規模の経済とは?コスト削減を可能にする働きとメリット・デメリット
最終更新日:2023/12/26
作成日:2021/08/12
規模の経済を利用してコストを削減するには、範囲の経済および経験曲線効果との違いや、その仕組みを知ることが大切です。規模の経済のメリット、デメリットや具体的な活用成功事例・失敗事例などをご紹介します。
目次
■規模の経済と範囲の経済/経験曲線効果/スケールメリットとの違い
(1)範囲の経済との違い
(2)経験曲線効果との違い
(3)スケールメリットとの違い
■規模の経済4つのメリット
(1)ライバル会社が参入困難
(2)利益増大
(3)1製品あたりのコストが削減
(4)価格競争への勝利
■規模の経済4つのデメリット
(1)規模の不経済
(2)生産量にムラがあると逆効果
(3)初期投資のコストが莫大
(4)生産量がい一定を超えると損
※本コラムは、2022年3月17日に「規模の経済とは。コスト削減ができる仕組みと4つのメリット」を再構成したものです。
規模の経済とは
「規模の経済」とは、定まった生産設備を使用し、生産量が増えると単位あたりの費用が減少して利益が大きくなること。つまり、生産するひとつの製品の製造量を増やすことでその製造コストを下げ、シェアを増大して販売量を増やし、好循環させることで利益拡大を狙う働きのことです。
規模の経済と範囲の経済/経験曲線効果/スケールメリットとの違い
規模の経済はたびたび「範囲の経済」「経験曲線効果」「スケールメリット」と混同されることがあります。これらのビジネス用語と規模の経済の違いについて紹介します。
(1)範囲の経済との違い
生産する数を増やして製造にかかるコストを抑えるのが「規模の経済」です。一方「範囲の経済」とは英語で「Economies of scope」と表記され、製品の種類、事業を増やすことで企業全体のコストを下げる効果を指します。ひとつの企業に複数の事業が集約されている業態のことを「範囲の経済」といいます。
(2)経験曲線効果との違い
英語で「Experience Curve Effect」と表記される「経験曲線効果」も、規模の経済と同じくコストが下がる効果を曲線で表したものです。規模の経済との違いは、製造規模ではなく、経験値を上げることで効率が良くなり、コストを下げる効果が得られる点です。「経験曲線効果」は経験を蓄積してこそ得られる効果なので、一定の時間を要します。
(3)スケールメリットとの違い
「スケールメリット」は規模を大きくしたことで上がる利益や効果のこと。最近、よく聞かれるようになったビジネス用語で、規模の経済の類義語として使われることが多いですが、規模の経済は、規模の大小による影響を受けやすい経済活動を表します。
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規模の経済4つのメリット
企業が規模の経済を実現するとさまざまなメリットがあります。4つに分けて詳しく見ていきましょう。
(1)ライバル会社参入が困難
規模の経済の効果によって、ひとつの製品のコストが減少して競争力が高い状態になると、ライバル会社が参入しづらくなります。ライバル会社は、すでにコストを抑えている企業と競争することになるからです。
つまり、ライバル会社は、製品の売り出し初期から、さらに低価格を提供・販売しなければならないため、参入するメリットがあまりありません。よって、その製品で規模の経済の恩恵を感じている企業がトップシェアを狙いやすいというわけです。
(2)利益増加
規模の経済には「規模の利益」という別称も。生産する規模を拡大することで利益も大きくなり、うまく販路を利用できれば莫大な利益へとつながるといわれています。
売り上げが順調なときは、現設備で生産できる限界まで利益が増え続けることも期待できます。
(3)1製品あたりのコスト削減
コスト削減こそ、まさに規模の経済のメリットだといわれています。生産する量が増えるほど、1製品の製造にかかる費用、配送費などが抑えられるからです。
(4)価格競争への勝利
製品の単位あたりの費用が減少し、生産量が増えると企業に価格競争に耐えられる体力がある状態になります。生産量が多くなればなるほど安価での製品製造が実現できるようになるためです。
こうなると、さらに低い販売価格の設定も可能になるケースがほとんどです。このように「規模の経済」が働いている状態が続くと、「生産量が増え、1製品当たりのコストは減少し、販売価格をさらに下げても利益が出せる」というサイクルが生まれるのです。価格競争に強い企業は、このような流れで製品を生産、販売し続けているところが多いでしょう。
規模の経済4つのデメリット
メリットばかりが注目されがちな規模の経済ですが、デメリットもあります。規模を大きくしすぎたり、効果を得るための初期投資への負担が過剰になったりすることによるものです。規模の経済のデメリットを一つ一つ紹介します。
(1)規模の不経済
規模の経済は、効果を得るために原則があります。「規模の経済効果を得るのには範囲がある」というものです。
規模を拡大しすぎると増産のための新たな設備やスタッフなどが必要になり、コストがあがります。つまり「規模の不経済」が起きるということです。
(2)生産量にムラがあると逆効果
規模の経済は、生産量に波がある状態を繰り返していると効果を得られません。精算規模に時期によってムラがあるとかえってコストがかかり、不経済な状態を招きます。
例えば、材料が無駄になったり、一方で別の材料は不足したりして非効率な生産体制になるような状態です。規模の経済の効果を期待するのであれば、常に一定量の生産量維持を図ることが重要です。
(3)初期投資のコストが莫大
初期投資のコストが大きいのは、規模の経済最大のデメリットといえるかもしれません。比較的、規模の経済効果が表れやすい製造業などでは、大量生産できる機械などへの初期投資が莫大なものになるケースも多々あります。初期投資を回収できるよう、バランスを取らないと大きな赤字となるケースも考えられるでしょう。
初期投資を回収する前に製品が売れなくなると負債を抱えてしまうリスクもあります。
(4)生産量が一定を超えると損
生産量が増加すればするほど、コスト削減を可能にするのが、規模の経済のメリットです。しかし、1つの機械が製造できる許容範囲を超えた生産量を強いられると逆にコストが増えるという現象が起こります。
たとえば、1台で10万個製造できる製造機しかないのに、13万個作らなければならなくなったとします。納期を遅らせる等の措置ができない場合、余分な3万個分を製造するために、もう1台製造機を購入しなくてはならなくなり、莫大な購入費用が発生してしまうのです。
規模の経済の効果を最大にするためには、機械の許容範囲の最大値で製造、販売し続けなくてはなりません。また、機械の許容範囲を超えたら、機械の購入費用だけではなく、在庫管理費用や人件費なども追加でかかります。規模の経済を狙った事業拡大を計画している際は、機械の許容量と受注のバランスをよく理解することが大切です。
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国内の規模の経済の成功・失敗事例
日本における規模の経済の成功事例として、自動車メーカーが分かりやすいでしょう。材料などを大量に最大限安く仕入れ、利益率を最大化して販売しています。
反対に、隙を突かれたのが日本の液晶パネルメーカー。日本での液晶パネルの生産量が横ばいになっていたときに、大規模な投資を続けた韓国や台湾の液晶パネルメーカーに規模の経済の効果を最大限に見せつけられ、衰退してしまいました。
また、大手コンビニエンスストアやスーパーなどのプライベート商品も規模の経済効果の活用例です。工場で集中的に商品を製造し販売しています。
規模の経済に適した組織構造
組織構造の中で、規模の経済に適しているのが「機能別組織」です。事業に集中できる機能別組織は、規模の経済の効果を発揮しやすい組織構造になっています。
専門職に特化している機能別組織は技術や知識を共有しながら、経験を積んでいくことでスキルを向上していける組織です。企業の経営効率が良く、事業の規模が大きくなればなるほど、規模の経済の効果を活用できます。
規模の経済はメリット・デメリットのバランスをとって活用を
規模の経済では、生産規模を高めていくことでコスト低減を図る、経済の仕組みを利用した現象です。ライバルとの競争においても有利に働き、さらに業界標準となった製品やサービスは、企業に莫大な収益をもたら可能性もあります。ただし、コストと生産性のバランスなどをよく加味しないと規模の経済の効果はメリットとデメリットが逆転する場合もあります。
しっかりとしたリサーチのもと、利益率向上と事業拡大を狙える規模の経済を活用してみましょう。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)