フリーランスは雇用保険に入れない?加入条件と代わりの制度を解説

最終更新日:2025/05/26
作成日:2018/11/02
「フリーランスになると、雇用保険ってどうなるの?」と不安を感じている人も多いのではないでしょうか。条件を満たせば、フリーランスでも雇用保険に加入できるケースもあるため、正しい知識を持つことが大切です。
この記事では、フリーランスが雇用保険に加入できる条件と、代わりとなる制度や保険について解説します。これから独立を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
■フリーランスは失業保険や再就職手当を受け取れる?
(1)失業保険を受け取れる条件と金額の目安
(2)再就職手当を受け取れる条件と金額の目安
■フリーランスの収入減に備える雇用保険の代替制度
(1)フリーランス協会「所得補償プラン」
(2)フリーナンス「あんしん補償プラス」
(3)商工会議所「休業補償プラン」
■フリーランスの医療リスクに備える保険・補償制度
(1)あんしん財団「事業総合傷害保険」
(2)民間の医療保険
■フリーランスの老後・廃業に備える資産形成
(1)小規模企業共済
(2)個人年金保険
(3)NISA
(4)iDeCo
■フリーランスの雇用保険・失業保険に関するよくある質問
(1)フリーランスで活動しながら、失業保険を受け取れる?
(2)雇用保険に入れない場合、どう備えればいい?
(3)雇用保険に未加入でも、失業保険は受け取れる?
雇用保険とは?
雇用保険とは、働く人が失業したときに生活や再就職を支えるための公的制度です。
会社を辞めたあと、一定の条件を満たせば「失業保険(基本手当)」や「再就職手当」などの給付を受け取ることができます。
この制度は「労働保険」(雇用保険+労災保険)の一部であり、正社員はもちろん、パートやアルバイトも対象となります。
雇用保険の加入条件
雇用保険に加入するには、まず「雇用契約を結んでいること」が前提です。そのうえで、次の2つの条件を満たす必要があります。
- ・所定労働時間が週20時間以上ある
- ・31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
この基準は、雇用形態にかかわらずパート・アルバイトにも適用され、企業側は対象者を雇用保険に加入させる法的義務があります。
一方で、雇用契約のないフリーランスや業務委託契約者は、原則として雇用保険の対象外です。
なお、学生も原則は対象外ですが、就職内定後の勤務や休学中の就労など、例外的に加入できるケースもあります。
フリーランスでも雇用保険に入れるケースとは
フリーランスでも企業と雇用契約を結び、所定労働時間が週20時間以上、かつ31日以上の継続雇用が見込まれる場合は、雇用保険の加入対象となります。
たとえば、独立しながら、副業として企業に雇われているケースなどが該当します。そのため、以下のような働き方では雇用保険の対象にはなりません。
- ・業務委託契約で働いており、雇用契約がない
- ・労働時間や契約期間が不明確で、基準を満たさない
つまり、フリーランスが雇用保険に加入できるかどうかは、「雇用契約の有無」と「労働条件が基準を満たしているか」によって決まります。
フリーランスは失業保険や再就職手当を受け取れる?
失業保険や再就職手当は、退職後の生活や再スタートを支えるための制度です。
フリーランスを目指す場合でも、退職後の行動やタイミングによっては、これらの給付を受け取れるケースがあります。
ここからは、制度の基本とあわせて、受給条件、支給額の目安を詳しく解説します。
(1)失業保険を受け取れる条件と金額の目安
失業保険(基本手当)は、会社を退職した後に就職活動を行う人が一定期間受け取れる給付金です。フリーランスとして独立を考えている場合でも、条件を満たせば退職後に受給することは可能です。
ただし、開業届の提出や実際の事業活動が始まってしまうと「就業」と判断され、受給資格を失うため注意しましょう。
失業保険の受給には、以下の条件を満たす必要があります。
- ・ハローワークで求職中であること(再就職の意思と活動がある)
- ・退職前2年以内に、雇用保険に12か月以上加入している(自己都合退職の場合)
退職前6か月の平均収入をもとに計算され、日額で50〜80%程度が支給されます。たとえば、月収25万円の場合は、日額5,000〜6,000円が目安です。
(2)再就職手当を受け取れる条件と金額の目安
再就職手当は、失業保険の受給資格がある人が、給付期間中に早期に就職や独立した場合に支給される制度です。フリーランスとして開業する場合も、条件を満たせば給付の対象となります。
給付の対象となるには、開業届や事業計画書などから、1年以上の継続性があるとハローワークに判断される必要があります。
再就職手当を受給するための条件には、以下のようなものがあります。
- ・失業保険の給付残日数が3分の1以上ある
- ・1年以上の継続した就労(自営業または雇用)が見込まれる
- ・ハローワークを通じた再就職と認められる
- ・過去3年以内に再就職手当を受け取っていない
支給額は、失業保険の残額に60〜70%を掛けた金額です。たとえば、残日数100日・日額5,000円の場合、約30万〜35万円が目安です。
参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
フリーランスが人を雇うときの雇用保険の対応
フリーランスであっても、従業員を雇う場合は、雇用保険の手続きが必要になることがあります。
対象となるのは、「週20時間以上の勤務」と「31日以上の継続雇用が見込まれる」従業員です。
これらの条件に該当する人を雇った場合は、雇用開始の翌月10日までに「雇用保険適用事業所設置届」をハローワークへ提出する必要があります。
手続きを怠ると、保険料がさかのぼって請求される、従業員が給付を受けられなくなるなどのトラブルにつながる恐れがあるため、注意が必要です。
従業員を雇う際には、雇用契約や保険制度の基本をしっかりと確認しておきましょう。
フリーランスの収入減に備える雇用保険の代替制度
雇用保険に加入していないフリーランスは、病気やけが、仕事の喪失によって収入が途絶えても、会社員のような補償を受けることができません。
こうしたリスクに備える方法のひとつが、民間や団体が提供する所得補償制度の活用です。
今回紹介する3つの制度は、いずれも「病気やけがで8日以上働けない場合」に、収入を一定期間補償する団体保険です。
(1)フリーランス協会「所得補償プラン」
フリーランス協会(正式名:プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)は、フリーランスや複業人材の働き方を支援する非営利団体です。
同協会が提供する「所得補償プラン」は会員限定のサービスのため、加入には、年会員(年会費1万円※不課税)が別途必要になります。
保険料は、年齢・年収・職種・性別を選択することで、Web上で概算シミュレーションが可能です。
【30歳男性/営業職、月収300,000円の例】
保険料:1,740円
所得補償の保険金額:21万円
※いずれも月額、2025年5月26日時点
最長70歳まで補償が可能な「長期所得補償プラン(GLTD)」もあり、長期的な所得補償を考えたい人に向いています。
☆あわせて読みたい
『フリーランス協会とは?入会するメリットや注意点、会員の違いを解説』
(2)フリーナンス「あんしん補償プラス」
フリーナンス(運営:GMOクリエイターズネットワーク株式会社)は、フリーランスの資金管理やリスク対策を支援するオンラインサービスです。
「あんしん補償プラス」はフリーナンス会員専用の所得補償制度で、利用には「一般社団法人フリーランスAWS協会」への加入が必要(年会費3,000円※非課税)になります。
保険料は、年齢・受け取りたい月額の金額・職種を選択することで、Web上で概算シミュレーションが可能です。
【30歳男性/経営コンサルタントの例】
保険料:1,300円
所得補償の保険金額:20万円
※いずれも月額、2025年5月26日時点
年会費が3,000円と比較的リーズナブルなため、必要な補償に絞ってコストを抑えたいフリーランスに向いています。
(3)商工会議所「休業補償プラン」
商工会議所は、地域の中小事業者や個人事業主を支援する経済団体で、会員向けに各種保険制度を提供しています。
「休業補償プラン」への加入には、各地域の商工会議所への入会が必要で、年会費や条件は地域によって異なります。
このプランは、複数の大手損害保険会社が引受を担当しており、それぞれ独自の商品名で提供しているため、具体的な補償内容や保険料については個別に確認が必要です。
信頼性の高い公的機関が窓口となる制度であり、補償を必要な分だけ柔軟に設定したいフリーランスに向いています。
フリーランスの医療リスクに備える保険・補償制度
けがや病気によって通院や入院が必要になった場合、治療費と同時に収入の減少にも直面するのがフリーランスの現実です。
こうした医療リスクに対応するためには、医療保険を活用することが効果的です。
(1)あんしん財団「事業総合傷害保険」
あんしん財団(正式名:一般財団法人あんしん財団)は、中小企業や個人事業主のけが補償や福利厚生を支援する団体です。
「事業総合傷害保険」は、けがによる通院・入院・手術をカバーする団体保険で、業務中・私生活を問わず補償されます。
民間の医療保険と異なり、けがに特化した設計のため、軽度の通院でも自己負担なしで給付が受けられるのが特徴です。
加入には、あんしん財団への入会が必須となり、職種や年齢を問わず月額2,000円で利用できます。(保険料:1,700円※非課税、会費:300円※不課税)
ケガの補償だけでなく、福利厚生や健康サポートも付帯しているため、けがのリスクと日常の健康管理をまとめて備えたい人に向いています。
(2)民間の医療保険
民間の医療保険は、けが・病気の両方に備える総合的な補償制度で、入院・手術・通院費をカバーします。
日常生活でのけがも対象ですが、給付には入院や手術が必要とされることも多く、軽度のけがは対象外になる場合もあります。
加入には、年齢や健康状態に応じた保険会社の審査が必要です。
また、保険料は年齢に応じて上昇するのが一般的で、20代で月3,000〜4,000円台、30代で5,000〜6,000円台、40代以降はさらに高額になる傾向があります。
長期入院や手術の費用が不安な方、健康リスクに幅広く備えたいフリーランスにとって、有力な選択肢の一つです。
※月額保険料の参考:Sasuke Financial Lab 株式会社「コのほけん!」
フリーランスの老後・廃業に備える資産形成
企業年金や退職金制度がないフリーランスにとって、老後の生活費をどう確保するかは大きな課題です。
将来の暮らしを見据えて、自分の目的や考え方に合った準備を早めに始めることが大切です。
(1)小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主やフリーランスが、将来の廃業や引退に備えて資金を積み立てる制度です。
いわば「フリーランスの退職金」のようなもので、全国で約166万人が加入しています(2024年3月時点)。
共済金は、廃業や退職、死亡時に一括または分割で受け取ることができ、掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税効果が高いのも大きな魅力です。
- ・加入対象:個人事業主、フリーランス、一定の法人役員(業種や規模に要件あり)
- ・積立内容:月額1,000〜70,000円の範囲で自由に設定
- ・受取時期:廃業・退職・死亡時などに一括または分割で共済金を受給
将来の資金と節税、両方に備えておきたいフリーランスにおすすめの制度です。
(2)個人年金保険
個人年金保険は、老後に備えてお金を積み立てていく民間の年金制度です。
運用方法は、将来の受取額をあらかじめ固定できる「定額型」と、市場の利回りなどに応じて金額が変動する「変動型、変額型」があり、2つのタイプから選べます。
- ・加入対象:保険会社の定める条件を満たす個人
- ・保険料:商品によって異なる(定額積立が基本)
- ・受取形式:確定年金・終身年金・有期年金など
- ・受取時期:原則60歳以降、年金形式や一括も選択可
一定の要件を満たした場合は「個人年金保険料控除」の対象となり、生命保険料控除の枠内で所得控除を受けることができます。
将来の年金額を計画的に確保したい方は定額型を、資産の増加も視野に入れたい方は変動型・変額型を選ぶとよいでしょう。
(3)NISA
NISAは、少額からの投資で将来の資金づくりを始められる制度です。
投資対象は、金融庁が定めた条件を満たす投資信託などに限定されており、初心者でも安心して継続しやすい設計です。
なお、iDeCoや個人年金保険、小規模企業共済と異なり、掛金の所得控除はありません。その代わり、いつでも資金を引き出せる柔軟さが魅力です。
- ・加入対象:日本国内に住む18歳以上の個人(フリーランス含む)
- ・年間投資枠:「つみたて投資枠」は年間120万円、「成長投資枠」は240万円(併用可能)
- ・受取時期:いつでも引き出し可能
元本保証はないため、価格が上下するリスクはありますが、長期で積み立てながら少しずつ資産を育てたい人に向いています。
(4)iDeCo
iDeCoは、フリーランスや自営業者が、老後の生活資金を自分で積み立てるための年金制度です。
毎月の掛金を投資信託などで運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。
掛金は全額が所得控除の対象で、運用益も非課税のため、節税しながら資産形成が可能です。ただし、60歳まで引き出せず、元本割れのリスクもある点には注意しましょう。
- ・加入対象:20歳〜60歳未満のフリーランス・自営業者
- ・積立内容:月5,000~68,000円の範囲で任意に設定(自営業者、フリーランスなど第1号被保険者)
- ・受取時期:原則60歳以降に年金形式または一時金で受給
iDeCoは自分で商品を選んで運用する必要があるためやや手間がかかりますが、その分、節税効果や資産形成のメリットが大きい制度です。
フリーランスの雇用保険・失業保険に関するよくある質問
雇用保険に入れないフリーランスが抱きやすい疑問に、よくある質問形式でお答えします。
(1)フリーランスで活動しながら、失業保険を受け取れる?
フリーランスとして収入がある状態は「就業」とみなされ、原則として失業保険の対象外となります。
ただし、実際に収入がなく求職活動を行っている場合などは、個別に判断されることがあります。
SNSや名刺、請求書の発行なども「働いている証拠」とされる場合があるため、事前にハローワークへ相談しましょう。
(2)雇用保険に入れない場合、どう備えればいい?
雇用保険に入れないフリーランスにとって、将来への備えは欠かせません。
たとえば、病気やけがで働けなくなったときの収入減に備えるなら、フリーランス協会の「所得補償プラン」や、フリーナンスの「あんしん補償プラス」があります。
医療費の負担が心配な場合は、あんしん財団の「事業総合傷害保険」や「民間の医療保険」が有効です。
また、将来の廃業や引退に備えるなら、小規模企業共済で資金を積み立てておくのもひとつの方法でしょう。
自分にとって、どのリスクが大きいかを見極め、民間や団体が提供する各種の補償制度や積立制度をうまく活用することが重要です。
(3)雇用保険に未加入でも、失業保険は受け取れる?
会社員時代に雇用保険に加入していなかった場合、基本的に失業保険は受け取れません。給付を受けるには、一定期間、雇用保険に加入していることが条件となります。
手続きの不備によって受給できないケースもあるため、雇用保険の加入状況をしっかり確認しておきましょう。
まとめ
フリーランスでも、副業などで雇用契約を結んでいる場合は、一定の条件を満たすと雇用保険に加入できる可能性があります。
一方で、業務委託契約などの雇用契約が伴わない働き方では、雇用保険の対象外となります。
近年は、フリーランス向けの所得補償保険や医療保険、小規模企業共済など、収入減や老後に備える制度が充実してきました。
将来に備えて、自分に合った保障を今のうちから考えておけると安心です。
→→転職を検討中の方はコンサルネクストで無料登録
→→フリーランスの方はこちらからコンサル登録
(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)
◇おすすめ記事◇
「フリーランスにおすすめの健康保険は?種類や保険料を抑える方法を解説」
「フリーランスにおすすめの社会保険とは? 社会保険一覧や会社員との違いも解説」