事業再生コンサルタントとは?必要スキルや年収、未経験の転職方法も
最終更新日:2025/07/24
作成日:2019/03/26
経営が傾いた企業の再建を支える「事業再生コンサルタント」は、近年ますます注目されている専門職のひとつです。
経営戦略や財務改善の知識を駆使して、企業の立て直しに貢献するこの仕事には、やりがいと社会的意義の両方があります。
この記事では、事業再生コンサルタントの具体的な役割や求められるスキル、年収の目安、未経験から目指す方法を詳しく解説します。
目次
■事業再生コンサルタントとは
(1)経営危機にある企業の再建を支援する専門家
(2)企業再生コンサルタントとの違い
(3)顧問税理士・弁護士との違い
■事業再生はどんなときに必要?
(1)資金繰りが悪化してきたとき
(2)赤字が続く/売上が減っているとき
(3)事業の方向性を根本から見直す必要があるとき
■事業再生コンサルタントの主な業務内容
(1)財務分析・資金繰り改善
(2)財務分析・資金繰り改善
(3)経営者の意思決定支援と伴走
■事業再生コンサルタントに必要なスキル・知識
(1)財務・会計の知識
(2)再建計画の構築力
(3)対話力・交渉力
(4)経営者との信頼関係を築く力
■事業再生コンサルタントの年収目安
(1)企業内コンサルタントの場合
(2)独立系/フリーランスの場合
■未経験から事業再生コンサルタントになるには
(1)関連業界からの転職を目指す
(2)資格取得で知識と意欲をアピールする
事業再生コンサルタントとは

まずは、事業再生コンサルタントの実務の実態や、他士業・他職種との違いについて詳しく解説します。
経営危機にある企業の再建を支援する専門家
事業再生コンサルタントとは、財務・経営の両面から企業の現状を分析し、改善策を立案・実行することで、経営再建を目指す専門家です。
財務調査やコスト構造の見直し、業務プロセスの最適化、不採算部門の整理、リストラ策の提案など、手がける業務は多岐にわたります。
企業の将来を左右する判断に関わるため、高度な知識と判断力が求められる、社会的意義の高い専門職です。
企業再生コンサルタントとの違い
事業再生コンサルタントと混同されやすいのが、「企業再生コンサルタント」です。両者は似た領域を扱いますが、アプローチや支援対象に違いがあります。
企業再生コンサルタントは、裁判所主導の民事再生や法的整理といった法的手続きのもとで企業の再生を支援することが多く、弁護士や金融機関と連携して再建計画の立案・実行を担います。
一方、事業再生コンサルタントは、主に法的手続きに入る前の段階、すなわち私的整理や自主再建のフェーズで企業と向き合います。
経営改善のための現場支援や事業の選択と集中、財務体質の健全化など、より実務的・ハンズオンな支援が業務の中心です。
そのため、現場に深く入り込む実行支援型のアプローチをとる点に、企業再生コンサルタントとの明確な違いがあります。
顧問税理士・弁護士との違い
税理士は主に税務・会計、弁護士は法務に特化しています。
事業再生コンサルタントは、複合的な経営課題に対して、これらの専門家と連携しながら、企業の根本的な立て直しに関わる点が特徴です。
事業再生コンサルタントは、企業の経営全体を俯瞰しながら、財務・戦略・組織改革など幅広い分野を横断的に支援します。
つまり、「経営の再起を担う指揮者」のような存在であると言えるでしょう。
事業再生はどんなときに必要?

財務状況の悪化や収益構造の歪み、市場とのズレなど、企業が抱える問題は多岐にわたります。
そうした複雑な課題に対して、アドバイザリーとして全体像を把握し、再建に向けた現実的な解決策を提示することが、事業再生コンサルタントの役割です。
ここでは、実際に現場で支援ニーズが高まる典型的な3つの状況を見てみましょう。
資金繰りが悪化してきたとき
企業が資金ショートのリスクを抱えている場合、最優先で行うべきはキャッシュフローの安定化です。
事業再生コンサルタントは、財務状況の精査と原因の特定を行い、リスケジュールやコスト削減策、短期の資金確保といった具体的な改善プランを策定します。
金融機関との交渉支援も重要なアドバイザリー業務の一つで、企業単独では交渉が難しい場面で条件緩和や追加融資の獲得をサポートします。
こうした早期対応により、致命的な資金断絶を回避し、再生への足がかりを築きます。
赤字が続く/売上が減っているとき
慢性的な赤字や売上減少が続く企業には、収益構造そのものの見直しが不可欠です。
事業再生コンサルタントは、事業デューデリジェンスを通じて、収益性の低い部門やコスト過多の構造を特定し、合理化を図ります。
また、営業戦略や商品ラインナップの再設計、新たな販売チャネルの構築など、攻めの再生プランも併せて検討します。
単なるコストカットに留まらず、企業が再び健全な収益モデルを確立できるよう、外部の視点から踏み込んだアドバイスと実行支援を提供します。
事業の方向性を根本から見直す必要があるとき
事業環境の大きな変化に直面した企業では、既存のビジネスモデル自体が機能不全に陥っていることがあります。
事業再生コンサルタントは、SWOT分析などを用いて企業の内部資源と市場環境を多角的に評価し、今後の方向性を再定義します。
新規事業の立ち上げや既存事業の縮小・撤退、不採算部門の切り離しといった、抜本的な改革を提案する場合もあるでしょう。
企業の強みを活かした持続可能な戦略を構築し、経営層に寄り添いながら改革の実行フェーズまで伴走することが、事業再生コンサルタントに求められる役割です。
事業再生コンサルタントの主な業務内容

経営難に直面した企業の再建を担う事業再生コンサルタントの仕事は、単なるアドバイスにとどまりません。財務の健全化から金融機関との交渉、経営者への意思決定支援まで、実行段階に深く関与するのが特徴です。
事業再生コンサルタントの代表的な業務内容を見ていきましょう。
財務分析・資金繰り改善
企業の再建においてまず必要なのが、財務の実態把握と資金繰りの改善です。事業再生コンサルタントは、決算書やキャッシュフローなどを精査し、経営不振の原因を明らかにします。
そのうえで、資金ショートを防ぐために、返済条件の見直しや短期資金の調達、不要な支出のカットなど、実行可能な改善策を提示。
加えて、月次決算やKPIの導入支援を行い、経営者が数字をもとに判断できる体制を整えます。
金融機関・債権者との交渉支援
再建計画を成功させるためには、金融機関や債権者の理解と協力が不可欠です。事業再生コンサルタントは、返済条件のリスケジュールや追加融資の交渉、債務カットの提案などを企業に代わって進めます。
金融機関から納得を得られる再建計画を策定し、説明責任を果たすのも、重要な仕事です。
交渉力と信頼構築力が問われる領域であり、企業の命運を左右する場面です。
経営者の意思決定支援と伴走
企業の再生には、経営者の強い意思と的確な判断が求められます。
事業再生コンサルタントは、経営者に寄り添いながら、再生計画の進捗を共に確認し、必要に応じて軌道修正を提案。単なる助言ではなく、組織改革やコスト削減の実行まで支援するハンズオン型の関わります。
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事業再生コンサルタントに必要なスキル・知識

企業の経営危機を乗り越えるためには、事業再生コンサルタント自身にも高度な専門知識と実務スキルが求められます。単なる財務の知識だけではなく、経営者や金融機関と向き合う実行力や人間力も不可欠です。
ここでは、現場で求められる代表的なスキル・知識について見ていきましょう。
財務・会計の知識
企業の再生には、現状を正確に把握する財務会計の知識が欠かせません。
貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書から問題点を読み解き、根本原因を特定する力が求められます。収益性や資金繰り、負債構造などを数値で把握し、再生計画の土台を築く分析力が重要です。
公認会計士や簿記などの資格を持っていると、勉強を通して得た知識を存分に活用できるでしょう。
再建計画の構築力
事業再生では、企業の将来像を描きつつ、実行可能な再建計画を立案する力が求められます。
財務改善だけでなく、不採算事業の整理、業務プロセスの改革、組織体制の見直しなどを総合的に組み込んだプランが必要です。
数値計画や実行ステップを具体化し、実現性のある戦略に落とし込むことで、金融機関や社内からの信頼も得られる計画を構築できます。
対話力・交渉力
事業再生局面では、多くの利害関係者との合意形成が求められます。
そのため、経営者、社員、金融機関、債権者など、立場の異なる相手と信頼関係を築きながら、建設的な議論や調整を進める力が必要です。
ヒアリングを通じて相手の本音を引き出し、自らの主張も論理的に伝える交渉力は、再建プロセスを左右する重要なスキルです。調整役としての柔軟性と説得力が、成果に直結します。
経営者との信頼関係を築く力
経営危機にある企業では、経営者が孤独や不安を抱えているケースも少なくありません。再生コンサルタントは、経営者の「外部パートナー」であると同時に、「伴走者」として寄り添う姿勢が求められます。
そのためには、丁寧な傾聴や共感を通じて本音を引き出し、経営判断を支える信頼関係を築くことが不可欠です。
現場に深く入り込み、企業の一員のように行動することで、徐々にクライアントからの信頼度が高まっていきます。
事業再生コンサルタントの年収目安

事業再生コンサルタントは高い専門性と社会的なニーズの高さから、比較的高い年収が期待できる職種です。
経験や所属先、職位によって幅はありますが、一般的な傾向や独立系との違いも含め、ここで詳しく見てみましょう。
企業内コンサルタントの場合
企業内で事業再生に携わるコンサルタントの年収は、企業の規模や役職、経験によって変動します。
厚生労働省の職業分類において、事業再生コンサルタントは「その他の経営・金融・保険の専門的職業」に含まれます。
職業情報提供サイト「job tag」によると、「その他の経営・金融・保険の専門的職業」に該当する職種の平均年収は903.2万円とされています。
事業再生分野に携わるコンサルタントも、同等水準の年収を得ている可能性が高いでしょう。
高度な財務分析や戦略立案、交渉力が評価されるため、スキルアップが年収アップに直結すると考えられます。
独立系/フリーランスの場合
独立系やフリーランスの事業再生コンサルタントは、案件獲得力や実績によって収入が大きく変わります。年収1,000万円を超えるケースも珍しくなく、高い専門性を活かして高額報酬を得ることが可能です。
ただし、安定して案件を受けるには、豊富な経験や人脈、営業力が不可欠です。
コンサルティング市場は拡大を続けており、独立してコンサル会社を立ち上げるキャリアも選択肢として広がっています。
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未経験から事業再生コンサルタントになるには

事業再生コンサルタントは高度な専門知識とスキルが求められる仕事ですが、経験者が限られるため、未経験者でもしっかりと準備すれば転職可能な分野です。
ここでは、未経験から目指す際に有効な3つのステップを見てみましょう。
関連業界からの転職を目指す
未経験から事業再生コンサルタントを目指す際は、関連業界での経験が大きな強みになります。
特に金融機関や会計事務所、監査法人での財務や折衝の経験は非常に有用です。企業の経営企画や事業戦略部門で培った知識も、転職市場で評価されます。
また、公認会計士や弁護士、中小企業診断士などの資格保有者は、専門知識を持つと見なされ、未経験でも優遇される傾向にあります。
資格取得で知識と意欲をアピールする
事業再生コンサルタントに必須の資格はありませんが、公認会計士や中小企業診断士、簿記1級、MBAなどの関連資格の取得は、専門知識の証明として転職活動で強みになります。
特に「事業再生士(CTP)」や「事業再生士補(ATP)」は、高い専門性を示す資格として評価されます。
未経験者でも、簿記2級程度の会計知識を身につけておくことは、多くの求人で求められる基本条件のひとつです。
こうした資格取得の努力は、志望動機の裏付けとしても有効であり、事業再生への強い関心や意欲を採用担当者に伝える材料になります。
まとめ

事業再生コンサルタントは、経営が厳しい状況にある企業に寄り添い、再起を支える専門職です。高度な知識や判断力が求められる一方で、その分やりがいや達成感も大きく、企業の未来に深く関わることができる魅力があります。
未経験からでも、これまでの経験やスキルの活かし方次第でチャンスを広げることが可能です。転職や独立を視野に入れている方にとって、視野を広げるきっかけになるかもしれません。
まずは、どんな働き方が自分に合っているかを見つめ直してみてはいかがでしょうか。
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