法律関係もIT技術を駆使 リーガルテック最新事例
作成日:2017/11/29
リーガルテックとは
「リーガルテック(Legal Tech)」とは、「リーガル(legal)=法律に関すること」と「テクノロジー(technology)=技術」を組み合わせた造語です。すぐれたIT技術を活用して実現された法律関連のサービスやシステムを指します。
近年「FinTech」「HR Tech」「Ed Tech」といった「X-Tech」がさまざまな業界で注目を集めるようになっています。これは、従来からあるさまざまな業界・業種で最先端のIT技術を活用することによって、新しい価値をもつサービスを生み出したり、従来の仕組みを画期的に変えたりといったイノベーションをもたらすサービスを提供するものです。
このX-Techの波が、法律関連業界にもおよぶようになりました。それが「リーガルテック(Legal Tech)」です。弁護士や司法書士、社労士といった「士業」と呼ばれる業界の仕事は、事務作業や書類作成をはじめとする雑務が非常に多く、このことが業務の効率化を妨げていました。リーガルテックでは、たとえばこうしたところにIT技術を導入することによって、仕事の進め方を大きく改善することができます。そうなれば、その分のリソースを専門家ならではの“付加価値”提供に費やすことができるようになるのです。
煩雑な手続きに追われているのは、企業法務などを担当する企業の担当者も同じ。そうしたユーザーにとっても、従来はさまざまな人の手を介して行なっていた契約手続きがリーガルテックで簡単に処理できるようになったり、法務に関する事務を自動化できるようになったりと、その恩恵を受けることになります。
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スキルを学習して専門家をサポート
リーガルテックが進んでいるのは米国ですが、日本でもさまざまなサービスが開発されています。たとえばFRONTEOでは、人工知能(AI)を活用した特許調査・分析システム「KIBIT Patent Explorer」を提供しています。
企業が何か発明をした場合、特許の取得などをすすめることになりますが、その発明の新規性や進歩性が否定されてしまうと特許を取得することはできません。そうした否定の根拠となる可能性がある特許文献があれば、事前に確認しておく必要があるのです。
しかし、特許の出願数は日々増加しており、そのなかから目的の特許文献を検索することはとても難しいもの。検索精度を上げるためには調査範囲を広げる必要がありますし、条件検索にも専門的なスキルが必要と、ビジネスとして成立するほど困難な技術です。特許庁でも、そうした難しさを少しでも解消するために検索ノウハウをガイドブックのかたちで提供していますが、一朝一夕にマスターできるものではありません。
FRONTEOは、トヨタテクニカルディベロップメントと共同で人工知能「KIBIT」を開発。このKIBITが、特許調査の専門家の暗黙知を学習することで検索技術を“獲得”したのです。
それによって、数万件になることもあるデータに対して関連度合いのスコアを算出し、関連性が高いものから順番に並べ替えることができるようになりました。このサービスで、人間の専門家が絞り込む前に精度の高いスクリーニングを実現することで、特許検索などの実務の効率化やスピードアップを図れるようになります。
煩雑な作業をクラウドで完結
契約手続きといえば、契約書を紙に印刷して押印し、収入印紙を貼付……とまさに煩雑な作業が多い業務です。日本最大級の法律相談ポータルサイトを運営する弁護士ドットコムが提供するのは、その契約手続きをクラウドで完結させるサービス「クラウドサイン」です。
従来の契約手続きでは、契約書のファイルをメールでやりとりするなどして確認しあい、合意できた段階で2部印刷します。契約書の末尾に署名・押印を行ない、必要があれば収入印紙を貼付してきれいに製本します。その原本を郵送して相手方の署名・押印を得て、1部だけ返送してもらうことで双方が原本を持ち合います。押印・返送の手順を徹底する必要もありますし、郵便で送る際にも簡易書留で送るなど気をつかいます。
クラウドサインでは、書面の確認から押印まで、すべての作業がクラウド上で完結します。相手方に求める署名や押印の箇所もわかりやすく、相手方が契約書を見たかどうか、その進捗状況を確認してリマインドを送るといったことも可能。相手方はクラウドサインのアカウントをもっていなくても対応できます。
契約内容について当事者の間で合意を形成するのは、引き続き人間の仕事ですが、クラウドサインではそのあとの手続きを効率化できるのです。クラウド上での契約締結に法的な懸念や疑問をもつ方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは弁護士ドットコムならではの専門力とノウハウで細やかにカバーされています。すでに数千社で導入実績があり、雇用契約書や個人情報の取扱同意書といった入社関連の書類や、NDA(秘密保持契約書)のように締結頻度が高い契約書など、さまざまな契約業務において活用されています。
機械学習で法務の自動化も
日本発のサービスではないものでも、興味深い動きもあります。2017年3月にリクルートホールディングスが出資を発表したイスラエルのスタートアップであるLegalogicは、弁護士・法務の一部業務を自動化するリーガルテックのサービスを展開する企業です。
Legalogicが運営するサービス「LawGeex(ローギークス)」は、企業法務業務における契約書レビューや修正を自動で行なうことができるというものです。機械学習技術を使って6万件以上の契約書を学習、同時にアルゴリズムの改善も行なわれ、商用利用が可能な品質を実現しているとされています。ローギーグスが扱った契約書に対して法務担当者が修正を入れた場合、その結果を反映させることで企業特有の用語を学習できることも、その精度向上に拍車をかけています。
この資金調達で、Legalogicは米国での営業活動を本格化させると発表されていますが、テクノロジーの活用に意欲的なリクルートとのコラボレーションは、非常に興味深い動向です。
「AIの活用で将来は人間の仕事がなくなってしまうのではないか」――テクノロジーの進化、特に人工知能の進化がこうした文脈で語られることは少なくありません。リーガルテックも、作業的なところとはいえ、こうした士業の業務にまで展開が進んでいることは驚くべきことともいえます。
しかし、そうしたAIも、専門家のノウハウがあってこそですし、最終的な意思決定を人間が行なうのは変わりません。テクノロジーでできることはテクノロジーに任せて、人間は付加価値を生み出す仕事をするといった“分担”が今後も進みそうです(みらいワークスでも、コンサルタント交流会“のセミナーにおいて、IBMのAI「Watson」を取り上げました:https://mirai-works.co.jp/topics/news047/ )
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)