すぐれたコンサルタントは パートナーにもコーチにもなる。 ポイントは「時間の確保」と「期待値を明確にする」こと vol.1

プロフィール

プロフィール

古河ファイナンス・アンド・ビジネス・サポート株式会社

代表取締役社長 関 尚弘(せき なおひろ)氏

 

 

古河ファイナンス・アンド・ビジネス・サポート株式会社 代表取締役社長。

1989年北海道大学文学部卒業後、古河電気工業に入社。工場の生産管理を9年経験後、情報システム部に異動し、複数の社内情報化プロジェクトを推進。2008年採用課長、2012年経営企画室主査を経て、2016年6月より現職。プロジェクト経験が多く、さまざまな分野のコンサルタントと協働した。著書に、創業125年の老舗企業で行なった業務改革プロジェクトをテーマにしたコンサルタントとの共著『反常識の業務改革ドキュメント』(日本経済新聞出版社刊)がある。1966年生 / 横浜市在住。
※役職は、インタビュー実施当時(2018年2月)のものです。
 

◆古河電気工業◆

古河電工グループの中核企業である古河電気工業は、1884年、母胎事業である本所溶銅所と山田電線製造所の開設をもって創業、1920年に古河電気工業として発足した。その事業領域は時代とともに拡大し、現在では、情報通信・エネルギーインフラ・産業機材から自動車・電子部品、新素材といった分野まで多岐にわたる。「世紀を超えて培ってきた素材力を核として、絶え間ない技術革新により、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献すること」をグループの基本理念に掲げ、100社を超える関係会社とともに事業を推進している。従業員数は単体で3657人、連結で5万2254人(2017年3月末時点)。

 

今回お話を伺ったのは、古河ファイナンス・アンド・ビジネス・サポート株式会社 代表取締役社長 関 尚弘さん。関さんは、古河電気工業(古河電工)に入社後、工場の生産管理から情報システム、採用、経営企画といった数々の部署で経験を積み、現在は先述したグループ企業にて社長を務めていらっしゃいます。

 

ご自身が「社内的には極めて特異」と評するそのキャリアでは数多くのプロジェクト経験をもち、その中でさまざまな分野のコンサルタントと仕事をしてきたといいます。

その関さんが、現代の日本企業が直面する高齢化問題――従業員が高齢化して労働人口が減少、主力となる年代の従業員も育児や介護などで離職を余儀なくされ、人手が足りなくなる問題――にいち早く目を向けたとき、その対策を考えるプロジェクトのパートナーとして選んだのは、フリーランスのコンサルタントでした。その背景やコンサルタントとのパートナーシップについて、実感のこもったお話をうかがいました。

 

グループの課題解決のパートナーにコンサルタントを選択

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日本で深刻化している少子高齢化問題、それが近い将来引き起こす人材不足は、古河電工グループにおいても決して他人事ではありません。会社の持続的成長を考えるうえでは、今後も継続して事業をオペレーションする人材を確保しなければなりませんし、人手が足りなくなるならそれをカバーする体制を準備する必要があります。そのためには、親会社の経営陣に対しても「高齢化問題はほかならぬ古河電工グループの課題である」という問題提起をしなければならないと考えました。

 

今回コンサルティングを依頼したのは、その問題提起をいかにして行なうかということを考えるパートナーがほしかったからです。また当時は、業務を自動化して効率化などの効果を生み出す「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」をテスト導入しており、高齢化問題や働き方改革の対策の一環としてRPAをグループ全体に展開していきたいと考えていました。そこで、RPAをどのように展開し得るかという課題についても意見を聞きたかったのです。

 

今回、みらいワークスの仲介で紹介を受けてコンサルティングをお願いしたのは、河原伸之さんというフリーランスのコンサルタントです。私はこれまでさまざまなコンサルタントの方と仕事する機会があり、コンサルティング会社に属する方に依頼したこともあれば、フリーランスのコンサルタントとも仕事をしています。フリーランスのコンサルタントとお付き合いするなかで、業界のご意見番のような実力者と仕事ができたということもありました。ですから、コンサルティング会社かフリーランスかといったことにこだわりはありません。河原さんはIT業界の情報システムや事業会社の経営などの豊富な経験があり、ファシリティマネジメントや人口問題にも詳しいということで、今回の案件にはまさにうってつけのプロ人材でした。

 

みらいワークスを通し河原さんに依頼したもう一つのメリットは、「来ていただくコンサルタントは1人・週2日だけ」というこちらの希望を実現できたことです。コンサルティングファームへ依頼すれば、複数人のコンサルタントがフルアサインというかたちになるのが多くのパターンです。これは、フリーランスの方だからこそ実現できたかたちでしょう。

 

コンサルティングを有効活用するために「時間を確保」「期待を明確に」

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コンサルタントに来ていただくのを週2日に限ったのは、私がワークする時間を確実につくるためです。コンサルタントが週5日会社に詰めていても、社内担当者が時間をとれないためにコンサルタントが手持ち無沙汰になってしまうというケースも見聞きします。それは避けたかった。そこで、河原さんに来ていただく3カ月の間、毎週火曜日と木曜日の2日をプロジェクトに充てる日と決め、ほかの予定をブロックしたのです。この方法で、社のメンバーからも理解を得ることができ、河原さんとワークをする時間を132時間確保しました。

 

河原さんに最初に会社に来ていただいたとき、2人で2時間ほど「ノーミング」を行ないました。ノーミング(Norming)というのは「プロジェクトファシリテーション」の手法の一つで、プロジェクトチームを結成するときに行なう会議のことです。この場では、自己紹介、プロジェクトの背景・目的・成果物の共有、自分が果たすべき役割と責任の範囲、メンバーに対して期待すること、制約条件などを明確にし、チームのルールを決定します。この時間を共有することによって、「単なる人の集まり」を「機能するチーム」にしてパフォーマンスを発揮できるようにする、そのための仕掛けがこのノーミングです。

 

今回のプロジェクトでも、河原さんに対してどのような期待をしていて、どのようなアウトプットをお願いしたいかということを、ノーミングの場で最初に申し上げました。そして、3カ月間のミッションとロードマップを決めて、プロジェクトがスタートしました。会社の会議室で缶詰めになってのディスカッションは、半日のこともあれば、丸1日没頭することもありました。

 

ゴールが見えないなか、河原さんと手探りで検討を進めていきます。その過程では、情報はすべてオープンにしていました。パートナーとしてこちらの期待に応えてもらうためには、オープンであることが必要であると判断したからです。古河電工という会社の歴史や社風などかなり社内的なことまでシェアしました。これは、河原さんにはそうしても問題ないという信頼関係があればこそですが、このやりとりこそが信頼関係を一層強化したとも感じます。オープンな情報のシェアによって、会社経営を経験した河原さんの知見も得ながら、ディスカッションをさらに深めることができました。

 

プロの発想と技術で課題を可視化して「自分事」と実感させることに成功

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今回のプロジェクトで最も大きな影響をもたらしたアウトプットは、「グループ従業員の人口ピラミッド」です。100社を超える古河電工グループ企業のうちおよそ30社を対象に、10年後の従業員の年齢別人口を推計してグラフ化しました。個々の会社ごとに推計し、特に「45歳以上」の層を「介護の問題を抱えて休職や離職をする可能性が高い層」だと想定して、その数がわかるようにしました。

 

このグラフは、古河電工グループに近い将来起こり得る「高齢化による人材不足」とそれによる「業務停止リスク」という課題を“見える化”することに成功しました。この視覚情報を目の当たりにすることで、親会社の役員にも、高齢化問題を「一般的な社会問題」ではなく「自分事」としてとらえてもらえたのです。専務からは、「問題の本質に切り込めた」「これは全体で考えるべき問題だ」というメッセージを受け取ることができました。そうして、高齢化問題に未着手であった古河電工グループ全体を動かす契機になったのです。

 

このプロジェクトのアウトプットの効果は、当社以外にも波及しました。たとえば、私が参加している異業種企業経営者の交流会で共有したところ、一目で課題を理解してもらうことができました。参加企業数としては50余社ですが、連結の延べ従業数は300万人近い大企業の集まりですから、影響力も相応にあったでしょう。私は交流会の幹事もしていますので、2018年度のテーマに挙げ、参加企業同士で知恵やノウハウを交換することにしています。また、経済産業省の方にお話しする機会もありましたが、とても“刺さって”いた印象を受けました。

 

この人口ピラミッドの作成は河原さんが提案してくれたもので、河原さんとお仕事しなければ絶対に出来なかったものです。私が1人で考えていても、思考が堂々巡りになって出口を見つけることができなかっただろうと思います。先の企業交流会でも河原さんを紹介してほしいという声がありましたし、経産省の担当者もプロフェッショナル人材としてのフリーランスのコンサルタントに関心をもっていました。こういう仕事ができる人材がフリーランスだからという理由で埋もれてしまうのであれば、非常にもったいないことです。

 

「経営者目線をもつ」というのはよく言われることですが、実際に企業経営を経験された河原さんがもつ経営者目線は本物です。その目線がなければ、ここまで本質をつく議論にはならなかったのではないかと思います。河原さんは、私にとってコーチでもありました。2人で深い議論をしているとどんどん新しいアイデアが湧いてくるのです。そうしたところも含めて、今回のプロジェクトにおける河原さんとのパートナーシップはベストマッチであったといえます。

 

フリーランスとのパートナーシップで生まれるメリット

今回実現した「週2日」というスタイルには、実はコストメリットもあります。コンサルティングを依頼したい、でも5日間フルアサインで来ていただくだけのフィーが用意できないといった場合でも、「週2日でいいですよ」と言っていただけると費用面のハードルを下げることができ、ぐっとお付き合いしやすくなるのです。

 

企業規模によっては、大手コンサルティングファームに依頼するだけの経費を捻出できないことは往々にしてあります。私が社長を務める古河ファイナンス・アンド・ビジネス・サポートという会社もそうです。それに古河電工グループのような古い会社では、「自前でやってきた」という意識がありますから、キャッシュアウトとアウトソースを嫌います。そうした状況に風穴をあける一つの方策として、費用面でのハードルの低さを求めている企業は少なからずあると思います。みらいワークスが行なっているコンサルタントのビジネスマッチングサービスは、そういったニーズに応えてくれる人材を見つけるのに適していると感じます。

 

コンサルタントの方にとっても、フルアサイン以外の仕事の仕方があれば、プロフェッショナルとしての能力をもっと生かすことができるでしょう。たとえば、家庭の事情によって1日フルタイムで働けないという方もいます。ほかに仕事があるので、コンサルティング業務を副業的になら請け負えるというケースもあるかもしれない。フルアサインにとらわれなければ、今まで時間の制約を受けていた優秀な方が活躍しやすくなります。河原さんは、地方自治体の計画策定を支援するという仕事もされていて、全国各地を忙しく飛び回っています。週5日必ず来てくださいという依頼の仕方では、仕事をお願いできませんでした。

 

また、フリーランスの方なので、コンサルタント会社所属のように収入が安定しているわけではありません。ですので、プロジェクト開始時にご契約期間と終了日をFixし、私とのプロジェクトの後のお仕事に支障が出ないように気を付けていました。

 

今回のようなかたちをとったことで、河原さんにも、長いお付き合いのあるクライアントを大切にしながら当社の仕事もしていただくことができました。そうしたニーズは、ほかにも絶対あります。クライアントにニーズがあり、リソースを提供できるフリーランスがいる。あとはその間をコーディネートしてくれる存在があれば、マッチングが広がる領域は多いと思います。クライアントとコンサルタント、特に企業とフリーランスである個人という二者だけでは、実現できるマッチングに限界があります。その仲介という存在に、間違いなく価値はあるでしょう。双方の事情を汲み取ってうまく結びつけてもらうことができれば、事業会社でもコンサルタントの活用はより進み、クライアントもコンサルタントも、仲介者も皆ハッピーになるのではないでしょうか(後編へ続く)。

 

◆河原伸之さんへのインタビューはこちら:https://freeconsultant.jp/workstyle/w058

 

◆◇Vol.2◇◆コンサルタントとの協働に必要なのは、「課題設定」と「選択肢を知ること」

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