“IT×財務会計”を武器に独立 ベテランフリーコンサルタントに聞く“いままで”と“これから”
企業から地方自治体まで幅広いクライアントに支持されるフリーコンサルタント。その魅力の根源は書を読み、内省を重ねることで自然と醸し出される穏やかさにあるのかもしれません。
みらいワークスがお届けする「プロフェッショナリズム」、今回のインタビューは河原伸之さん。
大手業務系ソフトウェアメーカーを経て起業を経験し、現在はフリーコンサルタントとして企業に限らず地方自治体へのコンサルティングも幅広く手掛けていらっしゃいます。
古河電工グループ様のプロジェクトに参画し、クライアントとの素晴らしい協働により期待以上の成果を出された河原さん。今回はこの「プロフェッショナリズム」のインタビューにて、河原さんの視点からお話をお聞かせいただきました。独立に至った経緯や今後挑戦したいこと、バイブルとしている書籍の話など、たくさんのお話をお伺いしてきました。
河原 伸之
今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント
大手業務系ソフトウェアメーカーにて営業および顧客サービスを経験後、2001年にソフトウェア開発会社を設立。取締役として約6年間にわたり営業・マーケティング・管理部門の統括に従事。その後フリーコンサルタントとして独立し、企業に対する経営支援・営業支援・業務可視化などのコンサルタントとして活躍、また地方自治体に対する地方創生コンサルティングなどを行なっている。 ◆活用事例(河原さんご参画プロジェクト): https://freeconsultant.jp/corp/interview/20748 https://freeconsultant.jp/corp/interview/20760
河原 伸之
料理人になる夢を諦めてIT業界へ飛び込み、起業を経てフリーコンサルタントに転身
フリーコンサルタントに転身されて10年以上になる河原さんですが、実は料理人からキャリアをスタートされたとお聞きして、とても驚きました。
河原さん(以下、敬称略):もう30年以上前になりますが、「いつか自分の店を持ちたい」という想いもあり、赤坂飯店という中華料理店で3年ほど修行をしていました。その後会社員として働き始めたのですが、修行途中で父親が亡くなり実家が金銭的に余裕のない状態になってしまったのがきっかけでキャリアチェンジしました。
当時は日本電電公社が民営化されてNTTに変わった頃で、私はビジネスフォンの切り替えを勧める飛び込み営業から会社員としてのキャリアをスタートしたのですが、本当に厳しい世界でしたね。お客さんから灰皿を投げられたり、先輩社員から「契約が取れるまで帰ってくるな」とお客さんのオフィスに閉じ込められたりしたこともありました。今となってはすべてが良い思い出、と思っていますが・・・。
その後パソコンが普及してきた流れもあってIT業界に移り、現在の弥生株式会社に約14年間お世話になりました。営業として入社したのですが、既存顧客に対する保守契約への加入促進を担当する部署のマネジメントを任され、当初17億だった売上を29億に、さらにその翌年には32億にまで伸ばすことに成功しました。しかし、その矢先にマネジメント層に対するリストラが行なわれ、2001年に退職しました。
なるほど。ご退職後に当時の上司だった方と起業なさった背景には、そういった経緯もあったのですね。
河原:はい。今思うと悔しさだけをエネルギーに起業したような部分もあったなと思います。元上司が社長、私が2番手の取締役としてソフトウェア開発のベンチャーを立ち上げました。そこで営業からマーケティング、管理部門の統括まで多岐にわたる業務を担当したこと、そして実現はしなかったものの上場準備のために奔走し、証券会社や監査法人ともお付き合いさせていただいたことは、今でも私にとって大きな宝となっています。皆さん、ものすごく広い人脈をお持ちで、フリーコンサルタントとして独立してからもたくさんのお客様を紹介していただき、本当に感謝しています。
結果としてリストラになったとはいえ、弥生株式会社にも若い頃から長年にわたり育ててもらったので、今でも非常に恩を感じています。当時辞めた人間で作っているOB会でも、いまだに幹事をさせていただいています。
人間形成についての本から学ぶ「心の使い方」
河原さんは読書がお好きだとお聞きしたのですが、よろしければお勧めの本を教えていただけませんか?
河原:個人的な趣味でお恥ずかしいのですが・・・。実は、以前は多くのビジネスパーソンの皆さんと同じようにビジネス書ばかり読んでいたのですが、ある時からお坊さんの書かれた本を読んでいるのですよ。「ビジネスにおいても最終的には人間性が大事になってくる」という想いから人間形成についての本を探していたところ、松原泰道さんが書かれた『「足るを知る」心』という本に出会い大きな感銘を受けました。それ以来その本をバイブルにして何度も繰り返し読んでいますね。
この本を読んで初めて知ったのですが、「経営」という言葉はもともと仏教用語で、「人間形成」という意味だそうです。「企業」の「業」は、仏教の言葉では「食べなければ生きていけない」という意味での「業(ごう)」とも捉えられますから、「企てをして生きるための営みを行なう」のが「企業」であり、その中で人間形成をしていくことが「経営」なのかな、と私なりに解釈しているのですが、そういったこともその本から学びました。
もう一冊お勧めを挙げるとすれば、夢枕獏さんの長編小説『涅槃の王』でしょうか。釈迦が悟りを開いた時のことがテーマになっている本です。脚色されているので史実通りではないのですが、要約すると「人間の感じる苦しみや怒りや悲しみにはすべてに意味があり、すべて正しいのだ」というようなことが書いてあります。初めて読んだ時は自分自身がいろいろと辛い状況にいたこともあり、電車の中だったにもかかわらず涙が出てしまいました。隣に座っていた女性に心配そうに見られたのを覚えています・・・。
その女性もさぞかし驚かれたでしょうね!そういった書物から学ばれたことは仕事の場でどのように活かしていらっしゃるのでしょうか?
河原:人に対する接し方には自然と活かされているのではないかと思います。“心の使い方”と言ってもいいのかもしれませんが。自分が上の立場に立つ時にはもちろんですけれども、上下関係に限らず誰と仕事をするにしても「この人のいいところはどうすれば引き出せるだろうか」ということを考えます。世間には短所ばかり指摘する人も多いですが、短所を直すより長所を伸ばす方がずっと早いしその人のためにもなると私は思っているので、そういったことを考える時にも本から得たヒントが役に立つことは多いですね。
独立するしないにかかわらず、「この領域なら負けない」という軸を大切に
◆高齢化問題を「社会問題」ではなく「自分事」化させ、プロジェクトは成功◆
河原さんは以前、古河電工グループ様のプロジェクトに参画し、プロフェッショナルとしてその手腕を大いに発揮なさいました。
古河電工グループの古河ファイナンス・アンド・ビジネス・サポート株式会社では、近い将来懸念されるグループ全体での従業員高齢化に伴う人材不足とそれによる業務停止リスクを問題視。親会社の経営陣に対してそのことを正式に問題提起するため、みらいワークスを通じてコンサルタントを起用することを決断されました。そこでみらいワークスがご紹介したのが、河原さんでした。「『テスト導入していたRPAを、高齢化問題や働き方改革の対策の一環としてどのように展開し得るか』という課題についても意見を聞きたい」というニーズに対し、IT業界での経験が長く事業会社の経営経験もあり、さらにファシリティマネジメントや人口問題にも詳しい河原さんはまさにうってつけの人材だったのです。
結果としてプロジェクトは大成功。中でも最も大きな影響をもたらしたアウトプットは河原さんが提案した「グループ従業員の人口ピラミッド」。100社を超えるグループ企業のうちおよそ30社を対象に、10年後の従業員の年齢別人口を推計し、特に「45歳以上」の層を「介護の問題を抱えて休職や離職をする可能性が高い層」と想定・明示したこのグラフは、クライアントが懸念していた「高齢化による人材不足」とそれによる「業務停止リスク」という課題を見事に“見える化”しました。親会社の役員陣にも高齢化問題を「一般的な社会問題」ではなく「自分事」として捉えていただくことができ、グループ全体を動かす契機になったのでした。
詳細はこちら:
●https://freeconsultant.jp/corp/interview/20748
●https://freeconsultant.jp/corp/interview/20760
フリーコンサルタントとして今後挑戦してみたいことがあれば是非教えてください。
河原:地方創生にチャレンジしてみたいですね。今も既に複数の地方自治体の人口維持や活性化に関する戦略作りに関わらせていただいているのですが、もっと地方を元気にする取り組みを幅広くお手伝いしたいなと思っています。
ほとんどの自治体が活性化のための戦略は作っているものの、地方創生に乗り出す企業の側は意外とその戦略があること自体知らないというのが現状だというのが私の印象です。ですので、これから進出しようと考えている企業は、まずは対象としている自治体が掲げている戦略を知り、施策を読み込んでからアプローチしてみるといいのではないかと思います。
では最後に、今後独立を考えている方々にメッセージをお願いします。
河原:若い方であればあるほど、どんどん前に出て行った方がいいと思います。私自身も20代くらいの若い世代とタッグを組んで仕事をすることがありますが、功績は相手に全部譲ってしまいたいなと思うことも多々あります。
独立するにあたって営業経験がないことを不安に思う人もいるかもしれませんが、個人的には「営業は聞くのが仕事」だと思っています。私の場合、もともとの性格的な部分もありますが、「話を振ったらあとは聞くことに徹する」、「自分が喋るのは2割にとどめる」というのをモットーにしていますから。
あとは、周りを見ていても、「自分はこの領域なら負けない」という軸を持っている人の方が、独立するにしても会社員として働き続けるにしても強いのかなという印象があります。私の場合は20代でお世話になった業界で身に付いたITと財務会計の知識が結果的に武器になりましたが、若いうちにそういった強みを磨いておくことも必要なのではないかと思いますね。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
「年齢的に自分が前に出ようという気持ちはなくなってきた」、「いつ死んでも後悔はない」といった発言が飛び出す一方で、現在も手掛けていらっしゃる地方創生のお仕事には今後もっと深く関わっていきたいと熱く語ってくださった河原さん。大企業の社員を経て、起業した会社では取締役という立場で経営も経験し、その上で独立して現在に至るという幅広いキャリアからにじみ出る説得力こそが、多くのクライアントからの信頼を勝ち得てきた河原さんの武器なのかもしれないと感じました。
「若い人と仕事をするとついつい応援したくなってしまいます」とおっしゃる河原さんの笑顔も印象的でしたが、私たちみらいワークスも、未来に向かって挑戦するビジネスパーソンを応援し続けるプラットフォームでありたいと考えています。