【監修】ITツール「SFA」「CRM」とは?営業とマーケの連携を強化する?

最終更新日:2020/10/16
作成日:2018/03/02

働き方改革やコロナ禍に伴い、ITツールの導入で生産性を向上させたり、テレワークをはじめとする多様な働き方を認めたりなど、さまざまな方法で新しい働き方を模索する企業が増加しています。今回注目したいのは、営業部門とマーケティング部門の連携です。営業部門とマーケティング部門での課題や日々の業務の目的、代表的なIT(MA)ツール、ツール導入を成功に導くためのポイントを確認しましょう。

 

 

目次

■営業とマーケティングとの連携が生み出すメリットとは
(1)マーケティングと営業の相性は?
(2)マーケティングにおける営業の位置づけ
(3)マーケティングと営業の連携

 

■営業、マーケティングで使われる「SFA」「CRM」とは
(1)「SFA」は営業データベース
(2)「CRM」は顧客管理システム

 

■SFA、CRM導入を成功につなげるポイント
(1)導入の成功事例
(2)導入の失敗事例
(3)失敗しないための導入ポイント

 

■知っておきたい「IT導入補助金」とは
(1)スケジュール一覧

 

※本コラムは、2020年10月16日に「営業とマーケティングの連携強化を可能にするSFA・CRMとは」を再構成したものです。
※本コラムは、営業力・マーケティング力支援、経営企画業務支援などを行なうコンサルタントが監修しています。

 

 

営業とマーケティングとの連携が生み出すメリットとは

(1)マーケティングと営業の相性は?

「マネジメントの発明者」「現代経営学の父」と言われるピーター・F・ドラッガー(1909-2005年)は、「マーケティングはセールスを不要にする」と言いました。セールスを「営業」と置き換えると、マーケティングと営業は相反する関係にあるものと解釈することができます。

 

事実、マーケティング部門と営業部門を併設する企業では「マーケティングと営業は違う」とか、マーケティング部門は営業部門に対して「せっかくの企画を無駄にするな」とか、営業部門はマーケティング部門に対して「現場を分かっていない」とか、敵意むき出しの会話を耳にすることが少なからずあります。では、マーケティング側と営業側は、敵対的な関係なのでしょうか?

答えは当然「No」です。マーケティング側、営業側ともに、達成すべき目標が売上高である以上、敵対的関係にあって良いはずがありません。

(2)マーケティングにおける営業の位置づけ

それでは、両者の関係について、マーケティングの視点から解き明かしていきましょう。

通常、マーケティング戦略を実行するときには、まず市場分析を行ない、次いで市場細分化ターゲティングポジショニングを経て、マーケティングミックスを決定します。

 

マーケティングミックスとは、マーケティングを実行する際の具体策のフレームワークで、製造・販売業では、有名なマーケティング用語でもある「4P」を使います。「4P」は、マーケティングの具体策を製品面(Product)、価格面(Price)、流通面(Place)、販促面(Promotion)に分けて検討・実行するためのフレームワークです。

 

そして、「4P」のひとつである販促面は、さらに「プロモーションミックス」と言われるフレームワークにより、宣伝、パブリシティ(広報)、人的販売、(狭義の)販売促進の4つに分けて検討・実行されることになります。

ここで言う人的販売は、まさに営業人員による直接販売活動と解釈されており、ここにマーケティングにおける営業の位置付けが明確に定義されていることになります。

(3)マーケティングと営業の連携

営業をマーケティング視点で捉えると、営業は販促機能のひとつに過ぎませんが、商談や契約を必要とする商品の販売には不可欠な機能であり、営業なくして売上げを上げることはできないのです。

一方、営業側の視点で見ると、営業を後方から支援してくれるマーケティング活動があってこそ、商談や成約の効率が上がるという関係にあり、双方ともに敵対関係ではなく、緊密な協力関係にあることが分かります。

 

マーケティングと営業の関係をもう少し簡潔に捉えると、次のように表現することができます。

上記をまとめると、マーケティングは「市場を相手にして、間接的に販売環境を整備する役割」にあり、営業は「顧客を相手にして、直接販売活動を実行する役割」にあると言えます。

そして、それぞれを効率的に展開するためには、マーケティング活動では営業情報の迅速な収集や分析営業活動ではマーケット分析に基づいた行動のそれぞれが必要になります。

そのためには、大量の顧客情報をデータベース化した上で、その情報を迅速かつ正確に分析する必要がありますが、それを可能にしているのが、IT技術を駆使した「SFA」「CRM」と言われる支援システムです。

次の章から、「SFA」「CRM」について解説していきます。

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営業、マーケティングで使われる「SFA」「CRM」とは

(1)「SFA」は営業データベース

営業支援ツール・システムとしてよく聞かれるのが「SFA」です。これは「Sales Force Automation」の略で、営業部門の情報管理ツールとして導入されるようになりました。

SFAでは、顧客情報を集約する顧客情報管理や、商談がどのようなステータスにあるかを把握できるようにするプロセス管理、必要な業務やそのスケジューリングを管理するTODO・スケジュール管理、売上予実の進捗や予測を確認する売上管理などを行なうことができます。

 

SFAの役割は、いわば営業活動のデータベース化商談の「見える化」です。

このデータは、営業担当者自身が活用するのはもちろん、部門で共有することによって他の営業担当者も共有しますし、マネージャーなどの責任者も部門の進捗状況をリアルタイムに把握することができます。

さらには、マーケティング部門の市場分析にも活用することができます。しかも、クラウドでの管理も可能なので、外回りの多い営業担当者の活動効率を落とすこともありません。

こうした機能を通して営業力を効率的に強化し、営業部門の利益を最大化するためのツールがSFAというわけです。

(2)「CRM」は顧客管理システム

そしてもう一つ、「CRM」というツールもあります。これは、「Customer Relationship Management」の略で、日本語では「顧客管理システム」と訳されます。SFAでも顧客の住所・電話番号や担当者名などのデータを管理することができますが、CRMでは顧客により深くフォーカスして、顧客との関係を表すデータを一元化するシステムという違いがあります。

 

CRMでは、たとえば、その顧客がどのような製品をいつどのくらい購入したかといった購買履歴や、購入前後に営業担当者が行なったアプローチの履歴などが蓄積されます。

そのほかにも顧客がセミナーに参加したかどうか、アンケートにどのように回答したか、メールマガジンをいつから送信しているかといった細かな情報を蓄積・閲覧することができます。

 

こうしたデータベースによって顧客との関係性を見極め、さらに取引金額を拡大していったり、顧客満足度を向上させて関係維持に努めるなどの活動につなげ、顧客と良好な関係を築いて収益を最大化する、いわゆるLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)を最大化するのがCRMです。CRMは、営業部門だけでなく、マーケティング部門やコンタクトセンターといったさまざまな分野で活用が進んでいます。

 

 

SFA、CRM導入を成功につなげるポイント

 

SFA、CRM のシステムを導入し、営業部門のデータをマーケティング活動につなげることに成功すれば、さまざまな効果が生まれます。

(1)導入の成功事例

・営業会議での情報共有が効率的になり、会議時間の削減につながった。
・顧客に対する次のアクションが明確になり、営業活動の精度が上がった。
・メンバーの営業活動が見える化されたことで、責任者が部門マネジメントをしやすくなった。
・営業実績がリアルタイムで把握できるので、モチベーションが上がった。
・メールマガジンなどの情報提供をプログラム化できるため、活動が効率化した。
・顧客とのコミュニケーションの内容がレベルアップした。
・客単価がアップしたり、リピート需要が増えた。

このように成功例は数多く存在します。

しかし、SFAやCRMといったシステムも、ただ導入するだけでは成功につなげることはできません。残念ながら、導入の“失敗”事例も散見されるのが実状です。

(2)導入の失敗事例

・営業部門とマーケティング部門がバラバラにシステムを導入したため、連携が取れない。
・リアルタイムにデータ入力がされないため、最新の情報を把握できない。
・営業担当者のデータ精度にばらつきがあり、分析データの精度が落ちてしまう。
・新しいシステムに慣れることができず、従来の方法で管理してしまう。
・新しいシステムと古いシステムが並行して稼働しているので、むしろ効率が悪い。
・システム上のトラブルが続いて、なかなか軌道に乗らない。
・システム自体に欠陥があって使えない。

こうした失敗事例は、ITツール導入のよくある光景とも言えますが、せっかくのすばらしいシステムも導入して定着させてこそ。その力を最大限に発揮させるため、いくつかのポイントを押さえておきましょう。

(3)失敗しないための導入ポイント

・「システム導入の目的」と「必要とする機能」を、あらかじめ入念に関係者と確認する。
TCO(Total Cost of Ownership/システムの導入から廃棄までに総保有コスト)を検討した上で導入の意思決定をする。
・営業部門とマーケティング部門など、部門間でのシステム連携を検討する。
システム設計時点でユーザー調査を徹底し、現場で使いやすいシステムにする。
・システム導入前後の操作トレーニングとフォローアップ体制を構築する。

 

 

知っておきたい「IT導入補助金」とは

 

新しいシステムの導入には、ツールの利用料金や準備のための金銭的コスト、導入の検討から実際の運用までの人的コスト、もろもろの時間的コストなど、さまざまなコストが発生します。意外と見落としがちなのが人的コストですが、その前段階として、安くはない金銭的コストの点で止まってしまうことも少なくないでしょう。

 

そんなときに使える制度として知っておきたいのが、「IT導入補助金2020」です。

これは正式には「サービス等生産性向上IT導入支援事業」という、中小企業や小規模の事業者などの生産性向上を目的とした制度で、中小企業などがソフトウェアやサービスなどのITツールを導入する際に、経費の一部の補助を受けることができるというものです。

 

2020年度も既に動き出しており、大まかに下記のスケジュールで進んでいます。

(1)スケジュール一覧

・IT導入支援事業者申請・登録
登録申請:受付終了(2020年5月11日(月)受付開始~2020年8月21日(金)15:00まで)
採択決定:後日案内を通知

 

・ITツール(ソフトウエア、サービス等)の登録申請
募集期間:2020年5月11日(月)受付開始~終了時期は別途案内予定

 

・交付申請
交付申請期間:2020年5月11日(月)受付開始~2020年12月下旬

 

・事業実施期間
交付決定後~2020年11月30日(月)まで

 

補助対象となるのは、IT導入補助金事務局が認定した「IT導入支援事業者」登録のITツール(サービスやソフトウェアなど)の導入費用で、どのようなツールでもいいというわけではありませんし、補助を受けるには登録・申請して採択される必要があります。申請に関する詳細は、必ず「IT導入補助金2020」ホームページよりご確認ください。

出典:IT導入補助金2020 令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業

 

まとめ

日本の企業においては、営業部門とマーケティング部門の活動が連携していなかったり、マーケティング活動が属人的であったりといったことが少なくありません。そうしたところにITツールを導入してシステム的な連携を進めていくのは容易ではないこともあるでしょう。しかし、営業活動とマーケティング活動というのは、企業の利益向上に不可欠の要素です。そこに適切にシステムの導入を進めることができれば、その活動による成果の飛躍的な向上が期待できます。

 

また、BtoBでは「リードナーチャリング」(Lead nurturing/見込み顧客に対してメールや電話などを利用し、有益な情報を提供することで購買意欲を高めていく手法)という手法が浸透しつつありますが、その有効性を認識しながらもなかなか取り組めておらず、漫然とメールマガジンを送るにとどまっているというケースも多く見受けられます。

 

そこでSFAやCRMなどのシステムが使われていれば、リードナーチャリングなどのマーケティング手法を進めやすくなり、企業の競争率を強化することにつながるでしょう。

 

とはいえ、こうしたツールをユーザー企業だけで機能比較して導入を検討するのは資金的に難しいものがあります。その導入をサポートしてくれるIT導入補助金の存在は、ユーザー企業にとって心強い存在であり、ビジネスチャンスもまだまだ潜んでいるといえそうです。

 

< 監修者プロフィール >
大野 晴司(おおの せいじ)

東京都立大学(現首都大学東京)卒業後、日産自動車で国内のマーケティング部門や系列ディーラーでの営業マンや本社販促部署長などを経験。中小企業診断士資格取得のために退職、2003年3月資格取得。その後、マーケティングリサーチ会社、自動車関連メーカーを経て、2008年にビズ・エキスパート株式会社を設立。神奈川・東京の中小・中堅企業の営業力・マーケティング力支援のほか、経営企画業務、新規事業支援を主な事業として活動中。また、企業向けセミナー講師なども務める。

ビズ・エキスパート株式会社:http://b-ex.biz/index.html
プロフェッショナリズムインタビュー:https://freeconsultant.jp/workstyle/w020

 

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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