着々と拡大するシェアリング・エコノミービジネス

作成日:2018/10/29

使わなくなった「モノ」、空き部屋や貸し会議室などの「空間」、知識や家事や育児などの「スキル」、クラウドファンディングのような「お金」などを“共有”するシェアリング・エコノミー。シェアリング・エコノミービジネスに参入したい企業はもちろん、ビジネスパーソンもいるでしょう。シェアリング・エコノミーの事例や成功のポイントを改めておさらいしましょう。

所有から利用へ——注目を集めるシェアリング・エコノミー

所有から利用へ——注目を集めるシェアリング・エコノミー-1

 

株式会社メルカリは東証マザーズ上場の承認を受け、2018年6月に上場しました。メルカリといえば、さまざまな事業を意欲的に展開して日本のスタートアップ市場を牽引してきた企業ですが、その事業の筆頭にあがるのはなんといってもフリマアプリ「メルカリ」でしょう。アプリを介して個人と個人がさまざまなものを売買するかたちで“シェア”するフリマアプリは、日本におけるシェアリング・エコノミービジネスの大きな成功事例の1つといえます。

 

個人が所有する有形・無形の資産を、Webやアプリなどのシステムを利用して自分以外の人と共有し、交換・売買できるようにするシェアリング・エコノミーは、世界のさまざまなところで活用が進んでいます。生活を便利にし、経済の活性化も促すシェアリング・エコノミーは、スマートフォンやSNSの普及も相まって日本でも取引が着々と拡大。「平成29年(2017年)版 情報通信白書」によれば、日本国内におけるシェアリング・エコノミーの市場規模は2015年度はおよそ285億円、東京五輪が開催される2020年までには600億円規模に拡大すると予想されています(矢野経済研究所調べ)。

※出典: 平成29年版情報通信白書(PDF版) スマートフォン経済の拡大をもたらす新サービス群

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「モノ」をシェアするフリマアプリ——メルカリ

「モノ」をシェアするフリマアプリ——メルカリ-2

 

日本では利用に抵抗を感じる方も少なくないと言われるシェアリング・エコノミーですが、「モノ」をシェアする分野のシェアリング・エコノミーは利用が進んでおり、参入も活発です。その筆頭が、前述のフリマアプリの「メルカリ」。メルカリには、家具や洋服、雑貨といったさまざまなジャンルのモノが日々出品されており、使わなくなったものを所有する個人と欲しいものがある個人が取り引きを行なっています。

 

「必要なものを必要なときに」というニーズに応えるサービスとしては、古くからレンタルサービスがありますが、フリマアプリやフリマサイトでのシェアはモノの所有権が移転する点がレンタルとは異なります。その点では、フリマアプリによる「モノ」のシェアは「所有から所有へ」ですが、使わなくなったら今度は自分が売りに出すことで、最終的には「所有から利用へ」となるというわけです。

 

売買形式でのシェアという点では従来はオークションサイトが利用されてきましたが、メルカリなどのプラットフォームではスマートフォンアプリを使って手軽に出品・購入できることで、若年層の支持を集めることになりました。

 

メルカリの場合、利用者同士が名前や住所を教え合わなくても商品を配送できる「らくらくメルカリ便」や、郵便局と連携して簡単・お得・安心な配送を可能にする「ゆうゆうメルカリ便」、独自の補償サービス「あんしんメルカリケア」などの仕組みを積極的に整備しているのも、使い勝手を高め支持を獲得したポイント。そうしたプラットフォームの設計は、この分野に参入したいと考える企業にとっては参考にすべき点といえるでしょう。

 

 

「スキル」をシェアするコミュニティ——エニタイムズ

「スキル」をシェアするコミュニティ——エニタイムズ-3

 

自分の知識や能力、労働力などの「スキル」をシェアする分野も近年普及が進んでおり、さまざまなサービスが参入しています。株式会社エニタイムズが提供する「Any+Times(エニタイムズ)」もその1つ。エニタイムズは、個人がもっているスキルや空いた時間に着目し、家事代行から習い事まで生活に関するさまざまなサービスを受けたい人と、提供したい人をつなげるサービスを提供しています。

 

販売したいスキルや時間をもつ人は、自分の得意な「サービス」を手軽に販売することができます。反対に「こういうことを頼みたい」という課題を抱えた利用者が「リクエスト」を掲示することも可能。販売者と利用者がシステムを介して申請、相手が受け入れれば取り引き成立です。

 

もともとはPCからの利用が大半であったエニタイムズも、いまでは多くのユーザーがスマートフォンでアプリを介して手軽にやりとりしています。その分心配なのがサービスの質や提供者の身元、料金の支払いといった点ですが、費用は前払い、事務局による本人確認やパトロール、取り引き終了後の相互評価といったシステムでそうした懸念をサポートしています。

 

副業的に「スキル」を提供して副次的な収入を得たいと考えるビジネスパーソンだけでなく、起業の前段階として「サービス」を提供して反応をみるといった使い方も。「ご近所助け合いアプリ」を謳うエニタイムズは、ご近所同士のコミュニティ作りを目指しており、社会参画を促す仕組み作りに貢献し得る存在としても注目されています。

 

 

荷物を確実に預ける「空間」をシェア——エクボクローク

荷物を確実に預ける「空間」をシェア——エクボクローク-4

 

個人が所有する空き部屋などの「空間」をシェアする分野といえば「民泊」があり、そのプラットフォームである「Airbnb(エアビーアンドビー)」が有名です。しかし、日本では法律的な壁があり、民泊は本格的な普及には至っていません。その一方で、駐車場や貸し会議室などのレンタルスペースのシェアリングサービスはサービス展開が盛んです。

 

ユニークなサービスとしては、ecbo株式会社が提供する「ecbo cloak(エクボクローク)」というものもあります。これは、「荷物を預けたい個人」と「荷物を預かっておくスペースがある店舗」をマッチングする世界初のシェアリングサービスで、荷物を持つ人が、カフェや漫画喫茶などの店舗の空きスペースにコインロッカーと同程度の料金で荷物を預けることができるというものです。

 

外国人観光客が増加する日本では大きな荷物を持ち歩く観光客もよく見られますが、いざコインロッカーに行っても空いていなかったり大きさが合わなかったりすると荷物を預けることができません。エクボクロークを使えば、利用者は簡単に預け場所を検索し、予約することができるのです。空きスペースをもつ店舗も、副収入を得られるだけでなく、荷物を集客のきっかけにすることもできるという効果も。

 

こうしたサービスも利用を拡大するためには、荷物を預ける人も店舗側も両方が「安心して利用できること」「簡単にオペレーションできること」が重要です。エクボクロークではさまざまな仕組みを構築してそのニーズに応え、着々と規模を拡大しています。プラットフォームを提供するecboはもちろん、空きスペースを提供する店舗にも収入拡大のチャンスが生まれるビジネスです。

 

 

 

「移動」をシェアする分野では、個人が所有する自動車自体をシェアするカーシェアや、個人が自分の自動車を使って人を運ぶライドシェア(相乗り)などが代表的です。ライドシェアのサービスには世界的に名を知られたUber(ウーバー)がありますが、日本では法律的な問題や既存の事業者の利益保護の観点から普及には至っていません。

そんな中で株式会社nottecoが運営する「notteco(のってこ!)」は、安く移動したい利用者と、空席のある車で同じ方面に移動するドライバーをマッチングする「長距離ライドシェアサービス」。ガソリン代や高速料金などの移動費用をドライバーと同乗者で按分することで、移動する全員が経済的メリットを享受できるという構造です。

このサービスを利用するうえで最も心配なのは、相互の信頼性でしょう。その点を担保するための仕組みとしては、ドライバーは免許証、同乗者は身分証の提出が義務づけられ、事務局も24時間体制でプロフィールやドライブ情報などの監視を行なっています。利用後には相互に評価するレビュー機能もあり、法律の観点でも、現在サービス利用料は無料で、やりとりされる金額が実費を超えない範囲であるため、「無許可の旅客自動車運送事業(白タク行為)」には該当しないとされています。

このようにシェアリング・エコノミービジネスは、新しいビジネスである分、日本では特に法整備が進んでいなかったり既存の事業者を保護するという名目でサービスの普及が進まないということも起こり得ますので、参入には一定の注意が必要でしょう。しかし、その存在感には国も消費者も期待を寄せており、今後のさらなる展開が待たれます。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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