ランチェスター戦略に学ぶ弱者逆転の手法で独立・起業! ニッチマーケットの狙い方

作成日:2016/12/12

 

一点集中・一点突破こそ弱者が強者に勝つ唯一の手段

一点集中・一点突破こそフリーランスや個人事業主といった弱者が強者に勝つ唯一の手段

 

ランチェスター戦略とは、イギリスの自動車工学・航空工学のエンジニアであるフレデリック・ランチェスターが提唱した、戦闘法則を応用した経営戦略の手法です、戦略コンサルタントとしてご活躍されている方はご存知かもしれませんね。その手法について述べる前に、まずランチェスターの法則について説明していきましょう。ランチェスターの法則には、第1法則と第2法則があります。

第1法則は、昔の一騎討ちのような戦闘の場合、敵・味方ともに武器の性能が同じならば、兵力数が多いほうが勝ち、少ないほうが負ける、という理論です。これを数式で表すと、「戦闘力=武器性能×兵力数」となります。

これに対して第2法則は、近代戦のように集団と集団がぶつかり合った場合、戦闘力は兵力数の二乗になるという理論です。同じくこれを数式で表すと、「戦闘力=武器性能×兵力数」ということになります。つまり、武器の性能が同じであれば、兵力の少ない軍は必ず負けてしまうことになります。そこで弱者が勝つために考え出されたのが、「1点集中・1点突破」という局所優勢主義の理論です。経営におけるランチェスター戦略とは、この局所優勢主義を応用し、小さな企業が大きな企業に勝つためのスキームを作り上げることなのです。

そこで今回は、独立・起業したばかりのフリーランスや個人事業主の方でも強者に負けず、ビジネスで勝ち残っていくために知っておいて損はない、ランチェスター戦略についてご紹介します。

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ニッチ市場への集中戦略に弱者勝ち残りのチャンスがある

ニッチ市場への集中戦略に弱者勝ち残りのチャンスがある

 

ビジネスにおける局所優勢主義とは、独立・起業したばかりなどの理由で経営資源に限りがある小さな企業=弱者が、総合力に勝る大企業=強者に勝つために、特定の分野で優位に立てる経営戦略を構築することです。もっともわかりやすい例は、日本の自動車産業です。

コンパクトカーから高級車までを揃えるトヨタ自動車は、実に国内シェアの半分近くを占めているリーダー企業です。これに対して、国内10番目の自動車メーカーである光岡自動車は、クラシックカーを再現した超個性的なクルマづくりで、一部の熱狂的なファンを獲得しています。つまり、光岡自動車はニッチなマニア市場の中で独自のマーケティング戦略を築き、リーダー企業となったわけです。

では実際には、弱者はどのようなマーケティングで参入市場を探し、どのような戦略をとればよいのでしょうか?

まず大事なのは、ニッチ過ぎて大企業が関心を払わない市場を狙うことです。そして、そこにヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を集中投入し、大企業にはない「自社だけの強み」を確立することです。これを考える上でヒントとなるのは、アメリカの経済学者マイケル・ポーターが提唱した「競争優位戦略」です。この理論によれば、今日のような競争の激しい市場環境で勝ち残るためには、徹底して安い価格で商品を売る「コストリーダーシップ戦略」か、高価格・高性能など付加価値のある商品で勝負する「差別化戦略」をとり、狭い市場の中に自社の経営資源を集中的に投入することが必要だとされています。

たとえば、低価格帯のイタリア料理を提供するサイゼリヤは、典型的な「コストリーダーシップ戦略」で若者やファミリー層の支持を受け、高品質・高価格のハンバーガーで好調のモスバーガーは「差別化戦略」で成功を収めました。両社とも、自社だけの強みを徹底的に追求するというマーケティングを行うことで、ランチェスター戦略の基本である、一点集中・一点突破を実現したのです。

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強者は類似商品の投入で弱者の成功に対抗してくる

ランチェスター戦略は、弱者勝ち残りの経営手法として非常に有効ですが、常に強者であるリーダー企業の脅威にさらされていることにも注意を払う必要があります。なぜなら、独立・起業したばかりのフリーランスや個人事業主といった弱者が乏しい経営資源を傾けて差別化された製品を開発し、それが市場でヒットした場合、経営資源の豊かな強者は、すぐに同等の製品もしくは類似品を開発して市場に参入してくることができるからです。

では、なぜ強者は、弱者が開拓した市場にわざわざ参入するのでしょうか?

ひとつには、強者の経営目標は「市場シェアの維持・拡大」や「市場規模の拡大」であり、強者には、自社の優位性を少しでも脅かしそうな相手の出鼻をくじかなければならないという目的があるからだと言えます。

また、今日のように市場が成熟化し、なかなか商品が売れない時代にあっては、小さな市場でのヒットですら魅力的です。強者が売れる商品の真似をすることは、簡単に売上拡大につながるからでもあります。かつての松下電器産業が、他社にヒット商品が出たらすぐに類似製品を発売したことから「マネシタ電器」と揶揄されたのは、同社がミート戦略をとっていたからにほかなりません。こうした強者によるマーケティング施策を、ランチェスター戦略でいう「足下の敵」攻撃の原則といいます。

ただし、あまりにも露骨な真似は思わぬトラブルに発展するケースもあるので注意が必要です。かつてワタミフードサービスの成功に目をつけた飲食店業界大手のモンテローザが、「和民」に対して「魚民 」というブランド名でチェーン店をマーケティング展開し、訴訟合戦にまで発展しました。「月の宴」に関しても同様で、「月の雫」を運営する三光マーケティングフーズから訴えられたこともあります。これらはいずれも和解で決着しましたが、知的財産権などのコンプライアンス面で疑わしい過度なミート戦略は逆に自社の首を締めかねないという代表的な事例です。

 

フリーランスや個人事業主といった弱者が勝ち残るには限定市場の中でトップシェアを目指そう

フリーランスや個人事業主といった弱者が勝ち残るには限定市場の中でトップシェアを目指そう

 

それでは、独立・起業したばかりのフリーランスや個人事業主といった弱者が特定の市場で差別化戦略に成功しつつある時、強者によるミート戦略を逃れるためにはどうしたらよいのでしょうか?

これもまたランチェスター戦略の応用で、強者がミート戦略を仕掛ける前に圧倒的優位な市場シェアを獲得し、自らその中での強者になってしまうことが有効なマーケティング手法です。この指標となるのが、ランチェスター戦略における「クープマン目標値」、あるいは「クープマンモデル」と呼ばれるもので、市場占有率の割合によって強者か弱者かを判断するというものです。

詳しい説明は省きますが、各段階における必要なシェア目標は次のようになります。

(1)独占的市場シェア             73.9%
(2)安定的トップシェア          41.7%
(3)市場影響シェア                26.1%
(4)並列的競争シェア             19.3%
(5)市場認知シェア                10.9%
(6)市場存在シェア                  6.8%

ただ、現実的には、73.9%以上のシェアを占めることができるマーケティング市場はほとんどないと言っていいでしょう。そこで、目指すべきは、安定的トップシェアの41.7%以上ということになります。たとえば、セイコーエプソンはプロジェクター市場の46.6%、カルビーはスナック菓子市場の43.9%、オリンパスはICレコーダー市場の42.5%のシェアを占めています。また、トヨタの奥田碩・元社長も、経営目標の明確な旗として40%以上のシェアが必要であると発言しています。

つまり、独立・起業したばかりのフリーランスや個人事業主といった弱者が差別化戦略に成功したときに目指すべき次の目標は、その市場の中でのシェア41.7%以上であり、それが達成できれば、強者によるミート(追随)戦略も交わしうると考えられているのです。

 

一般に、ランチェスター戦略を経営に取り入れる際、一対一・局地戦で戦える第1法則が弱者の戦略であり、総合力が戦闘力の二乗となる第2法則が強者の戦略であると言われています。弱者は兵力の少なさを武器(差別化・集中化)で補い、その局地での戦闘で勝利をおさめるという考え方です。

しかし、旧日本陸軍参謀本部に所属し、後に東洋精密工業社長を経て兵法経営塾を主宰した経営コンサルタントの大橋武夫氏は、その著書『図解 兵法』の中で、ランチェスターの第2法則である戦力二乗の状況下でも弱者が強者に勝てる可能性を指摘しています。

その内容は、簡単にいえば、「社員一人ひとりの能力が同じならば、弱者も、営業部門であれ開発部門であれ、どこかひとつの分野に集中して経営資源を投入すれば、強者に勝つことができる」というものです。つまり、戦力の差が総合的に10対6だとしても、強者の戦力が1などの弱い分野に集中的に攻勢をかければ、戦力差は6対1に逆転し、弱者が勝つという提言です。負けることはないと思っていた強者は思わぬ事態に混乱するため、弱者はその間に、次に弱い分野の切り崩しをはかるという戦略です。このような考え方もできるランチェスター戦略は、独立・起業したばかりのフリーランスや個人事業主といった弱者が勝ち残るためのさまざまな施策を内包しています。

第1法則は弱者の戦略、第2法則は強者の戦略というステレオタイプの考え方をやめ、自社だからこそできる一点集中・一点突破の局所優勢主義から経営計画を構築することが、ランチェスター戦略の本当の目的であると言えるのです。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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