【監修】社会人が経営やマーケティングを大学で学ぶ意義とは

最終更新日:2020/06/26
作成日:2019/05/31

社会人として活躍している人が、さらにレベルアップするために経済や経営を学びたいと考えるケースが増えています。独学では学び切れない実践的な知識を得るために、ビジネスセミナーや人材育成プログラムを利用したり、マーケティングを大学で学んだりするケースも増えて来ました。社会人が経営の専門家からビジネス戦略やマーケティングなどの販促を学べる大学について掘り下げます。

 

目次

■マーケティングを学べる大学は増加している
(1)仕事と並行できるMBAプログラムが人気
(2)マーケティングとは何か

 

■大学で学べるマーケティングとは
(1)理論?実践?習得したい手法によって学部を検討する
(2)有名大学でもマーケティングを学べる

 

■社会人で賑わうマーケティングを学べる大学
(1)現代の経済活動の絶対的存在「Webマーケティング」
(2)専門知識の向上やMBA取得が目的

 

■社会人はマーケティングを学ぶ大学をどう選ぶべきか
(1)夜間、土日、オンライン・・・学び方にも多様性がある
(2)重要チェックポイントは、仕事と両立できる履修制度が整っているか
(3)得られる人脈にも注目を

 

※本コラムは、2020年6月26日に「コンサルが経営をマーケティング大学で学ぶ意義とは」を再構成したものです。
※本コラムは、営業力・マーケティング力支援、経営企画業務支援などを行なうコンサルタントが監修しています。
※新型コロナウィルスの影響で、社会の状況や各大学の受け入れ状況等に変化がある可能性があります。利用する際は別途関係各所に必ずお問い合わせください。

 

マーケティングを学べる大学は増加している

(1)仕事と並行できるMBAプログラムが人気

一昔前は、マーケティングは何学部何学科を選べば良いのかわからない、そんな疑問を持っている人もたくさんいました。基本的には経済学部、経営学部、商学部などで学ぶことができますが、近年ではマーケティング専門のゼミも多く開かれるようになっているのでかなり探しやすくなったと言えるでしょう。

 

現在の学生なら、マーケティングを学んだりMBA取得を目指したりする時に、大学の学部や学科選びで困るような環境ではありません。マーケティング専門の学部や学科を持つ大学も増えていますので、しっかりキャリアパスを描くことができます。

 

同時に、すでに社会人として活躍している人を対象としたマーケティング大学も増えています。ビジネスセミナーなどは昔からありましたが、セミナーではなく大学へ入学して本格的に学ぶというスタイルです。

 

仕事と並行して実践的なMBAプログラムを学べるグロービス経営大学院(※1)なども非常に人気が高まっていますが、その理由にはここ数年の経済の変化が挙げられるでしょう。

 

周知の通り、インターネットの普及やSNSの急激な発展は世界の経済活動を大きく変化させました。マーケティング戦略においても、基本的な概念に大きな変化はないものの、もはやWebマーケティングのノウハウなしに経営戦略や販促戦略を語ることはできなくなっています。

 

経営や販促など日々マーケティング業務に携わっている社会人も、あらためてマーケティングとは何かを考え直す時代に突入しています。過去大学の学部で学んだ学科知識だけでは、マネジメントが追い付かなくなっていることは否めません。

 

そのためWebマーケティングのビジネスセミナーへ通ったり、人材育成プログラムを修得したりしながらノウハウを蓄積し、足りない部分をマーケティング大学に求める社会人が増えています。

 

また、独立してフリーランスを目指す経営コンサルタントやITコンサルタントなどが、MBA取得などレベルアップを目指して大学院に通うケースも多くなっています。

(2)マーケティングとは何か

あらためて考え直す時期に突入しているマーケティングですが、そもそもマーケティングを一言で表せば「効率的・効果的に商品・サービスを売る仕組みを作る」ということになります。

 

もちろん、それは、商品・サービスを企画する段階から始まり、出来上がった商品・サービスの販売・提供方法や販促計画、広告制作などまで一連の経済活動を網羅します。

 

マーケティングとは、いかにして商品・サービスを売るかの戦略。顧客視点に立ってそれにどのようなセリングポイントを持たせるのかは当然のこと、価格をどうデザインするか、流通や店舗をどう構えるか、どのメディアで広告を展開するか、特に、近年ではWebマーケティングをどう取り入れるか、さらには、プロモーションやキャンペーンをどう展開するかなど、その戦略を効率的・効果的に立案・実行するプロセスに他なりません。

 

これらは、マーケティングにおいて最も重要なフレームワークである「マーケティングミックス」の構成要素になっています。さらに、商品・サービスのライフサイクル、消費者の購買行動、ブランディング、顧客との関係性など、さまざまな分野にスポットを当てた分析や実践が展開されているのも、マーケティングの裾野の広さを表わしています。

 

マーケティングを実践するにあたっては、その業種や業態は一切問いません。マーケティングの基本さえ押さえれば、あらゆる市場でその手法・ツールを活用することができます。それ故に、近年マーケティングニーズが急騰しているのも当然のことと言えるでしょう。

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大学で学べるマーケティングとは

(1)理論?実践?習得したい手法によって学部を検討する

マーケティングが学べる大学では、マーケティング戦略の立て方を教えるのが一般的です。学部や学科にマーケティングと銘打つ大学も増えましたが、従来のように経済学部、経営学部、商学部内にマーケティング学科や専門ゼミを設ける場合も増えています。

 

おおまかに言えば、経済学部で学べるのは経済の全体理論であり、経営学部で学べるのは実践的な企業経営術です。商学部も経営学部寄りで、実践を学ぶための学問とされています。

 

経済学部では、哲学的にアプローチする古典経済や数理的にアプローチする近代経済の理論を修得し経営学部と商学部では実際に企業を運営する実務面を修得する違いがあることは頭に入れておくと良いでしょう。

 

つまり、経済学部や経済学科で学ぶなら、近代経済学を学びつつ市場経済の論理的理解とともにマーケティングを習得することができますし、経営学部や商学部で学ぶなら、よりダイレクトに実践的なマーケティング手法を修得できることになります。

(2)有名大学でもマーケティングを学べる

神戸大学や一橋大学など歴史も古い国立大学では、かなり早くからマーケティングが学べる環境がありました。神戸大学は日本初の経営学部を設立した大学ですし、一橋大学は日本初の商学部を設立した大学です。

 

各分野を代表する教授が実践に基づいたマーケティングや経営戦略を教えているので、これからマーケティングを学びたい学生にはおすすめです。他にも早稲田大学商学部慶應義塾大学商学部京都大学経済学部はマーケティングを学べる大学と言われています。

 

社会人で賑わうマーケティングを学べる大学

(1)現代の経済活動の絶対的存在「Webマーケティング」

社会人としてマーケティング業務に携わって来た人なら、ここ数年の実践的なマーケティング戦略の変化は身を持って体験していることでしょう。インターネットの普及からスマートフォンの国民1人1台以上時代を迎え、経済活動の舞台も販促計画の舞台もWebマーケティングが絶対の存在に変貌しつつあります。

 

マーケティングにおけるビジネスセミナーや人材育成においてもWebマーケティングが基本となっており、Webにおける集客や問題解決がメインテーマとされています。

 

特に商品開発や広告制作に携わる人であれば、すでにWebマーケティングの基本知識を持たずに業務を行なえる環境ではないでしょう。企業にとっても、商売のメインステージがホームページに移行している以上、そこで戦える特色あるサービスやコンテンツなくして経済活動は行なえません。

 

また、企業の経営戦略に関わる経営コンサルタントやインフラ整備に関わるITコンサルタントにおいても、Webマーケティングの基本知識は必須となっています。これは集客においても企業の問題解決においても、Webマーケティングをベースに考えざるを得ない時代になっているためです。

 

こうした背景から、ここ数年、Webマーケティングが学べる大学がどこも社会人で賑わうようになりました。大学では、マーケティング全般の講座はもちろんのこと、Webに特化した講座のほか、財務会計、人事組織など幅広い経営ジャンルの講座を設け、議論を通じて問題解決するスキルを実践的に学んでいきます。

 

教員がビジネスの最前線を知る経営者らが務める大学もあり、高度で専門的なスキルを持つ人材を育成することを目指しています。こうしたビジネス系の専門職大学院では定員数の半数近くが社会人であり、夜間や土曜日などを利用してレベルアップを図っているのです。

(2)専門知識の向上やMBA取得が目的

大学でマーケティングを学ぶ社会人の動機としては、すでに一定の実務経験を積んだ上でマーケティングを体系的に学び、スキルの幅を広げたいという思いがあります。

 

転職のためのレベルアップや独立のためのスキルアップなどが目的の人も多く、卒業後にMBAの学位を得られることも大きな理由でしょう。日本企業では、まだMBAが採用の決め手になるまでの風潮はありませんが、外資系企業などはMBAをかなり重視していますし、今後は日本でも理解が進む傾向が見られます。

 

まだMBAを取得しても企業内で処遇が改善されたり賃金が上昇したりすることは少ないようですが、独立時などに企業の信頼を勝ち得る武器になることは間違いないでしょう。

 

また大学内でさまざまな異業種の人たちと交流が生まれ、人脈づくりに繋がるのも魅力の一つです。ビジネス環境は急速に変化しており、経営リスクを管理するためにも専門知識の向上は大いに役立ちます。

 

海外事業の立ち上げや世界に向けた販促計画、広告制作に携わる人材にとって、MBAの知識は戦略の練り込みやプレゼンテーションに活かせるスキルになるでしょう。

 

 

社会人はマーケティングを学ぶ大学をどう選ぶべきか

(1)夜間、土日、オンライン・・・学び方にも多様性がある

社会人がマーケティングを学ぶために大学に通う場合、一番気になるのは本業との兼ね合いでしょう。業務に支障が出ては本末転倒ですので、実際に仕事をしながら通えるかどうか、不安は少なからずあります。

 

基本的には、やはり夜間や土日などを利用して通える大学院が人気です。ライフスタイルに合わせてオンラインクラスを選べる大学も登場しています。通学と同じようにリアルタイムに教員や他の学生と議論が可能で、業務に支障のない中で自由に学べる環境があるのは嬉しい限りでしょう。

 

またオンラインなら、転勤や引っ越し、結婚や子育てで生活環境が変わっても、学校を変える必要がないのも利点です。他の生徒との交流も楽しみたいなら、都合に合わせて学科ごとに受講スタイルを選ぶのもおすすめです。

 

また、学習用動画を配信している学校もあり、空いた時間に効率的に基礎知識を体系的に学べるサービスなどもあります。通勤中などでも予習、復習可能で、忙しい中でも時間を無駄なく使えるのは有意義です。

 

では、社会人はどこに着目して大学を選ぶべきでしょうか。まずは自分が身につけたい専門知識を明確にして、目的が叶えられる学校を選ぶのは基本です。マーケティングと一言で言ってしまうと広すぎるので、経営戦略を学びたいのか、販促計画や広告制作を学びたいのか、理念として経済学を学びたいのかでも大きく方向性は変わるはずです。

 

MBA資格を取得したいのかマネジメントや集客ノウハウを学びたいのかでも異なります。いずれにしても人材育成と問題解決スキルの向上は期待できますが、目指すところは明確にしておきましょう。

(2)重要チェックポイントは、仕事と両立できる履修制度が整っているか

大切なのは、学部や学科名などに縛られず、学べる特色についてカリキュラムや教員なども事前によく調べることです。授業の進め方が自分に合うのか、学習環境はどうか、学費やキャンパスの場所などもチェックポイントになります。

 

何より働きながら学ぶ以上、開講形態と立地は重要なチェック項目でしょう。また、業務によりどうしても思うようなスピードで学べないことも考えられますので、長期履修制度などがあると安心です。

 

そして学費は最初に問題解決しておきたい点です。一概に言えませんが、相場にも開きがあり、初年度で100万円~350万円程度と幅があります。筑波大学大学院ビジネス科学研究科のように入学金28万円程度、授業料年額54万円程度というところもありますし、オンラインのみにすることで学費を抑えているところもあります。

 

ただいずれにしても安い金額ではありませんし、社会人なら学費を親に頼るというのも考えにくいので、自力で無理なく目標達成できる学校を選ぶのが一番です。

 

また、社会人の入試は必ず学生と同時期に行なわれるとは限りませんので、募集要項はしっかり調べる必要があります。過去問をチェックし、説明会などに積極的に参加して試験傾向を調べることも大切です(説明会の実施状況などについては個別にお確かめください)。

(3)得られる人脈にも注目を

社会人がせっかく学校に行くのですから、ぜひ意識しておきたいのが人脈づくりです。もちろん学生も就職のことを考えれば人脈づくりは大切ですが、社会人にとってはより即効性のある起爆剤になる可能性もあります。なるべく多くの異業種の人とディスカッションし、広く多様な意見に触れましょう。

 

そのためには、どんな業界のどんな年齢層の人が通っている大学なのか、事前に調べておくのも良い方法です。特に転職希望者や独立希望者なら、修了後の進路などもチェックしてみると視野が広がるでしょう。

 

プロの人材派遣サービスに人材登録し、同じく登録している人がいれば情報交換しておくのもおすすめです。自分の考えや職場の考えだけで固まらず、より外に目を向けることができれば具体的なキャリアパスを描くことができるでしょう。

 

なお、近年では、社員のキャリア形成、スキルアップを目的に、社会人大学への入学支援を行なう会社が大手企業を中心に増えているようです。支援のある会社では授業料の援助があったり、勤務時間に融通が利いたりする場合があるようなので、会社にお勤めの方は一度調べてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

今回は、マーケティングを学べる大学や大学院が、ここ近年社会人で賑わっていることをご紹介しました。ビジネスセミナーや人材育成プログラムではなく、大学に入学して学問を修得する道を選択する人が増えています。実践的なマーケティング戦略を学んだり、MBAを取得したり、目標は一人ひとり違いますが、変化する世界市場に対応できるスキルを身につけることは大きな武器となるでしょう。

 

また、マーケティングの理解が進むと、社内・組織をマーケットに見立てて、あなたのキャリアプランを描くことに応用することもできますし、フリーランスのコンサルタントとして独立を志すのであれば、そのマーケットでいかに自分をプロモーションしていくかというあなた自身の事業戦略を構築する際にも役立つ知識となります。

 

日々の仕事を継続しながら、大学に通ったり、講義を受講したりすることは相当な負荷を伴いますが、マーケティングは、コンサルタントには欠かすことのできない知識の一つ。大学に通ってでも習得するべき領域と言えるでしょう。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

 

< 監修者プロフィール >
大野 晴司(おおの せいじ)

東京都立大学(現首都大学東京)卒業後、日産自動車で国内のマーケティング部門や系列ディーラーでの営業マンや本社販促部署長などを経験。中小企業診断士資格取得のために退職、2003年3月資格取得。その後、マーケティングリサーチ会社、自動車関連メーカーを経て、2008年にビズ・エキスパート株式会社を設立。神奈川・東京の中小・中堅企業の営業力・マーケティング力支援のほか、経営企画業務、新規事業支援を主な事業として活動中。また、企業向けセミナー講師なども務める。

ビズ・エキスパート株式会社:http://b-ex.biz/index.html
プロフェッショナリズムインタビュー:https://freeconsultant.jp/workstyle/w020

 

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