行動心理学を活用し、ビジネスで役立つ人間観察力を上げる

最終更新日:2021/04/27
作成日:2017/10/04

 

コンサルタントとして仕事をする中で「相手の本音を知って、その上で対処できたらいいのに」と思ったことがある方もいるのではないでしょうか?言葉と本音が実は違うことも多いもの。仕事で関わる人々の本音を把握することができたら、仕事の成功につながるかもしれません。

 

人の心理状態を知り、ビジネスの人間関係改善やマーケティングに役立てるものとして注目されているのが「心理学」です。

例えば営業パーソンが本当の目的を達成するために、取引先の要望に応えてちょっとした「貸し」を作ることがあります。これは相手に「お返しをしなければならない」という心理状態にさせる効果を狙ったもの。心理学では「返報性の法則」という言葉で知られています。実はビジネスの現場でも心理学を活用してプロジェクトや交渉の成功につながるケースはたくさんあります。

 

フリーランスのコンサルタントにとって、心理学を用いた行動様式はますます大事になるかもしれません。現在は対面でのミーティングが減り、オンラインでの会議が増えています。直接会えないからこそ、相手の本音が見えづらいですよね。ミスコミュニケーションが続けば、やはりプロジェクトは成功しづらくなります。特に若手の方は経験が少なく、コミュニケーション不足になりがちです。

 

そこでコンサルタントがビジネスに手軽に取り入れられる「行動心理学」の基本についてまとめました。ただしコンサルタントとしてプロジェクトを成功させるには、人の本音を知るだけではなく「人に行動させる」こともポイントの一つ。そこで人の心理状態を知った上で、さらに自分の思うような行動をさせるコツも紹介します。

 

 

目次

■コンサルタントの仕事に役に立つ行動心理学を知ろう
◇行動心理学の主な原理・法則
(1)希少性の原理
(2)ザイオンス効果
(3)ハロー効果
(4)ウィンザー効果
◇行動心理学を使ったビジネステクニック
(1)フット・イン・ザ・ドア
(2)ドア・インザ・フェイス

 

■人の動きや現象を見れば、潜在的な心理状態がわかる?
(1)足を組む・腕を組むのは自己防衛のサイン?
(2)鼻を触る仕草は不安の表れと言われる

 

■「13種類の人の動き」から相手の価値観を把握する
(1)一点注意の動き
(2)注意不明の動き
(3)全体注意の動き

 

■行動心理学だけじゃない?人が思わず反応してしまう「仕掛学」とは

 

※本コラムは、2021年4月27日に「行動心理学の応用で、ビジネスシーンを豊かにする」を再構成したものです。

 

コンサルタントの仕事に役に立つ行動心理学を知ろう

 

人の行動を観察し、その特徴をもとに心理を研究するのが行動心理学。冒頭で紹介した、良いことをされたらお返ししなければならない心理状態になる「返報性の法則」も行動心理学のひとつです。ビジネスの人間関係やマーケティングで実践しやすい特徴を持つ行動心理学。ここでは、代表的な行動心理学の法則・原理をいくつかご紹介します。

 

◇行動心理学の主な原理・法則

(1)希少性の原理

モノやサービスが人にとって相対的に希少である場合、より価値が高くなるという理論。少ないものを人より早く手に入れたいという欲求が裏にあります。「限定○○個」「○日間だけの大還元祭」という言葉を使ったプロモーションをよく見かけますが、これも希少性の原理を使ったマーケティング施策。BtoBの場合は「今日中にご契約いただければ、○○円値引きします」や、「長期でご利用いただけるのなら○%オフします」といったプロモーション企画もこの原理を利用しています。

(2)ザイオンス効果

人は興味がなかったり、あまり好きではなかったりするものや人物でも、頻繁に接触すると次第に良い印象をもつといわれています。これがアメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが提唱したザイオンス効果で、別の言葉では「単純接触効果」とも呼ばれています。営業パーソンが何度断られてもめげず相手に迷惑がかからない範囲で毎日訪問すれば、いつか相手と会話できるようになるという原理です。

(3)ハロー効果

ハローとは「後光」という意味の言葉。ある人が有名大学を卒業しているということだけで、優秀なビジネスパーソンと勝手に理解してしまう経験を持つ方も多いでしょう。これはハロー効果による現象です。小さな会社がホームページの取引先一覧に超一流企業を載せることも、ハロー効果を狙ったプロモーションと言えます。

(4)ウィンザー効果

ーザーはその会社が話す内容よりも、商品やサービスに対する第三者の評価を信頼する傾向があります。最近はほとんどの通販サイトが「お客様の声」を載せていますが、この現象もウィンザー効果を狙ったマーケティング施策です。

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◇行動心理学を使ったビジネステクニック

なお行動心理学の法則・原理を活用して、ビジネスなどの交渉をスムーズにする手法もすでに生まれています。コンサルタントとして知っておきたい基本的なものを2つご紹介しましょう。

(1)フット・イン・ザ・ドア

ビジネスの交渉によく使われる手法で、「段階的要請法」とも言われています。例えば、取引先に高額な製品やサービスの契約をいきなり迫り、対応してもらえなかった経験をお持ちの方も多いのでは。

「フット・イン・ザ・ドア」は最初に小さな質問をしてOKをもらって、それが成功したら少しずつ質問や依頼の内容を拡大させる手法段階的に承諾させるところが特徴で、最終的に本命である大きな依頼を承諾させることが狙いです。

 

実はこの手法、行動心理学の「一貫性の法則」(最初にした行動や信念をそのまま貫きたいという心理)を利用しているのも特徴です。ドアを小さく開けたところにセールスパーソンが訪問先のドアに足を入れ、少しずつドアを開かせるというところから「フット・イン・ザ・ドア」という言葉がついています。

(2)ドア・インザ・フェイス

「フット・イン・ザ・ドア」は段階的に承諾してもらう手法ですが、「ドア・インザ・フェイス」は逆の発想。最初に大きな質問や依頼をして一旦相手に断らせます。その後で本命の依頼を小さく見せることで承諾を得るのに成功するという手法です。実はこのテクニック、冒頭でお伝えした「返報性の法則」を利用しています。

 

最初に質問や依頼にNOと言わせることで相手に「貸し」を作り、その後返さなければならないという気持ちにさせてYESを引き出すわけです。セールスパーソンが断られることを前提に訪問先のドアから顔をのぞかせるという意味で、ドア・インザ・フェイスという言葉が使われています。

 

 

人の動きや現象を見れば、潜在的な心理状態がわかる?

 

行動心理学は、アメリカの心理学者JBワトソンが1913年に提唱した「行動主義」がもとになっています。行動心理学では「人の行動にはルールがある」という特徴があり、上記で紹介したようなさまざまな原理や法則がわかってきました。

 

こうしたルールに基づいて人の動きや現象を観察すれば、その人の心理状態についても知ることができるのです。人によって仕草や動きの特徴は違うため、行動心理学で完全に把握するのは難しいのも事実。でも行動や現象をもとに本音を知るヒントが得られれば、人間関係もうまくいきやすいのではないでしょうか?

(1)足を組む・腕を組むのは自己防衛のサイン?

「腕を組む」「足を組む」という行動は、行動心理学において「相手を受け入れたくない」という欲求がある状態と言われています。もしキーパーソンが会議中にこうした現象を見せたら、まだ納得していない部分がある可能性があるため、早急に結論にもっていくのは避けた方がいいかもしれません。目的を達成するには少し時間をかけて説得する必要があるかもしれない、と判断ができるわけです。

(2)鼻を触る仕草は不安の表れと言われる

また「鼻を触る」という仕草は、不安があるという心理状態を表していると言われています。商談中に取引先が鼻を頻繁に触っていたら、不明な部分があったり、何かに不安を感じている可能性があります。このような時、商談相手はメリットよりデメリットの詳しい説明を求めているかもしれません。この欲求にうまく対応できれば、安心感が高めることができ商談成立につなげられるかもしれません。

 

行動心理学を活用することで、言葉や表情だけでは読み取れない「これがしたい」「これはしたくない」といった欲求を持つ状態かどうか推測できるのです。

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「13種類の人の動き」から相手の価値観を把握する

 

行動心理学とは若干異なりますが、「人の動きをもとに行動の法則や価値観を知る」という考えもあります。ある研究室では、指をさす、体を前後に動かすなどの人の動きを13種類に分類し、それぞれに意味があると解説しています。

 

この「13種類の人の動き」もあらゆる人に当てはまる現象ではないため、場合によっては心理状態を判断しづらいこともありますが、基本的な法則を知っておくだけでも、ビジネスに応用できる可能性はあります。ここでは「13種類の人の動き」のうち、例として3つの動きに関する法則を解説します(※1)。

(1)一点注意の動き

対象になるものを見ながら指をさす「一点注意の動き」。この動きをした人は、相手を動かす力が強い「優位アクション」を取ったことになります。このような動きを多くする人は強いリーダーシップを持つことが多いため、こちらもそれを見越した対応をとることが得策です。

(2)注意不明の動き

上記と反対に、質問や発言をするときにふらふらとあいまいに手を動かしたり、身体をもじもじ・くねくねと動かしたりする動き「注意不明の動き」と言います。この行動には、「ものごとをはっきりさせない」という欲求があると言われています。周囲に気を遣っているのか、判断力に自信がないのか見極めが難しいところです。

(3)全体注意の動き

プレゼンや質問をするとき、両手を広げたり胸を張ったりと身体の内側から外側に大きく開く動きをする人がいます。この「全体注意の動き」は、「周囲の注意を自分に集中させたい」という欲求を持つ状態を表しています。

このタイプは、ものごとを全体的にとらえるのはうまいのですが、いざ具体的な例になるときちんと詰めていないことが多いといわれています。「明るくおおらかだが、大ざっぱでいいかげんなところもある人かも知れない」など、長所と短所を踏まえて接するようにしましょう。

 

 

行動心理学だけじゃない?人が思わず反応してしまう「仕掛学」とは

 

行動心理学は、「人の行動やしぐさを観察して人の心理をつかむ」という特徴があります。これでも十分役立ちますが、仕事を成功させるには「人に行動させる」ところまでつなげられたら素晴らしいですよね。

例えば、商談を交渉する中で相手の気持ちを理解しながらも、最終的には契約するという行動につなげる必要があります。でも実際には、こちらの思い通り行動してくれるとは限りません。そこでちょっとした仕掛けを使って自然に人に行動させる、「仕掛学」という研究が注目されています。

 

仕掛学を提唱しているのが、大阪大学大学院・経済学研究科の松村真宏教授。松村教授は仕掛学を使って、さまざまな社会問題を解決しています。よく知られている事例のひとつが、「真実の口」に似せた消毒器です。

 

これは新型コロナウイルスが蔓延する以前のことですが、ある病院で、来訪者の多くが手の消毒をしてくれないという課題がありました。そこで松村教授の研究室では、イタリアの観光地にある「真実の口」に似せた消毒器を作成。この消毒器は、口の部分に手を入れると消毒液が出るというのが特徴です。

つい口の部分に手を入れたくなる「仕掛け」にしたことで、消毒器の人気が出て子どもから高齢者まで多くの来訪者が手の消毒をするようになったそうです(※2)。

「大切なのは強制をしないこと。そして、自然にその方向にいざなうこと」と松村教授は語っています(※2)。

 

ビジネスでも同じです。強制しても相手が思うように動いてくれない経験を持つ方は多いのではないでしょうか。例えば社内のメンバーにデータ保管のルールを守らせる場合、強制するだけでは徹底できません。しかしフォルダ名をちょっとユニークな名前にして、楽しみながら整理できるような仕掛けを加えたら行動が変わるかもしれません。

 

ビジネスでも「行動させたいけれど強制はできない」というシーンは多いはず。社内のコミュニケーションや顧客へのマーケティングにも仕掛学を実践すれば、課題の解決につながりやすくなるはずです。

 

 

 

 

心理学は専門性が高いイメージもありますが、行動心理学はビジネスに手軽に取り入れやすいというのが特徴。周囲とのコミュニケーションがスムーズになる効果が期待できます。もちろんすべての人にこの現象が当てはまるわけではありません。ただチームビルディングに悩むときや顧客との関係をもっと深めたいとき、行動心理学をもとに実践すれば、解決の糸口がつかめるかもしれません。

人と関わる機会の多いフリーランスのコンサルタント、なかでも駆け出しの若手コンサルは人間関係に悩む機会が多いかもしれません。一方でこうした問題は質問する相手がなかなか見つからず、うまく対処できないこともしばしば。行動心理学は書籍も多く出版され、ビジネスに役立つ行動心理学が学べる教育講座もあります。

 

また人の心理を知るだけではなく、人を行動させる「仕掛学」にも注目したいところ。仕掛学は強制ではなく、自然に人に行動させるのが特徴です。こうした知識があるかないかで、課題解決のアプローチも変わってくるのではないでしょうか。うまく行動心理学や仕掛学を実践して経験を積み、人間関係も仕事も成功につなげていきましょう!

 

 

<参照>
※1:http://ugoki.cocolog-nifty.com/ningenkankei/13actionNK.html
※2:https://www.sankei.com/premium/news/181120/prm1811200003-n3.html

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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