【監修】セルフブランディングの手順と注意点!フリーランス必読
最終更新日:2023/11/16
作成日:2019/11/13
セルフブランディングの重要性を知りつつも、なかなか実行に移せていないフリーランスの方も多いでしょう。今回のコラムでは、「営業力」と「マーケティング力」の強化支援を行うプロフェッショナル人材の監修のもと、セルフブランディングのメリットや注意したいポイントをまとめ、わかりやすいセルフブランディングの方法をご紹介します。これを機に、ご自身のブランディングについてもう一度考えてみませんか?
目次
■セルフブランディングとは?
(1)セルフブランディングの定義
(2)パーソナルブランディングとの違い
(3)セルフブランディングとセルフプロモーションの違い
■フリーランスがセルフブランディングを行うメリット
(1)信頼感が上がり継続した発注につながる
(2)自分の価値が上がれば売上もアップ
(3)書籍発行や講演など新たなビジネスにつながる
(4)自分の方向性が明確になりキャリアプランが立てやすい
■メリットを活かすための手順とは?
(1)まずは自分自身の本質を理解する
(2)自分自身のSWOT分析
(3)複数のジャンルを組み合わせる
■デメリットを生まないための注意点
(1)セルフブランディングが持つデメリットとは
(2)デメリットを最小限にするための注意点
■フリーランスにおすすめ!セルフブランディングのPRツール
(1)セルフブランディングには時間がかかる
(2)名刺
(3)自分自身のwebサイトやブログ
(4)ソーシャルメディア
■まとめ
※本コラムは、2019年11月13日に「フリーランスに必須のセルフブランディングとは?」を再構成したものです。
※本コラムは、中小企業の営業力・マーケティング力支援コンサルタントによる監修を行なっています。
セルフブランディングとは?
(1)セルフブランディングの定義
セルフブランディングとは、自分自身を「ひとつの商品」として考え、顧客に対する自分の価値を高めるための戦略です。
一般的なマーケティング分野でのブランディングとは「商品の価値を高める」という意味ですが、それをそっくり自分自身に当てはめます。例えば、「品質が高い」「デザインがよい」「サポートが丁寧」といったブランドイメージを顧客に持ってもらい、あなた自身またはあなたの仕事に価値を感じてもらうことが狙いです。
(2)パーソナルブランディングとの違い
言葉の響きはパーソナルブランディングと似ています。意図的にブランド化を求めるところなどはよく似ているため、同じような意味で使われることも多いです。しかし、セルフブランディングとパーソナルブランディングには明確な違いがあります。
パーソナルブランディングは、組織や会社内の一個人をブランド化すること。一方、セルフブランディングは、組織に所属しない完全な個人のブランド化を意味することが多いため、フリーランス人材のブランド化は、セルフブランディングということになります。
(3)セルフブランディングとセルフプロモーションの違い
セルフブランディングは「自己PR戦略」とも言えます。しかし、あくまで「プロモーション」ではなく「ブランディング」というところがポイント。
セルフプロモーションは、自分の営業や宣伝活動のことを指し、自分自身を売り込むためにどんな販促物を作ったらいいか、集客のためにどんなところでPR活動をしていったらいいか、といったPR方法を考えるのが一般的で、いわゆる「戦術」を検討・実行することを指します。
一方、セルフブランディングは、自分のパーソナリティをもとに、自分自身の「品質」「価値」「信用」を高めるための、いわゆる「戦略」を検討・立案することになります。そのため、まずは自分自身の本質を見極めなければなりません。セルフブランディングの方法については、詳しく後述します。まずは、セルフブランディングが持つメリットをご紹介します。
フリーランスがセルフブランディングを行うメリット
(1)信頼感が上がり、継続した発注につながる
フリーランスが、ビジネスをしていく上でもっとも大変なことの1つが、継続した受注を得ること。単発案件をいくつ抱えるよりも、「できれば継続案件が欲しい」と安定したプロジェクト参画を希望するフリーランスも多いものです。
しかし、企業の目線で考えると、完全な一個人であるフリーランスに仕事を依頼するのは、企業に所属している人に仕事を依頼する以上に不安があるというのが本音でしょう。その不安感を払しょくする、それがセルフブランディングの役割の1つです。
たとえば、SNSや自分のブログ記事などを通じて、自分自身のプロフィール、専門分野、過去実績のほか、人となり、ライフワーク、日々の関心事や趣味などを詳しく紹介したとします。そこで紹介されたさまざまな情報は、仕事を依頼する人への信頼感・安心感へと繋がりやすいでしょう。また、仕事を依頼する人が、フリーランスのパフォーマンスを量る上でも貴重な情報になりますので、SNSやブログを上手に積極的にビジネスに利用することをおすすめします。
実際、SNSやブログ経由で仕事を得るフリーランスは少なくありません。もちろん、SNSやブログをやっているから仕事を得られるのではなく、どのような情報や記事、メッセージなどを発信しているのかが大切です。SNSやブログを集客目的などビジネスに活用させるのであれば、自身の記事内容やプロフィールに気を配る必要があります。
(2)自分の価値が上がれば、売上もアップ
ほとんどのフリーランス人材が、「仕事の単価を上げたい」と考えていることでしょう。単価をアップさせる方法としても、セルフブランディングは有効と言えます。仕事を周囲に認めてもらうことを繰り返していけば、徐々にあなた個人がブランド化されていきます。すると、今まで一緒にビジネスをしてこなかったクライアントも、案件の打診が来たり、単価交渉も可能になるかもしれません。この単価交渉の場面でも、自身をブランド化することが強い味方となってくれることでしょう。
また、セルフブランディングが周囲に浸透していくと、おのずと集客にも繋がります。自分で営業をかけなくても、SNSやブログが宣伝部隊となったり、過去に一緒にプロジェクトを実行したビジネス仲間から紹介が舞い込むなど、仕事を獲得するケースも少なくありません。
SNSの中では、特にfacebookをビジネスツールとして使用する人が多いですが、facebookの利用率が高いのは、記名性の高いSNSだからと言われています。しかし、TwitterやInstagramには、facebookにはないビジネスツールとしての魅力もあるため、ご自身が目指すブランディングに合わせて利用するSNSを選択すると良いでしょう。拡散力や誘導力など、TwitterやInstagramが得意とする点もあります。誰に向けて、どのような形でセルフブランディングをしたいかによって、SNSを使い分けるのも効果的です。
フリーランスの中には、「SNSはあくまで入り口」とし、自分のブログ記事に誘導するためにSNSを使用する人も大勢います。SNSには色々な制約があるため、SNS単体でビジネス展開させるのは悩ましい点も多いからでしょう。その点、自分のブログならば、かなり自由度が高まります。ただし、自分のブログをビジネスの母体にしたくても、顧客にブログ記事をなかなか見つけてもらえないデメリットがあるため、一度SNSを挟み、ブログへと誘導するのです。そのような方法をはじめとして、さまざまな施策でブログへの来訪者を増やし、知名度を高めていきましょう。
(3)書籍発行や講演など、新たなビジネスにつながる
特に専門性を打ち出すブランディングの場合、直接的なコンサルティング依頼以外にもさまざまな仕事のオファーが来る可能性があります。
代表的なオファーは、コラムの執筆や書籍発行、講演依頼など。「特定ジャンルの専門家」というブランドが確立できれば、新しい仕事のチャンスは広がります。
当然収入アップも期待できますし、それ以上に知名度のアップが大きな副産物となります。知名度が上がれば、メディアに取り上げてもらえる機会も増えますし、さらに、人脈が広がり仕事も増えるという好循環もセルフブランディングの狙いの1つです。
(4)自分の方向性が明確になり、キャリアプランが立てやすい
フリーランスとして活動していると、「とりあえず来る仕事は受ける」というスタンスの方も多いようです。「一旦仕事を断ると次からは発注がないかもしれない」と恐れてしまう方も多いのではないでしょうか。
セルフブランディングに成功すれば、「この人は〇〇分野の専門家」というイメージが浸透し、次第に他の仕事は減っていきます。このような形で仕事がそぎ落とされていくことは、決して悪いことではありません。
「自分のキャリアプランに合わせてプロジェクトに参画する」ということですので、より効率的な仕事の仕方と言えるでしょう。「なんでもやります」の姿勢もときには大事ですが、一定のキャリアを積んだ後は、仕事を選ぶことも大切。セルフブランディングは、「商品」としての自分の特長やターゲットを明らかにすることで、仕事を選びやすく、もしくはあなた自身が選ばれやすくなる方法でもあるのです。
メリットを活かすための手順とは?
(1)まずは自分自身の本質を理解する
セルフブランディングの出発点。それは、これまでの自分自身の経験・実績を振り返ることから始まるのが一般的です。
まず、過去の成功実績と失敗実績を時系列に並べて整理しましょう。改めて振り返ってみることで、忙しく稼働している中では見落としていた実績などを、掘り起こすことができるかもしれません。
さらに、周囲からの評価も追加していくと良いでしょう。一個人からの評価でもかまいませんし、企業のような大きな組織からの評価でもかまいません。他者からの評価を自身のプロフィールに加えることで、より魅力的で信頼を置ける人物として表現することができます。
ポイントは、自分自身の評価も、企業のような他社からの評価も、あくまで客観的な目線で行うこと。自分を客観視することがセルフブランディングの始まりです。
(2)自分自身のSWOT分析
マーケティング手法の1つでもあるのですが、企業が事業計画や戦略立案するときには、基本的な分析フレームワーク「SWOT分析」を使うことがよくあります。
SWOT分析とは、Strength(自分の強み)、Weakness(自分の弱み)といった自分自身の価値だけではなく、Opportunity(機会またはチャンス)、Threat(脅威またはピンチ)といった外部要因も組み合わせて分析すること。このマーケティング分析を自分自身に当てはめます。
マーケティングで使用するSWOT分析を自分自身を対象として行うことで、自分というブランドの強みや弱み、今後やらなければならないことなどが具体的に見えやすくなるでしょう。また、普遍的な自身の本質だけではなく、今のトレンドや競合との関係性も整理しやすくなるのがSWOT分析のメリットです。
一通りSWOT分析が終わったら、W(弱み)、T(脅威)に致命傷がない限り、S(強み)、O(機会)に目を向けて、そこを徹底的にセルフブランディングの要素としてアピールすることをお勧めします。時間と資本に限りがある個人は、逆風(W・T)の中で体力を消耗するより、追い風(S・O)を見つけて全速力で駆け抜けることが肝心です。
もしも、「一人で自分の本質的なことを知るのは難しい」と思うのであれば、セルフブランディングのワークショップに参加すると良いかもしれません。他者の視点が、新たな気付きを与えてくれる機会になることも多いようです。
(3)複数のジャンルを組み合わせる
SWOT分析である程度方向性が決まったら、自分の独自性や専門性に焦点をあててみましょう。フリーランスの方の場合、大手企業との違いを明確にする戦略が必要です。例えば、あえて大手企業が手を出せないニッチな分野に絞り込むといった、いわば隙間産業のような形でビジネス展開させるのが有効なことも多いでしょう。また、複数のジャンルを組み合わせるという方法も、ときには有効です。
ここで1つの具体例を紹介します。
紹介するのは、フリーランスで活動している行政書士の方です。この方は親族を介護した経験を活かし、高齢者向けの相談に特化していきました。つまり、ターゲット層を明確にしたのです。その結果、今ではこの分野の専門家として、テレビなどのメディアに出演したり、雑誌記事やコラムで情報発信をしたりというように活動範囲をどんどん広げています。各メディアを通じて「高齢者向けの相談ならこの人!」というイメージが確立されたから、と考えることができるでしょう。
このように、仕事に直接関係ないと思われる活動や趣味なども独自性につながって、セルフブランディングに大きく役立つ可能性があります。ただし、「何でもできます」というのは危険。幅広いジャンルをカバーするには、個人で活動するフリーランスは、大手企業と比べてどうしても不利になります。分野を絞り込んでいくことが、フリーランスのセルフブランディングには欠かせないでしょう。
ブランディングというと、「品質のよさ」をイメージするかもしれませんが、品質だけとは限りません。それなりの品質でも、納期が早かったり、競合が少なかったりという独自性を打ち出すケースもあります。重要なことは、立ち位置と方向性を決める、いわばポジショニング。なお、低コストというのもひとつの優位性ですが、ここを前面に出しすぎると、価格競争になりかねないので注意が必要です。
☆あわせて読みたい
『フリーランス人材の悩みとは?業務委託の雇用形態とメリットデメリットを解説』
『【フリーランス入門ガイド】定義や個人事業主との違いとは?増えすぎた理由は?おすすめの仕事や獲得方法とは? 』
『フリーコンサルタントは副業でも稼げる?単価・種類・注意点を解説!』
デメリットを生まないための注意点
(1)セルフブランディングが持つデメリットとは
さまざまなメリットのあるセルフブランディングですが、活用法を間違えるとかえって自分の仕事の幅を狭めてしまう可能性があります。例えば、セルフブランディングで培ったイメージが固定化し過ぎてしまうことです。
セルフブランディングでは「一貫性」が重要なポイントで、共通のイメージが続かなければセルフブランディングにはなりません。ただし、この一貫性がマイナスに働くこともあります。セルフブランディングがうまくいって、ある程度の共通イメージを持たれるようになると、その後の方向転換が難しくなるというデメリットが生まれるでしょう。
例えば、自分が携わってきたジャンルそのものが衰退しようとしている時、他のジャンルに移行しなければ、今後の仕事が危ぶまれます。このような時は、急激な変更ではなく、徐々にスライドしていくなどのソフトランディングを意識することで上手くイメージチェンジを図ることが出来るというケースもあります。
(2)デメリットを最小限にするための注意点
特定のジャンルにこだわらなくては、フリーランスとしての成功はなかなか達成しづらいもの。しかし、自分がこだわってきたジャンルそのものが衰退してしまった時に、新しいビジネスに移行しづらいというのがセルフブランディングのデメリットです。
このデメリットを最小限にするためには、自分の仕事だけではなく業界全体の力も常に意識すること、そのためには競合相手に常にアンテナを張ることも大切でしょう。業界全体が衰退の方向へと向かっている時に早めにキャッチアップできれば、方向転換を迅速に行うことができます。
また、戦略理論として有名な「成長ベクトル(製品×市場マトリクス)」を応用して、すでに確立された専門性を新しい分野・企業へ転用・提案したり、すでに取引のある企業に対して、新たな専門性を開発・提案したりすることも方向転換のヒントになるかもしれません。
フリーランスにおすすめ!セルフブランディングのPRツール
(1)セルフブランディングには時間がかかる
セルフブランディングは、結果が出るまでに時間がかかるPR方法です。そのため、少しずつ育てていくような感覚で取り組むのが一般的です。
もし、会社員からフリーランスに転身する予定ならば、在職中からセルフブランディングを進めておくのも良いでしょう。会社員としての仕事とともに、副業などの活動を通じて実績を積んでおけば、自分の強みやこだわりをアウトプットする準備ができます。これなら、フリーランスになってからも、スムーズにセルフブランディングの効果を発揮できるはずです。
また、セルフブランディングは、顧客に伝わらなければ意味がありません。セルフブランディングを成功させるには、正しいイメージを広く伝えることがポイント。そのための代表的なツールを今一度おさえておきましょう。
(2)名刺
初対面の時に渡す名刺も、実は重要なセルフブランディングツール。特に、フリーランスでは自由に肩書をつけられるのが大きなポイントです。顧客に与えたいイメージをそのまま肩書きにするのも有効でしょう。
名刺に刻まれた肩書きによって、より良いイメージを醸成することができるかもしれません。
もちろん、フリーランスに転身する前から、自分自身をアピールするツールとして名刺を常に携帯するのも有効な手段の一つと言えます。
(3)自分自身のWebサイトやブログ
個人で仕事をする際の入り口は、多くの場合、webサイトもしくは自分のブログ記事です。そのため、フリーランスとして活動するのならば、Webサイトやブログを設けておくことが有効です。
例えば、フリーランスのコンサルタントであれば、これまで手掛けた案件や経歴などの基本情報のほか、自分の目指す方向性や信念といった個人的なことも支障のない範囲で公開しておきたいところ。ただし、過去の仕事内容については守秘義務もありますので、オープンにできる情報かどうかの精査は確実に行ないましょう。
また、一方的に更新するだけでは誰にも見てもらえない可能性もあるため、検索エンジン対策(SEO)などの方法を駆使して、より多くの人にブログ記事を見てもらう施策も必要です。
(4)ソーシャルメディア
前述したように、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアを通じて、セルフブランディングに成功している方も増えています。気軽にコメントのやりとりができる点や、他の人とのつながりが持ちやすいなど、多くのメリットがあります。また、業種や業態によっては、メールの文化はすでに廃れつつあり、SNSでのメッセージのみで仕事が進んでいくことも珍しくないようです。
ただし、SNSでは「炎上」に気を付けたいところ。汚い言葉遣いや相手を冒涜するような発言には注意を払いましょう。良いことも悪いことも拡散しやすいというのが、ソーシャルメディアの特徴です。
まとめ
大手企業のコストをかけたブランディングとは違い、フリーランスのセルフブランディングは、地道な作業の積み重ねです。長期戦だからこそ戦略を立てて、信頼感・優位性・独自性を意識したブランディング方法が重要です。
自分自身の方向性を自分で決められるのは、会社員にはないフリーランスの大きなメリットのひとつ。なりたい自分になるための方法として、セルフブランディングを活用してみてはいかがでしょうか。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)
< 監修者プロフィール >
大野 晴司(おおの せいじ)
東京都立大学(現首都大学東京)卒業後、日産自動車で国内のマーケティング部門や系列ディーラーでの営業マンや本社販促部署長などを経験。中小企業診断士資格取得のために退職、2003年3月資格取得。その後、マーケティングリサーチ会社、自動車関連メーカーを経て、2008年にビズ・エキスパート株式会社を設立。神奈川・東京の中小・中堅企業の営業力・マーケティング力支援のほか、経営企画業務、新規事業支援を主な事業として活動中。また、企業向けセミナー講師なども務める。
ビズ・エキスパート株式会社:http://b-ex.biz/index.html
プロフェッショナリズムインタビュー:https://freeconsultant.jp/workstyle/w020