マネジメントに欠かせない【コンセプチュアルスキル】とは

作成日:2017/06/12

 

「コンセプチュアルスキル」と「カッツ・モデル」

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組織のマネジメントを行なう上で必要なスキルといえば何が思い浮かぶでしょうか。

 

組織によって多岐にわたると思いますが、その指針のひとつとなるのが、1955年に提唱され、現在もビジネスの現場で活用されている「カッツ・モデル」です。カッツ・モデルとは、ハーバード大学のロバート・カッツ教授が提唱した理論で、「マネジメント層に求められるスキルは大きく3つに分かれ、マネジメントを行なう階層に応じて各スキルの重要度のバランスも変わってくる」というものです。

 

この3つのスキルのひとつが「コンセプチュアルスキル」と呼ばれるもので、トップマネジメントに近づくほど重要度が増す能力であると言われています。今回は、聞いただけでは具体的にどのようなものかわかりづらいこのスキルについてご紹介します。

 

コンセプチュアルスキルとは

 

カッツ・モデルでは、マネジメントに必要な能力を次の3つに分類しています。

1.テクニカルスキル
業務遂行能力。担当する業務を遂行する上で必要な知識や技術を指す。

2.ヒューマンスキル
対人関係能力。ビジネス上の人間関係を構築する技術で、人を観察・分析し、望ましいアクションを選択し、行動に移せる能力を指す。

3.コンセプチュアルスキル
概念化能力。事業を取り巻く状況やその背景にあるさまざまな事情を、構造的・概念的・俯瞰的に捉え、取り組むべき課題の本質を見極める能力を指す。

その上で、マネジメント対象となる組織の規模が小さいうちはテクニカルスキルの重要度が高いものの、組織の規模が大きくなるにつれてコンセプチュアルスキルの重要度が増していくとされています。

 

コンセプチュアルスキルの明確な定義は、提唱者であるロバート・カッツによっても行なわれていないそうですが、さまざまな有識者の解釈をもとにまとめると「個別具体的な事象を単にその事象としてのみ捉えるのではなく、より広い視野で、より高い視座から、一般的・普遍的な事柄として捉えなおし、その本質を掴む能力」といえます。

 

経験の抽象化が未経験の領域へのハードルを下げる

経験の抽象化が未経験の領域へのハードルを下げる

では、この「物事を捉えなおし本質を掴む力」がマネジメントの局面で重要になるのはなぜなのでしょうか。

人事コンサルタントの酒井譲氏は、あるコラムの中で、尊敬する友人の「抽象化スキルは経験の再利用性を高める」という言葉を引用し、コンセプチュアルスキルについて考察しています。

 

同記事では、「今後いろいろなイノベーションが起き人材の流動化も進む世の中では、経験したことのない仕事も選ばざるをえない状況になってくる。そのため、個人的な経験を一般的な事象として捉えなおすスキル、つまりコンセプチュアルスキルを使って過去の経験を抽象化し、未経験の仕事をする際にも活用しなければ、生き残れない」と述べられています。

 

そして具体例として「マクドナルドでのアルバイト経験を、単に“アルバイトの作業”としてしか捉えられない人と、“外食ビジネスでの経験”と捉えられる人」があげられ、「前者はどこまで行ってもアルバイトのままだが、後者は外食業界でアルバイト以上の職に就ける確率が高くなる」と、その差について論じられています。

 

つまり、コンセプチュアルスキルが高ければ個人的な経験を別の新たな挑戦にも応用しやすくなる、という話なのですが、上位マネジメントになるほどコンセプチュアルスキルが重要になっていく理由もここにあると考えられます。

 

マネジメント対象となる組織が大きくなるにつれて、自分が直接には体験したことのない業務や状況についての判断を下さなければならない場面は多くなり、かつその判断の重要性も増していくからです。

コンセプチュアルスキルとその他2つのスキルの関係性

コンセプチュアルスキルを高めるための王道は、残念ながらなさそうです。

しいていえば、日々の仕事を、より広い視野で、そしてより高い視座から俯瞰し、“個人に割り振られた業務”という枠ではなく“会社の事業にとってどういう位置づけの仕事なのか”という視点で捉えなおそうという意識を常に持っておくことは、ひとつのトレーニングになるかもしれません。

 

鍛え方の難しいコンセプチュアルスキルですが、これを高めると、カッツ・モデルの残り2つのスキルであるテクニカルスキルとヒューマンスキルを効率よく高めることができると考えられます。一般的に、仕事ができる人の特徴として「飲み込みが早い」「応用力がある」という2点があげられますが、簡単に言うと「コツをつかむのが上手い」というこの性質は、コンセプチュアルスキルが高くなければ身につきません。

 

ひとつひとつの業務を“その業務に特有のプロセス”と捉えて覚えていくやり方では、テクニカルスキルを高めるためにはすべての業務を経験しなければならない、ということになってしまいます。しかしコンセプチュアルスキルが高い人なら、経験した業務の本質を掴み、類似の他の業務にもその本質を応用することができるため、すべての業務を経験する必要はありません。これが、コンセプチュアルスキルによってテクニカルスキルが効率よく高まるという一例です。

 

ヒューマンスキルについても同様です。ヒューマンスキル「何を伝えるか」「どう伝えるか」という2つの要素から成りますが、「何を伝えるか」は「相手が誰なのか(何を知りたがっている相手なのか)」によって違ってきます。自分の仕事を“会社にとってどういうものか”、“事業にとってどういう位置づけか”という視点で捉えることができて初めて、「伝える内容(レベル)を相手に応じて変える」というスキルが身につくと考えると、やはりヒューマンスキルもまた、コンセプチュアルスキルが高い方が効率的に高められると言えそうです。

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ところで、コンセプチュアルスキルはプロジェクトマネジメントにも不可欠です。

 

プロジェクトの度に蓄積されるさまざまな経験から、プロジェクトマネジメントという仕事の本質をいかに早く見極め、その学びを活用するか。それがスピーディーにできるようになるには、コンセプチュアルスキルが欠かせません。

その点では、マネジメント層やプロジェクトマネジャー以外のビジネスパーソンも身につけるべきスキルであると言えるのではないでしょうか。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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