そこで戦略に活用すべきなのが、有効な「フレームワーク」です。

 

専門家としてプロジェクトに参加する場合、業務フロー効率化にはあらゆるフレームワークが描けるでしょう。そもそも、業務フローの内容を「改善する」作業ではなく、業務フローそのものを「変える」作業がBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)です。IT化やグローバル化も視野に入れ、人材育成につながる真の働き方改革を推進するために必要なフレームワークとはどんなものなのでしょうか。

 

(1)BPRの特徴は「プロセス自体に問題がある」視点からスタートすること

政府の働き方改革方針と相まって、現在多くの企業が業務改革に取り組んでいます。BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)プロジェクトのスタート時に必要なのは、どこを目指すべきかを明確にすることです。

至極当然のことなのですが、意外にこの当たり前の作業をないがしろにすることでプロジェクトが頓挫することも少なくありません。

 

とてもシンプルに言ってしまえば、BPRは現状の業務フローを再設計することを指します。企業全体の業務を最適化することが最大の目的なのですが、重要なのは業務内容の再構築ではなく、業務フローの再構築だという点です。

そのためには、まず現状の業務フローをすべて正確に洗い出し、その上で「否定」をしなければなりません。

 

この作業に対して現場の抵抗感が非常に強く、結局目的を見失った中途半端なプロジェクトに陥ってしまうケースが多々あるのです。当然業務内容も再構築はしますが、業務フロー自体に手をつけないのはいわゆる業務改善であり、業務改革ではありません。

BPRという言葉はよく理解できなくても、業務改善を知らない人はいないでしょう。それでも効率的な業務が行なえるようにする業務改善とBPRが意味する業務改革とは大きく異なります。

 

簡単に言えば、業務情報の整理をし、二重三重の作業を省いて作業を効率化するのが業務改善であり、現存のプロセスをベースに改善をしていきます。最初にプロセス自体に問題があるという立場からスタートし、今までのプロセスを再構築するのが最大の目的であり、難しい点でもあります。

(2)BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が「業務プロセス改革」と言われる理由

現在日本では、「リエンジニアリング革命」が起こっているとも言われています。

ビジネスプロセス・リエンジニアリングの「リエンジニアリング」という言葉は、業務だけでなく、組織や戦略まで根本的に再構築することを意味します。大規模な業務改善であれば、IT化やグローバル化なども含めて大々的に実施されるケースもありますが、業務プロセス自体に手を入れないなら業務改革ではありません。BPRは、目標達成のために企業活動や組織構造まで再構築するレベルを指します。

 

業務改善は現状を肯定し、劣る部分を是正することが目的ですが、業務改革は現状を否定し、すべての制度を改める姿勢で臨む必要があります。

 

戦略に取り掛かる前にまずこの点を理解し、クライアント企業にも現場にも理解を求めるのが一番の難関でしょう。揺るがぬ骨子ができればIT化やグローバル化などはさして高いハードルではなく、真の働き方改革を実現できる準備は整います。

 

それらを踏まえた上で有効なフレームワークを用い、取り組むべき課題は明確に可視化することが可能となるでしょう。

 

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BPRプロジェクトを効率良く進めるための手法とは

BPRプロジェクトを効率良く進めるための手法とは

(1)戦略を立てるために持つべき視点は、「組織」「人」「システム」の3点

BPRプロジェクトを効率良く進めるためには、まずBPRを実施する対象を明確にさせることが必要です。クライアント企業には、何をどうしたいかを明確にしてもらい、その上で改革のアプローチ戦略を組み立てるのがセオリーとなります。

 

戦略を立てるにあたり持つべき視点には、「組織」「人」「システム」の3点が存在します。組織のグローバル化やシステムのIT化においては、現場がスムーズに適応できるよう、専門家としてフォローも行なわなければなりません。

 

新たなシステムを組織に定着させるためにはマニュアルの導入も必要ですし、マニュアル通りに業務改革を継続する必要があります。残念ながら単発的な業務改革で組織が劇的に変わる事例はほぼあり得ないので、いかに続けさせるかが重要となります。

 

例えば経営の可視化を実現するERPパッケージの導入は、すでに多くの企業が取り組んでいる業務改革の一環です。SAPなどのERP選定は、グローバル化が進む現在、大企業だけでなく中小企業においても検討される事例となってきました。

 

つまり規模を問わずいかなる企業の現場においても、使用者がマニュアルに沿って無理なく継続的にシステムを使い続けられることが重要です。

 

経営陣にとってどれだけ理想的と思われるERP選定を行なったとしても、継続に無理があるならそのERP選定は再考しなければならないことになります。組織と人、システムは切っても切り離せない関係にあり、たとえ他社で導入に成功した活用事例があっても、業種や企業規模によって必要な機能は変わります。

 

多種多様なシステムが続々と登場し導入に迷う経営者は多いですが、専門家が活用事例を踏まえた上でしっかりとアドバイスを行ない、効果のあるBPRを実現する必要があります。

(2)BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という考え方

業務改革を考えるにあたり、グローバル化やIT化と併せてBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が必要とされることが多くなってきました。BPOはグローバルスタンダードなど、企業が置かれた環境が時代とともに大きく変化したことで求められるようになりました。

 

今、各企業が働き方改革と併せて検討すべきことは、社員の人材育成有効な活用法持たざる経営をいかに推進するかです。

 

こうした環境の変化が経営者へより戦略的な外部委託の導入を促し、業務を単体で任せる従来の外部委託形式ではなく、もっと広範囲にさまざまな業務に対応できる外部委託企業を求める結果となっています。

 

BPO業界はこうした背景から成り立ち、今まで単体でサービスを提供していた形式から周辺業務のサービスも請け負う形に変化してきました。財務面だけでなく事業の継続性や経営への集中が可能となる活用事例が多く、働き方改革を進める上でも重要なポイントとなっています。

 

 

BPRを推進するために有効なフレームワーク

BPRを推進するために有効なフレームワーク

(1)有効なフレームワークへの理解を深め、BPRを円滑に進める

前述したように、BPOなどによる業務効率化もBPRの一部です。大規模なIT化やグローバル化など、BPRの対象は企業活動全体の再構築ですので、企業の経営陣が戦略としてBPRを推進しようとしても、社内ではなかなか思うように進まないケースがあります。

 

そのためBPRプロジェクトに参加するのであれば、BPRを円滑に進める上で有効なフレームワークを理解しておく必要があるでしょう。BPRの本質は、何かを改善したり強化したりするのではなく、プロセスを最初からやり直すことです。

 

大胆な業務プロセスの改変が実現した暁には、長時間労働が減り、社員のワークライフバランスが整う環境の再構築も可能でしょう。フレームワークを用いる理由は、情報が整理され、取り組むべき課題や改善点が可視化されるためです。より戦略的にBPRを進めるために非常に有効な手段と言えるでしょう。

(2)BPRに有効なフレームワーク「シックスシグマ」

シックスシグマは、アメリカのモトローラ社が開発したフレームワークです。日本の大手メーカーも導入した実績がありますが、製品の品質を損なうことなく、安定して製造できる業務効率化を実現する手法として知られています。

 

活用事例は生産部門だけでなくサービス部門や管理部門にも多く、業務において無理や無駄の排除に貢献できる有効なフレームワークとされています。そのため製造業だけでなくさまざまな業種への導入が進められています。売上損失額を計算し、改革により利益額がどれだけ増えたか診断する不良品質コスト指標が設けられているのが特徴です。

(3)BPRに有効なフレームワーク「4C」

顧客視点重視のマーケティングフレームワークとして活用事例があります。

もともとは企業視点であった4P理論(Product=製品、Price=価格、Place=流通、Promotion=販促)を発展させたもので、以下のような項目があります。

 

  • Customer Value=顧客から見た価値
  • Customer Cost=顧客が負担する費用
  • Convenience=顧客の利便性
  • Communication=顧客とのコミュニケーション

 

顧客にとって高い価値をいかに提供できるかに主眼を置き、商品やサービスを顧客の理想にすり合わせる手法として効果的です。

 

現状で企業側と顧客側との乖離が認められる場合、劇的な業務改革が成功する期待があるフレームワークです。SCMなどのマネジメント手法と併用することで、製品が顧客の手元に届くまでの企業活動すべてを整えることができます。

(4)BPRに有効なフレームワーク「ECRS」

PDCAサイクルをECRSの原則でチェックし、業務改善するためのフレームワークです。

次の4つのステップで業務プロセスを改善します。

 

  1. Eliminate=不要な業務の排除
  2. Combine=複数の業務を統合
  3. Rearrange=IT化などで業務のやり方を効率化
  4. Simplify=業務の単純化

 

主に作業時間の圧縮につなげやすいため、長時間労働を解消し、ワークライフバランスを整えるために非常に有効なフレームワークと言えます。

(5)BPRに有効なフレームワーク「SWOT分析」

こちらのフレームワークは、現状分析に非常に有効なフレームワークです。

 

現在の経営環境を可視化することが可能で、内部環境と外部環境の両点からアプローチすることができます。内部環境では、Strength=強み、Weakness=弱みを、外部環境ではOpportunity=機会、Threat=脅威を知ることが可能で、誰もが経営環境を客観視することができます。

 

どの部分において業務改革を行なうべきか、戦略を立てるポイントを割り出すことができるでしょう。前述のシックスシグマや4Cは具体的な戦略フレームワークですが、こちらのフレームワークはBPRプロジェクトスタート段階で実施するのが望ましいでしょう。

 

 

再度注目を集めるBPRフレームワークの「エンタープライズアーキテクチャ」とは

再度注目を集めるBPRフレームワークの「エンタープライズアーキテクチャ」とは

(1)生活やビジネスのグローバル化によって、再度EAに視線を集まっている

エンタープライズアーキテクチャ(EA)は、2000年代に世界で脚光を浴びたフレームワークです。ところが20年近く経った現代のIT化時代に、再びEAの活用事例が増えているとアメリカのアナリストが述べています。

 

EAは企業の組織構造や情報システムを4つのレイヤーでモデル化したものですが、これにより現状の情報システムのどこに課題があるかを洗い出し、同時にあるべき姿も明確にすることができます。

 

まさに業務効率化を目指すBPRに適したフレームワークですが、情報システム全体の見取り図が可視化され、IT化の専門家には大いに役立つとされています。ちょうど2000年頃は、世界のあらゆる企業内にさまざまなシステムが乱立し、専門家が頭を悩ませていた時代です。

 

このフレームワークは情報システムの全体像を整理して環境整備し、IT化の戦略立案のガイドになり得ると絶賛されました。

 

その後、形を変えたIT化の波が押し寄せたことで徐々に注目されなくなりましたが、再び関心を集め始めた理由はビジネスとIT化が密な関係になったことに起因すると言われています。

 

すでに世界のビジネスを進化させるためには、デジタルとIT化は必須と言えます。生活のグローバル化はビジネスグローバル化を生み、今また事業と業務、情報などさまざまな要素を効率化する手段としてEAが必然となり始めているのです。

(2)経営コンサルティングとなったEA

複雑化するビジネスとテクノロジーの関係を戦略に生かすためには、EAは非常に有効だと捉えられています。

 

ただし、テクノロジー志向からよりビジネス志向へ位置づけが変わったことが、現在のEAの強みと言えるでしょう。一時ITアーキテクチャだけに走ったEAは終わりを告げ、EAの考え方や概念、取り組みそのものを拡大させたのが現在のEAであり本来の姿です。

 

意義のある進化を遂げたEAは、顧客や関係者の視点からアーキテクチャを検討し、ビジネスをサポートするテクノロジーを整理する経営コンサルタントと変わっています。

 

まとめ

 

フレームワークは、複数の人が思考を整理して正しい判断ができる素晴らしい手法です。BPRや経営戦略に有効とされるフレームワークは他にもたくさんあり、活用事例も多いです。ただし、フレームワークを実施しただけで満足してしまうと、肝心の業務改革が伴わないことになります。

フレームワークは現状の把握や目指す形を導き出すための手法です。宝の持ち腐れとならないよう、可視化したら具体的なアクションを起こし、業務改革を力強く推進しましょう。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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