「InsTech」におけるAI活用が保険業界に及ぼす影響とは

作成日:2017/04/05

 

FinTechの新たな潮流「InsTech」

FinTechの新たな潮流「InsTech」

急成長を見せている「FinTech」領域。その潮流の中で、業界としてはそのイノベーションが遅れている印象の強い保険業界。しかし、その保険業界においても昨今FinTechの波は一気に押し寄せてきており、「InsTech(インステック)」と称され、今までの保険業界の在り方を変えていく取り組みが進みつつあるようです。

今回はその中でも特に「人工知能(AI)」を活用したInsTechの取り組みについて触れていきます。

 

コールセンター業務のAI化

コールセンター業務のAI化

保険業務の中で最もAI化が進んでいると言えるのがコールセンター業務でしょう。

2016年2月1日、損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、コールセンターの一部においてAIや音声認識技術を活用した「アドバイザー自動知識支援システム」の運用を開始しました。それまでは、コールセンタースタッフは利用者からの照会に回答するため、各種マニュアルや規定、商品パンフレット、FAQ集、社内イントラネットなど、多くの種類の文書を参照する必要がありました。このため、対応の品質はスタッフの熟練度に大きく左右されてしまうという課題がありました。加えて、高齢化による労働人口の減少により、コールセンタースタッフの人材確保が難しくなることも予想されています。このような背景のもと、コールセンターにAIや音声認識技術を活用した「アドバイザー自動知識支援システム」を導入したといいます。

本システムは、利用者とコールセンタースタッフの通話をテキスト化し、そのデータをもとに、複数の要素技術を活用したAIが、データベースから問い合わせに対する最適な回答候補を検索し、コールセンタースタッフが使用するパソコン上にリアルタイムで表示。これにより回答時間の短縮を図るというものです。スタッフは、顧客への回答の後にシステムが導き出した回答候補の正否をフィードバックすることでシステムに学習させ、回答候補表示の精度向上につなげていきます。

このような動きは、日本興亜だけではなく、三井住友海上火災保険やあいおいニッセイ同和損害保険でもコールセンター業務にAIを導入。IBMの人工知能技術「Watson(ワトソン)」を使って、コールセンターに集まる大量の「顧客の声」を分析し、業務の合理化と顧客サービスの向上を図っているなど、各保険会社が積極的にコールセンター業務のAI化を進めています。

☆あわせて読みたい

『【PMOコンサルタントとは】つまらない?意味ない?キャリアに使えない?向いている人と今後の将来性・年収を解説!』

『【ITコンサルタントとは】激務?学歴や資格は必要?未経験からなるには?仕事内容や年収、SIerとの違いを解説!』

 

アンダーライティング機能のAI化

アンダーライティング機能のAI化

2016年10月、日本の保険業界では初の試みとして、日本生命保険が保険アンダーライティング機能(保険の引き受けや支払い査定機能)を自動化するため人工知能(AI)を導入する検討に入ったと発表しました。

顧客が人間ドックで受診した診断結果のデータ約600パターンのうち、特定の20~30項目を抽出する実験を始め、診療報酬明細書も対象項目に広げていき、集めたデータをAIが処理できる仕組みを整備する、とのことです。

当面は担当者の判断をサポートする位置付けで役立てる考えのようですが、最終的にはAIによる保険アンダーライティング機能(保険の引き受けや支払い査定機能)の全自動化が可能か検討することになります。

今までアンダーライティングは従業員が実施・判断しているのが一般的でしたが、考えてみれば保険会社には顧客個人の現在の体調情報や既往症、生活習慣や生活環境、家族の情報など、契約リスクを判断するための大量の顧客現況情報と、医事統計のデータや過去の請求データ、支払いデータといった膨大な支払判断情報を保有しており、まさにビッグデータ分析によるAI活用には最適な環境があると言っても過言ではないでしょう。

AIを導入することで、従業員の業務効率を上げるとともに、今まで保険に入れなかった顧客が保険に入れるようになるなど、顧客サービスそのものの向上にもつなげていくのが狙いのようです。

☆あわせて読みたい

『【PMOとは】PMとの違い(仕事内容・意味・職種)と向いている人、業務に必要な資格・スキルセットを解説!』

『【フリーコンサル PMO】年収は?必要なスキルや資格は?つまらない?メリット・デメリットも解説』

 

AIを活用した保険比較アプリ

AIを活用した保険比較アプ

2016年8月には、全国に163店舗の保険ショップ『保険クリニック』を展開する株式会社アイリックコーポレーションが、スマートフォンやタブレット等のカメラで撮影した生命保険証券を自動分析するアプリ開発に着手したことを発表しました。

保険商品の内容は非常に難しく、私たちのような素人が保険証券を読み込んでも、なかなかその違いを理解するのが難しいのは、このコラムをご覧の皆様も実感があるところなのではないでしょうか?しかもそれは私たちのような素人だけではなく、保険ショップのコンサルタントも例外ではないようで、数ある保険会社の各保険商品のすべてをきちんと理解するためには極めて高いスキルと経験が必要です。

この「生命保険証券自動分析アプリ」は、アイリックコーポレーションが代理店向けに提供している保険証券分析機能と、グループ会社の株式会社インフォディオが開発した、画像認識技術により写真から文字を抽出しテキストに変換する人工知能OCRスキャナー「文字スキャン」を融合させたアプリであり、スマートフォンなどで保険証券を撮影するだけで、その保険会社の証券の書式に合わせて自動で「生命保険証券分析シート」を作成。保険の比較検討を容易にするものなのだそうです。エンドユーザー、そして保険コンサルタント双方の不安や課題を解決するアプリとして注目を集めています。

 

 

ニッセイを抜いて保険業界トップに躍り出た第一生命は、2015年度末に営業部門・商品部門・システム部門・運用部門・海外部門・アンダーライティング部門など、約15の部の精鋭を集めてインステックの専門チーム「インステックイノベーションチーム」を発足させました。その推進パートナーとしてアクセンチュアも初期段階から参画しており、InsTech に関する最新動向の共有、最新要素技術の適用可能性評価、新サービス実現に向けた実証実験を今後行なっていく模様です。

このように、FinTechの潮流の中で少し遅れ気味であると言われていた保険業界にも「InsTech」の動きが一気に加速化しており、これからも大手保険会社各社を中心にさまざまな取り組みがスタートしていくことでしょう。私たちの生活になくてはならないサービスとなっている保険。今後、そのビジネスモデルがテクノロジーによって、どのように変化していくのか。ビジネスとしても、一利用ユーザーとしても要注目ですね。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

コンサル登録遷移バナー

 

◇こちらの記事もオススメです◇

日本企業の情報セキュリティは遅れている?進むセキュリティ人材育成」