ここが変だよ「日本人の働き方」労働生産性からみる日本
作成日:2016/10/14
日本は労働生産性が低い!?
「労働生産性」という言葉をご存知でしょうか?
一般的には、投入した労働量に対してどれくらいの生産量が得られたかを表す指標といわれ、一定の労働時間あたりの生産量で表します。
我が国ではこの値が他国と比較して低いことが以前から指摘されており、公益財団法人日本生産性本部の2015年の調査によると、その順位はOECD加盟国34か国中21位です。これは、OECD加盟国における先進主要7カ国の中で最も低いという状況です。
つまり私たちは、長時間働いているものの効率が悪く、残念ながら国全体のパフォーマンスにはあまり寄与していないということなのです。外国人からみても、日本人は勤勉であるとよく言われます。世界的に見ても高い教育レベルを常に維持していますし、母国語で大学教育まで行うことのできる国は稀です。
そのような高水準の教育を背景にした優秀な労働力によって、我が国の経済が支えられてきたことは確かでしょう。しかし、他国と比べて生産性が低いということは、その優秀な労働力が効率よく活かされてこなかったということを意味するのです。
☆あわせて読みたい
『フリーランス人材の悩みとは?業務委託の雇用形態とメリットデメリットを解説』
『フリーコンサルタントは副業でも稼げる?単価・種類・注意点を解説!』
高度経済成長期の名残り?日本で長時間労働が奨励される背景とは
では、どうして我が国の労働生産性は低い水準にとどまっているのでしょうか。
その背景には様々な要因があると思いますが、そのうちの一つに日本人独特の働き方に関する考え方が挙げられます。
たとえばノルウェーなどの北欧の国では、家族や大切な人々と共に過ごす時間が重要視される文化があるため、企業は従業員のライフスタイルを尊重すべく、フレックスタイム制などを積極導入しています。その結果、従業員の満足度は高くなり、限られた時間で高いパフォーマンスを発揮できるようになるという好循環が生まれていると言われています。
一方、日本では「労働=時間の提供」という些か極端な考え方が根強く残っており、従業員満足度もあまり重視されていないのが現状です。加えて「結果」だけではなく「過程」も相応に重視する評価制度や、残業を前提とした予算設定や残業代の存在もあり「長時間働くこと」が企業への貢献であるという価値観が蔓延してしまっているのです。
高度経済成長期の製造業や建設業においては、労働時間はその成果(生産量)と直接結びついていたのかもしれません。しかし、製造や建設の現場以外でのホワイトカラーの役割が増加し多様化している以上、働き方に関する考え方や、それに伴う人事評価の方法などは包括的に変えていく必要があります。日本はその点が遅れているせいで、労働生産性が他国に比べて低い状況に陥っているのではないでしょうか。
☆あわせて読みたい
『【SAPコンサルタント】未経験OK?激務?つまらない?資格が必要?仕事内容・年収・今後の将来性を解説!』
長時間労働をやめるには
労働生産性の低い職場では、「働く」イコール「身体的にエネルギーを使って長時間働くこと」であると認識されているのかもしれません。額に汗して遮二無二働くことこそが美徳であるという考え方も、それはそれで一つの価値観として尊重されるべきではあるでしょう。
しかし、そういった考え方が長時間労働を生み、近年問題化しているブラック企業や鬱病といった問題に繋がっている可能性は否めません。長時間労働は、生産性を低めるだけではなく、働く人々の健康を害する恐れも孕んでいます。現在、フリーランスや個人事業主としてご活躍されている方の中には、そういった課題を経験されて独立・起業された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、企業の業績が回復しても長時間労働の問題は殆ど解消されていないのが現状です。とりわけ、40代男性を中心とした働き盛りの年代に長時間労働が目立ち、有給休暇の取得率も低迷が続いています。過多な残業や休日出勤の結果、抑うつ傾向が強まり、心理的ストレスを感じている人も増え、本人だけではなく周囲の人たちや会社組織にも影響を与え、さらに家庭生活の崩壊などにつながっていくなど、もはや看過できないところまできています。
そこで、長時間労働から脱するための手っ取り早い方法は、「長時間労働をしない方が得をする」仕組みを導入することでしょう。たとえば、従業員ひとりひとりに自分の業務を「作業」ではなく「ビジネス」と捉えさせ、常に「収支」を考えさせ、より多くの利益を出した人、つまりより生産性高く仕事をした人が高く評価されるという仕組みにした企業があります。定時で帰宅しようが何時間も残業しようが、それは本人に委ねられ、結果としてパフォーマンスが高かった人が評価されるという評価方法にするのです。それにより自ら業務改善を行い、自ら業務効率化を実現するという力学が働くことになります。
経済学の世界に「収穫逓減の法則」があるように、仕事も長時間になればなるほどアウトプットの精度が低くなっていきます。初めの数時間と何時間も働いた後の1時間では同じ結果は出ません。長時間労働が続けば当然モチベーションにも悪影響を与えますし、それによって生産性も低下してしまいます。言われてみれば当たり前のような法則ですが、これに則っても、長時間労働からは脱するに越したことはないのです。
国として労働生産性を上げるには
もちろん、長時間労働をやめさえすれば生産性が上がるかというとそんな単純な話ではないでしょう。人手不足から仕方なく長時間労働が生じているケースも多いでしょうし、そういう場合は、現在充分に活用されていないフルタイム以外の労働力に目を向けるといったことも必要でしょう。
また、労働市場の流動性が増し、かつ社会のセーフティネットが充実することで、今よりも転職や退職がしやすい世の中なれば、雇用条件や待遇を改善しない企業は淘汰され、自然と長時間労働も減っていく可能性があります。日本全体としての労働生産性の低さを抜本的に解決するためには、企業単位や個人単位の努力だけではなく、国による法整備や制度設計が欠かせないのです。
高度経済成長期が終わった1973年から、今年で43年が経ちました。これからさらに同じ年月を経た2059年は、人工知能AIが人類の知能を超えると言われている2045年から10年以上も経過した未来です。人口が減り、人工知能AIに取って代わられる仕事が増える、そんな社会が到来する前に、働き方を見直して労働生産性の高い国にする―それは、今を生きる我々に課せられた使命かもしれません。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)