医療業界やヘルスケア業界の課題解決に期待が高まる「次世代ヘルスケア・システム」とは

作成日:2018/08/08

 

「人材不足」「IT化の遅れ」は医療・介護業界の大きな課題

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豊かな経済社会の実現や医学の発展に伴い、平均寿命はどんどん延びています。0歳児が何年生きられるかという平均の数値を示した日本人の平均寿命は、2016年には男性が80.98年女性が87.14年といずれも80年を超え、2065年には男性は84.95年女性で91.35年にまで延びるという推計もあります(国立社会保障・人口問題研究所)。近年よく聞かれる「人生100年時代」に着々と近づきつつあるのです。

 

しかし残念ながら、そうした長寿命化を喜んでばかりもいられないというのが実状です。少子高齢化が加速し年金不安も囁かれる日本において、100歳まで生きていくためには人生設計を大幅に見直す必要が生じます。100年貯蓄はもつのか、仕事するにしても職があるのか、健康でいられるのか・・・不安はつきません。

 

国民の生活の土台を支える日本政府にとっても、課題は山積しています。その中で特に懸念されているのが、医療・介護・ヘルスケアなどの領域です。少子高齢化の影響で医療や介護を必要とする高齢者が増える一方で、そうした医療・介護などの業務に従事する労働人口は減少の一途をたどり、社会保障費の不足に加えて深刻な人手不足が懸念されているのです。

 

加えて、医療・介護・ヘルスケア領域に横たわり続ける課題が、IT化の遅れです。病院やクリニックといった医療機関では、受付やカルテの管理、レセプト業務など、さまざまな業務がありますが、そうしたものをすべて手作業で行なっているところもまだまだ多く日本の一般病院における電子カルテの普及率は34.2%にとどまっているというデータもあります

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政府が掲げた「次世代ヘルスケア・システム構築」とは

IT化による加速が待たれる地域医療連携_4

 

そうした課題感を背景に、政府もさまざまな政策を検討。課題解決の手立ての一つとして政府が掲げたのが「次世代ヘルスケア・システム構築加速化の必要性」と、その実現に向けて厚生労働省が打ち出した具体的な施策です。

 

今後も医療・介護ニーズが高まり続ける反面、労働人口が減少すると予測されている日本では、AI介護ロボット医療記録のICT化といったようにテクノロジーを活用するなどして生産性の向上を図り、効果的・効率的な医療・介護サービスの提供を目指すことが不可欠です。さらに、診療や服薬指導などにIT導入を図ることで、在宅医療・介護の可能性も広がり、健康寿命の延伸にもつなげることができます。

 

厚生労働省が打ち出した次世代ヘルスケア・システム構築では、「データヘルス改革の取り組み(データ利活用基盤の構築等)」として、2020年度に向けて次の8つのサービス提供開始を目指すとしています。

  • ・保健医療記録の共有サービス
    ・救急時の医療情報共有サービス
    ・健康増進への取り組み状況などの健康スコアリング・PHR(パーソナル・ヘルス・レコード=生涯型電子カルテ)の活用
    ・乳幼児期・学童期の健康情報・PHRの一元的な閲覧、関係機関間での適切な引き継ぎ、ビッグデータ活用
    ・各種健康・医療・介護情報を連結して分析可能な環境を提供するデータヘルス分析および関連サービス
    ・科学的介護データの構築・分析
    ・がんゲノムの管理・分析をとおした治療法や診断技術開発
    ・ゲノム医療など重点6領域を中心としたAI開発

また、医療・介護分野における生産性向上に向けた当面の取り組みとしては、多職種連携によってオンラインでの診察や服薬指導といった遠隔医療を推進したり、電子処方箋を普及・促進する仕組みを検討、介護分野においては介護記録のICT化といったものが挙げられています。

出典:厚生労働省、総務省、文部科学省、経済産業省 データ利活用基盤の構築等

 

 

改めて普及への期待が高まる電子カルテ

改めて普及への期待が高まる電子カルテ_3

 

前項で挙げた「生涯型電子カルテ」とは、ある個人がさまざまな医療機関で受診した際の記録や薬局で薬の処方を受けた際のデータなど、各所に散在している健康関連情報を1カ所に集約するための仕組みのこと。個人の健康情報を一元管理して、色々な場面で活用できるようにすることで、効果的・効率的な医療・介護が可能になるというわけです。

 

冒頭にも述べたように、日本の一般病院において電子カルテはまだまだ普及の余地の大きいものであり、前述の調査結果を病床数別にみてみると、400床以上の一般病院であっても電子カルテの普及率は77.5%にとどまっており、20床から199床の一般病院では24.4%と全体の4分の1にも及びません。

 

医療・介護分野でIT化を加速させるためには電子カルテの普及は不可欠といえます。それも、個々の医療機関で導入しているだけでなく、地域や医療機関どうしで電子カルテのデータや健康に関する情報を共有することで、電子カルテのデータが最大限に利用できるようになるのです。今後はそうした取り組みも一層加速するとみられます。

 

 

IT化による加速が待たれる地域医療連携

政府が掲げた「次世代ヘルスケア・システム構築」とは_2

 

医療・介護分野におけるIT化で実現が待たれている領域の一つに、「地域医療を連携するネットワークシステムの構築」があります。IT化で実現できる大きなメリットは、情報をデータとしてネットワークを介して共有できることで、場所を問わず参照可能になるということです。

 

先にも触れたように、遠く離れた医療機関どうしである個人の診察情報を相互に参照できるようになれば、医療連携はさらに発展するでしょう。ふだんは自宅に近い地域のかかりつけ医の診察を受けている方が、あるとき遠距離にある中核病院で精密検査を受けることになった・・・というようなケースでも、かかりつけ医と中核病院で診察・検査結果を共有できれば、何より患者さん自身にとって大きなメリットとなるのです。

 

地域との結びつきがより強い介護分野においても、医療と介護、地域と医療・介護といった連携は不可欠です。疾病予測・治療、生活習慣病の予防といった健康増進を医療連携によってさらに推し進めることができれば、健康寿命の延伸を見込め、介護人材の不足を補う対策の一つとなり得るのです。

 

 

 

高齢化や医療・介護ニーズの増加によって高まるとみられているのは、人材不足ばかりではありません。医療・介護需要の増加や技術の進化、健康増進・生活習慣病予防サービスの充実などによって、ヘルスケア産業市場の拡大が後押しされると予想されているのです。ヘルスケア産業市場の規模拡大は、2013年には16兆円規模であったものが2030年には37兆円規模になるという予測もあります(日本再興戦略)。

そして、そうした市場において存在が重要視されるようになるのが、IT系のプロフェッショナル人材です。AIやIoT、ビックデータといった最先端のIT領域はもちろん、電子カルテや受付システムの導入、ICTインフラの整備など、手作業をIT化するような仕組みづくりといった領域においても、IT人材の適切なサポートがなければIT化の促進は難しくなるでしょう。

 

実際、デジタルヘルス領域やヘルステック領域なども含めたヘルスケア領域では、すでにIT系プロフェッショナル人材を求める声が増えてきています。みらいワークスが運営する「FreeConsultant.jp」でご紹介しているプロジェクトから一例を挙げると、ある企業では「ヘルスケアビッグデータ・データ活用の調査」プロジェクトにおいて、ヘルスケアビッグデータの活用状況を調査・整理する業務にあたる外部プロフェッショナル人材を募集しています。

この業務では、心拍や血圧などのバイタルデータの解析やウェアラブルのデータ収集・分析を通して病気の予兆診断を行なうような技術を対象にリサーチし、その結果を資料のかたちに整理できるコンサルタントが必要とされており、業務を通じて“ヘルスケア業界の今”を知ることができます。

 

そのほか、関西地方の大手製薬企業が募集しているのは、RPA導入の立案から運用フェーズまでを総合的に支援し、ベンダーとの調整業務なども行なうことができるプロフェッショナル人材です。また、製薬・ヘルスケア業のある企業では、総務省からの受託プロジェクトとして地域医療と介護連携ネットワーク事業を手がけており、フリーランスのコンサルタントにPMOとして支援してほしいといった案件も。医療・介護・ヘルスケアというホットな業界で、リアルな現場の“ビジネスの今”に触れて知見を深めることができるのは、この分野のプロ人材として強みを獲得することにもつながる大きなメリットと言えるでしょう。

みらいワークスが運営する「FreeConsultant.jp」でご紹介しているプロジェクトは、リモート対応可能、週3日からのご参画が可能な案件が多いのも特徴です。米国医師として活躍した経歴を持つキャリアコンサルタントがお待ちしていますので、ヘルスケア分野での活動の幅を広げたいとお考えのプロ人材の方は、ぜひご登録いただき、『IT×医療』プロジェクトにふれてみてはいかがでしょうか。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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