誰でも公共データをビジネス活用できる「オープンデータ」の可能性

最終更新日:2018/02/21

 

国や地方自治体が公開する公共データ「オープンデータ」が注目される理由とは

国や地方自治体が公開する公共データ「オープンデータ」が注目される理由とは1

オープンデータとは、国や地方自治体が一般に公開している膨大なデータのこと。

ここ数年で、このデータを活用してもらおう!という動きが広まっています。政府もオープンデータの利用を推進しており、経済活性化につなげたいという狙いがあるようです。こうした背景もあって、オープンデータを使ったアプリ開発など、ビジネスへの活用も少しずつ進んでいます。今後コンサルタントの方にとっても、開発プロジェクトなどでオープンデータに関わる機会が増えることが予想されます。

そこで今回はオープンデータの基礎知識とともに、日本の活用状況などをまとめました。

☆あわせて読みたい

『フリーランス人材の悩みとは?業務委託の雇用形態とメリットデメリットを解説』

『簡単にわかる「フリーランスとは」入門ガイド 』

『フリーコンサルタントは副業でも稼げる?単価・種類・注意点を解説!』

 

 

(1)オープンデータとは

もしデータが公開されていても、営利目的では使えなかったりデータが加工できないファイル形式だったりすると企業の利用は進みません。オープンデータの基本的な考え方は、「誰でも⾃由に使える」という点です。

 

<オープンデータの一般的な特徴>
・誰でも使える
・利用目的の制約がない(営利目的でもOK)
・再利用、再配布ができる
・加工できるデータ形式(CSVなど)

 

オープンデータとして使えるものは、地理情報や統計情報などさまざま(当然ながら住民などの個人情報は含まれません)。総務省が運営するWebサイト「データカタログサイト」では、国や地方自治体などが公開しているオープンデータを検索することができます。オープンデータに取り組んでいる地方自治体は、2017年6月時点で約260にまで広がっています。

 

2011年に発生した東日本大震災以降、避難マップの作成など防災目的でオープンデータを活用するケースも増えているようです。東京都では2017年にオープンデータ防災アプリコンテストを開催。避難所一覧などのオープンデータを利用したアプリの開発を促進しています。

 

これからは2020年の東京オリンピック開催に向けて、交通情報や観光情報などにオープンデータが活用されることも期待されています。

出典:総務省「データカタログサイト」

 

(2)政府や自治体がデータを公開する目的

政府や自治体がオープンデータに取り組む理由の一つが「行政の透明化」。その先駆的事例がアメリカです。2009年に当時のオバマ大統領が打ち出した「オープンガバメント」(透明性の高い、国民に開かれた政府)では、「透明性」「国民参加」「協業」の3原則を表明しました。オープンガバメントの一環として、アメリカ政府がオープンデータを提供するサイト「Data.gov」を立ち上げました。これをきっかけに世界に広くオープンデータの取り組みが広がったと言われています。

 

また、政府や自治体にとっては、さまざまな企業がデータビジネスに参入しやすくなれば経済の活性化につなります。またオープンデータの利用が広まれば、行政サービスをアウトソースしやすくなるという狙いもあるようです。

 

 

海外のオープンデータ活用事例

海外のオープンデータ活用事例2

もともとはアメリカなどの海外で活用されているオープンデータ。ビジネスに活用できている事例を2つ紹介します。

「不動産情報サービスMRIS」(アメリカ)

MRIS(Metropolitan Regional Information Systems)という不動産情報サービスでは、従来の不動産情報にオープンデータであるさまざまな公共データを組み合わせている事例です。オープンデータとして公的機関から提供されている地域の人口統計や気候データ・環境汚染データのほか、教育機関のデータや犯罪データなどを利用しています。MRISでは一般ユーザーが参照できる情報もありますが、不動産業者向けに有料で情報提供するビジネスモデルです。

「WHERE DOES MY MONEY GO?(税金はどこに消えた?)」(イギリス)

アメリカとともにオープンデータの活用に積極的なイギリス。イギリスのOpen Knowledge Foundation が開発したのが「WHERE DOES MY MONEY GO?」というサイト。自治体の財政データなどをもとに、税金が何に使われているかを一般ユーザーにわかりやすく可視化するというものです。ビジネスに直接つながっているケースではありませんが、自治体が持つオープンデータを利用して一般ユーザー向けに情報提供できている事例として、よく取り上げられています。

実はこの仕組み、日本語バージョンもあります。横浜市が最初に日本語版を立ち上げ、その後は他の国内エリアにも展開。今では全国170以上の自治体の「税金はどこに消えた?」サイトがあります。

 

 

日本のオープンデータ活用事例

日本のオープンデータ活用事例3

日本は海外ほどではありませんが、少しずつオープンデータに取り組む団体が増えています。地方自治体の中で、積極的にオープンデータ活用を進めている事例を2つ紹介します。

鯖江市(福井県)

「めがねのまち」として有名な、福井県の鯖江(さばえ)市。意外にも日本で初めてオープンデータに取り組んだ地方自治体なのです。

 

鯖江市では2010年から「データシティさばえ」というプロジェクトでオープンデータへの取り組みをスタート。「公衆トイレ情報」「AED情報」「道路工事情報」などの行政データをXML・RDF形式で公開しています。

 

鯖江市では、市民向けにアプリ開発のプログラミングを教えるワークショップなども行なっています。オープンデータを使ったアプリを増やし、よりオープンデータを市民に活用してもらうことが課題のようです。人口6万人規模の自治体からオープンデータ活用がはじまったというのは、興味深いですね。

横浜市(神奈川県)

一方、人口約370万人を抱える横浜市もオープンデータの取り組みに積極的な地方自治体として知られています。

横浜市ではWebサイト上でオープンデータを提供しているほか、民間企業やNPOなどの団体との協業体制を組んでオープンデータの利用を促進しています。2016年度には「オープンデータ活用ビジネス化支援事業」として、オープンデータを使った新規事業を創出するための取り組みが行なわれました。

横浜市のオープンデータ活用ビジネス化支援事業(2016年度)
・セミナーやワークショップなどのイベント開催
・ビジネスプランのサポート
・データサイエンティスト人材育成プログラムの実施

 

コンサルタントにとっても、オープンデータは新たなチャンスになるかも?

コンサルタントにとっても、オープンデータは新たなチャンスになるかも?4

オープンデータは公共データがメインのため、現在日本では防災など地域貢献に関する使い方がメイン。企業のビジネスに大きくつながった事例がまだ少ないというのが課題です。また企業にオープンデータが浸透していない(知られていない)という状況もあるようです。

 

とはいえ、オープンデータは大企業に限らず中小企業も活用しやすいというメリットがあります。アプリやサービスの開発プロジェクトにて、オープンデータを利用するケースも増えてくるかもしれません。コンサルタントの方々にとっても、新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。コンサルティング会社の中でも、オープンデータに取り組むケースが出てきています。例えばアクセンチュアでは、慶応大学とともに2014年にオープンデータを利用した自治体改革アイデアを競うコンテストを実施しました。

 

まだ日本では発展途上のオープンデータですが、「誰でも使える・二次利用ができる」という特性を生かして、さまざまなジャンルでの活用が期待されています。例えば事例で紹介した横浜市では、オープンデータ活用のため企業や大学と協力してオープンイノベーションにも取り組む予定です。そのため横浜市では2017年4月に「オープンイノベーション推進本部」を設置しました。

 

オープンイノベーションでは複数の企業が持つデータと組み合わせることで、さらに公共データの使い方が広がるかもしれません。オープンデータのこれからの動向から目が離せません!

 

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

コンサル登録遷移バナー

 

◇こちらの記事もオススメです◇

どんな業種・業界に転職しても通用するポータブルスキルとは」