フリーランス保護新法はいつから施行?下請法との違いもわかりやすく解説

最終更新日:2024/10/09
作成日:2024/02/19

  • 「フリーランス保護新法って何?いつから始まるの?」
  • 「下請法とは何が違う?」

という疑問をお持ちではありませんか?

 

本記事では、そんな疑問の解決に役立つ内容を

  • フリーランス保護新法の内容
  • フリーランスガイドラインについて
  • フリーランス保護新法の対象、違反に伴う罰則

の順に解説します。

 

フリーランスとして活動する上で気になる、クライアントとのトラブル対策。ぜひ本コラムをお役立てください。

 

目次

■フリーランス保護新法とは?
フリーランス保護新法の施行日は2024年11月1日
フリーランス保護新法整備までの背景

 

■フリーランスガイドラインとは?
(1)フリーランス保護新法と下請法の違い
(2)労働関係法令との関係性

 

■フリーランス保護新法の対象
(1)フリーランスの定義
(2)対象の取引

 

■フリーランス保護新法の概要をわかりやすく解説
(1)書面の作成
(2)支払い期日
(3)募集情報
(4)ハラスメント対策
(5)禁止事項の遵守

 

■フリーランス保護新法の違反に伴う罰則

 

■まとめ

 

フリーランス保護新法とは?

重ねた本

 

フリーランス保護新法とは「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の通称です。

 

フリーランス新法やフリーランス保護法と呼ばれることもあります。
この法律はフリーランスとして安心して働ける環境の整備のために策定され、2023年4月28日に国会で可決・成立、5月12日に公布されました。

 

フリーランスと発注事業者間の取引適正化、およびフリーランスの就業環境整備を主な目的としています。

フリーランス保護新法の施行日は2024年11月1日

フリーランス保護新法の施行日に関しては、公布から1年6ヶ月以内、つまり2024年秋頃までに施行される予定でしたが、正確な施行日が2024年11月1日と決定されました。

フリーランス保護新法整備までの背景

フリーランス保護新法整備までの背景には、近年における働き方の多様化や、フリーランスのトラブルの増加が関係しています。

 

フリーランスとしての働き方が普及している現代では、フリーランス・発注事業者間のトラブルが多発していることも事実です。

フリーランスとして業務委託を受ける際は、取引を行う発注事業者よりも弱い立場に置かれてしまうケースも少なくありません。

 

発注事業者の多くは企業など組織単位である一方、フリーランスは個人で仕事を受注します。

それにより報酬面などの条件の交渉力等が劣ることもあり、「成果物への報酬未払い」「不当な契約解除」などのトラブルが起きやすいのです。

実際、厚生労働省や中小企業庁、公正取引委員会が設置している相談窓口「フリーランス・トラブル110番」では報酬の支払いに関する相談が多く寄せられています。

 

また、実態調査によるとフリーランスの約4割が支払遅延や報酬未払いなどのトラブルを経験していることがわかっています。そもそも発注書を受領しないまま仕事を受注しているフリーランスもいるようです。

 

こういった状況を踏まえて、国会ではフリーランスと発注事業者の業務委託に係る取引におけるルールとしてフリーランス保護新法を可決し、成立・公布に至りました。

今後フリーランス保護新法の施行により、フリーランスとして働く個人が安心して業務に取り組める環境の整備が期待されています。

 

フリーランスガイドラインとは?

フリーランスの積み木

 

フリーランス保護新法の制定にあたり、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省は2021年3月に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(フリーランスガイドライン)を策定しました。

 

フリーランスガイドラインでは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、独占禁止法)や下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)、労働関係法令との適用関係を示しています。

 

また、このガイドラインは、独占禁止法や下請法などの法令に基づくフリーランス・発注事業者間の問題・トラブルについて明確化した上で、フリーランスとして安心して働ける環境を整備する目的もあります。

(1)フリーランス保護新法と下請法の違い

フリーランス保護新法と下請法は、規制対象になる事業者が異なります。

まず、下請法で規制対象となるのは、資本金が3億円超、もしくは1,000万円超3億円以下の親事業者です。

つまり資本金が1,000万円以下の事業者は下請法の規制対象になりません。

 

フリーランスに業務委託を行う発注事業者の多くは資本金が1,000万円以下であり、トラブルが発生した際も下請法を適用できない点が問題でした。

 

一方、フリーランス保護新法ではすべての事業者が規制対象となるため、親事業者の資本金にかかわらず適用可能です。

 

フリーランス保護新法が施行されれば、より多くのフリーランスと発注事業者間の問題・トラブルの解決につながるはずです。

(2)労働関係法令との関係性

フリーランスガイドラインでは、労働関係法令との適用関係について、以下のように明記されています。

 

フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用される。

引用:内閣官房 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省|フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(P2)

 

通常フリーランスは発注事業者と雇用関係を結ばずに仕事を受注するため、労働関係法令の適用対象外です。

 

しかしガイドライン上では、フリーランスでも実質発注事業者に従事しており、現行法上の「雇用」に該当すると判断されれば、労働関係法令の適用ができると定めています。

具体的な考え方について以下に記載します。

 

フリーランス保護新法の対象

重ねた本とパソコン

 

フリーランス保護新法は、下請法のように資本金の条件なくすべてのフリーランスに適用できます。

しかし「そもそもフリーランスの定義は?」「具体的にどのような取引が対象なの?」と疑問に思う人もいるでしょう。

本章ではフリーランス保護新法における「フリーランス」の定義や、具体的な取引の例を紹介します。

(1)フリーランスの定義

ガイドライン上の「フリーランス」の定義は以下のとおりです。

 

本ガイドラインにおける「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指すこととする。

引用:内閣官房 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省|フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(P2)

 

「実店舗」とはあくまで専用の事務所や店舗を指します。自宅の一部や共有型のコワーキングスペース、あるいはネット上の店舗は「実店舗」としません。

 

また「雇人なし」は、自分ひとり、あるいは自分と同居の親族のみで個人事業をしている状況です。

この定義を満たす「フリーランス」であれば、業務委託契約だけでなく、消費者へ物品・サービスの販売を行う人も適用対象です。

 

一般的には実店舗を持つ人や従業員を雇用して事業を営んでいる人もフリーランスと呼ぶことがありますが、ガイドライン上定義からは除外されるため注意しましょう。

(2)対象の取引

フリーランス保護新法の適用対象となるのは、フリーランスと発注事業者間の「業務委託」にかかる事業者間取引です。

 

フリーランス保護新法における「業務委託」の定義は以下のとおりです。

 

3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。

一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること。

二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。

引用:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護新法)

 

フリーランスの定義を満たす事業者であっても、業務委託以外の取引は適用対象外である点を理解しておきましょう。

 

フリーランス保護新法の概要をわかりやすく解説

電話をする母親と子ども

 

「フリーランス保護新法が施行されるとどうなるの?」「適用になるのはどんな場面?」と気になる人も多いでしょう。

 

本章ではフリーランス保護新法の内容やポイントを解説します。

この法律の施行により、発注事業者の企業が求められるフリーランスへの対応も紹介します。

(1)書面の作成

発注事業者がフリーランスに業務委託を行う際は、必ず書面やメール等で取引条件を明示することが求められます。

 

従来、業務委託契約は書面を作成しなくても成立するものでした。

しかしフリーランス保護新法の施行により、発注事業者はフリーランスへ以下のような条件を明示することが義務付けられます。

  • ・委託する業務の内容
  • ・報酬額
  • ・支払期日 など

 

書類、メール、チャットなど形に残るもので業務委託の契約内容を確認できれば、発注事業者とフリーランスの認識の違いを防止できます。

 

「契約時はこういう約束だったはずだ」「聞いていた話と違う」といったトラブルも回避できるでしょう。

(2)支払い期日

フリーランス保護新法では、発注事業者がフリーランスへ報酬を支払う期日についても義務づけています。

発注事業者は成果物等が納品された日から数えて60日以内に報酬の支払期日を設定し、期日までに支払う必要があります。

 

もともと下請法には「60日ルール」としてこのような支払期日が定められていました。

しかしフリーランス保護新法の施行により、下請法適用外の事業者も「60日ルール」と同じように報酬の支払期日設定と期日内の支払いが求められます。

 

発注事業者へ報酬の支払期日設定を法的に義務付けることで、フリーランスの報酬における不当な支払いの先延ばしや未払いを防止できるでしょう。

万が一報酬が支払われないなどトラブルに発展した場合も、フリーランス側が法的手段をとることができます。

(3)募集情報

フリーランス保護新法の施行後、発注事業者がインターネット等にフリーランスの業務委託案件の情報を掲載する際は、以下のルールを遵守する必要があります。

  • ・虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならないこと
  • ・内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと

 

近年はクラウドソーシングサイトや求人サイトなどでフリーランスの業務委託の募集をかける企業も多くあります。

しかし募集の記載内容と実際の契約内容が異なるトラブルが多発しているため、フリーランス保護新法で規制対象となりました。

 

募集期間中に契約内容の変更が変わった場合は、すみやかに記載情報の更新をする必要があります。

そのため、発注事業者側は「虚偽ではなく昔の情報のままだった」といった弁解をしても、法律違反とみなされる可能性があります。

(4)ハラスメント対策

フリーランス保護新法では、発注事業者側にハラスメント行為に対する対策が義務付けられます。

 

近年は「パワーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」などが問題になることが多く、相談窓口の設置など対策を強化している企業が増えています。

フリーランス保護新法施行後は、社員だけでなく業務委託先のフリーランスに対してもハラスメント対策が必要です。

 

取引中のフリーランスもハラスメントの相談窓口が使えるよう整備する、被害時の相談先や担当者を契約時に伝えるなどの対応が必要です。

(5)禁止事項の遵守

フリーランス保護新法上では、発注事業者がフリーランスへ継続的業務委託をした場合に、法律に定める行為をしてはならないとされています。

 

具体的には、納品・成果物に対する不当な受領拒否や返品、やり直しの強制、報酬の減額、買いたたきなどです。

個人であるフリーランスと企業・組織である発注事業者の間では、交渉力や立場の差を利用したトラブルが多くあります。

 

フリーランス保護新法によって発注事業者の不正を規制し、フリーランスの就業環境を整備することが期待されています。

 

フリーランス保護新法の違反に伴う罰則

頭を抱えるサラリーマン

 

フリーランス保護新法の第5章(第24、25条)によれば、公正取引委員会や中小企業庁長官、および厚生労働大臣は、業務委託を行う発注事業者の違反行為に対して、以下の権利を持っています。

  • ・助言
  • ・指導
  • ・報告徴収・立入検査
  • ・勧告
  • ・公表
  • ・命令

 

発注事業者がこれらの立入検査の拒否や命令違反をした場合は、50万円以下の罰金が科せられます。

また、違反行為をしたのが法人である場合、違反者個人と法人の両方が罰せられる「法人両罰」規定もあります。

 

まとめ

フリーランス保護新法とは、フリーランスが安心して働ける環境の整備を目的に策定された新しい法律です。

2023年4月28日に国会で可決・成立、5月12日に公布されており、2024年11月1日に施行されます。

フリーランス保護新法の施行により、業務委託におけるルールが厳格化され、フリーランスがより安心して働ける環境が整備されていくでしょう。

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(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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