テレワーク・リモートワークのメリット・デメリットや具体事例
最新更新日:2023/02/01
最新作成日:2023/02/01
近年、テレワークやリモートワークといった言葉をよく目にするようになりました。みなさんご存知の通り、特定の職場ではなく、自宅や移動先などで仕事をするスタイルを表す言葉です。今回は、テレワークに向いている職種や、実際に導入した企業の好事例をご紹介します。
自宅や移動先で仕事をこなす新しいビジネススタイル
近年、テレワークやリモートワークといった言葉をよく目にするようになりました。もちろんこの2つの言葉の意味は同じで、特定の職場ではなく、自宅や移動先などで仕事をするスタイルを表す言葉です。
総務省の「平成28年版 情報通信白書」によれば、テレワークは「就労者にとっては、ワーク・ライフ・バランスの向上や通勤による疲労軽減、地方における就業機会の増加などが期待される」。また「企業にとっては、従業員の生産性向上や災害時などでの事業継続性の確保、人材流出の防止策として期待される」。そして社会全体にとっては、「子育てや介護等を理由とした離職の抑制や、高齢者や障がい者等の就業機会の拡大による、労働力の確保として期待されている」としています。
しかし、現実には、わが国でテレワークを導入している企業は16.2%で、「導入していないが、具体的に導入予定がある」と回答した企業と合わせても全体の2割程度にとどまっています。この理由としてよくいわれていることは、企業の「労務管理」「社内(社外)コミュニケーション」「セキュリティ管理」をいかに解決するかという点です。この対策としては、平成26年に消費者庁が管理職を中心に週1日程度、在宅型テレワークを実施したように、実験的な導入を行ない、改善点を洗い出していくという方法をとることが結局は近道になるといえるでしょう。
ひとり完結型業務の専門職ほど完全在宅勤務の可能性が高まる
次に、テレワークやリモートワークなどの働き方が、どのような職種に向いているのか考えてみることにしましょう。
一般社団法人日本テレワーク協会では、テレワークの対象が「技術者、事務職、営業職、管理職など、幅広い層で実施」されているとしています。業務の内容的には、「通常のメールでのやりとりをはじめ、プレゼン資料の作成、企画書の作成、会議の開催案内や日程調整、データ入力・整理、会議録・メモおこし、ホームページの更新等」を挙げています。
もちろん、テレワーク導入にあたっては、「労務管理方法、情報通信システム・機器、テレワーカーの執務環境の3つの側面から必要事項を検討することが大切」としており、とくに情報通信システム・機器については「情報セキュリティに配慮したシステムの導入が必要」と強調しています。
ただ、同協会の想定しているテレワークは、週1日~2日程度実施する企業を想定したもので、完全在宅やそれに近い勤務の場合には、適した職種がやはり絞られてしまいます。さらに、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏は「日本は仕事を部署全体で共有する、"ジョブ共有型"のため、在宅ワークなどの障害になっています」と指摘しています。
このような状況からすると、完全在宅に向く仕事というのは、IT系エンジニア、WEBデザイナー、編集者・ライター、マーケッターなど、仕事の成果が納品物の品質・納期で明らかにわかる専門職ということができます。あるいはテレフォンオペレーターなど、仕事のマニュアル化・定量化・定型化が十分に図れる業務も対象となり得ます。
逆に、確認や打ち合わせが多い職種、チームワークで動く仕事はリモートワークに適しているとはいえないでしょう。
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テレワーク、リモートワークの実践企業
テレワーク、リモートワークを導入して成功した事例はいくつもありますが、ここでは厚生労働省発表の「テレワーク活用の好事例集」から、中小企業の例を3つ選んで概要を紹介します。
01.向洋電気土木株式会社/神奈川県横浜市
屋内外の電気設備の設計・施工会社で、従業員は25人。経営の効率化や従業員のワーク・ライフ・バランスを目的にテレワークを導入しました。総務課長が、自身の介護と育児の経験を活かしてテレワークを実施しています。テレワークの対象は全事業所で、事前に総務課長にテレワークの申告をした上で、在宅勤務が許可されます。前提条件としては、家族に業務用のPCを見せない、触らせないなどがあります。
02.株式会社SiM24/大阪府大阪市
電子機器部品の応力解析や熱解析などをシミュレーションする、受託シミュレーションサービス業です。従業員数は20人。高度な知識を有する優秀な人材確保と、即応性のある解析シミュレーションサービスを目的としてテレワークを導入しました。雇用時点で、完全在宅勤務による就労を前提としています。結果として本社の面積はミニマムで問題なく、女性の在宅勤務者も夫の転勤に関係なく仕事が継続できるというメリットが生まれました。
03.株式会社フューチャーネットワークス/神奈川県横浜市
WEBアプリケーション開発、運営・保守を手がける情報サービス産業で、従業員は30人。地域の雇用創出と制作費の削減、および専門性の高い人材の確保を目的としてテレワークを導入しました。とくに同社の場合、継続勤務期間が長くなると、育児など従業員のライフステージに変化が生じることや、奄美大島の個人事業者に業務委託を行なったことから、必然的にテレワーク制度を導入しています。
ちなみに、この事例集で取り上げられた企業の多くは情報通信産業であり、テレワーク、リモートワークは、やはりIT系の企業ほど相性がいいことを物語っています。
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テレワーク、リモートワークのデメリット
ちょっと古い話ですが、2013年2月、米Yahooが在宅勤務のスタッフにオフィス勤務を命じたことが問題になりました。Yahoo側の見解によると、在宅勤務には「チーム内の信頼感の低下やコミュニケーションの断絶が発生する可能性の拡大のほか、在宅勤務者にとっては家と仕事との境界があいまいになる」という深刻なデメリットがあるとしています。
ただし、「家と仕事との境界があいまいになる」というのは、むしろ被雇用者にとってのデメリットであることに注意しなければなりません。それは、テレワーク、リモートワークによって、プライベートの時間にまで仕事を持ち込むようになり、結果として長時間残業が発生してしまうことです。
実際、米テキサス大学が行なった調査では「在宅勤務者はもっぱらオフィスで働くスタッフよりも5~7時間多く働いていることが明らかになっている」(ウォールストリート・ジャーナル)という報告もあり、テレワーク、リモートワークが必ずしも雇用側・非雇用側双方に福音をもたらすものではないことが明らかになっています。テレワーク、リモートワークを導入しようとする場合、冒頭の情報通信白書に記されたような、本来の目的をはっきりと見据える必要があるのです。
テレワークやリモートワークという今日的な在宅ワークが可能になったのは、もちろん情報技術(ICT)の進歩があったからのことです。かつての在宅勤務といえば、梱包や仕分けなど内職型の仕事か、フリーライターやデザイナー、フリーカメラマンといったクリエイティブ系の職種に限られていました。その意味で、ICTによりテレワーク、リモートワークが多くの職場で可能になったのは喜ぶべきことです。
一方、何人かの在宅ワーカーがブログなどに投稿したように、テレワーク、リモートワークの浸透によって、コミュニケーションの場がなくなる、信頼感の低下が起きるといった可能性もあります。それを防ぐためには今後、労使双方にとって、メリットのあるテレワーク、リモートワークのためには、広範囲な基準づくりを進める必要があるでしょう。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)