起業家の強い味方?ベンチャーキャピタルの現在動向
作成日:2016/09/28
ベンチャーキャピタルって何?
起業家が資金調達を考えるうえで欠かせないのが「ベンチャーキャピタル」の存在です。「ベンチャーキャピタル(以下、VCと表記)」とは、株式を公開していないベンチャー企業や起業家のビジネスに対し、資金を供給することで経営支援を行い、株式公開を促進することを主なビジネスとしている投資会社を指します。 VCは株式公開後に市場で投資先の株式を売却することにより資金の回収を行いますが、その多くは「ファンド」を構築して複数の投資先に資金の供給を行っています。
つまり、VCのビジネスモデルとは、様々な分野の投資家から資金を集めてファンドを構築し、そこから自分たちが選んだ投資先であるベンチャー企業に資金を供給して株式を取得し、投資先企業のIPO(新規上場)を機に株式を売却して莫大なキャピタルゲインを得て、その収益を投資家に配分するというものであり、VC自体の収益はファンドの管理報酬や投資の成功報酬から成り立っています。
VCの本場とも言われるアメリカでは、ベンチャー企業への出資はその4割ほどが年金基金によるものだと言われており、保険会社や金融機関がそれに次ぐ出資者であるようです。一方、我が国のVCへの出資者はその多くが銀行をはじめとした金融機関であるという状況ですが、近年では主たる事業とは別にVC事業を展開し始める事業法人も増えています。
VCの様々な分類
全米のベンチャーキャピタル協会の分類によれば、VCの投資対象となるベンチャー企業には大きく分けて「アーリーステージ(Early Stage)」と「エクスパンションステージ(Expansion Stage)」があります。 そして前者はさらに「シード(Seed)」、「スタートアップ(Start-up)」、「ファーストステージ(First Stage)」などにステージ分けされており、後者は「セカンドステージ(Second Stage)」、「サードステージ(Third Stage)」などに分けられるとされています。
それぞれの細かい説明は省きますが、「アーリーステージ」はいまだ売上が立っていない状態で、商品開発や初期のマーケティングを行っている段階です。徐々に売上を拡大することで、企業の成長にあたっての運転資金が必要となってくる「エクスパンションステージ」へと移行していくことになります。
VCの投資対象となるのは、このうち「アーリーステージ」全般と「エクスパンションステージ」の前半部分である「セカンドステージ」までであることが多いと言われています。つまり、成長初期の企業に資金を供給することで成長を促進するのが、VCの主な役割なのです。世界的に有名なシリコンバレーなどのハイテク業界への投資がこの典型で、アメリカにおける昔ながらのVCはほとんどがこの形態といえるでしょう。
一方、国際的に見ると「エクスパンションステージ」の後期に属する企業にもVCが投資を行うケースがあり、M&Aのための資金供与やさらなる販路開拓のための新商品開発費用の供給などがこれにあたります。また、場合によっては経営が傾きつつある企業を再生するためにVCが手を貸すケースもあります。
実は、我が国ではこういった段階の企業にVCが資金供給を行うケースが多く見られます。ただしアメリカなどと比べると、M&Aやいわゆる「バイアウト」を目的としてVCが投資を行うということはあまりありません。
このあたりは国ごとの企業に対する考え方の違いが出ていると言えるかもしれません。国内VCにはどういう企業があるの?
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国内VCにはどういう企業があるの?
有名な国内VCとしては、グロービス・キャピタル・パートナーズや産業革新機構、そして伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどの錚々たる有名企業が存在します。また、日本生命などの保険会社が運営するVCやNTTドコモを中心としたモバイル市場に強みをもつモバイル・インターネットキャピタルなど、新鋭のVCも続々と登場していますし、IT系の企業の中にも、サイバーエージェントなど、もともとITベンチャーとして成長してきた企業がVCとしての顔を持つようになるケースが増えてきています。
よく「“本場”のアメリカに比べて日本のVCはまだまだ未整備だ」というようなことも言われますが、実際には多くの企業がVCとしての顔を持つようになってきており、その投資金額も数百億円規模のものが増えてきているのです。それに比べ、独立・起業したてのいわゆる「スタートアップ」フェーズにある企業割合はまだまだ欧米諸国に比べて少ない状況です。
その意味では、スタートアップ企業がVCを利用できるチャンスは広がってきていると言えます。我が国のVCの年間投資額も、2006年から2009年あたりまでは下降傾向にあったものの、そこから徐々に回復しつつありますし、今後景気がさらに回復するにつれて、トレンドの波はあるものの全体傾向としてはその額も徐々に大きくなっていくことが予想されます。
これからのベンチャー企業とVCはどうなる?
ひと昔前まではアメリカなどと比べて日本のVCは未成熟だと言われることもありましたが、現在では我が国の制度で他国と比べて欠けている部分はほとんどないと考えてよく、VCに対する国民的な認知度もかなり高まっています。
従来投資に積極的な企業やVCが生まれにくかったのは、投資に値する起業家が少なかったからではなく、数十年にわたるデフレの影響でVCの多数を占めていた金融系VCが投資を控えていたためだという意見もあります。しかし、アベノミクスによる昨今の景気回復傾向や、東京オリンピックの開催による経済効果への期待などにより、徐々にデフレマインドは払拭されつつありますし、さらに最近ではクラウドファンディングの台頭によってスモールビジネスへの投資に対して寛容な姿勢をとる企業も多くなってきたので、これまでに比べると「ビジネス」に対して投資をするという文化が根付いてきたと言えるでしょう。
そういう意味では、今こそベンチャー企業が多くの成功事例を生み出すのにうってつけの時期と言いえるのかもしれません。成功事例が増えるほど、VCの投資姿勢にも大きな影響を与えます。アイデア次第で大きなビジネスにすることも夢ではありません。
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いかがでしたでしょうか?
「挑戦するなら今!」というほど大げさなものではないかもしれませんが、立ち上げた事業をスケールさせていくための資金調達の選択肢の一つとしてのVCは確実に成長しています。
「ウチは投資なんかしてもらえない」とあきらめる前に、一度国内のVCを調べてみると、自分のビジネスに興味を持ってくれるVCを発見できるかもしれません。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)