マズローの欲求5段階説とは?ビジネスでの活用方法について詳しく紹介

最終更新日:2023/11/28
作成日:2023/01/31

コンサルタントやPMとして働くユーザーの中には、従業員のモチベーションマネジメントに迷う方も多いでしょう。また、マズローの欲求5段階説はマーケティングにも活用でき事業戦略コンサルタントにとっても有効な思考理論です。別名「自己実現理論」などと呼ばれる「マズローの欲求」の活用方法を紹介します。

 

 

目次

■マズローの欲求5段階とは?
なぜマズローの欲求5段階説が生まれたのか

 

■マズローの欲求5段階を1段階ずつ解説
(1)生理的欲求
(2)安全の欲求
(3)社会的欲求
(4)承認欲求
(5)自己実現欲求
(6)6段階目の欲求「自己超越」

 

■マズローの欲求5段階の3分類
(1)物質的か精神的か
(2)外的か内的か
(3)欠乏か成長か

 

■「マズローの欲求5段階説」のマネジメント活用方法
(1)マネジメントの基礎「生理的欲求~社会的欲求」を満たす
(2)「承認欲求~自己実現欲求」を満たして強靭なチームができる

 

■マズローの欲求5段階説のマーケティング活用方法

 

■マズローの欲求5段階説が批判される理由

 

■マズローの欲求5段階説でマネジメントと事業戦略の最適化を

 

 

マズローの欲求5段階とは?

ステップアップするビジネスマン

 

マズローの欲求とは、人間の欲求が5段階で構成されていることを表したアブラハム・マズローの唱えた説です。「マズローの法則」「自己実現理論」などとも呼ばれています。マズローの欲求は、5段階に分けられ、最下層部にある「生理的欲求」から順番に上へ向かってクリアすることにより、最終的に自己実現に至るという理論です。

(1)なぜマズローの欲求5段階説が生まれたのか

マズローの欲求5段階説は「人間の心理を日常的な感覚で理論化しよう」というヒューマニスティック心理学から生まれました。ヒューマニスティック心理学とは、外側から観察された行動ではなく、感情などの主観的な心の動きを重視したアプローチです。

マズローの法則が生まれる以前は、「行動主義心理学」や「精神分析学」が主流となっていました。しかしそれぞれ問題点があったことから、より簡単に人間の心理を理論化するためにマズローの欲求5段階説が生まれました。

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マズローの欲求5段階を1段階ずつ解説

マズロー欲求理論図

マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求を「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つの階層に分かれているという理論です。

 

これらの階層はピラミッド状になっており、低い階層の欲求が満たされることによって次の段階の欲求を求めるようになります。

(1)生理的欲求

生理的欲求とは、マズローの5段階説の中で最下層の第一段階の欲求です。この階層は、食事や睡眠、排せつといった人間が生きていくための本能的な欲求を示した階層です。

 

動物の場合は、生命維持に必要なこの基本的な欲求が満たされると満足する種類がほとんどです。しかし、人間の場合、生命維持に最低限必須なこの階層に欲求が留まることは一般的ではありません。特に、現代の日本において、この生理的欲求段は憲法上でも満たされることが約束されたもの、と考えられています。

(2)安全の欲求

安全の欲求とは、身の危険を感じるような状況から脱したいという欲求です。心身共に健康、かつ経済的にも安定した環境で、安心して暮らしたいという、こちらも現代では多くの人が意識することなく日常を送る、かなえられて当然の欲求といえるでしょう。

 

ただし、成長発達の過程にある乳幼児の場合、安全の欲求が顕著に見られます。「保護者と離れると不安がる」「暗闇を怖がる」などし「保護者がそばにいる明るい場所を好む」といった行動は、幼児に見られて当然の様子です。しかし、成長するにつれて、次の段階へと進みます。

(3)社会的欲求

社会的欲求とは、集団に所属したり仲間を得たいという欲求のことです。「所属と愛情の欲求」ともいわれることもあります。具体的には、家族や友人、会社などから受け入れられたいと願う欲求です。

 

このような社会的欲求は「帰属欲求」とも呼ばれ、社会的欲求が満たされない場合、多くの人が孤独を感じ、エスカレートすると鬱などになりやすい側面もあります。現代社会を生きる人間にとっては所属できる集団が必要不可欠だと言えるでしょう。

(4)承認欲求

近年よく耳にするようになった承認欲求とは、他者から認められたいと願う欲求のことです。具体的に言うと「所属している集団の中で認められたい」、「他者から尊敬されたい」といった欲求です。

 

一般的な「出世欲」もこの承認欲求に当てはまると考えられています。第三階層までの外的な欲求と違い、「自分の内面を満たしたい」欲求といえるでしょう。

 

あまりよくない意味で使われることが多い承認欲求ですが、承認欲求を満たすことは行動のモチベーションに繋がります。自分のポテンシャルに気付いて自分自身を成長させる原動力にもなりえるのです。

(5)自己実現欲求

ここまでの第一階層から第四階層までの全ての欲求が満たされた場合に至るのが自己実現欲求です。自己実現欲求とは、自分が満足できる自分になりたいという欲求のことで、第1階層から第4階層までの欲求を満たしたうえでないと実現できないと考えられています。

 

自己実現の欲求は、自分の人生観・価値観などに基づいて「自分らしく生きていきたい」と願う欲求とも言えます。これまでの欲求と違い、「自分の生き方と向き合わなければ満たせない」という特徴があります。

(6)6段階目の欲求「自己超越」

マズローの欲求には、自己実現の欲求よりも一段階上の「自己超越の欲求」が存在しています。「自己超越の欲求」は後年マズローが付け加えたもので、自分のエゴを超えたレベルでの理念の実現を目指すものです。

 

自己実現の欲求は、たとえば「世界の貧困をなくす」などの自分の外側にあるものに対する貢献を指します。具体的には慈善活動や寄付などは自己超越の欲求だといえるでしょう。

 

 

マズローの5段階欲求の3分類

理論について勉強する


6段階目の欲求「自己超越」をのぞいた、マズローの5段階欲求は、それぞれの性質の違いによって「物質的か精神的か」「外的か内的か」「欠乏か成長か」という3つの分類できます。この分類は、一般的に「マズローの5段階欲求の3分類」と呼ばれています。それぞれについて解説していきます。

(1)物質的か精神的か

「生理的欲求」と「安全の欲求」は人として生きるために必須の欲求であるため、物質的欲求です。

 

一方、「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の3つは生命維持に必要ではありませんが、心の満足度にかかわる欲求であることから精神的欲求に分類されます。

(2)外的か内的か

「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」の3つは、自分の外側にある外部環境を満たしたい、満たされたいという欲求で外的欲求です。

 

一方、「承認欲求」「自己実現欲求」に関しては自分の内面を満たしたいという欲求になることから、内的欲求に区分されます

(3)欠乏か成長か

「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」は、自分に不足しているものを満たしたいという欲求なので、欠乏欲求です。

 

一方、「自己実現欲求」については全ての欠乏が満たされた状態で自分を高めたいという欲求で「成長欲求」に区分されます。

 

 

「マズローの欲求5段階説」のマネジメント活用方法

雇用条件の合意


マズローの欲求5段階説は「マネジメント」に活用でき、人材系コンサルタント、人事にかかわるスタッフには実践的な理論とされています。特に従業員のモチベーションアップにはマズローの5段階欲求の活用は欠かせないでしょう。具体的な活用方法を解説します。

(1)マネジメントの基礎は生理的欲求~社会的欲求を満たすこと

マネジメントの基礎として従業員のモチベーション維持・アップには第1の生理的欲求~第3の社会的欲求までの下層レベル欲求を満たすのが大前提です。

 

まず、生理的欲求と安全欲求は、企業に属している時点で満たされているべき欲求です。しかし、企業がハラスメントの横行や従業員にとって不利益な勤務条件の要求・低賃金など従業員の安全性を脅かすとこれらの欲求が満たされず、モチベーションが下がります。

 

従業員のモチベーションを求めるには、憲法で保証された「健康で文化的な生活」を約束できる雇用条件を提示し、生理的欲求を満たすことが第一です。加えて「安定した環境で働ける」という安全欲求を企業側が提供する必要があります。一言でいえば、企業は、生理的欲求と安全欲求を満たしてこそ、従業員のモチベーションを求められるのです。

 

安全欲求が満たされると、従業員は社会的欲求を望みます。一般的に人間は組織に受け入れられたいものです。心地よい対人関係がなければ社会的欲求が満たされることはありませんマネジメント側は従業員と積極的に接点を持ち、職場の環境づくりに努めるべきです。

(2)承認欲求~自己実現欲求を満たして強靭なチームができる

 

生理的欲求~社会的欲求が満たされると、人間は次に承認欲求が満たしたいと思うものです。承認欲求は「出世すれば満たされる」と考えられがちですが、マネジメント側が仕事内容や姿勢を認める発言をする、信頼関係を築くなどを意識するとともに、一見難しそうな新しい仕事を与えるなども承認欲求に応えるマネジメント方法だと考えられています。

 

また、表彰制度を設けたり、ある程度の意思決定の権限を与えたりするのも効果的です。頑張っている部下に一段階上のポジションを用意できなかったとしても、こうした励ましや賞賛・挑戦の機会を与えることで、従業員、ひいては企業全体のモチベーションアップにつながります。

 

第5段階の自己実現欲求も本来、誰しも持っている欲求ですが、マネジメント側が第4の承認欲求を満たそうと動くことで、従業員が自分自身の成長に関心を持ち、意識できるようになることもあるでしょう。

 

マネジメント側や企業は、仕事で自己実現欲求に達した従業員のビジョンを明確にさせ、ステップを上がる際の障害や課題をサポートできるよう意識しましょう。また、承認欲求と自己実現欲求を満たしたその先にどういったメリットがあるのか、提示する準備も必要です。

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マズローの欲求5段階説をマーケティングで活用する方法

見やすい5段階図

 

マズローの欲求5段解説はそれぞれの段階に、自社の事業を照らし合わせて分析することにより、マーケティングにも活用できます。というよりも、マズローの欲求5段解説に当てはめることがマーケティングの基礎だといわれています。

 

例えば、飲食に携わる事業の場合、顧客の「生理的欲求」は「空腹を満たす」ことです。「安全欲求」はより体に良いものを口にしたいという欲求。社会的欲求は「おいしいものが食べたい」「はやりの食品やメニューを試したい」、上位の「承認欲求」に照らし合わせると「映える料理・食事風景の写真をSNSにアップして自慢したい」「良いもの、高価なものを口にできる立場と示したい」といったニーズがあることがわかります。自己実現欲求は「この4つの欲求を満たした自分に満足できるか」といった内容になるでしょう。

 

ハウスメーカー、不動産業などにおける顧客のニーズは「雨風をしのげる家が欲しい」→「安全に暮らせる家が欲しい」→「平均的な家に住みたい」→「みんなにすごいといわれる家に住みたい」→「自分らしい暮らしが実現できる家に住みたい」とマズローの欲求5段階説に合わせてターゲットやサービス展開に反映できます。

 

このように、顧客のニーズをマズローの欲求5段階説の最下層から当てはめて分析することで、自社のビジネスの中で顧客のニーズを満たせていない部分、足りない事業が明らかになるでしょう。マーケティングとは、いわば商品が売れる仕組みを作ることです。マズローの欲求5段階説を用いて、どうすればどの層の欲求を満たせるのか考えることがマーケティング戦略の要です。

 

 

マズローの欲求5段階説が批判される理由

考える若手ビジネスマン

 

マズローの欲求5段階説は、歴史的な人物一人の生涯を参考に構築された理論です。理論構築の際の被験者が一人しかいないということから、マズローの欲求5段階説を否定する意見も多くあります。

 

しかし、マズローの欲求5段階説は多くの人の賛同を得ていることは無視できません。マネジメントやマーケティングの分野において大きな影響を与えたといえるでしょう。

 

 

マズローの欲求5段階説でマネジメントと事業戦略の最適化を

和やかで意識が高いチーム

 

マズローの欲求5段階説は、人間の欲求が生理的欲求から自己実現の欲求までの5段階で構成されているというシンプルな理論です。

 

マズローの法則は従業員のモチベーションコントロールやマーケティングに活用できます。そのため、事業戦略や人材にまつわるコンサルタントやマネジメント側のビジネスマンはマズローの欲求5段階説を押さえ、段階的に施策をたて、試してみるのがおすすめです。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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