【監修】マーケティング戦略の代表的フレームワークとは?

最終更新日:2019/11/27
作成日:2017/02/05

 

マーケティング戦略や経営戦略において、フレームワークを利用した分析が経営を良い方向に導くことがあります。ここでは数多くあるフレームワークの中から、代表的なものと押さえておきたいものを、営業力やマーケティング力強化を支援するエキスパート人材の監修のもと、それぞれ3つずつピックアップしました。すでに起業している人はもちろん、これから新規事業を立ち上げようとしている人も、ぜひここでご紹介するフレームワークは押さえておきましょう。

 

目次

■マーケティング戦略に必要な思考とは?
(1)戦略の元に戦術を行うこと
(2)的確な戦略のためにフレームワークを使う

 

■代表的なフレームワーク3選
(1)PEST分析
(2)3C分析
(3)SWOT分析

 

■できればこれも押さえたい!フレームワーク3選
(1)4P分析
(2)バリューチェーン
(3)PPM

 

■もっとフレームワークを有効に活用するために
(1)社内全体で共通の認識を持とう
(2)プッシュ戦略とプル戦略
(3)アブダクションを意識する

 

■まとめ

 

※本コラムは、2019年11月27日に「マーケティング戦略の代表的なフレームワークを押さえよう」を再構成したものです。
※本コラムは、営業・マーケティング支援を行う企業のプロ人材による監修を行なっています。

 

マーケティング戦略に必要な思考とは?

(1)戦略の元に戦術を行うこと

企業は目的達成のためにさまざまな取り組みを行ないますが、この実際に起こす行動戦術と呼びます。たとえば、販売促進のためのキャンペーン。これは戦術の1つです。しかし、どのビジネス戦術も大きなビジネス戦略に沿ったものでなければ、あまり意味がないものと考えられています。目的達成のためにはまず戦略を練り、その上で必要な戦術を用いる。これがマーケティング戦略の基本的な考え方とされています。

 

(2)的確な戦略のためにフレームワークを使う

的確なビジネス戦略を練るために役立つのが、フレームワーク(合理的に考えるための枠組み)です。フレームワークにはいくつもの種類がありますが、それぞれのフレームワークが「何を考えるべきか」を示唆してくれます。フレームワークにいくつもの種類があるのは、「万能のフレームワークはない」と考えられているからです。企業そのもの提供する商品サービスの質によって、ベストとされるフレームワークは異なるでしょう。成果が出やすいフレームワークもあれば、成果が出にくいフレームワークも存在します。

 

これから、いくつかの代表的なフレームワークをご紹介しますが、どのフレームワークがもっとも成果を出しやすいのかは扱うビジネスによって異なりますし、店舗ビジネスなのかwebビジネスなのかでも変わります。そのため、複数のフレームワークを知っておいて損はありません。選択肢が広まれば、その分ベストとされるフレームワークを選べる可能性も高まり、より優れた経営戦略になりやすいです。

 

また、フレームワークは複合して使用することでより大きな効果を発揮することも期待できます。なるべく多くのフレームワークの存在は知っておいたほうが良いでしょう。

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代表的なフレームワーク3選

(1)PEST分析

マーケティング戦略の代表的なフレームワーク、まずはPEST分析です。PEST分析は主に外部環境を分析する際に用いられる手法です。外部環境を4つの視点から分析することを特徴とし、PEST分析の名前は、P(Politics)政治、E(Economy)経済、S(Society)社会、T(Technology)技術、の頭文字からきています。

 

1つずつ簡単に確認しましょう。まず政治面の分析では、法律が変化することによって自社がどのような影響を受けるのかを考えます。分かり易い事例に消費税の引き上げがあります。消費税が上がることで自社がどのような影響を受けるのかを考えて戦略を打ち出す。これがPEST分析のPです。

 

続いて、経済面からの分析ですが、ここでの事例は、世帯収入が減少傾向にある、もしくは一時的な景気回復によりボーナス支給額が増加しているなどの現象を捉えることです。どちらも多くのビジネスに影響を与えることが予測できると思いますが、これがPEST分析のEです。

 

次に社会面からの分析。たとえば、高齢化社会や少子化が進んでいることなどが当てはまります。高齢化社会なのですから、子供よりも高齢者をターゲットにした商品やサービスの方がより需要が見込めると考えられるでしょう。このような考え方がPEST分析のSです。

 

最後に、技術面からの分析。どのような業界であっても技術は進歩しているものです。技術が進歩すれば、古い技術は価値を下げてしまう可能性もあるでしょう。たとえば、ブルーレイディスクが普及すればDVDの価値をこれまでと同様に維持するのは困難です。業界内での技術の進歩には、必ず注目しておく必要があります。これがPEST分析のTです。

 

PEST分析の特徴の1つは、それぞれの外部環境分析を単体で行うのではなく、総合的に外部環境を分析する点だと考えられています。外部環境分析を用いて経営戦略をする際には、欠かせないフレームワークの1つです。

(2)3C分析

3C分析も有名なフレームワークの1つです。3C分析の「3C」とは「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」のぞれぞれの頭文字のCをとったもの。主に業界内での自社の立ち位置を確認するためのフレームワークと言えるでしょう。

 

3C分析の肝の1つが競合分析です。業界規模がハッキリとしていて、競合分析をして他社と自社の力関係が見えてくれば、経営戦略も立てやすくなります。

 

市場・顧客分析も重要な視点です。市場が成長すれば顧客の絶対数も増えるので、市場の成長予想なども大切だと考えられています。また、業界全体に対する顧客のニーズも年々変わっていくので、この点も無視するわけにはいかないでしょう。顧客数やニーズが変われば営業方法や経営戦略も変わります。

 

また、新規事業を始める時には、自社分析も然ることながら、始めようとしている業界の規模や自社が入り込む隙間があるのか確認するのかがとても大切です。そのため、3C分析はビジネスを始めたばかりの人でも覚えておくべきフレームワークの1つと言えます。

(3)SWOT分析

SWOT分析は、内部環境分析と外部環境分析を同時に行ない、自社にとっての「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」を明確にする分析方法です。これらを明確にすることで、自社にとっての課題と市場機会を明確にすることが主な目的とされています。

 

SWOT分析の前半であるSとWが内部環境分析にあたり、後半のOとTが外部環境分析に該当しますが、これらの分析には競合分析も含まれていると考えたほうが良いでしょう。他社との比較を行なわなければ、自社の強みと弱みも見えにくいものです。

 

SWOT分析は、他の分析方法と複合して使用されることも多い経営戦略。たとえば、先ほど紹介したPEST分析や3C分析などで情報を収集して、その後にSWOT分析を用いてより深く自社を分析して営業に活かす方法もあります。このようにマーケティング戦略では、複数のフレームワークを段階的に使用することもあるのです。

 

 

これも押さえたい!フレームワーク3選

(1)4P分析

マーケティング戦略で使えるフレームワークはまだまだあります。ここまでに紹介した3つのフレームワークはすでに習得している、というマーケターに向けて、別のフレームワークもご紹介しましょう。まずは、4P分析です。

 

4P分析とはProduct(製品)、Price(値段)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の4つのPの頭文字を並べたもので、マーケティング戦略を考える際には、この4つの視点で分析・構築することを推奨しています。

 

Productでは、自社の商品やサービスを分析して、顧客のどのようなニーズに応えているのかを明確にします。

 

次いでPriceでは、商品やサービスが適正な価格なのかを見極めます。場合によっては、同じ商品やサービスであっても価格の変更が必要なこともあるでしょう。

 

4Pの3つめのPlace商品・サービスを販売・提供する場所や方法を分析します。商品の場合は、店舗で販売するのか、それともweb上で販売するのか、はたまた店舗とwebでの販売を併用することも十分に考えられるでしょう。ここでの分析には購買層の購買行動プロセスの分析が重要になってくることが多いと考えられています。

 

4Pの最後はPromotion商品やサービスをより多くの人達に認知してもらうための宣伝や広告がここに含まれます。

 

一般的に、Promotionがマーケターの仕事のように思われることも多いのですが、Promotionだけがマーケターの仕事ではないと知るべきでしょう。マーケティング戦略を構築する上では、Promotionも重要な要素の一つですが、Product、Price、Placeの各戦略との組み合わせで考えるべきであり、Promotionもマーケティング戦略という広い枠組の中では、ごく一部にすぎません。

(2)バリューチェーン

バリューチェーンは、主に自分達のビジネスの内部環境分析のために使われるフレームワークで、自社を資源・機能別に分析する手法です。自社で行なっているすべての業務を「主活動」「支援活動」の2つに分けて分析します。たとえば、製造業の場合、主活動は、調達、製造、販売、サービスなどの直接部門の資源・機能を指し、支援活動は、人事や技術開発などの間接部門の資源・機能を指します。

 

それぞれの資源・機能を分析することで、より効率的な資源配分を目指すフレームワークです。自社以外の外部影響を受けずに分析ができるため、比較的実行しやすいフレームワークと言えるでしょう。

 

バリューチェーンを使用すれば、「どこに人が必要なのか」や「どこに資金が必要なのか」が明確に見えてくるため、より効率的な動きがしやすくなる経営戦略だと考えられています。

(3)PPM

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とは、複数の事業に関わっている企業に必要なフレームワークで、事業分野の最適な組み合わせを分析する手法です。たとえば、クロスメディア戦略を行なっているビジネスでは非常に有効と言えるでしょう。クロスメディア戦略とは、複数のメディアで商品ならびにサービスを展開して、それぞれの相乗効果を見込む経営戦略です。

 

PPMでは、現在進行中で関わっている事業をそれぞれ「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」のいずれかに振り分けます。

 

負け犬は、将来的な市場成長率も見込めず現在の市場占有率も少ないもの。簡単に言ってしまえば、企業のお荷物となっている部分です。負け犬の業務から手を引くことで、資金や人材を他の業務に回す余裕が生まれます。

 

問題児とは、将来的な市場成長率は見込めるものの、自社では市場の占有率が低い業務のことです。市場のシェアを高められれば今以上の利益が望めるため、積極的に投資し、シェアの拡大を目指していくべき分野と考えられます。

 

花形とは、市場成長率も高く現在の市場占有率も高いものです。企業にとって、もっとも大きな稼ぎ頭にあたる部分。問題児を花形にすることを考えると、企業全体の利益は大きく伸びるでしょう。

 

ただし、花形が花形でいられる時期には限界があります。市場成長率はいずれどこかで止まってしまうものだからです。市場成長率が低くなった時に、それでも市場占有率を高く保っていれば、その分野は企業にとって金のなる木になります。市場成長率に合わせて営業や投資をする必要が最小限で済むようになるからです。

 

一般的にPPMでは、負け犬を撤廃し、金のなる木で得た資金を問題児に投資し、将来的に花形に成長させて、最終的にはなるべく多くの金のなる木を生み出す。そう考えられることが多いようです。

 

 

もっとフレームワークを有効に活用するために

(1)社内全体で共通の認識を持とう

フレームワークを使用した分析結果は、より多くの人達で共有する必要があります。社内の全員が同じ方向を目指さなければ、戦略の成功はあり得ません。そのために、戦略の方向性を簡潔に5W1Hにまとめる方法もあります。

 

「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」。今後の戦術や方針をこの5W1Hにまとめてより多くの人達で共有すれば、社内全体で同じ方向を向きやすくなり戦術も成功しやすくなるでしょう。

(2)プッシュ戦略とプル戦略

マーケティング戦略の場合は、フレームワークを使用して戦略・戦術が決まったら、どれがプッシュ戦略でどれがプル戦略なのかも意識すると良いでしょう。

 

プッシュ戦略チャネルや営業マンを通じて消費者に売り込んでいく“押せ押せ”の戦略(=白兵戦)で、プル戦略広告などでブランドに対するイメージを形成しニーズを“引き出す”戦略(=空中戦)のことです。

 

企業によっては、プッシュ戦略ばかりに注目が集まるようですが、プッシュ戦略の効果を最大化するためのプル戦略も、同時に必要な戦略と言えます。

プッシュ戦略にのみ傾倒せず、プル戦略を効果的に組み入れることで、バランスが良く、費用対効果の優れた戦略を構築・実行することが可能となります。

(3)アブダクションを意識する

アブダクションとは、目の前にある現象・事実に対して「何故、このような結果になったのか」と理由を見つける経営戦略のことです。

 

たとえば、特定の部門での売上が極端に下がってしまった事実があったとします。その場合、「売上が下がってしまった原因」を考えます。これがアブダクションです。

ここで大切にしたいのは、自分自身の経験や勘に基づいてその答えを考え出すというよりも、事実に基づいて論理的に「原因を究明しようとする姿勢」です。環境変化の激しい昨今では、客観的に物事を捉える能力も、起業家や経営者にとって重要な能力と言えます。

今回ご紹介したフレームワークは、事実を論理的・客観的に分析するためのツールとも言えるので、アブダクションの際の切り口として活用するのも良いでしょう。

 

 

 

企業を取り巻く環境は、常に劇的に変化し続けています。その中で、フレームワークは、これまで蓄積された企業活動の数多くの事例・実績に基づいて開発されたものであり、複雑化・高度化する企業活動を論理的に分かり易く分析・検討するためのツールとして、その価値は日々増しています。

これからも、何が正解なのかわかりづらい局面に立たされることも少なくないでしょう。そのような時でも、なるべく成功確率の高い戦略に近づけるためのツール、それがフレームワークです。

しかし、フレームワークというツールにはたくさんの種類があり、それぞれが違った角度からの武器となります。ビジネスにおいて武器は多ければ多いほうが良いはず。今回ご紹介したフレームワークを手始めに、まずは自社のマーケティング活動に活かしてみてはいかがでしょうか。

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

 

 

< 監修者プロフィール >
大野 晴司(おおの せいじ)

東京都立大学(現首都大学東京)卒業後、日産自動車で国内のマーケティング部門や系列ディーラーでの営業マンや本社販促部署長などを経験。中小企業診断士資格取得のために退職、2003年3月資格取得。その後、マーケティングリサーチ会社、自動車関連メーカーを経て、2008年にビズ・エキスパート株式会社を設立。神奈川・東京の中小・中堅企業の営業力・マーケティング力支援のほか、経営企画業務、新規事業支援を主な事業として活動中。また、企業向けセミナー講師なども務める。

ビズ・エキスパート株式会社:http://b-ex.biz/index.html
プロフェッショナリズムインタビュー:https://freeconsultant.jp/workstyle/w020

 

 

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