シェアリングエコノミーがビジネスの幅を広げる!知っておきたい基礎知識
最終更新日:2019/09/30
作成日:2017/11/17
シェアリングエコノミーとは、使っていないヒト、モノ、カネ、ヒト、スキルや時間などをシェアして、利用したい人とマッチングするサービスのことです。社会的な経済効果も期待できるシェアリングエコノミーに注目が集まる現在、フリーランスのコンサルタントが活用できるポイントがありそうです。ここでは、シェアリングエコノミーの基礎知識について、サービスを提供する側の視点を中心に見ていきましょう。
目次
■シェアリングエコノミーに参入する5つのメリット
(1)個人でも参入しやすい
(2)アプリやITを活用できる
(3)社会問題の解決につながる
(4)眠ったスキルの活用や、高度なスキルのシェア
(5)リーズナブルにサービスが使える
■これまでのシェアリングエコノミーの事例
(1)空きスペースを有効利用するサービス「軒先ビジネス」
(2)子育てスキルをシェアするサービス「AsMama」
(3)NTTドコモによる、自治体向け自転車シェアリングシステム
■シェアリングエコノミーが抱えている課題とは?
(1)個人間のシェアではトラブルにつながるケースもある
(2)既存の法律や条例に抵触する可能性もある
(3)収益が不安定になりがち
■シェアリングエコノミーの今後の展望
(1)シェアリングエコノミー協会が発足、認定制度もスタート
(2)既存事業者との差別化がポイント
(3)シェアリングエコノミ―における課税のあり方が議論されている
■まとめ
※本コラムは、2019年9月5日に「人材やスキルをシェアして起業できる?シェアリングエコノミーとは」を再構成したものです。
シェアリングエコノミーに参入する5つのメリット
傘のシェアリングサービス「アイカサ」や都市部の収納スペース不足を解消する「収納シェア」など各方面で意外なものも展開され市場規模も広がっています。実際に活用したことはなくても、ニュースや雑誌、ワイドショーなどのメディアでもで耳にする機会も多いのではないでしょうか。
(1)個人でも参入しやすい
シェアリングエコノミーは、内閣官房IT総合戦略室内に「シェアリングエコノミー促進室」が設置されるほど国が力を入れている施策。まだまだ個人でも参入の余地があります。サービスの内容や地域(人口)による差などはあるものの、盛り上がっている領域と言えそうです。
基本的にシェアリングエコノミーは住宅や車などの資産や、人材や時間、スキルをシェアするビジネス。既存のヒト・モノ・カネなどを有効活用するため、ビジネスを始める時の初期投資が抑えられるというのがメリットで、エコ時代にふさわしい、アイデアや発想が重要なビジネスです。ひらめきさえあれば個人でも起業しやすいという特徴があります。
従来は「Airbnb」(民泊サービス)や「Uber」(自動車シェア・配車サービス)など、シェアリングエコノミーといえば海外発のサービスが主流でした。特にUberに関しては、都心ではあちこちで見かけるようになりました。
ほんの少しの移動にも使え、事前に金額がわかっているというのが最大の魅力。「意外と安く済んだ」という声が多いようです。都心では主に電車を使って移動する人も多いと思いますが、思わぬ荷物が増えてしまった、悪天候になってしまったなどの予定外の出来事が起きた場面などで重宝されています。海外と比べるといつでも確実に使えるというほどには普及していないようですが、一度使うとその便利さに感動する人も多いようです。
最近では、日本でもUberなどに限らずさまざまなジャンルでシェアリングエコノミーが台頭しているようです。また、うまくビジネスに取り入れて起業する人も増加しており、シェアリングエコノミーは個人で起業したり独立する時の使いやすいアイテムと捉えることもできます。フリーランスのコンサルタントにとって注目すべき市場ではないでしょうか。
今後、さらに市場規模が大きくなるという予測も出ているシェアリングエコノミーは、フリーランスのコンサルタントに限らず知識をおさえておきたいところです。
(2)アプリやITを活用できる
現在の日本は、スマートフォンを持っていることが当たり前の時代となっています。アプリやSNSの活用も日常的なものになり、大きな経済効果も生んでおり現代社会において欠かせない存在となりました。この点もシェアリングエコノミーの市場規模が拡大している要因の1つでしょう。
たとえば、民泊サービスの「Airbnb」は、住宅を提供したい個人と宿泊したい旅行客をマッチングするサービスです。スマートフォンを経由することで、いつでもどこでも利用でき、素早いマッチングが可能。既にあるモノ(この場合は自宅の空き部屋)を活用しながら収入を得ることができ、さらに国際交流もできる点が評価されているようです。2020年オリンピックイヤーは、宿泊地が不足すると懸念されています。「Airbnb」が不足分の担い手になることに間違いなさそうです。
ほかにも、「駐車スペースを今すぐ借りたい」「今すぐ手伝ってくれる人が欲しい」といったニッチなニーズにも対応できるサービスをパッケージ化すれば定期的な利用も見込めるかもしれません。
(3)社会問題の解決につながる
運営の仕方次第では、シェアエコが社会問題の解決につながる可能性もあります。たとえば空き家が多い地域では、空き家の多さやヒトの少なさの問題解決を課題としています。
そのような地域で、空き家をシェアスペースとして有効活用するサービスを展開させれば、「ヒト」を移動させることができ、大きな課題が解決されるかもしれません。ただし、やはり人離れが進んでいる地域にはそれなりの理由があるため、その点も打破できるようなアイデアが必要です。
地方創生に関心があるプロフェッショナル人材は多く存在するようですが、マネタイズがなかなか難しく実行に移すまでに至らない・・・というケースが多いのも事実。しかし、今の時代、空き家問題を抱えている地域は少なくはありません。この分野の解決の糸口を見つけることは、日本にとっても非常に価値のあることとなるでしょう。
また、同様に過疎地域では使われていない畑、いわゆる休耕地も社会問題になっています。畑をシェアする事業が展開されれば、その地域には人とお金が動くでしょう。このようにシェアエコは経済的な問題ばかりでなく、社会的問題の解決につながることも多いようです。
類似した例では、子どもの見守りや家事代行などの人材マッチングサービスもあります。保育所や保育士不足が大きな社会問題になっている時代なので、子育てのシェアリングエコノミーを自治体が利用するケースも増えてきています。同じように深刻な人材不足にある医療介護福祉に関するシェアも今後増えていくかもしれません。
(4)眠ったスキルの活用や、高度なスキルのシェア
前述したように、住宅や車といったモノの他に、人材やスキルをシェアするのも増えてきています。子育てや介護などの事情で、専門スキルを持ちながらもフルタイムで働くのが難しいという人にとっては、完全復帰に比べ低いハードルで仕事を再開することができ、新たな雇用機会の創出になるかもしれません。
空いた時間にプロとしてスキルを有効利用すれば、能力を活かしながら収入も得ることができます。ビジネスマッチングサービスも、ハイスペックな能力をさまざまな企業でシェアすると捉えるとシェアエコに通じるものがあります。「雇用関係によらない働き方」は、今の日本では注目すべき新しいビジネススタイルです。
また、働き方改革によって、一般的なビジネスパーソンでも副業をする機会が増えました。本業を持ちながらサブ的な仕事を探したい人にとっても、シェアエコは気になるところかもしれません。そのような人たちが活躍できる場を作るという概念も持ちながら、事業モデルを考えることもポイントと言えそうです。
(5)リーズナブルにサービスが使える
シェアリングエコノミーでは″普段使っていないモノをシェアする″というのが基本的な考え方です。いかにコストを抑えるかを意識することで、利用者側にとっても安く使えるというメリットがあります。
例えば、以前のコラムでもご紹介したオフィススペースを複数のユーザーで共有するコワーキングスペース。
コワーキングスペースでは、オフィスならびにオフィス用品というモノを共有することでランニングコストを抑える効果があります。都心部の利便性の高い地域にオフィスを構えたいと希望する人は多いですが、いざそのような地域にオフィスを構えようとすると莫大な経費が必要になります。また、毎月の家賃も負担となることでしょう。ところが、コワーキングスペースであれば一等地で手軽にオフィスを構えることができるので、起業したばかりの人にとっては大きな味方となることでしょう。
ただし、コワーキングスペースは完全な自分だけの空間ではないため、「コワーキングスペースでのビジネスパートナーとの出会いも期待している」「自然と情報収集ができる」など、周りに人がいる環境を有効活用したいと思える人に向いています。
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これまでのシェアリングエコノミーの事例
(1)空きスペースを有効利用するサービス「軒先ビジネス」
「軒先ビジネス」は、店舗やオフィスなどのスペースを貸したい人と、借りたい人をマッチングするサービス。登録されているのは、レンタルスペースのような貸し出し目的の場所だけではありません。店舗やビルの店頭、住宅の駐車スペースなど、まさに「軒先」のようなちょっとした空間も選べるというのが大きなポイントです。全国でなんと7,000か所以上の空きスペースが登録されています(2019年9月現在)。
貸す側としては、ちょっとした空きスペースでも収入を得られるというメリットがあります。一方で借りる側も、店舗を構えるよりもずっと安いコストで場所を確保できます。「お試しとして一時的に出店したい」「お昼だけキッチンカーを停めてお弁当を販売したい」など、さまざまな用途で利用されているそうです。
まさに空きスペースを利用した、シェアリングエコノミーの代表事例とも言えます。空き駐車場に特化してマッチングを行なう「軒先パーキング」というサービスも提供しています。土地が狭い日本では、場所を提供するようなサービスは今後も増えていく可能性は無きにしもあらずです。
(2)子育てスキルをシェアするサービス「AsMama」
子育てシェアサービスに取り組む企業である、株式会社AsMama(アズママ)。子育てシェアとは、子どもを預けたい・送迎してほしい人と、近所に住んでいる時間にゆとりのある人をマッチングするサービスです。
いわば、昔ながらの「ご近所同士での助け合い」をシステム化したサービスで、スマートフォンからいつでも利用できて、利用料金も1時間500円程度なので気軽に利用できるのが魅力です。日本では保育所の待機問題が以前から社会問題になっており、地域によっては非常にニーズの高いサービスでしょう。
ただし、子育てシェアサービスの場合、「子供を預ける」という行為自体が非常にデリケートでもあるので、今後何らかの認証制度は必要になってくることでしょう。
そこでAsMamaでは「知らない人ではなく、まずはご近所の友人や知り合いと預けあえる関係を作る」「預かる人はママサポーターとしての研修を受ける」「損害賠償責任保険を適用する」など安心できる仕組みを作っています。2つ目の研修が認証制度の役割を果たすのでしょう。
フリーランスのコンサルタントがシェアエコ関連事業に参画する場合、プロとしてのアイデアが求められるかもしれません。その時は、過去の事例を参考にするのはもちろん、認証制度についてもアドバイスするべきでしょう。トラブルを未然に防ぐ安全策になります。
出典:地域ごとに生活や子育ての「頼り合い」をデザインするAsMama
(3)NTTドコモによる、自治体向け自転車シェアリングシステム
シェアリングエコノミーの市場は大企業も参入しており、ますます市場拡大しています。次は、NTTドコモが運営している自転車のシェアリングシステム「ドコモ・バイクシェア スマートシェアリング」をご紹介します。
自転車シェアサービスを自治体や企業向けに提供しており、既に東京都千代田区や渋谷区の他、横浜や仙台地域まで拡大しており、市民や観光客に向けて自転車のレンタルサービスが行なわれています。
例えば横浜市では、「横浜コミュニティサイクルbaybike(ベイバイク)」という名称でサービスを実施しています。無人で自転車の貸し出しや返却ができるシステムのため、運営のための人件費も抑えられています。
横浜市内のみなとみらいや横浜中華街、赤レンガ倉庫など、人気のある地域にレンタルスポットがあり、広い範囲を気ままに自転車で回ることができる便利なサービスです。
自治体にとっては観光サービス向上という目的だけではなく、交通渋滞の緩和、温室効果ガス排出量削減、駐車場混雑緩和などに繋がるというメリットもあります。こちらも経済効果を期待できるでしょう。
シェアリングエコノミーが抱えている課題とは?
(1)個人間のシェアではトラブルにつながるケースもある
多くのメリットがあり、高い経済効果が期待されているシェアリングエコノミー。その一方で急速に発展しているため、まだまだ多くの課題があるのも事実です。
大きな運営会社を挟むこともありますが、個人間のやりとりもメインとなるビジネスであるシェアエコ。起業するときのハードルが低いというメリットがある一方で、その分利用料の未払いやシェアしたモノの破損などトラブルに発展するケースも増えているようです。
課題の解決方法の1つとしては、利用者同士で信頼性を高める工夫がポイントとなります。前述したような認証制度も安心感を醸成するために有効的と言えるでしょう。
業界全体がこうした課題を抱えているため、最近ではシェアエコ向けの保険を扱う保険会社も登場しています。例えば損害保険ジャパン日本興亜株式会社や三井住友海上火災保険株式会社では、シェアリングエコノミーの運営者向けの保険商品を販売しています。
これは、ひとつのビジネスが形になることで、また別のビジネスが生まれるという好循環の例と言えます。広がりを生むという点でも興味深いビジネスへと成長しています。
(2)既存の法律や条例に抵触する可能性もある
シェアエコは参入しやすい分野ですが、法律や条例に抵触しないように注意する必要があります。例えば民泊やタクシーの相乗りなどは、現在日本の法律によって規制があります。
しかしこれからさらにシェアエコの展開が進んでいけば、規制が緩和される可能性はあります。チャンスやタイミングを逃さないように、政府や自治体の対応についてこまめにチェックしていくことをおすすめします。
また、既存の事業者とトラブルにならないよう調査や分析を進めることも重要です。
出典:政府広報オンライン「3.民泊新法で定められたルールは?」
(3)収益が不安定になりがち
シェアリングエコノミーは、基本的にC2C(個人間取引)のサービスですので、個人が使いたいときに使いたいだけ利用するというスタイルが主流のため、収益が安定しづらいデメリットもあります。
実際にアメリカでは掃除代行サービスや洗濯代行サービスなど、シェアリングエコノミーの発想でプロとして立ち上がったサービスも、市場を拡大するどころか満足に顧客が得られず、事業停止してしまったというケースも出てきています。
シェアリングエコノミーの今後の展望
(1)シェアリングエコノミー協会が発足、認定制度もスタート
日本国内では、徐々に盛り上がりを見せているシェアリングエコノミー。2015年には「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」という団体が発足しています。
シェアリングエコノミー協会では、事業者向けに勉強会を開催したり、認定シールを発行するなど、安心して利用できるシェアエコの普及に向けて、さまざまな取り組みを行なっています。
(2)既存事業者との差別化がポイント
シェアリングエコノミーで起業する場合、外せないのが既存事業者との差別化です。価格の安さはもちろん大きな利点ですが、最近では他にも付加価値をつけて差別化しているケースもあります。
例えば、民泊サービス「Airbnb」では単純に泊まる場所や食事の提供だけではなく、民泊ならではの体験ができるという点をアピールしています。農村に宿泊して農業体験ができたり、お寺に宿泊して坐禅や写経などの体験ができたりという民泊ならではの特典を用意しています。
(3)シェアリングエコノミ―における課税のあり方が議論されている
シェアリングエコノミーの拡大に伴い、税金に関することも動きがあります。シェアエコによって今後個人間のやり取りが増えることが予想されるため、所得に対する課税のあり方も議論されています。今後もシェアリングエコノミーは拡大していくことでしょうから、税金などシェアエコをめぐる政府の動向は、事業者だけではなく利用者側も確認しておく必要がありそうです。
空きスペースのマッチングや人材やスキルのマッチングなど、さまざまな分野に広がっているシェアリングエコノミー。日本では規制などいくつか課題はありますが、市場規模は拡大しつつありますし、今後も展開していくでしょう。
また、雇用機会の増加にもつながり、地域や経済の活性化対策としても期待されています。訪日外国人観光客の増加もあり、政府でもシェアリングエコノミーを推進する取り組みを行なっています。社会的にもシェアリングエコノミーは大きく注目されているのです。
前述した通り、政府の内閣官房では、2017年1月に「シェアリングエコノミー促進室」を開設しました。シェアエコを国内で拡大、そして促進するために、事業者や自治体からの相談を受け付けています。シェアエコを活用した社会課題解決に取り組むための要員として、「シェアリングエコノミー伝道師」が任命されています(2017年3月に5名、同年12月に第二弾として6名任命)。今後も普及に向けてさまざまな取り組みが行なわれることが予想されます。
まとめ
新たにシェアエコビジネスを始める場合、基本的には提供者と利用者をマッチングするプラットフォームを構築します。こうしたシステム開発案件も増えてくることが予想され、コンサルタントとしても新たなビジネスチャンスになる可能性が高いと言えます。特に最近は企業だけではなく、自治体やNPOなど複数の団体が参加して取り組む事例も出てきています。プロジェクトとしてのマネジメントや仕事のパッケージ化の提案など、コンサルタントが必要とされる機会は、ますます増えてくるのではないでしょうか。
政府や自治体だけではなく企業、市民など多方面で注目を集めるシェアリングエコノミー。コンサルタントにとっても新たなビジネスチャンスを生むかもしれません。ぜひ今後も動向をチェックしておきましょう!
※本コラムの内容は、2019年9月時点のものです。サービスの利用を検討する際は、各サービスのwebサイトにて詳細をお確かめください。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)