企業がSDGsに取り組むべき理由とは?先進企業の取り組み事例も紹介
作成日:2022/04/26
発展途上国だけではなく、先進国もふくめ「SDGs」が日ましに注目されています。SDGsが経済成長や働く意義を高める目標として期待されているからです。日本の企業もSDGsに取り組まないと将来取り残される可能性があります。本記事ではSDGsとはなにか、SDGsの必要性や企業での取り入れ方、メリット、具体的な取り組み事例を紹介します。
目次
■日本のSDGsへの取り組み
(1)日本のSDGs達成状況
(2)日本政府のSDGsへの取り組み
■企業がSDGsに取り組む必要性
(1)企業のSDGsへの取り組み状況
(2)SDGsとCSRの違い
(3)SDGsとESG投資の関係性
(4)企業がSDGsに取り組むメリット
■大手企業によるSDGsの取り組み事例
(1)ユニクロ
(2)トヨタ
(3)サントリー
■中小企業によるSDGsの取り組み事例
(1)大映ミシン
(2)瀬戸内造船家具
(3)茨城製作所
SDGsとは
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」のこと。「エスディージーズ」と読みます。SDGs は、2015年9月に国連サミットで採択されました。2016年から2030年までの15年間で、達成すべき国際社会共通の持続可能な開発目標として制定されました。
SDGsが話題になり始めてから、よく耳にするようになった「持続可能な開発目標」とは、「将来の世代がそのニーズを満たせる能力を損なうことなしに、現在のニーズを満たす開発」という意味です。
SDGsは、人類や地球にとって包摂(一定範囲の中に包み込む)的な取り組みです。未来を構築するために、環境保護を行いつつ、経済成長を遂げることも重要な要素です。つまり、
- 経済的成長
- 社会的な包摂
- 未来につなぐ環境保護
このうちひとつだけでなく、3つすべての要素が「相互的な関係」とされ、協調し合う未来を目指した開発目標なのです。
引用:国連広報センター|持続可能な開発のための2030アジェンダ ー よくある質問
SDGsが採択された背景
SDGsが世界的に採択された背景には、MDGs(ミレニアム開発目標)の達成期間満了が考えられます。MDGsは、SDGsの前身となる2000年の国連サミットで採択された開発目標です。SDGsの前身となるMDGsには、8つの目標があります。
- ①極度の貧困と飢餓の撲滅
- ②普遍的な初等教育の達成
- ③ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
- ④幼児死亡率の引き下げ
- ⑤妊産婦の健康状態の改善
- ⑥HIV/エイズ、マラリア、その他の疫病の蔓延防止
- ⑦環境の持続可能性の確保
- ⑧開発のためのグローバル・パートナーシップの構築
MDGsの8つの目標は、先進国による発展途上国への支援が中心でした。それに対し、一部の途上国からはグローバル・パートナーシップとして反発もありました。その反発とは、発展途上国側が「地球から貧困と飢餓を撲滅」の目標を求めている状況に対して、仕組みや制度づくりを先進国主導で行ったことです。
MDGsは2015年で達成期限を迎えました。反発を解決できなかった反省を踏まえて、SDGsでは「誰一人取り残さない(leave no one behind)」をテーマに、先進国と発展途上国のどちらもが達成すべき課題や地球規模の取り組みへと拡大するため、新たにSDGsが世界の目標として採択されました。
引用:国連広報センター|ミレニアム開発目標(MDGs)の目標とターゲット
SDGsの「17の目標」とは
SDGsには、達成に向けた17の目標が掲げられています。17の目標は、大きく「貧困や飢餓の撲滅」や「経済の成長と働きがい」「気候変動や環境問題への対策」などを総括しています。
それぞれの実現目標は、カラーアイコンで設定されており、個人が誰でもわかりやすいようなイメージになっています。17の実現目標の下には、さらに169のターゲットと232の指標があり、ターゲットに対して具体的な目標が定められています。
169のターゲットは、SDGsの2030アジェンダという持続可能な開発サミットの成果をまとめた文書に記載されています。外務省のWebサイトでは、日本語仮訳された2030アジェンダで具体的なターゲットを確認できるようです。
日本のSDGsへの取り組み
SDGsが日本国内でどのように浸透しているか、日本のSDGs達成状況と、国としての取り組みを紹介します。
(1)日本のSDGs達成状況
2021年のSDGs達成ランキングでは、日本が165ヵ国中18位です。Index Scoreが79.8/100でSpillover Scoreが68.8/100。日本では17の実現目標中、以下3つの実現目標を「達成している」として評価されています。
- ④質の高い教育をみんなに
- ⑨産業や技術革新の基盤をつくろう
- ⑯平和と公正をすべての人に
また、2021年における日本のSDGsで達成度の低かった目標は次のとおりです。
- ⑤ジェンダー平等を実現しよう
- ⑬気候変動に具体的な対策を
- ⑭海の豊かさを守ろう
- ⑮陸の豊かさも守ろう
- ⑰パートナーシップで目標を達成しよう
17の目標達成度は、アイコンタイルの色で塗り分けられます。達成していると「緑」表示、課題を残していると「黄」表示、重要な課題が残っていると「橙」表示、最重要課題が残っていれば「赤」表示です。
17の目標のうち、2021年に達成できている「緑」タイルの目標が3つです。残り14の目標が達成できていません。そのため、日本ではまだ達成しなければならない課題がある状況です。
引用:Sustainable Development Report 2021|Japan
(2)日本政府のSDGsへの取り組み
日本政府は、SDGsへの取り組みとして、SDGs推進本部を設置して施策を打ち出しています。SDGs推進本部では、「SDGs実施指針」「SDGsアクションプラン」「ジャパンSDGsアワード」が制定されています。
SDGs実施方針では、日本が優先して取り組む8つの実現に向けた優先課題を明らかにしています。中でも、SDGsアクションプランでは人々に向けた具体的な施策が掲げられています。8つの優先課題から、「国がどのような施策を優先しているのか」を知っておくと、日本政府が模索している未来への予測になるでしょう。
- あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
- 健康・長寿の達成
- 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
- 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
- 省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
- 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
- 平和と安全・安心社会の実現
- SDGs 実施推進の体制と手段
企業がSDGsに取り組む必要性
企業がSDGsに取り組む必要性は、経団連の企業行動憲章が改定されてから高まったといえます。
実は、日本企業の多くがMDGsに注目していなかった事実があります。2017年に経団連の企業行動憲章が改定され、SDGsが全面に打ち出されたことで状況が一変します。
経団連の企業行動憲章の改定を契機に、2018年頃から企業でのSDGsの取り組みが注目されるようになりました。企業にとってSDGsが必要になった理由は、取り組み状況の変化やCSR、ESG投資などと比較した場合にメリットがあるからです。
(1)企業のSDGsへの取り組み状況
2021年の一般社団法人日本能率協会による調査では、企業のSDGsへの取り組み状況として「SDGsを知っている経営者が9割を超えている」という結果が出ました。SDGsに取り組んでいる企業も7割を超えています。
特にSDGsへの取り組みとして、中長期的な企業価値の向上に注目が高まっているようです。ただし、具体的な目標を設定している企業は3割にとどまっているため、課題が残っているのが現状です。
(2)SDGsとCSRの違い
CSRとは「Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)」のこと。CSRの場合、本業に関連しない活動も多いです。たとえば、
- 文化支援のイベント開催される文化財の保護事業
- 環境保全として実施される植林活動事業
これら慈善事業の位置づけにもなる活動は、社会貢献としては認められます。ただし、実践しているのは財政状況の良い企業がほとんどです。
SDGsの場合、各企業が得意な分野で社会課題を解決することが期待されています。社会課題と自社の得意な分野を連携して取り組める点が、CSRと違う部分です。新規市場の開拓や事業機会が創出される可能性も期待できます。
(3)SDGsとESG投資の関係性
SDGsの必要性は、ESG投資との関係性においても考えられるでしょう。ESGとはEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の頭文字をとった略称です。ESGは、投資元本の回収や投資によるリターンを判断するために企業調査する視点。投資家などがESGに配慮した企業に投資するのがESG投資です。
企業の持続的な成長には、ESGへの配慮が欠かせない判断基準とする投資家が増えています。SDGsはESGと密接に関係していると考えられます。企業は、SDGsの目標達成のため具体的な取り組みを行なわないと、投資家からの投資を受けられなくなる可能性もあるようです。
(4)企業がSDGsに取り組むメリット
企業がSDGsに取り組むメリットは、次の通りです。
- 企業イメージの向上により売上の増加、求職者の増加が期待される
- 投資家へのアピールにより生存戦略につながる
- SDGsへの取り組みを通じて、事業機会が生まれる可能性がある
企業イメージの向上は、企業のブランディング形成促進となり、好循環を生み出します。企業のSDGsに取り組む姿勢が求職者や消費者に好印象を与える効果が期待できるでしょう。
さらに、ESG投資の判断基準として投資家へのアピールも可能です。SDGsへの取り組みを通じて自社の得意分野が認知されれば、事業機会の創出がゴールとして期待できます。
大手企業によるSDGsの取り組み事例
SDGsは、日本の大手企業において、それぞれ特徴を活かした取り組みを促進しているようです。国内大手企業によるSDGsの取り組み事例を紹介します。
(1)ユニクロ
日本の実用衣料品を一括して製造小売りしている大手アパレルメーカー「ユニクロ」は、SDGsが提唱される以前の2001年から社内に「社会貢献室」を設置して「服のチカラで世界を良い方向に変える」取り組みをしてきました。
ユニクロは、SDGsで掲げる持続可能な開発目標と通じる課題解決への取り組んでいて、次のような社会貢献が特徴です。
- 地球に余計な負荷をかけない服を普及
- 働く人たちの健康、安全、人権を守ること
- 様々な事情で服が手に入らない地域の人々に服を普及
たとえば、環境負荷に配慮した商品開発としてユニクロは全商品をリサイクル・リユースする取り組みを推進しています。2030年を目標に服から服へのリサイクルが環境負荷を減らしています。
引用:ユニクロとSDGs|服のチカラを、社会のチカラに Uniqlo sustainability
(2)トヨタ
自動車大手メーカーの「トヨタ」では、全社を挙げて自動車づくり会社からモビリティカンパニーへの変革を進めています。モビリティカンパニーとは、世界中の移動に関するサービス全般を提供する会社のことです。
トヨタは、従来ハイブリッド車の開発などで地球環境保護への取り組みを実践してきました。提供価値の進化と2030年に向けたSDGsへの貢献を目的にさらなる変革を実施しています。
トヨタによるSDGsの取り組みは、障がいの有無に関係なくすべての人と共生できる社会づくり、「YOUの視点」による環境整備を推進しています。トヨタで働くすべての個人がそれぞれの特性や障がいに応じて、柔軟に働けるような環境整備を推進している状況です。
その他、トヨタでは世界に向けた具体的な取り組みとして、「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げています。気候変動や生物多様性をテーマに環境活動普及を促進・支援しています。
引用:SDGsへの取り組み|サスティナビリティ|トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
(3)サントリー
清涼飲料水やアルコール飲料などの製造販売を手がける大手飲料メーカー「サントリー」は、水資源に特化したSDGsの取り組みを推進しています。サントリーの企業理念は、「水と生きる」というテーマです。テーマをもとにして、SDGs17の目標から4つの目標を促進してします。
- ③全ての人に健康と福祉を
- ⑥安全な水とトイレを世界中に
- ⑫つくる責任つかう責任
- ⑬気候変動に具体的な対策を
上記SDGsの目標に対して、サントリーは以下の7項目をテーマに持続可能な環境保全活動に取り組んでいます。
- 水:「天然水の森」活動をはじめとする水育への取り組み
- CO²:「環境ビジョン2050」で策定した2050年までの温室効果ガス排出ゼロの目標
- 原料:「サステナブル調達基本方針」制定で生産調達活動と人権遵守を継続
- 容器・放送:2030年までにすべてのペットボトル素材をリサイクル及び、アクリル素材へ切り替え
- 健康:アルコール飲料で考えられる問題への配慮として適正飲酒の考え方を普及
- 人権:「サントリーグループ人権方針」により従業員すべての人権を尊重
- 生活文化:社会福祉、芸術、文化、学術、スポーツなど次世代育成への貢献活動
引用:《SDGs事例集》SDGsで社会に潤いを|サントリー株式会社
中小企業によるSDGsの取り組み事例
続いて、日本国内の中小企業によるSDGsに取り組み事例を紹介します。
(1)大映ミシン
岐阜県関市で工業用や家庭用のミシンを製造販売する「大映ミシン」は、寄付ミシンプロジェクトを実施して資源の再利用に貢献しています。家庭用のミシンやレトロなミシンの寄付による売上の一部を、不登校やいじめ被害者の子を持つ親の集まり「子どもを明日につなぐ会」へ寄付しています。
当初、2021年3月までの取り組みでしたが、中小企業のSDGsとして、持続可能な取り組みをその後も推進しています。
引用:寄付ミシンプロジェクト|お買い得ミシンの販売修理 大映ミシン
(2)瀬戸内造船家具
瀬戸内造船家具は、愛媛県今治市で造船職人が造船古材や廃材を家具として再利用するアップサイクルブランドです。個人が有志で立ち上げました。
役目を終えた船の足場板などを活用してテーブルや収納棚などに再生しています。古材のアンティークな風合いを生かして、自然資源の利用なく再利用で循環型社会に貢献している企業です。
瀬戸内造船家具の取り組みは、愛媛県の子どもスポーツ推進協議会と愛媛大学が共催する「子どものためのSDGs教室」でも紹介されています。瀬戸内造船家具は、船の廃材を家具に生まれ変わらせるブランドとして造船業界の変革推進に役立っています。
引用:瀬戸内造船家具
(3)茨城製作所
茨城製作所は、風力発電や鉱山機械、エレベーターに使われる回転電機などの製造・修理全般に取り組む茨城県日立市の企業です。茨城製作所では、2011年の東日本大震災による停電や断水被害を受けて、風力発電機用の部品など災害時に必要となる電力供給のインフラ機関製品を開発しました。
茨城製作所が開発した風力発電機用の部品は、2015年に発生したネパール地震の復興支援促進にも使われました。環境・水中センサー搭載のCappaシステムを低コストで開発・製造して、電気のない地域の子どもたちに明かりのある学習環境を提供しています。
引用:
【茨城県】株式会社茨城製作所~「未来へ残そう豊かな地球」をスローガンに、自社技術を生かしたモノづくりで「社会問題解決型ビジネス」を推進~
SDGsは地球と企業の未来を照らす開発目標
SDGsは、前身となるMDGsで解決できなかった、先進国と途上国が分け隔てなく取り組める開発目標です。企業にとっては、企業イメージを向上して売上拡大や求職者増加が期待できます。少子高齢化が進む現代の企業においては、生き残るために必要な経営戦略のひとつにもなりえるでしょう。企業はSDGs活動から社会的な共感が期待できるからです。SDGs活動を通じて、地球と企業の明るい未来を描いていきましょう。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)
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