【PMOスキルセット19選】向いている業務と役割は?初めてのPMOでも生かせるスキルを紹介!

最終更新日:2025/02/06
作成日:2020/09/09

 

近年、ある程度大きなITプロジェクトでは、PMOの設置が標準化しています。一方でPMO人材不足が叫ばれており、PMOに向いている人材のスキルセットが整理できないまま、PMOを募集するプロジェクトもあるようです。

 

PMOにはどんなスキルや経験、意識が必要とされるのでしょうか?PMOになるためのキャリアプラン、PMOとして経験を積んだ後のキャリアパスも紹介します。

 

目次

■PMOとは?
PMOが必要とされる背景

 

■PMOの役割・業務別のポジション
(1)PMOアドミニストレータ
(2)PMOエキスパート
(3)PMOマネージャー

 

■PMOに求められるスキルセット【重要度】
(1)コミュニケーション能力
(2)リスクマネジメント能力
(3)タイムマネジメント能力
(4)経営センス
(5)プログラミング能力
(6)言語化能力
(7)文書化能力
(8)語学力
(9)傾聴力
(10)コストマネジメント能力
(11)ファシリテーション能力
(12)情報セキュリティマネジメント経験
(13)大規模プロジェクト経験
(14)ロジカルシンキング
(15)当事者意識
(16)変更管理能力
(17)品質保証(QA)の知識
(18)ステークホルダーマネジメント能力
(19)ナレッジマネジメント能力

 

■PMOになるためのキャリアプランは?
(1)エンジニア(SE)からPMO
(2)PMからPMO
(3)ITコンサルタントからPMO
(4)事務・サポート職からPMO

 

■PMOスキルセットを生かせるキャリアパスは?
(1)所属企業やコンサルティングファームで上を目指す
(2)フリーランスPMOとして独立・起業
(3)情報システム担当への転職
(4)ITベンダーの役員へのキャリアアップ

 

■スキルセットを参考にして「自分」を生かすPMOデビューを

 

 

PMOとは?

PMOイメージ

 

PMOは、PMがプロジェクトを遂行するためのさまざまなサポートを通じて、プロジェクトを円滑に進め、プロジェクトの質を高めるのが主な仕事内容であり、ミッションです。PMが「人材」であるのに対して、PMOは「組織(部署)」を指すワードです。

 

ただし、コンサルティング業界で「PMO」といえば「PMOコンサルタント」の人材を指すのが一般的です。プロジェクトにおける必要な調整や会議のファシリテーション、各種資料作成などの事務作業や進捗状況の管理など細かな業務を担当することもあります。

 

PMOが必要とされる背景

PMOの需要が急上昇した背景には、規模の大きなプロジェクトではマネジメントに必要な業務が多岐にわたり、複雑化することが挙げられます。こうした大規模プロジェクトが急増し、PMだけではプロジェクトを管理しきれず、プロジェクト自体が失敗に終わるケースが相次いだことも要因です。

 

PMOが、プロジェクトの進捗やコスト、課題やリスクなどの管理やその他の業務を担うことで複数プロジェクトの標準化や品質管理を請け負います。

 

たとえば、コンサルティング会社やSIerといった企業などでは、企業内で複数のプロジェクトを日常的に抱えています。複数のプロジェクトが同時に稼働していると、プロジェクトマネジメント手法の標準化や品質向上、人材育成が課題になりがちです。

 

そこで、PMOが複数のプロジェクトをモニタリングし、業務プロセスなどのプログラムをマネジメントすることもあります。

 

コンサルタントのキャリアや資質によっては、企業の戦略に基づき、最善の効果を得るためのプロジェクト運営を行う「ポートフォリオマネジメント」を担当することもあります。ITが飛躍的な進化を遂げている現代では、IT戦略を基にしたシステム開発などで、ITコンサルと協力しプロジェクトを推進するケースも多いでしょう。

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PMOの役割・業務別のポジション

複数のPMOが共同で作業する現場

 

PMOに参画するコンサルタントは、役割や主な業務によってポジションや呼び名が変わります。主な業種は、下記の3つです。

 

(1)PMOアドミニストレータ

PMのサポート役として、資料作成、進行管理、情報管理など事務的な作業を担当するPMOを「PMOアドミニストレータ」と呼びます。

 

プロジェクトの規模が大きくなると、プロジェクト内でさらに細分化したチーム編成を行うのが一般化しています。チームごとのマネジメントに関わる煩雑な作業をPMが一人で行うには限界があります。

 

そこで大規模なプロジェクトを円滑に進行させるため、事務作業の管理業務や調整役を担うのがPMOアドミニストレータです。

 

(2)PMOエキスパート

複数のプロジェクトにおける環境整備やルール策定など、標準化を担うのが「PMOエキスパート」です。PMOエキスパートの存在により、複数プロジェクトの品質保持、業務の効率化につながります。

 

同時に複数のプロジェクトが進行する環境では、PMの資質によってプロジェクトの進み具合や成果に差が出るものです。PMOエキスパートは、プロジェクト管理に必要なプロセスや資料を標準化し、プロジェクトごとの質のバラつきをおさえます。

 

さらに、プロジェクト進行を標準化することで業務効率化を図り、リソースやコストを減らす効果も期待できます。

 

(3)PMOマネージャー

「PMOマネージャー」は、PMのサポート役としてだけではなく、ITプロジェクトマネージャーとして戦略の策定をはじめ、予算管理や人員管理など複数プロジェクトを統括する立場になるケースもあります。

 

PMOマネージャーは、プロジェクトのスムーズな進行を図り、経営層とPMの間に立つことも多いです。双方から信頼を得るために、PMOアドミニスレーターやPMOエキスパートより幅広いスキルやキャリア、経験を持つコンサルタントなどのプロフェッショナル人材が求められます。

 

PMOに求められるスキルセット【重要度】

一人のPMOが兼ね備えるスキル

 

PMO内で業種に違いがあり、それぞれ求められるスキルや経験があります。もちろん、それぞれの業種によって重視されるスキルが異なる場面もあるでしょう。

PMOに求められるスキルとそれぞれのPMO業種での重要度を解説します。目指すPMO内のポジションに合わせて、スキルセットを整えましょう。スキルシートなどを作成して自問自答してみるのもおすすめです。

 

(1)コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、コンサルタント全般に求められるものですが、PMOには一層必要とされるでしょう。PM、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションはもちろん、クライアント企業との交渉や進捗報告などもPMOの重要な任務です。

 

時には、自分自身も外部の人間であるにもかかわらず、プロジェクト進行に必要なリソースについて外部企業の選定や連携などにも率先して参加しなくてはなりません。

 

プロジェクトの品質を安定させ、スムーズに進行させるために、チームとメンバー一人ひとりのタスクやスケジュールを注視し、問題点があれば指摘、解決に導く力も求められます。

 

メンバーが相談しやすい、きめ細かいコミュニケーションがプロジェクト成功のカギなるでしょう。

PMOアドミニストレータ ☆☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

 

(2)リスクマネジメント能力

リスクとは「今後発生する可能性のあるネガティブな事柄」を指します。リスクマネジメント能力とは、不測の事態が極力起こらないようにするため、リスクを予測し先手を打つスキルです。

 

リスクマネジメントには段階があり、まずは資料やヒアリングを通してリスクの洗い出しを行います。議事録や計画書といったドキュメントで可視化し、フレームワークにあてはめて、対策を練ったり新たに生まれそうなリスクとその要因を探ったりするフローが一般的です。

 

以前は、リスクマネジメント能力はPMに期待されるスキルでしたが、現在はPMの意思決定を支援するPMOにも欠かせないスキルとしてあげられます。特に、進行管理や資料作成を請け負うPMOアドミニストレータ、環境整備や品質管理を担うPMOエキスパートには親和性のあるスキルだといえるでしょう。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆

 

(3)タイムマネジメント能力

PMOはプロジェクトの質を向上・担保するのが重要な役割ですが、もう一つ死守しなくてはならないのが納期です。チーム全体のスケジュールをハンドリングできるタイムマネジメント能力が必要とされます。

 

タイムマネジメントをしっかり行うことで、プロジェクトの中で円滑に業務が進んでいない部分や人物の洗い出しにもつながります。課題を見つけ、支援方法を検討し、納期を順守するための一手をチームメンバーと模索することで、チーム全体の絆やパフォーマンス向上にもつながるでしょう。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(4)経営センス

コンサルタントである以上は、企業の経営状況や事業戦略を俯瞰し、問題点を洗い出せる経営センスが求められます。PMOは設定された目標を達成するために設置される組織ですが、目標設定から参画する場合にも経営センスが必要とされるでしょう。

 

また、プロジェクトのゴールとしての目標自体は一貫したものであっても、プロジェクト進行中の状況によっては、その間に達成すべき新たな目標が生まれるものです。こうしたプロジェクトの過程で生まれる目標の一つひとつが、クライアント企業にとってプラスになるものか否か、コストパフォーマンスやチームへの影響などを分析・判断するのもPMOの経営センスにかかっています

 

PMOアドミニストレータ ☆
PMOエキスパート    ☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(5)プログラミング能力

ITプロジェクトにおいて実際に手を動かすのはSEなどですが、PMO自身にプログラミングやシステム開発の知識がないと、エンジニアが抱える問題や要望に対処できません。また、プロジェクトの要望や進行具合を理解し経営層にわかりやすく説明するためにも、プログラミング能力や開発知識はあったほうが良いでしょう。

 

PMOの大切な業務の一つにプロジェクトへの人員補充があります。適切な人材をアサインするためにも、技術的な知識・スキルは不可欠といえるでしょう。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆

(6)言語化能力

PMOは、プロジェクト内の調整役や世話係といった存在です。プロジェクトチームメンバーの課題や要求をうまく言語化する能力が必要とされます。

 

もちろん、PMやPMO全体の要望をチームメンバーにわかりやすく説明したり、企業の経営層に伝えたりするのも、PMOの役割です。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(7)文書化能力

PMOでは、言語化能力と同様に、プロジェクトの進捗状況を文書化する能力も重宝されます。PMOが作成する文書はさまざまな場で共有されたり記録として残されたりすることが前提です。

 

読みやすく、理解しやすい資料である必要があるため、MicrosoftのWordやExcel、PowerPointなどの資料作成スキルや、文章力もあるとなおよいでしょう。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆☆
PMOエキスパート    ☆☆
PMOマネージャー    ☆

(8)語学力

近年、プロジェクトの現場は海外、PMOは国内といった国際的な案件も増えています。こうした案件では、プロジェクトのチームメンバーと円滑なやり取りができる英語力が求められます。

 

エントリーの際には英検やTOEICスコアなどが求められるため、資格取得のための勉強も必要です。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆
PMOマネージャー    ☆☆

(9)傾聴力

PMOは、PMやPL・SEなどそれぞれの分野のプロフェッショナルが仕事をしやすいよう環境調整をするのが役割です。指示を出すばかりではなく、それぞれの課題や言い分を親身に聞ける傾聴力があるタイプの方が向いています。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(10)コストマネジメント能力

品質や進捗の管理だけでなく、プロジェクトにかかるコスト管理もPMOの大事な役割です。数字に強く、費用対効果についてもシビアな目線が必要とされます。

 

また、予算を勝ち取るために、将来的なコストがいくらかかるか、予算設定をするのも重要な任務です。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆☆
PMOエキスパート    ☆☆
PMOマネージャー    ☆☆

(11)ファシリテーション能力

PMOはPMO内、もしくはクライアント企業の経営層とのミーティングに参加し、その司会進行を担当します。議題についての話し合いを時間内にまとめるファシリテーション能力や、プロジェクトチームの意向や現状を適切に伝え、理解を得るプレゼンテーション能力が必要とされます。

 

PMOマネージャーには必須とされるスキルですが、ミーティングでの立ち振る舞いによって、今後の契約やポジションに影響が出る可能性もあります。若手やフリーランスのPMO人材は、ぜひトレーニングすべきスキルの一つです。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(12)情報セキュリティマネジメント経験

現在、特に情報セキュリティ業界では、PMO需要が高いです。情報セキュリティに関するスキルや経験・セキュリティエンジニアの経歴があるとかなり評価されます。

 

なかでも、業務アプリケーション開発のセキュリティエンジニアなどの経験は、顧客との複雑な業務要件定義が発生するため、ERP領域のPMO案件で求められる経歴といえます。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(13)大規模プロジェクト経験

PMやPL・SEとして大規模プロジェクトの経験がある人は、PMOコンサルタントにも向いている人材と見られることが多いです。大規模プロジェクトの雰囲気や躓きやすい部分を肌で知っていることはPMOにとって財産です。同じ領域のプロジェクトである場合、特にその経験を生かせるでしょう。

 

ただし、PMO以外のPM人材は、自分の仕事を深く極めていくイメージです。一方で、PMOは幅広い仕事を同時進行するイメージなので、経験と類似する「プロジェクト案件」であっても考え方や立場を切り替える必要があります。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(14)ロジカルシンキング

IT業界で働くにはロジカルシンキングが必須といわれています。システム開発などのプロジェクトを包括的に支援するPMOには、一層必要な素養といえるでしょう。

 

また、PMOが必要とされるような大規模なプロジェクトでは、どれだけリスクに備えていてもトラブルが発生するものです。トラブル時にも冷静沈着に状況を把握し、ロジカルに解決策を見出すことができる人材こそがPMOに向いているといわれています。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(15)当事者意識

PMOコンサルタントであっても業種によって役割が異なります。プロジェクトの現場スタッフより俯瞰してプロジェクトの進行状況を判断したり、冷静沈着にトラブルに対応したりする能力も必要とされます。

 

こうした理由から、ビジネスライクな対応が癖になり、自分の担当業務以外の部分でプロジェクトメンバーが窮地に陥っても気づけない人もいるようです。

 

しかし、PMOはチームを包括的に支えることが主なミッションです。チーム内で起こることには当事者意識をもって取り組まなければ、メンバーの信頼を得ることは難しいでしょう。ITプロジェクトであっても、結局手を動かすのは人間です。情熱と仲間意識をもって、プロジェクトのサポートに取り組みましょう

 

PMOアドミニストレータ ☆☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(16)変更管理能力

プロジェクトの進行中に発生する要件や仕様の変更に適切に対応するスキルです。変更による影響範囲を正確に把握し、スケジュール・コスト・品質への影響を分析した上で、適切な対応策を提案・実行する能力が求められます。

 

特に大規模プロジェクトでは変更要求が頻繁に発生するため、体系的な変更管理プロセスを確立し、運用する必要があります。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(17)品質保証(QA)の知識

プロジェクトの成果物が要求される品質基準を満たすことを保証するための知識と経験です。品質管理手法や品質指標の設定、品質レビューのプロセス設計、品質測定の方法論などの理解が必要です。

 

また、品質に関する問題を早期に発見し、改善策を実施する能力も重要となります。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆

(18)ステークホルダーマネジメント能力

プロジェクトに関わる全ての利害関係者(経営層、エンドユーザー、協力会社など)との関係を適切に管理するスキルです。各ステークホルダーの要求や期待を理解し、それらの優先順位付けを行い、バランスの取れた対応を実現する能力が求められます。

 

また、ステークホルダー間の利害対立を調整し、プロジェクトの円滑な進行を支援する役割も担います。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆
PMOエキスパート    ☆☆☆
PMOマネージャー    ☆☆☆

(19)ナレッジマネジメント能力

プロジェクト内で蓄積される知識や経験を効果的に管理し、活用するスキルです。過去の成功事例や失敗事例を文書化し、組織の資産として共有・活用できる仕組みを構築する能力が必要です。

 

また、プロジェクトメンバー間の知識移転を促進し、チーム全体の能力向上を図ることも重要な役割となります。

 

PMOアドミニストレータ ☆☆☆
PMOエキスパート    ☆☆
PMOマネージャー    ☆☆

 

 

PMOになるためのキャリアプランは?

SE

PMOという組織や業種が注目されるようになったのは、10数年前からです。これからPMOを目指し始める人もいるでしょう。

 

PMOになるためのキャリアプランを紹介します。

 

(1)エンジニア(SE)からPMO

現在活躍中のPMOコンサルタントのなかには、SE(システムエンジニア)からの転職者もいます。キャリアパスとしては、ベンダーなどIT系のプロジェクトを複数抱える企業でエンジニアとしてキャリアを積み、PMO求人に応募する道が代表的です。特にチーフエンジニアとして、プロジェクトの上流から根幹に関わる経験を積んだ人材は有望です。

 

まず、PMOとSEは管理者と技術者という違う立場からプロジェクトに参加しているので両者の意見の食い違いが課題となるケースが多々あります。こうしたときにSE出身のPMOコンサルタントが、両方の立場を俯瞰した取りまとめを行えると、プロジェクトの品質向上とタイムマネジメントの成功につながります。

(2)PMからPMO

大規模プロジェクトのPM経験が豊富であれば、PMOへとキャリアチェンジする方法もあります。ただし、先にも述べましたが、PMとPMOは似ているようで異なる職種です。PMが一つのプロジェクトに深く関わり采配を振るうのに対して、PMOは複数のプロジェクトを同時進行で支援したり、チーム内のあらゆる職種のメンバーが動きやすくなるよう環境調整するのが役割です。

 

PMとして経験豊富でも、小規模プロジェクトの経験しかないと、大規模プロジェクトでのPMOの役割、立ち回りについて理解できていない場合があります。スキルセットや実績が十分であっても、大規模プロジェクトで必要とされるPMのサポートについて理解が浅いと、「プロジェクトチームのお客様」といった立場になりかねません。

 

PMのうちからできるだけ大きなプロジェクトへの参画を希望したり、初めてのPMO参画はOJTがしっかり行われる案件にするのが良いでしょう。

(3)ITコンサルタントからPMO

プロジェクトチーム内にITコンサルタントが参画しているケースもありますよね。この場合、ITコンサルタントとPMOの線引きが曖昧で「ITコンサルタント経験しかなくてもPMOができるのではないか」と考える人もいます。

 

しかし、ITコンサルタントにくらべて、PMOはプロジェクト現場に入る機会が少ないことや、あくまでPMの援護射撃に徹することなどを理解しておいた方がよいでしょう。

 

役割の違いをしっかり理解しておけば、PMOとITコンサルタントのスキルセットは非常に親和性があります。大規模プロジェクト経験を積んでから、PMOを目指すのもおすすめのキャリアプランです。

(4)事務・サポート職からPMO

進捗報告書の作成やデータ管理の経験は、PMOのアドミニストレーション業務(資料整理、進捗モニタリング)に直結します。特に、IT企業や大手企業での事務職経験者は、プロジェクト管理ツールの使用経験やドキュメント作成スキルを持っていることが多く、これらはPMOアドミニストレータとして重要なスキルです。

 

また、事務・サポート職での経験で培われる「報連相」の能力や細やかな気配りは、プロジェクトメンバー間の調整やコミュニケーション促進において大きな強みとなります。さらに、会議の設定や議事録作成、各種文書管理など、事務職での経験はPMOの実務面で即戦力として生かせるでしょう。

 

PMOを目指す場合は、まずPMOアドミニストレータとしてキャリアをスタートし、その後プロジェクトマネジメントの知識やスキルを段階的に習得していくことをおすすめします。

 

PMOスキルセットを生かせるキャリアパスは?

ステップアップするビジネスマン

 

PMO人材のなかでも、PMOアドミニストレータがPMOエキスパートになり、いずれはPMOマネージャーとしてPMO全体を指揮するというキャリアパスが一般的かもしれません。いずれにしろ「PMOコンサルタントは一生食うに困らない」といわれています。

 

将来性重視でコンサルタント職にチャレンジするのであれば、PMOはおすすめの職種であり、スキルセットもさらに高いポジションを目指すのに十分なものといえます。PMOのスキルセットを生かすには、どのようなキャリアパスが期待できるのでしょうか?

 

(1)所属企業やコンサルティングファームで上を目指す

現在、需要が高く、人材不足を指摘されるPMOとして、十分な実績を積めば、所属先の企業やコンサルティングファームでさらに上のポジションを狙うことも可能です。年収アップも期待できるでしょう。

 

肩書や出世に興味がない人は、PMOとして尖ったスキルを磨き、参画するプロジェクトを自ら選べる立場を目指すのもおすすめです。

(2)フリーランスPMOとして独立・起業

現在、あらゆる業界で大規模PMOが設置されています。それに伴い、実績があるフリーランスのPMO人材を欲しがる企業も急増しています。

 

年収も会社員のPMOコンサルタントの平均年収は700万円弱といわれるのに対して、フリーランスのPMOコンサルタントは年収1000万円程度が相場です。かなりの収入アップになるため、企業やコンサルティングファームで実績を積んだら独立する人は少なくありません。

 

また、参画するプロジェクトを自分で選べるのも、フリーランスPMOのメリットです。得意分野や業界を極めたいという人は、まずは副業でフリーランスPMOとして参画してみるのがおすすめです。

(3)情報システム担当への転職

PMOとしての経験は、企業の情報システム部門でも非常に価値のあるスキルセットです。

 

プロジェクトマネジメントの経験、技術的な知識、そしてビジネスサイドとの調整能力は、情報システム部門での重要な要素となるためです。特に、システム刷新やDX推進などの大規模プロジェクトを抱える企業では、PMO経験者の採用ニーズが高まっています。

 

情報システム部門では、社内の様々な部門との協業や、外部ベンダーとの折衝など、PMOで培ったコミュニケーション能力やステークホルダーマネジメント能力を存分に生かすことができます。

 

将来的には、CIO(最高情報責任者)やIT統括部門の管理職としてのキャリアも視野に入れることが可能です。

(4)ITベンダーの役員へのキャリアアップ

PMOとして様々なプロジェクトに携わり、技術面だけでなく、経営的な視点やクライアントとの関係構築能力を磨いた経験は、ITベンダー企業の経営層として求められる資質と大きく重なります。

 

特に、プロジェクトの成功要因や失敗要因を熟知し、リスクマネジメントに長けているPMO経験者は、ITベンダーの経営判断において重要な役割を果たすことができます。

PMOとして培った幅広い人脈や業界知識は、ITベンダーの新規事業開発や営業戦略の立案にも生かせるでしょう。

 

さらに、大規模プロジェクトのマネジメント経験は、組織全体のガバナンス強化にも応用が可能です。役員として、技術戦略の策定から人材育成まで、会社全体の方向性を示す立場として活躍することが期待できます。

 

 

スキルセットを参考にして「自分」を生かすPMOデビューを

自身のあるPMO

 

一括りにされがちなPMOですが、役割によって業種やポジションが異なります。しかし、「PMが仕事を全うするためのサポートをする」という存在意義はどの業種も同じです。参画プロジェクトの形態や業界によって、求められる役割や目的に微妙な違いはあるものの、この記事で紹介した一般的なスキルセットは意識したほうが良いでしょう。

 

ただし「自分はPMOに向いている」「PMOに必要なすべてのスキルセットが身についている」と明言できる人は少ないはずです。スキルセットが揃った人でも初めてのPMOで目覚ましく活躍するのは簡単なことではありません。

 

「チームメンバーが気持ちよく働けるプロジェクトチームを作る」という目的を忘れないことが大切だといえるでしょう。

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(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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