なぜ今RPAが注目されるのか?業界別成功事例を踏まえて解説

作成日:2019/04/12

 

現在、RPAの活用で業務効率を上げているのはホワイトカラーの企業だけではありません。国の自治体が導入する事例が急増し、ルーティン作業の自動化による労力のカットや業務のスピード化を実現しています。なぜ今それほどまでにRPAに注目が集まっているのでしょうか。金融業界や製造業界などで業務効率アップに大きく貢献したRPAが、今なぜ他の多くの業界でも導入されるようになったのか、その背景と成功事例をご紹介します。

 

 

目次

■なぜRPAが注目されるようになったのか
(1)便利なはずのツールやアプリが労働時間を増やしている?
(2)自動化・効率化の救世主「RPA」
(3)RPA導入で企業はどう変化する

 

■RPAの正しい理解がITソリューションとなり得る
(1)ホワイトカラー業務の自動化を図る「RPA」
(2)RPAとAIの違い
(3)日本の働き方改革に有効

 

■RPA導入による業務改善効果が見込まれる業界・職種とは
(1)柔軟性の高さもメリット
(2)マクロとの大きな違い

 

■RPAを開発提供する企業と導入における成功事例
(1)RPA普及の要因は「クラウド化による初期費用の大幅カット」
(2)金融業界の導入成功事例
(3)製造や流通業界の導入成功事例
(4)営業部署における導入成功事例
(5)地方自治体でもRPA導入が加速

 

■まとめ

 

 

なぜRPAが注目されるようになったのか

なぜRPAが注目されるようになったのか-1

(1)便利なはずのツールやアプリが労働時間を増やしている?

日本では現在、多くの業界が深刻な人手不足の問題を抱えています。もちろん少子高齢化によるところも大きいのですが、実はIT化による業務ツールやアプリケーションの増加も原因の一つに挙げることができます。労力のカットを実現するはずの便利なツールやアプリケーションが、逆に作業量を増やし実労働時間の増加を生み出しているのはなぜなのでしょうか。

 

これはビジネスプロセスにおける問題で、パソコンの普及やITの進化により書類や資料がデータ管理されるようになり、さまざまなツールからのインプットが必要な状況が生まれたことに起因しています。

 

大昔のデスクワークは対象のほとんどがペーパーでしたが、現在のホワイトカラーのデスクワークは日々膨大な数のツール類との格闘に変わったことは事実でしょう。

 

こうしたツールは利便性が高い反面、種類が増えれば増えるほどそれらを統合する必要に迫られ、結局膨大な時間的コストが消費される事態となります。システム的に対応しようにも、デベロッパーがAPIへのオープンアクセスを提供していないような場合には、CSVのエクスポートなど人的に行なう手間は避けられません。

 

結果的に、ツールやアプリが業務効率を上げる反面、業務渋滞の原因にもなり、サービス提供スピードの低下などで顧客満足度にも悪影響を及ぼす悪循環に陥っているのです。とはいえ、今後のビジネスプロセスにおいても、データ管理における各種ツールやアプリケーションの活用はもはや必須とされます。

(2)自動化、効率化の救世主「RPA」

そこでAIによる業務の自動化、コストカットの実現、サービススピードのアップなど、企業の切実なニーズに応えるために注目が集まったのがRPAです。RPAの最大のメリットは、あらゆるツールの垣根を越えて統合と自動化を実現できることです。

 

個別に運用されているビジネスツールの多くはAIなど複雑な人工知能は搭載されず、単純なロジックで構成されています。そこにRPAを導入することで単純作業を効率化し、人は生産性の高い業務に時間を割くことが可能となるのが一番のメリットです。

 

以前は多くの企業が定型作業のスピードアップを図るために、アウトソーシングを選択していました。今後はRPAの導入により単純な定型作業を自動化し、自社内でのスピードアップとコストカットを実現する動きが活発化するでしょう。

(3)RPA導入で企業はどう変化する

RPA導入後は、ほとんどの企業でホワイトカラーの業務効率アップを実現できるでしょう。

 

特にレガシーシステムと呼ばれる旧来のコンピュータシステムを導入している企業であれば、コスト削減効果や業務改善効果は歴然なはずです。レガシーシステムでは、RPAで自動化できる作業を手動で行なっている実態があります。

 

何より業務効率化を実現できる期待が大きいですし、作業時間カットや業務改善、業務自動化などさまざまなメリットを得られるでしょう。また銀行や金融サービス業界など業務の大部分がバックオフィスにある場合は、業務改善や改革成功事例が数多くあります。

 

アメリカのMcKinsey&Company社は2017年の自動化レポートで、レガシーシステム利用企業と金融サービス業界の43%が有効な自動化可能と発表しました。確かに業務の9割がデータ入力と処理とも言える業界なら、ロボット化による恩恵を多く受けることは間違いないでしょう。

 

更に銀行や金融サービス業界では頻繫に規制が変更されますが、RPAはそうした点でも柔軟に対応できることが大きなメリットと言えます。

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RPAの正しい理解がITソリューションとなり得る

RPAの正しい理解がITソリューションとなり得る_2

(1)ホワイトカラー業務の自動化を図る「RPA」

RPA(Robotic Process Automation :ロボティクスプロセスオートメーション)は、ロボットによる業務自動化の取り組みです。

 

デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれますが、AIが反復によって学ぶ機械学習技術を応用したもので、主にバックオフィスでのホワイトカラーの業務自動化を実現します。

 

日本で注目されるようになったのは、政府が推進している働き方改革が発端でしょう。従業員の定型作業時間のカットにより働き方を改革し、同時に企業のコスト削減を実現するITソリューションと言えます。

 

一番のメリットは、人が行なう処理手順を登録するだけでさまざまなツールやアプリケーションを横断して処理が可能となる点です。製造工場のライン業務などではすでにITロボットの活用は当たり前の状況ですが、その範囲をホワイトカラー業務にまで拡大することで、業務自動化と運用自動化を図ることが目的です。

(2)RPAとAIの違い

ただし、自動化という名においてRPAとAIが同一視されるのは少々問題があります。AIは人工知能ですから、何かを自動処理させたい場合、システムが都度判断することが可能です。人工知能は自己が蓄積した内部データを持ち、判断が必要な場合、都度それらを参照しながら答えを導き出します。

 

RPAは人工知能ではありませんので、あらかじめ人の手によって処理フローをすべて定義しておく必要があります。これをルールベースの自動化と言い、AIは判断ベースの自動化となります。AIは機械学習を行なうため、その技術の応用でRPAが開発されました。

 

現在ビジネスの現場で導入事例が急増しているのはRPAであり、運用自動化が実現しているケースであっても、AIとは異なるシステムであることは理解しておく必要があります。なぜならRPAには、現場でRPAに指示を与える担当者が必要となるからです。

 

最終的に目指すのは運用自動化ですが、そのベースとなるルールを策定し、RPAに指示を与えるのは業務に精通した「人」である必要があります。

(3)日本の働き方改革に有効

日本は世界でも類を見ない超高齢化社会を迎えています。総人口が減り、15歳から65歳未満の生産年齢人口は、1990年代をピークとして減少が続いていることは周知の事実でしょう。

 

この生産年齢人口をカバーする一端で推進されているのが働き方改革です。未就業者の就業支援、外国人労働者の受け入れと並行して注目を集めたのがRPAの導入です。人の補助をするITロボットの導入は製造業界ではすでに珍しいことではありませんが、RPAは従来人間にしかできないと思われていた仕事もロボットに代行させる技術です。

 

世界的にも政府レベルでRPAの導入が推進されつつありますが、日本の経済産業省もRPAの本格導入を明らかにしました。代替機能がないから人がやるしかなかった単純作業や事務処理をロボットが代行することで、真の働き方改革が実現される期待が高まっています。

 

 

RPA導入による業務改善効果が見込まれる業界と職種とは

RPA導入による業務改善効果が見込まれる業界・職種とは_3

(1)柔軟性の高さもメリット

RPAは経理会計や書類関係の作業が多い金融業界や人事採用部署など、単純作業でありながら些細なミスも許されない事務業務が多く残る業界と職種で、多大な業務改善効果が期待できます。作業時間カットにより捻出したマンパワーをよりクリエイティブな業務に充てることで、従業員のキャリアアップにつなげるのがトレンドです。

 

また、RPAの強みは処理スピードが圧倒的に速い上に、ミスを起こさずに長時間働き続けられることです。日ごとに業務内容が変化しても指示を書き換えれば対応可能なため、アプリケーションよりずっと柔軟性が高いのが大きなメリットでしょう。

 

特にコンタクトセンターなど顧客への対応を専門に行なう部署ではスピードが顧客満足度に直結するため、RPA導入には大きな期待があります。一般的にRPA1体の仕事量は人間2~5人分に相当すると言われますので、ロボットの動きを監視、監督する担当者を置くだけで業務を大幅にスピードアップし、企業価値を高めることができるでしょう。

 

ちなみに操作を覚える必要はありますが、RPA指示を与えるのにプログラミングの知識は必要ありませんので、プログラミング(未経験)でも可能です。

(2)マクロとの大きな違い

表計算ソフトウェアに見られるマクロとRPAとの大きな違いは、APIを用意していなくても他のソフトウェアを自動で操作できる点です。

 

たとえば、人間がwebサイトを見て、必要な情報を保存し、必要部署にメールで送るといった複雑な一連の作業もRPAが行なってくれます。処理手順を操作画面から登録すれば、RPAはさまざまなアプリケーションを横断して指示通りの仕事を実行します。

 

ロボットと言ってもソフトウェアなので実体はありませんが、人が行なう作業を代行することができて、圧倒的な能力を持ちながらルール変更にも柔軟に対応できるのが特徴です。企業によっては一緒に仕事をする「同僚」として愛称を付け、仲間として迎えるというユニークな試みもあるようです。

 

 

RPAを開発提供する企業と導入における成功事例

RPAを開発提供する企業と導入における成功事例_4

(1)RPA普及の要因は「クラウド化による初期費用の大幅カット」

RPAを開発提供している企業も急増しています。BizteXのcobITNTTデータのWinActorUiPath RPAなどが有名ですが、2018年7月にはソフトバンクとfreeeが共同で会計や人事、労務分野におけるRPAの共同開発を発表しました。

 

このようにRPAが普及を見せる要因の一つは、RPAが有効なソリューションであると同時に、クラウド化による初期費用の大幅カットが実現されたことも挙げられるでしょう。

 

SaaSのように必要な機能を必要な分だけ利用できる提供形態も増えており、インターネット経由でコストを抑えた導入も可能になりつつあります。SEPGによる組織プロセスの可視化や定義付け、運用支援などを行なう企業も増えており、運用を形骸化させない取り組みを強化することで成功につなげています。

(2)金融業界の導入成功事例

金融業界で非常に多い要望が、ローン受付業務における処理作業の効率化です。処理に時間がかかればローン審査のスピード遅延につながるため、結果的に顧客満足度に影響するのが課題でした。

 

RPA導入により審査スピードを速め、融資までの時間を短縮させるのが狙いです。導入事例では、受付担当が重要項目のみ入力してチェックを行ない、審査担当が審査業務に注力できることで審査スピードを30%以上短縮することに成功しています。

 

また、人為ミスや抜けが無くなり精度が上がったことや、本来の業務に専念できることで顧客サービスの向上にもつながったことが成果と言えます。他にも管理部門において各部門からの報告メールの回収、添付ファイルの展開とコピー&ペースト、集計まですべてRPAで自動化することで、大幅に業務効率を上げています。

(3)製造や流通業界の導入成功事例

製造業界では売上計上納品書作成業務でRPAが大いに活用できます。担当者がシステムに入力するため都度データをダウンロードし、複数のシステムに情報を入力してPDF化するなどの煩雑な手間がすべて自動化できます。

 

例えば受領書を受け取った担当がデータをアップロードした後は、売上計上から販売見込台帳への入力、納品書の作成とPDFファイルのアップロードまですべて自動化が可能です。

 

また、流通業界では経理部門業務において消し込み作業が発生しますが、それらをすべて自動化することで作業時間を大幅に削減することが可能です。

 

とある流通企業の経理部門では、毎日100件を超える自社製品の入金情報を元に、自社の会計システムに1件ずつ手入力で消し込み作業を行なっていたそうです。ミスが許されない中大きな負担を強いられていましたが、全てを自動化にすることでスキルを活かした他の業務に注力できるようになりました。

(4)営業部署における導入成功事例

営業部署でRPAが大いに活用できるのがコールセンター業務です。顧客からの電話問い合わせの際、複数のアプリケーションを立ち上げて必要な情報を探し出したり、それぞれ入力したりする手間を強いられる場合もあります。オペレータの作業負担が大きくなると、肝心な顧客サービスがおろそかになる事態が考えられます。

 

電話対応時にリアルタイムで情報入力することはほぼ不可能なため、メモを取って電話終了後に手入力を行なうケースも多く見受けられます。RPAなら複数のアプリケーションから随時必要な情報を抽出して表示することが可能なため、オペレータはリアルタイムで顧客情報や応対履歴を入力することが可能になります。サービスの向上は企業の信頼度の向上にもつながるため、非常に大きな成果と言えるでしょう。

(5)地方自治体でもRPA導入が加速

民間企業に遅れる形になりますが、地方自治体におけるRPAの活用事例が急増しつつあります。職員の手当の認定業務や災害時の職員配備計画の作成、国民健康保険の納税動産業務や課税説明業務、源泉徴収管理システムなど、各自治体が導入やテストに踏み切る事例が増えています。

 

中央省庁でも導入が進められており、総務省もRPA業務自動化ソリューションの導入を決定し、2019年1月から稼働を始めたばかりです。今後大量の入力処理やルーティンワークを多く抱える公共・公益業界での導入事例は、一段と加速して行くと予想されます。

 

まとめ

RPAの導入事例を紹介して来ましたが、あらゆる企業だけでなく中央省庁や自治体、公益業界でも導入は増えつつあります。なぜなら定型化した単純作業をロボットで自動化することは、人の労働負担を減らして業務効率を上げ、よりクリエイティブな業務に注力できることに直結するからです。

 

少子高齢化により人手不足になっていることも事実ですが、RPAの活用は意義のある働き方改革につながるでしょう。コスト削減効果のみならず、日本の産業界を大きく変える可能性のあるRPAに今大いに注目が集まっています。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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