ポータブルスキルを習得して多様な業界に転職できるプロ人材に

最終更新日:2021/05/21
作成日:2018/02/05

コンサルタントとしてある程度経験を積んだ方の中には、転職や独立を考えている方も多いのではないでしょうか?ただ「他で通用するスキルがあるかわからない」「資格などの明確な強みを持っていない」と感じている方も多いかもしれません。

 

しかし最近の転職では、専門的なスキル以外にも注目されているものがあります。それはマネジメント能力や課題解決能力など、あらゆる企業・職種でも通用するスキル。こうしたスキルは「ポータブルスキル」と呼ばれ、注目を集めています。

 

目次

■転職でポータブルスキルが注目されている理由とは
(1)ポータブルスキルの定義
(2)ポータブルスキルで転職力が上がれば、キャリアチェンジも可能
(3)オープンイノベーションでポータブルスキルの重要性はもっと高まる

 

■終身雇用から大きく働き方が変化する中、本当に必要なポータブルスキルとは
(1)誰もが転職・独立を想定してポータブルスキルを意識する時代
(2)ポータブルスキルによってキャリアチェンジに成功した事例
(3)まずおさえておきたい代表的な4つのポータブルスキル

 

■自分のポータブルスキルを知るには、まずはセルフチェックから
(1)ポータブルスキルのセルフチェックツールを利用する
(2)これまでの仕事経験を書き出して、客観的視点でセルフチェック

 

■将来の転職に備えて、ポータブルスキルを磨くコツ
(1)ポータブルスキルの要素を意識する
(2)社外の人とのつながりを意識する
(3)副業やボランティアにチャレンジしてみる

 

※本コラムは、2021年5月21日に「どんな業種・業界に転職しても通用するポータブルスキルとは」を再構成したものです。

 

転職でポータブルスキルが注目されている理由とは

(1)ポータブルスキルの定義

厚生労働省では、ポータブルスキルを以下のように定義づけています(下記引用。※1)。

 

ポータブルスキル・・・業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力のこと。「専門知識・専門技術」の他、「仕事のし方」(課題を明らかにする・計画を立てる・実行する)、「人との関わり方」(社内対応(上司・経営層)、社外対応(顧客、パートナー)、部下マネジメント(評価や指導))で構成。

 

※出典:厚生労働省「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」

 

ポータブルスキルをもう少しわかりやすく言うと、業務にまつわる経験やスキルとは別に本来あなた自身が持っている「人としての基礎力」のこと。例えばどんな仕事にも必要とされる「周囲とスムーズにコミュニケーションできる力」「相手と交渉してこちらの意見に納得してもらう力」は、ポータブルスキルと言えます。

 

ポータブルスキルはいわば、ビジネスにおける基礎力。そのため普段の仕事で意識する機会はあまり多くありません。しかし転職や独立などの場では「チームとしてうまく仕事を進められるか」「難しい課題にぶつかったとき自ら解決できるか」ということが重視されます。つまり転職力に大きな差が出るというわけです。

 

今すぐ転職や独立の予定がなくても、将来に向けて「自分がどんなポータブルスキルを持っていて、これからどんなポータブルスキルを磨くべきか」を知ることが大切です。

 

ここで気になるのが、具体的にどんな基礎力がポータブルスキルになるかという点。ここは会社によって考え方が大きく異なる部分もありますが、一般的にはどんな会社でも必要とされる「思考スキル」「人間関係スキル」「課題解決スキル」などの基礎力をポータブルスキルと呼ぶケースが多いようです。

 

ここではこうしたスキルも含めながら、より広い視点でポータブルスキルについて解説します!

(2)ポータブルスキルで転職力が上がれば、キャリアチェンジも可能

転職といえば、これまで知識や経験を活かせる同業種・同職種で考えることが一般的でした。しかしポータブルスキルを強みにすれば、未経験の業種・職種に転職できる可能性が高まります。つまり転職力がアップして転職先の幅が広がり、キャリアチェンジも目指せるわけです。

 

最近ではイノベーションを活性化させるため、あえて他業種からの人材を採用する企業も増えています。こうした企業の転職では、特にポータブルスキルが重視されます。

 

ただし、40代・50代になってからポータブルスキルを磨こうと思ってもなかなか難しいもの。20代・30代のうちから将来のキャリアチェンジも視野に入れて、転職力アップをめざしてポータブルスキルを意識しましょう。

(3)オープンイノベーションでポータブルスキルの重要性はもっと高まる

語学やITなどの資格や専門知識も、どんな会社でも使えるという意味ではポータブルスキルの一種。ただ最近特にポータブルスキルとして注目されているのは、人との関わり方や仕事のやり方などの人としての基礎力。つまりヒューマンスキルです。

 

ヒューマンスキルが重視されるのは、ビジネスでオープンイノベーションが急増していることが背景にあります。最近は、業種の異なる複数の企業が参加するオープンイノベーションも増えています。

◆詳しくはこちら:オープンイノベーションの拠点として注目される「リビングラボ」とは

 

例えば老舗企業が新しいイノベーションを目指し、ベンチャー企業と協業するケースもあります。こうしたオープンイノベーションでは、多様な職種・業種のメンバーがプロジェクトに参加します。さまざまな立場のメンバーが参加するビジネスでは、調整力や交渉力といったポータブルスキルがこれまで以上に必要とされます。

 

 

終身雇用から大きく働き方が変化する中、本当に必要なポータブルスキルとは

(1)誰もが転職・独立を想定してポータブルスキルを意識する時代

日本で当たり前だった終身雇用・年功序列の仕組みは、すでに限界という意見もあります。最近は新卒一括採用型から脱却して、「ジョブ型」と呼ばれる新しい雇用形態へシフトする企業も増えてきました。

ジョブ型は新卒をポテンシャルで採用するのではなく、職務(ジョブ)に基づき必要な人材を中途などで採用するスタイル。海外ではジョブ型が主流ですが、日本でも富士通など大手企業が次々とジョブ型を取り入れています。

 

終身雇用ではない働き方が広がれば、あらゆるビジネスパーソンは転職や独立を常に想定した働き方をする必要があります。つまり、ポータブルスキルを意識しながら働く必要があるわけです。

 

またビジネスを含めた社会全体が、今は先を見通しづらくなってきています。例えば2020年に起こった新型コロナウイルスの影響は、全く想定していなかった方がほとんどではないでしょうか。

 

こうした予測できない状況は「VUCA」と呼ばれています。「VUCA」とはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったワードで、混とんとして予測できない社会情勢を意味しています。

 

今はまさにVUCAの時代。自分の会社がある日突然なくなったり、他の企業に買収されたりするかもしれません。また自分の持つ専門知識が、トレンドの変化で役に立たなくなる可能性も。こういった事態に直面しても、ポータブルスキルがあればキャリアチェンジがしやすいですよね。社会の変化に対応しやすくなると言えるでしょう。

(2)ポータブルスキルによってキャリアチェンジに成功した事例

実際にポータブルスキルを駆使して、全く異なるジャンルの転職に成功した事例もあります。例えば20代でIT系ベンチャー3社の立ち上げ経験を持つという、戸田貴智さん。戸田さんはベンチャー企業の経験のみでしたが、大手企業の正社員へ転職しました。環境も業務内容も前職とは正反対という中で、ポータブルスキルが大きな強みになっていると言います。

 

特に戸田さんが持つポータブルスキルは、人と人との間をつなぐ「調整力」ベンチャー企業で多くの人と接する中で培ったものだそうです。転職後も環境は全く違うものの、調整力を活かして部門間の潤滑油として活躍しています。

 

戸田さんの場合、転職前は自身のポータブルスキルをあまり意識していませんでした。ベンチャー企業で働く中である上司に調整力があることを評価され、大きな転機になったそうです。そこからは調整力を高めることを意識しながら仕事をして、転職の際にも調整力を高く評価されたと言います。

 

強みであるポータブルスキルがあっても、気づかなければ活用できません。転職や独立といったタイミングに限らず、常に自分にどんなスキルがあるか意識して高める姿勢が求められています。

※参考:「組織の潤滑油になる」楽しく働ける場を創出するスキルを活かし、組織の調整役としてのプロフェッショナルを目指す

(3)まずおさえておきたい代表的な4つのポータブルスキル

1.コミュニケーション力

あらゆる企業で重視されるのが、コミュニケーションスキル

ビジネスのグローバル化が進む今は、プロジェクトのメンバーも多様化しています。海外の人材などさまざまな考え方やスキルを持つ人が共同でビジネスを進める機会も多く、配慮が必要なコミュニケーションスキルが求められるシーンは今後も増えると予想されます。

 

特にプロジェクトをマネジメントする立場なら、さらに高いコミュニケーションスキルが求められます。具体的には、異なる立場の人の間に立って調整できるスキルや、メンバーの意見を引き出すための傾聴スキルは必須と言えます。

 

また最近はリモートワークの普及によって、リモート環境でもコミュニケーションを円滑にできるスキルが注目されています。例えば「オンライン会議で参加者の集中力を保ち、意見をいかに引き出せるか」「限られた時間で結論をスムーズに引き出せるか」といったコミュニケーション力が重要になってきています。

 

2.分析力

物事の本質をとらえるための「分析力」も、ビジネスでは欠かせません。

例えば新規事業を立ち上げる場合。プランのメリットだけではなくデメリットやリスクを多角的に見るためには、分析力が必要になってきます。

 

現在は市場も複雑化していてトレンドの変化も激しくなっています。またグローバル化によって日本国内だけではなく、世界の企業が競合となりうる時代。こうした状況で分析力の重要性は高まっています。

 

具体的には、「Pros and Cons思考法」「STP分析」といった分析にまつわるフレームワークを使いこなすことで、分析力があることを表現できます。

◆「Pros and Cons思考法」や「STP分析」について詳しくはこちら:プロのコンサルが使う4つの思考法を知れば、劇的に仕事力が上がる

 

3.独立力

どんな会社でも通用する人材になるためには、会社に頼らず自分自身でさまざまな決断をする必要が出てきます。つまり独立した経営者に必要な判断力挑戦力管理力といったいわゆる「独立スキル」がポータブルスキルとして重視されています。

 

例えば専門外の業務を任された場合。自ら新しい分野にチャレンジすることを決断できる力、新しいことを自ら学べる力がないと厳しいでしょう。また「専門外の業務でもこの人なら任せられる」と相手に思わせるような、信頼される力も大切です。

 

独立スキルには、自分を客観的に観察するスキルも含まれます。会社や職種が変われば、これまでのやり方を捨てて新しいやり方にシフトしなければならない場面も出てきます。こだわりも大切ですが、自分を客観視して今やるべきことは何か、今自分に足りないものは何かをしっかり認識できるスキルがあれば大きな強みになるはずです。

 

4.技術力

コミュニケーション力や独立力といったヒューマンスキルとあわせて持っていたいのが、専門性の高い技術力。例えば語学IT系スキルなどの専門力は、幅広い業種/職種で活用できるポータブルスキル。実用性の高い技術力は、即戦力として評価されやすい点もメリットです。

 

より専門性の高い技術力も、実はポータブルスキルとして使えることもあります。例えば業務系システム「SAP」の開発経験で得た技術力を持つ場合。こういった技術力はSAPの案件ではもちろん大きな強みとなります。

しかし実はSAPに限らず、業務システムの課題解決コンサルティングができるスキル、という表現もできるのです。他社で通用しないと思っていた技術力が、見せ方を変えればポータブルスキルになるケースもあります。

 

 

自分のポータブルスキルを知るには、まずはセルフチェックから

 

ポータブルスキルは資格などで明確な基準のないものが多いですし、人によって強みとなるポータブルスキルもさまざま。そのため自分自身でもどんなポータブルスキルを持っているか把握できていないというケースが一般的です。

 

そこでまず自分のポータブルスキルを知るために、セルフチェックからはじめてみるのはいかがでしょうか。手軽にできるセルフチェック方法を2つご紹介します。

(1)ポータブルスキルのセルフチェックツールを利用する

一般社団法人 人材サービス産業協議会では、ポータブルスキルをセルフチェックできるサイトを開設しています(※2)。サイトから簡単なプロフィールを入力し、いくつかの質問に回答するだけ。自分がどんな分野でポータブルスキルを持っているか、おおまかですが確認することができます。

(2)これまでの仕事経験を書き出して、客観的視点でセルフチェック

就職してから現在に至るまでの仕事内容を振り返り図にして、どこで強みを発揮したかなどを整理してみましょう。

ポイントは、仕事が順調な時、いまいちな時などを可視化する点。問題が起こったときにどう対処したか、何で成功したかを思い出しながら見直すことができ、客観的にポータブルスキルを再確認するのに役立ちます。

 

 

将来の転職に備えて、ポータブルスキルを磨くコツ

 

重要性が増すポータブルスキルですが、どうやって磨けばよいのかという疑問も。人によって持つべきポータブルスキルは異なるため、その磨き方も人それぞれですが、今からポータブルスキルを身につけるためのコツを3つのポイントにまとめました。

(1)ポータブルスキルの要素を意識する

一般的にポータブルスキルとして見なされているのは、以下の要素と言われています。

 

<仕事の仕方>
・課題を明らかにする
・計画を立てる
・実行する

 

<人との関わり方>
・社内対応(上司・経営層)
・社外対応(顧客・パートナー)
・部下マネジメント(評価や指導)

※出典:一般社団法人 人材サービス産業協議会「ポータブルスキル活用研修テキスト」(※3)

いずれもどんな企業にいても必要なスキルということがわかります。まずは上司や同僚、取引先などでポータブルスキルに長けている人を見つけて、ポータブルスキルをどう発揮しているか見ておくと参考になるのではないでしょうか。

(2)社外の人とのつながりを意識する

会社員の場合、どうしても普段から慣れている仕事の進め方や考え方に従うことが多いですよね。ただし、他の企業ではどうやっているか、他の業種ではどんな新しい手法を取り入れているかなども知っておきたいところ。どんなポータブルスキルが今求められているか、意識して情報収集してみましょう。

(3)副業やボランティアにチャレンジしてみる

自分のポータブルスキルにどんな強みがあるかを知るために、社外で活動してみるのも有効な方法です。副業ボランティア活動(プロボノ)など、いつもの社内とは違う環境で仕事をしてみるのもおすすめ。

最近ではオンラインセミナーなども活発です。自分に合ったコミュニティを見つけて新しいつながりを作ってみては?ポータブルスキルを活用した実績として、転職時の面接で語ることもできます。

◆プロボノについて詳しくはこちら:コンサルティング会社も導入!専門スキルで社会貢献する「プロボノ」とは?

 

 

転職市場などで大きな注目を集めるポータブルスキル。今後もますます重視される傾向が続くことは間違いないでしょう。

 

ポータブルスキルは、コンサルタントとして求められるスキルと共通するところも多いようです。ただし本人でも自分のポータブルスキルが何か、どこに強みがあるか把握していない方も多いのでは。まずは、セルフチェックで自分のポータブルスキルについて把握しておきたいところです。

ただし、あくまでセルフチェックはファーストステップ。転職活動を本格化するときには、専門のキャリアコンサルタントへの相談がベター。転職力を高めるには、専門家の立場で客観的に自分のポータブルスキルを評価してもらうことが必要です。

 

今は働き方が大きく変化している時代です。こうした変化に対応するには、常に転職や独立を想定しながら、ポータブルスキルを活用できる状態にしておきたいところ。普段の業務でも、常にポータブルスキルを磨くことを意識してみましょう!

 

<参照>
※1:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/career_formation/career_consulting/career_chenge/index.html
※2:http://j-hr.or.jp/products/careerchange/pr-selfcheck/
※3:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000091179.pdf

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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