SAPコンサルタントの仕事はフリーランスという働き方とも相性がいい

最終更新日:2023/06/09
作成日:2019/01/29

 

クライアント企業の課題解決を「IT技術」の観点からサポートし、IT・WEBシステムの導入・開発プロジェクトを支援するコンサルである「ITコンサルタント」。その一種ともいえるSAPコンサルタントの仕事は、SAPの製品に特化したコンサルであり、独立したフリーコンサルタントが活躍することも多くフリーランスという働き方とも相性がいいといわれます。

では、その仕事内容や案件情報などについて見ていきましょう。

目次

■フリーランスとも相性がいいSAPコンサルタントの仕事
(1)SAP R/3の後継製品としてリリースされた「SAP S/4 HANA」
(2)SAPコンサルタントの役割は、ハードルの高い基幹システムの導入支援

 

■SAPコンサルタントに求められるスキルと案件例
(1)<基本リモート>SAP導入におけるユーザー側サポート支援 ※管理会計領域
(2)<稼働率50%~/基本リモート>SAPやERP導入等のプロジェクトマネジメント支援

 

■世界最大級のソフトウェアベンダーSAP
(1)ERP分野で圧倒的なシェア「SAP」
(2)「クラウドERP」が転機に。時代に合わせ展開を図ってきたSAP

 

■SAPコンサルタントの将来性はフリーランスなら要注目
(1)すそ野が広がる「SAPの導入」は、注目すべき開拓価値のある市場

 

■まとめ

 

 

フリーランスとも相性がいいSAPコンサルタントの仕事

SAPコンサルタントの仕事

(1)SAP R/3の後継製品としてリリースされた「SAP S/4 HANA」

SAPが提供するERPシステムの代表製品は、クライアント/サーバーシステムに初対応したERPパッケージである「SAP R/3(エス・エー・ピー アール・スリー)」です。この製品は広く使われ、世界中の企業で人事・財務・会計・物流といった資産を管理・活用する基幹システムとして浸透するようになりました。

近年ではSAPのERP製品もクラウド対応が進み、SAP R/3の後継製品として「SAP S/4 HANA(SAP Business Suite 4 SAP HANA、エス・エー・ピー エス・フォー・ハナ)」がリリースされました。

(2)SAPコンサルタントの役割は、ハードルの高い基幹システムの導入支援

時代の変遷とともに製品のバリエーションを展開し、ERP分野でのシェアを確固たるものにしているSAPのERP製品群。ラインアップは現状では実に多様になりました。日本法人であるSAPジャパンのWEBサイトを見てみると、その製品領域が非常に広範囲にわたることがよくわかります。

そうしたITシステムを導入するには、製品を購入するだけではなく企業の実態に合わせて開発やカスタマイズを行なうなどの対応が必要です。企業活動の重要な部分に密接に関わるシステムなので、スムーズな実装・運用のためにプロジェクトを組んで入念な準備を重ねなければなりません。

 

「ERP製品を自社に導入して会社の資産をきちんと管理し、経営の効率化を図りたい」、「会社の規模も大きくなってきたので、基幹システムをSAP製品に変えてスピーディーに意思決定できるようにしたい」、「これまでオンプレミスのシステムを動かしていたERPシステムをクラウド製品にリニューアルしたい」と考える企業は少なからず存在しますが、ユーザー企業だけでSAPの基幹システムを導入するのは非常にハードルの高いものです。

 

そこで、クライアント企業がSAPのERP製品を導入する際支援するのが、SAPコンサルタントの主な仕事です。

インプリメーションコンサルタント(インプリコンサル)とも呼ばれるSAPコンサルタントは、以下のような業務をSAP製品の導入に特化して支援します。
・クライアントの現状を分析して、その企業にどのような業務や資産が存在するかを整理する。
・業務や資産を管理するための基幹システムとして、どのような要件が必要かをまとめる。
・システムを設計/開発していくという一連のシステム導入プロジェクトを実行する。

 

SAPコンサルタントの仕事は、コンサルティングファームやシステムインテグレーターの案件を引き受ける場合と、フリーランスのコンサルとして登録しているエージェントから案件紹介を受けて業務に従事する場合があります。

SAPコンサルタントの仕事は高単価の傾向にあり、コンサルタントとしても高い年収を狙いやすいです。

フリーランスであれば、まとまった単価の一つのプロジェクトを終えたあとに長めの休暇をとるといったスケジュールの組み方も可能。

フリーコンサルタントが案件紹介を受けることも多く、今後も継続した案件発生が見込めるSAPコンサルタントの仕事は、フリーランスという働き方とも相性がいい仕事の一つといえるでしょう。

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SAPコンサルタントに求められるスキルと案件例

SAPコンサルタントに求められるスキルと案件例

 

SAPコンサルタントとしてプロジェクトにあたるには、SAPの製品群に関する深い知識とスキルを有していることが前提となります。それを証明しやすいのが、SAPの認定資格の取得です。

SAPは、SAPのシステム導入をするために必要な専門知識と経験、ノウハウとスキルを持っていることを証明する認定資格として、SAP認定コンサルタント制度という認定試験という認定試験を実施しています。

この資格を持っていなくてもSAPコンサルタントとして仕事をすることはできますが、資格を取得していると実際のプロジェクトの現場で仕事に就きやすくなるでしょう。

 

特にフリーコンサルタントの場合、企業に属するコンサルに比べて契約面で不利に働くことも少なくありませんが、SAPコンサルタントの仕事については認定資格を持っていることがその状況を打破するきっかけにつながりやすくなります。認定資格については、SAPのWEBサイト※に詳しく掲載されています。

※SAP Certification

 

また、SAPコンサルタントの仕事では、ERPシステム自体はもちろん、システムで管理する人事・財務・会計といった業務に関する知識も不可欠です。システムの導入検討、要件定義から開発・実装までをサポートするプロジェクトなので、ERPに限らず、パッケージソフトやクラウドシステムなどITシステムの導入経験があることが望ましいとされています。

加えて、コンサルとして最終的に支援すべきなのは企業の経営課題の解決であり、SAPの製品を使ってそれを支援するというSAPコンサルタントの目的を考えれば、企業の経営課題に対するコンサルの業務経験もやはり必要となるでしょう。

そうしたスキルと経験を有するSAPコンサルタントには、さまざまな案件が発生します。次に、SAP製品に関するフリーコンサルタントの案件内容の一例を挙げました。リモートワーク可能案件が豊富な点も、フリーランス人材の働き方の可能性が広がる魅力の一つです。

(1)<基本リモート>SAP導入におけるユーザー側サポート支援 ※管理会計領域

SAPの子会社展開に伴う管理会計(原価)領域での業務コンサルティング支援。
報酬金額:100〜130万円(※100%稼働に換算した金額)

□プロジェクト概要
・S4/HANAの、子会社展開におけるユーザー側へのサポートプロジェクト

□業務内容
<マネジメント>
・原価チームの1次受け担当として、運用インシデント、課題管理、変更管理の各チケットの状況管理、および状況報告
・チーム定例のファシリテーションと上記情報収集
・小規模改善案件の進捗管理

(2)<稼働率50%~/基本リモート>SAPやERP導入等のプロジェクトマネジメント支援

SAPやERP等における業務設計や要件定義に係る業務補佐。
報酬金額:150〜200万円(※100%稼働に換算した金額)

□プロジェクト概要
・SAP ロジスティクス系や生産ERP、mcframe、APriso等のプロジェクトマネジメント
・業務設計や要件定義等について理解したうえでの補佐的業務に参画

□業務内容
・プロジェクトマネジメント、補佐的業務
-クライアント社員とコミュニケーションを取りながらの業務サポート

 

◆他にもさまざまなSAP案件があります。

 

世界最大級のソフトウェアベンダーSAP

世界最大級のソフトウェアベンダーSAP

ITに詳しいコンサルの方やエンジニアの方であればご存じであることも多いと思いますが、SAPというのは社名で、正式名称を「Systemanalyse and Programmentwicklung」といい、「エス・エー・ピー」と読みます。ここで改めてSAPについて復習しましょう。

(1)ERP分野で圧倒的なシェア「SAP」

SAPはドイツに本社を置く企業で、世界全体での売上高は3兆円超(2019年)。マイクロソフトやオラクルといった世界有数の会社と同じく、世界で十指に数えられる有数のソフトウェア会社の一つです。

 

SAPが提供しているのは、主に法人(エンタープライズ)向けの業務アプリケーション製品。経営の効率化を目的として、企業のヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を管理・活用するための基幹システムである「ERP(Enterprise Resource Planning)」製品を中心に提供しています。SAPのソフトウェアの利用は2019年時点で世界190カ国、約 4432万社におよび、ERP分野では圧倒的なシェアを獲得しています。

(2)「クラウドERP」が転機に。時代に合わせ展開を図ってきたSAP

ERPシステムは、かつてはほかのソフトウェアと同様にパッケージ形式での提供がメインで、そのパッケージ製品をオンプレミスで運用していました。

しかし、次第にインターネットが普及し高速通信が可能になると、SaaS(Software as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)での提供も登場するようになります。

そして、クラウドコンピューティングの波が到来。ITを「所有」する時代から「利用」する時代へと急速に動かしたクラウドコンピューティングの波に影響されたのは、ERPシステムも例外ではありませんでした。

 

パッケージ形式での提供は非常に高額で、そのユーザー企業も必然的に大企業や中堅企業に絞られていたERP製品ですが、「クラウドERP」ともいわれるクラウド形式でのERP製品の登場はその状況も一変させます。

クラウドERPの登場でERP製品を低コストで使いやすくなったため、ユーザーのすそ野が小規模企業にまで広がるようになったのです。

そうした変遷を経てきたERPの分野で、マイクロソフトやオラクルといった大手ソフトウェアベンダーとしのぎを削りながら、時代に合わせてさまざまな展開を図ってきたのがSAP、そしてSAPの現状のERPアプリケーションです。

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SAPコンサルタントの将来性はフリーランスなら要注目

フリーランスのSAPコンサルタントの将来性

(1)すそ野が広がる「SAPの導入」は、注目すべき開拓価値のある市場

前述のとおり、SAP製品のユーザー層はかつては大手企業中心で、大手企業に全社でシステム導入をするようなケースではプロジェクトの規模も非常に大きいものでした。その分、案件紹介を受けたコンサルの報酬としても高い単価を見込むことができたわけです。そうした時代を経てERPシステムの導入も一巡した感がある今、SAPコンサルタントの仕事も一段落かと思われるかもしれません。

 

しかし、SAP製品の導入を検討する企業は今やそのすそ野を拡大し、中小規模の企業にまで及んでいます。SAPの現在の主力製品の一つであるS/4 HANAも多くの支持を獲得しています。クライアントとなる企業は幅広く、フリーコンサルタントにとっては、開拓する価値が十分に潜んでいる市場の一つと考えられます。

 

また、すでにSAPのERP製品を導入している企業でも、新しい拠点を立ち上げるにあたってシステムを導入することもありますし、オンプレミスからクラウドへのシステム刷新のニーズは増加しています。

さらに2025年末には、SAPのERP製品群のなかでも最も多く使われている「SAP ERP(SAP Business Suite 7)」のサポート終了を迎える予定で、ユーザー企業はS/4 HANAへ移行するのか、それともクラウド形式のERPシステムへリプレースするのか、検討や準備を進めなければなりません。

S/4 HANAへ移行するとしても、DBインスタンスとSAPインスタンスが同じサーバーに存在する構成であったSAP ERPからの移行は、インフラ一つとっても細かな検討や検証が必要です。

 

そのような状況から、SAPコンサルタントの仕事は案件紹介が多く今後も継続して案件の発生を見込むことができる将来性のある仕事の一つといえるのです。

フリーランスのコンサルタントにとって「案件紹介が多く、今後も案件の発生が続く分野」というのは、それだけコンサル案件を獲得する市場が広いことを意味します。フリーコンサルタントが案件紹介を受ける方法がさまざまなものがある現状も追い風となる要素です。

IT・WEB関連のシステム導入プロジェクトを支援するITコンサルタント、PMO支援といったコンサルの案件も近年高いニーズを集めている仕事の一つですが、SAPコンサルタントの仕事も同様に案件紹介も多く、フリーコンサルタントであれば今後も注目すべき仕事といえるでしょう。

 

まとめ

ユーザー企業にとってIT・WEBの活用やシステムの導入は、経営課題の解決や事業の推進に不可欠です。しかし、常に技術のアップデートがあるIT・WEBの現状をユーザー企業が把握するのは簡単なことではなく、システムの導入を自社だけで行なうのは困難をきわめます。本来、事業を展開し企業の課題を解決するために割かれるべきリソースが、それを助けるためのシステム導入に必要以上に割かれてしまうことになっては本末転倒です。

特にERPシステムは、人事、財務、会計といったように、企業の重要なところに密接に関わるシステムであり、失敗が許されません。そうしたユーザー企業を支援するSAPコンサルタントの仕事は、求められるハードルも高いですが非常にやりがいもあるものです。SAP製品を通じてERP領域の経験を重ねること、SAPコンサルタントとして活躍できるスキルを身につけることは、単に高い単価を狙えるというばかりでなく、フリーコンサルタントとしても仕事の幅を広げ、深みを増すことになり、ビジネスチャンスの拡大につながるでしょう。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)