【 RPAとは 】導入するとどう変わる?事例と注意点

最新更新日:2024/01/30
作成日:2018/02/16

日本でも急速に導入が進んでいるRPA。

RPAとは、ルーティン業務をロボットに行わせることで業務効率化を目指すものです。深刻化する人手不足に対応できる技術として日本でも利用が広がっていて、2022年時点で「日本国内における大企業の約半数がRPAを導入済み」というデータもあります(※)。

 

一方で年商50億円以下の中小企業の場合、RPAの導入率は12%に留まっており、企業規模によって大きな差がある状況となっています。これからRPAを導入する場合、「コストに見合う効果が出るかわからない」「社内にRPAを導入できるような人材がいない」といった懸念を持つ経営者の方も多いかもしれません。また「RPAが流行っているのは日本だけでは?」「他のツールもある中で、これからRPAを導入して時代遅れにならないか?」といった声も聞かれます。

ここでは日本のRPA事情や事例とあわせ、RPA導入に失敗しないための注意点について解説します。

※出典:https://it-trend.jp/rpa_tool/article/502-0021

 

目次

■RPAとは?日本の現状と期待できる効果
(1)RPAは労働生産性を向上させる
(2)RPAとAIの違いとは?
(3)RPAが流行しているのは日本だけ?

 

■ RPAの導入事例
(1)金融機関に導入されたRPAの導入事例
(2)コールセンターに導入されたRPAの導入事例
(3)大手メーカーに導入されたRPAの導入事例

 

■RPAは意味がない?失敗しないための注意点
(1)業務のフローやタスクを棚卸しする
(2)RPA導入コストに見合う業務かどうかを判断する
(3)紙を使った業務では、まずデジタル対応が必要
(4)セミナーなどでRPAに関する情報を収集する

 

■RPA導入によって、柔軟な働き方を実現できる可能性も

 

■まとめ

 

 

RPAとは?日本の現状と期待できる効果


RPA

(1)RPAは労働生産性を向上させる

人手不足を起因とした業務効率化の必要性や、リモートワークなど働き方が多様化する中で注目されているのが「RPA(Robotic Process Automation)」です。RPAとは、ホワイトカラーと呼ばれる人々が従来人の手で行っていた事務作業を、パソコンやソフトウェア型のロボットが代行する技術のことです。

 

RPAを活用すれば、人間の作業的な労働時間を削減できます。作業労働時間が短縮できれば、その時間をルーティンワークではない、より高度な仕事にあてることが可能です。

 

労働生産性を上げたい、時間を短縮したいという考えは、意欲的に働いているビジネスパーソンであれば誰もが持っていることですが、自動化ツールを使うことで、より高い次元で実現させようという試み。その手段の一つがRPAの活用というわけです。

 

RPAで業務自動化を担うのは「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」「仮想ロボット」などとも呼ばれるソフトウェア。自動化できる事務作業は、現在のところデータ入力や確認などのパソコンを使った定型的なルーティンワークがメインです。

 

あらかじめ設定されたルールにしたがってロボット(ソフトウェア)が作業を進める方式が主流ですが、これだけでもRPAが役立つ職場は多いでしょう。

 

現在ではさまざまな分野で活用され始め、金融や流通、小売、インフラ、製造、不動産、自治体まで多方面で業務自動化を拡大して活用され始めています。現在の労働環境によっては、ロボットの導入により労働環境が劇的に変化することもあるでしょう。また、RPAでの業務自動化によって、人材不足の悩みも解消されるのではないかと期待されています。

(2)RPAとAIの違いとは?

ここまでの内容から「AIとは何が違うの?」と感じた人も多いかと思います。AIもさまざまな業務を支援する役立つツールとして注目度の高いツールですが、AIとRPAには決定的に違う部分があります。

 

それは、AIは自らの思考を成長させながら我々の業務を支援してくれるツールであるのに対して、RPAの支援方法はあくまで単一的なものであるという点です。

ご存知かもしれませんが、AIは最初にプログラムを組んだ後も自分で学び続けます。しかし、RPAは最初の制約をあくまで忠実に守ろうとするものであり、決められたルールに対して高い精度を発揮します。

発展性の面で役立つという視点ではAIに軍配が上がるのかもしれませんが、AIの導入には多大なコストがかかるため、RPAによる支援で十分と考えられるケースも多いのです。同じITを活用した支援であっても、多くの企業にとってRPAはAIよりも現実的な活用方法になりえるのです。

(3)RPAが流行しているのは日本だけ?

世界の中でも、RPA導入に積極的と言われる日本。RPA世界市場の約25%は日本と言われています。一般的なグローバル製品の日本市場比率はおよそ5%~10%となっており、RPAは特に日本の占める比率が高いという見方もできます。

 

こうした情報から「RPAはすでに海外ではトレンドではなく、人気なのは日本だけでは?」という声も聞かれます。しかし実際には、海外でもRPAは広く利用されています。

 

RPAツール大手であるアメリカのUiPath社が2023年に行った調査(※)によると、RPAなどのビジネスオートメーションの利用率は、アメリカなど8カ国の中で日本は最下位。日本では業務効率化ツールの利用においては、海外よりも進んでいない状況が浮き彫りになりました。

 

つまり日本だけが特にRPAの人気が高いわけではなく、世界的にもRPAの導入や利用が進んでいると言えます。

※出典:https://www.uipath.com/ja/newsroom/uipath-unveils-automation-generation-report

 

RPAの導入事例

男性の腕

 

RPAは、「ロボット」「IoT(Internet of Things)」「人工知能(AI)」といったテクノロジーと並んで、高い関心を集めているもののひとつです。評価されているポイントは、RPAの導入によって働き方改革や生産性向上の高い効果が期待できるという点。RPAを使って事務作業を自動化することで作業時間を8割短縮できたといった事例もあるように、さまざまな企業にとって役立つ存在になるであろうと期待されています。

(1)金融機関に導入されたRPAの導入事例

RPAは、当初は欧米の金融機関で導入機運が高まったという経緯もあり、日本でも保険会社をはじめとする金融機関で導入が進みました。

たとえば、三菱UFJ銀行 では、パイロットプロジェクトとして住宅ローンに関連する保険加入書の点検業務をRPAで自動化。これによって2,500時間の作業時間削減が確認され、本格展開に移行しています。

その三菱UFJ銀行を擁する三菱UFJフィナンシャル・グループとしても、RPAを中心とした自動化やデジタル技術の導入を通じて、オフィスワークの効率化を本格的に促進し、9,500人相当の労働量の削減を目指すとしています。

※出典:
https://japan.zdnet.com/article/35105558/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21318490Q7A920C1000000/

(2)コールセンターに導入されたRPAの導入事例

コールセンターの受付過程で生じる顧客ステータスの確認や変更作業をRPAの活用で自動化することによって、処理速度を大幅に向上した導入事例もあります。これまではオペレーター本人、もしくはオペレーターを補助する立場の人間が手動で行っていた作業を、RPAを導入したことによって大幅な時間短縮に成功することができました。

一度の案件で短縮できる時間はわずかかもしれませんが、何百何千という案件をこなしていけば、トータル的に短縮できる時間は莫大なものとなります。RPAの導入によってオペレーターの処遇は確実に変化したと考えられるでしょう。

(3)大手メーカーに導入されたRPAの導入事例

RPAは、食品などを主に扱う大手メーカーでも導入され始めています。今までは情報管理をすべて手作業で行っていましたが、RPAの導入によって情報入力が自動化され、高効率化を実現しているようです。

また、あるメーカーでは卸業者との取引記録にRPAを利用したところ、これまでスタッフが4人がかりで5日かけていた作業がほぼゼロになったとのこと。この作業が毎月行われていたと考えれば、どれだけ多くの時間を他の作業に回せるのでしょうか。あくまでも業種によりますがRPAが役立つことを実際に証明した一例です。

 

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RPAは意味がない?失敗しないための注意点

男女が並び頬杖を突く

 

RPA導入によってルーティン業務が自動化されるようになると、大幅な労働時間削減が見込めるため、頭脳労働者が本来行うべき仕事に専念しやすくなります。今後はコンサルタントが企業に労働環境の改善や人材不足の悩みの解消のためにアドバイスをする際、RPAの導入を検討する機会も増えてくるかもしれません。

 

ただし、やみくもにRPAを導入しても、効果は期待できません。ここではRPA導入時におさえておきたい注意点をまとめました。

(1) 業務のフローやタスクを棚卸しする

RPA導入前には一度大掛かり全面的な業務の棚卸をする必要があります。その理由は、主に2つあります。

 

・RPAに向く業務と向かない業務がある

RPAはロボットによる自動化のため、データ入力といったルーティン業務が向いています。また大量のデータをもとに一定の法則で分析するといった業務もRPAにしやすいでしょう。一方で定型化されておらず、その都度人による判断が必要な業務となると、RPAには不向きです。

最近ではAIを組み込むことで自動的に判断を行うRPAも登場していますが、その場合もどのようなルールで判断するかを明確にする必要があります。あらゆる業務をRPAにするという前提ではなく、業務を洗い出したうえで精査し、RPAに向いているかを検討することが大切です。

 

・可視化されていない業務があると、RPA化は難しい

実際には、属人化していて「具体的にどんな作業をしているか担当者しかわからない」という業務も多いのではないでしょうか。当然ながら、こうした業務があると、RPAの導入は困難です。RPAを導入する前に、全ての業務のタスクとフローを棚卸しして、誰がどんな業務を担っているかを可視化することが必要です。

(2)RPA導入コストに見合う業務かどうかを判断する

業務時間のボリュームがそれほど多くない事務作業。この作業を自動化しても、費用対効果は大きくなりません。

当然ながら、RPAの導入にはコストがかかります。金銭コストでいえば初期費用やランニングコストがかかりますし、RPAが作業を代行できるようにロボットを設定するという労働コストも発生します。そうしたコストに対して、どのくらいの効果が見込 めるものなのかという点は、あらかじめ検討しておく必要があるでしょう。地方中小企業の場合、導入コストが高額過ぎて割に合わないということも考えられます。

 

加えて、ロボットの自動化がどの程度可能になるかといった点も確認が必要です。既存のシステムは人が扱う前提で作られていることがほとんどでしょう。人間であれば何気なく行える操作でも、ひとつひとつの設定が必要なロボットに任せるとなると、意外と時間がかかったり細かい操作のルール化が難しかったりすることもあり得ます。

(3)紙を使った業務では、まずデジタル対応が必要

ビジネスに関するデータがいまだに紙である企業も少なくありません。特に中小企業では、紙が主流というケースも珍しくはないのではないでしょうか。デジタルデータではなく紙を使った作業が多い業務の場合、RPAが受け取れるようにするには、まずデジタル化の作業が生じます。こうした変換作業には、相当の時間と手間がかかることを認識しておきましょう。

(4)セミナーなどでRPAに関する情報を収集する

RPAがどのようなものなのか、想像しづらいという方も多いかもしれません。こういう場合は、実際に体験してみるのが一番です。全国各地で行われているセミナーでは、ITに関する役立つ情報を聞きながら実際にRPAを体験できるものもあります。

 

おすすめは、5人~10人程度の小規模セミナー。このくらいの人数ならばセミナー講師から役立つ情報や活用方法などを直接聞きやすいでしょう。講師とのエンゲージメントを図りやすいので、セミナー以降も貴重な情報を確保しやすくなります。セミナーはRPAの開発や支援を有料で発注してもらうことを目的している場合が多く、セミナー参加費は無料のところも多いようです。そういったさまざまなセミナーを上手に活用しましょう。

 

RPA導入によって、柔軟な働き方を実現できる可能性も

腕を組む男女

 

2019年からスタートした「働き方改革」。人手不足が深刻化する中、あらゆる企業が長時間労働を減らし、多様な働き方を受け入れる働き方改革が求められています。

コロナ禍以降はさまざまな観点からリモートワークの導入も珍しくなくなりましたが、RPA導入によってさらにリモートワークを促進できるという効果にも注目が集まっています。

一方でセキュリティ上の理由などで、リモートワークで対応できない業務もあります。こうした業務をRPAによって自動化できれば、出社を余儀なくされていた社員もリモートワークが可能になります。つまりRPAによってさらに柔軟な働き方が促進され、労働環境の改善につながる効果が期待できるというわけです。

 

柔軟な働き方の推進は社員側のメリットだけではありません。企業にとっても「子育てや介護を担う社員の離職防止策になる」「人材の居住地にこだわらず、幅広く採用できる」といったメリットもあります。

 

まとめ

ルーティン業務をロボットによって自動化させ、業務効率化やコスト削減が見込めるRPA。従来ルーティン業務を担っていた時間をより高度な業務に回すことができるため、生産性を上げて売上アップにつながる効果も期待できます。

海外でもRPA導入は進んでいますが、特に人手不足が深刻となっている日本では、今後もRPAへのニーズは高い状態が続くでしょう。大企業だけではなく、中小企業にも広がることが予想されます。

ただしRPAを導入して効果を上げるには、日本企業に多く見られる「紙に依存している」「属人化している業務が多い」といった課題をクリアにしなければなりません。そのためにも業務の棚卸をしっかり行った上で、どの業務にどのようなシステムを採用すべきかを判断する必要があります。

つまりRPA導入で失敗しないためには、こうした準備段階から専門家に協力を仰ぎ、プロジェクトを推進することが求められます。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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