ホワイトカラーの生産性向上のためのアプローチとは

最終更新日 2020年8月26日(水)
作成日 2017年2月22日(水)

作成日:2017/02/22

 

ホワイトカラーの生産性向上こそ経営成功のカギを握る

ホワイトカラーの生産性向上こそ経営成功のカギを握る

経営学の巨人P・F・ドラッカーによる著書『明日を支配するもの』の中に、次のように述べられている部分があります。

「20世紀の偉業は、製造業における肉体労働の生産性を50倍に上げたことである。続く21世紀に期待される偉業は知識労働者の生産性を、同じように大幅に上げることである」。

総務省統計局の調査によれば、昭和45年に43.7%だったホワイトカラーの割合は平成16年には55.2%まで増加し、労働者の半数以上が「専門的・技術的職業従事者、管理的職業従事者、事務従事者、販売従事者」となっている現状があります。いまや労働人口の半数以上を占めるホワイトカラーの生産性向上は、経営に不可欠ながら、日本においては1日10時間以上働く人の割合は4割を突破しているなど、長時間労働に代表される知的生産性の低さはよく知られている事実です。しかし、今後もホワイトカラーの生産性向上は企業経営の勝ち残りにとって不可欠であることはいうまでもありません。

 

マニュアル化が可能だったゆえにブルーカラーの生産性向上が成功した

マニュアル化が可能だったゆえにブルーカラーの生産性向上が成功した

ドラッカーが指摘するように、20世紀に「製造業における肉体労働の生産性を50倍」に上げることができたのは、当時の「ものづくり」の現場で、ジャストインタイム・カンバンに代表されるトヨタ生産方式や、5S、カイゼン、TQCなどの生産性向上手法が確立されたことによります。これにより、バブル崩壊とリーマン・ショック、その後の円高・デフレに至るまで、日本の製造業は世界市場における競争力強化を成し遂げることができたのです。

しかし、製造部門における生産性向上が比較的容易に成功した背景には、ブルーカラー業務においては定型業務が中心であり、基本作業のマニュアル化による業務改善が可能であったことによるところが大きいと言われています。

これに対し、営業職、企画職、専門職、マネジメント職などのホワイトカラーは、自分の判断力や思考力を使う非定型業務が主となります。生産性とは、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源のインプットに対する、企業が新たに生んだ価値=アウトプットの比率のことです。つまり、インプットに対してアウトプットの割合が大きいほど生産性が高いことになります。ところが非定型業務に携わるホワイトカラーの場合、インプットとアウトプットの指標を全員一律に設定することは不可能です。また作業のマニュアル化も困難で、非定型業務の生産性向上のためには一人ひとりの成長を待つしかありません。ここがホワイトカラーの生産性向上が難しいといわれる所以なのです。

 

ホワイトカラーの生産性向上を阻害する要因

公益財団法人日本生産性本部によると、経済協力開発機構(OECD)加盟国が計算した一人あたり労働生産性を他国と比べると、日本は34ヶ国中22位と低い水準にあります。

また、日本企業におけるパートを除く一般労働者の年間平均総実労働時間は2,030時間であるのに対して、ホワイトカラーの労働時間は2,238時間、特に男性ホワイトカラーは2,300時間と突出して高く、「生産性改善の余地が大きい」と指摘されています。ホワイトカラーの現場で業務改善が進まずに、このような現象が生まれた理由については、下記のような様々な指摘があります。

1.エンゲージメントの低さ

コンサルティングファームのタワーズワトソン社は、「日本では、エンゲージメント(仕事に関連するポジティブで充実した精神状態)レベルが高い社員は全体の15%、低い社員は 35%、非常に低い社員は50%であり、世界平均やアメリカと比べるとかなり差がある」と生産性が向上しにくい背景を推測しています。

2.ホワイトカラーの片務的組織依存

兵庫県立大学大学院のレポートでは、「日本企業に所属するホワイトカラーは、企業に対するロイヤリティーは高いが、保持するスキルの内訳は、労働市場で評価される一般的なスキルより、所属企業特有のスキルの割合が大きい」とし、「所属企業に対する特殊的熟練」が必要になるとしています。このため「一般的な労働市場で評価されうるスキル」の獲得が困難になったと指摘しています。

3.結果より努力を賞賛する考え方と、残業を前提にした仕事量と予算設定

ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社のロッシェル・カップ社長は、日本の労働生産性が上がらない理由として「日本企業の管理者は、部下の仕事を評価する場合に、そのアウトプットよりインプットに重点を置く傾向がある。残業は努力の現れとも言え、奨励される傾向にある」、「従業員が残業することが当たり前に思われており、残業をしないと仕事がこなせない状況を作り出している」と自身のブログでコメントしています。

また、早稲田大学の黒田祥子教授が指摘するように「日本の企業には、欧米のようなジョブディスクリプション(職務ごとに求められる業務内容の記述)がない。一人ひとりの業務範囲は不明瞭で権限も明確でなく、頑張る人ほど仕事が集中しやすい傾向にある」ことが、長時間労働を正当化し、生産性向上を阻害する原因のひとつなのかもしれません。

 

ホワイトカラーの生産性向上のためには何をなすべきか

ホワイトカラーの生産性向上を阻害する要因

ホワイトカラーの生産性向上のためには、業務の流れを分析し最適化するというBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が不可欠です。

BPRの手法としては、バランス・スコアカードがもっとも有名なもののひとつです。これは、経営ビジョンと経営戦略を実現するために「財務・顧客・業務プロセス・学習と成長」という4つの視点に基づく戦略マップを作成し、KPIを設定して進捗をマネジメントするものです。

 

具体的な手順は次の通りです。

1.経営ビジョンを策定する

2.ビジョン達成のために採る戦略を策定する

3.戦略実践のための重要成功要因の設定を行なう

4.戦略の達成度を評価するための業績評価指標(KPI)を設定する

5.KPIに対する(従業員の知識レベルや勤務態度などの)数値目標を設定する

6.目標達成のためのアクションプランを策定する

7.フィードバックにより修正を加える

また、デジタル技術の進歩により、企業内の各種データを自動車のダッシュボードのように視覚的に把握し業務改善に活かす「デジタルダッシュボード」や、大量のデータから有効な要素を抽出する「データマイニング」などを用いた、ホワイトカラーの中でもマネジメント層の生産性向上に役立つ「意思決定支援システム(DSS)」も登場しています。

さらに、コンサルタントやコンサルティングファームの中にもホワイトカラーの生産性向上のプロジェクトを行なっているところがあります。しかしほとんどの場合、個々の企業の実情に応じた改善を行なうもので、汎用的な仕組みを構築しているところは少ないようです。

例外の1つが株式会社エル・シー・エーホールディングス(旧・日本LCA)が開発した「知的生産性向上システムDIPS」で、次のような手順を経てホワイトカラーの生産性向上を図るとしています。

1.自分でゴールを明示する

2.業務に優先順位・重要度をつけて仕事を行なう

3.一工程最大2時間単位で達成できるまでメイン業務を分解する

4.メイン業務と雑用を分け、メイン業務時間は集中し、雑用をしない

5.ゴール達成までのスケジューリングを細かく行ない、実践する

DIPSはこれらをスケジューリングソフトを使って行なうもので、一種のホワイトカラー版TQCと言えなくもありませんが、限られた時間に大量の仕事をこなすために開発された手法としては評価できるものがあります。

 

ホワイトカラーの生産性向上の取り組みは一歩間違えると「労働時間は短縮されないのに業務量だけ増えた」という本末転倒の事態を引き起す可能性もあります。それを回避するためには、前出のジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社のロッシェル・カップ社長が指摘するように、「結果より努力を賞賛する考え方」や「残業を前提にした仕事量と予算設定」、「従業員の満足度は重視されない」、「“鬼上司”が許されている」といった、日本企業の組織風土改革が不可欠となります。

ベイン・アンド・カンパニー東京オフィスパートナーの長谷部 智也氏は、ハーバード・ビジネス・レビューの連載で、第三者としてのコンサルタントによる「現場の視点や現場の制約条件を汲み取りつつ、ある程度外科治療的な考え方で、第三者視点から短期間で最適解を出す方が大きな効果が得られるケースが多い」と述べており、その理由を、企業自身によるボトムアップ的なホワイトカラーの生産性向上運動は「必ずしも短期的な効果が望めない精神論や、意識改革に傾倒しすぎてしまうリスク」があるからだと指摘しています。生産性向上のための取り組み自体の生産性が低くなってしまった、という皮肉な結果を招かないためには、コンサルタントなどによる客観的な視点も採り入れながら検討していくことが必要になるのかもしれませんね。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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