【監修】「ロジカルシンキング」はビジネスに必須の思考法

最終更新日:2020/09/04
作成日:2017/03/16

「ロジカルシンキング」とは、その名の通り「論理的思考」を指すもので、論理学や数学の学術分野を基盤とした思考方法です。ビジネスの現場での問題解決や経営者の意思決定、効果的なプレゼンテーションにも用られています。今一度、その訓練方法や身に着けるメリットについて考えてみましょう。

 

目次

■ロジカルシンキングがビジネスのベーシックスキルとして求められる理由

 

■コンサルタントが体系化したロジカルシンキングの手法
(1)事実ベース思考
(2)ゼロベース思考
(3)帰納法
(4)演繹法
(5)MECE(ミーシー or ミッシー)
(6)ロジックツリー

 

■ロジカルシンキングのメリットとトレーニング方法
(1)結論から話してみる
(2)日頃から考える癖をつける
(3)ビジネスを分析してみる

 

■効果的な人材育成、教育研修の方法
(1)まずはスキルやノウハウを理解する
(2)常に実務で実践する

 

 

※本コラムは、2020年9月4日に「“ロジカルシンキング”はビジネスシーンに必須の思考法」を再構成したものです。
※本コラムは、営業力・マーケティング力支援、経営企画業務支援などを行なうコンサルタントが監修しています。

 

 

■ロジカルシンキングがビジネスのベーシックスキルとして求められる理由

 

「ロジカルシンキング」と聞いて、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか。

「仕事に役立つスキル」「仕事が出来る人がやってそう」「理屈っぽい仕事のやり方」など、そのイメージは人それぞれのようです。しかしながら、ほぼ全員に共通するイメージは、「正直、なんだか良く分からない」といったところでしょう。

 

ロジカルシンキングとは、ものごとを体系的に整理して筋道を立て、矛盾なく考える思考法のこと。「論理的思考」とも表現されるなどの説明が辞書ではなされています。

もう少し簡潔、直感的に捉えると「ものごとを分りやすく考えるためのルール」と言い換えることができます。

 

より明確に理解するため、ロジカルシンキングを活用した次の簡単な事例を用いてその違いを説明します。

【入手されたままの情報】と【ロジカルシンキングで整理された情報】。下段の表は、上段の情報をロジカルシンキングのスキル「マトリクス図」で変換したもの。どちらも全く同じ情報を表しています。

ごく簡単な例なので、多くの人が「マトリクス図」を知らなくても下段の情報に変換できると思いますが、上段と下段の情報理解度あるいは理解に要する時間の違いに注目すると、明らかに下段の情報に軍配が上がります。

実際の業務では、この事例とは比較にならないほど複雑な情報に対峙していますので、「ものごとを分りやすく考えるためのルール」を熟知している人のアウトプット(報告・提案・説明など)と、熟知していない人のアウトプットには、大きな差が生まれることは明白です。

 

ロジカルシンキングをマスターする一番のメリットは、難しいものを分りやすく捉えられるようになること。ものごとを分りやすく捉えられることで、これまで見えなかったものが見えるようになり、さらには解決すべき問題や伸ばすべき強みを明らかにすることができ、その結果、的確な意思決定や業務遂行を実行できるようになります。

 

このように、ロジカルシンキングは仕事のクオリティアップに繋がるビジネスパーソン必修のスキルですので、まずはこれまでの先入観なく基礎的なものから習得することをおすすめします。

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コンサルタントが体系化したロジカルシンキングの手法

 

 

「考えを整理するためのスキル」「考えた内容をわかりやすく説明するためのスキル」に大別されるロジカルシンキングですが、その歴史は紀元前4世紀までさかのぼります。

古代ギリシャの哲学者アリストテレスが「三段論法」を中心とした論理学を確立したことに始まるとされています。

 

ビジネススキルとして初めて体系化したのは、米国の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーの出身者であると言われており、その考えを日本で広めたのは、やはり元マッキンゼーの照屋華子氏と岡田恵子氏。

 

2001年に発売された両氏の共著『ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル』をきっかけとして、日本国内でもロジカルシンキングブームが生じ、類似書籍がいくつも刊行されました。

論理的思考に必要なスキルをいくつかご紹介します。

(1)事実ベース思考

事実ベース思考とは、事実に基づいて考えることを指します。

情報には、事実のほかに、想像や推測に基づく推論自分の意見や主張に基づく自論があります。ものごとを理解する際に、事実は疑う余地のない情報ですが、推論は信ぴょう性に疑いの余地があり、自論に至っては個人の意見に過ぎず、反論や否定の可能性を含む情報になります。

論理的にものごとを考える際には、疑念・否定の余地がある推論や自論を排除して、常に事実に基づく情報に着目する必要があり、事実ベース思考は、ロジカルシンキングのベースとなる基礎的なスタンスと言えます。

(2)ゼロベース思考

ゼロベース思考とは、経験則、固定観念、思い込み、過去の慣習や規則、考え方などにとらわれることなく、白紙の状態からものごとを捉えることを指します。

ひと昔前であれば、過去の事例を参考にして仕事をすることが当たり前でしたが、現在は、過去の事例が必ずしも参考になるとは限りません。むしろ過去の事例にとらわれたばかりに、ミスリードしてしまうというのが常識となっています。

とはいえ、もちろん過去の事例も事実情報のひとつとして受け止める必要がありますので、実務上は過去の事例を無視しないようにしながらも、そこに縛られてしまわないよう心掛けることが肝要であると言われています。

事実ベース思考とゼロベース思考をまとめると、常に事実に着目し、それを過去にとらわれることなく、常にニュートラルに考える思考法と捉えることができます。この2つの思考は、ロジカルシンキングを実践する際に、常に意識しなければならない重要なスタンスに位置付けられています。

(3)帰納法

論理的な思考法として帰納法演繹法がありますが、いずれもロジカルシンキングの基礎として理解しておきたい思考法です。

まずは帰納法です。帰納法は、複数の新たに知った情報に共通点を見つけて、そこから結論を導き出す思考法で、具体的には次の通りです。

なお、上記事例では、結論を「大都市は物価が高い」としていますが、「首都圏は物価が高い」としても納得できる結論です。帰納法では、新たに知った情報から導き出される結論が必ずしも一つにならないことを理解しておく必要があります。また、複数の情報が事実に基づいているのであれば、事実ベース思考も踏まえた思考法と言えるでしょう。

(4)演繹法

演繹法は、帰納法とは全く異なる思考法で、別名を三段論法とも言います。2つの情報(すでに知っている情報と新たに知った情報)の関連性を見つけて、そこから結論を導き出す思考法です。具体的には次の通りです。

なお、すでに知っている情報には通常一般論や常識をあてますが、一般論や常識そのものに疑いの余地があると説得力のない論法になってしまうことに注意しましょう。また、論理展開が一般論や常識を起点にしている点は、ゼロベース思考と相容れない部分もあるので、ゼロベース思考との相性は良くないかもしれません。

(5)MECE(ミーシー or ミッシー)

MECEは、ロジカルシンキング特有の用語。“Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive“の略で、翻訳すると「相互排他的かつ集合的に網羅的」なこと、つまり「重複がなく、かつ漏れがない」と訳されますが、簡単に言うと、ものごとの全体像を「漏れなく、ダブりなく」とらえるスタンスのことです。

「漏れがない」について、首都圏の全体像を捉えようとしたときを例にあげて説明します。「東京」「神奈川」「埼玉」で終わってしまうと、千葉が漏れていますね。これは「MECEになっていない」状態です。解決するためには、「千葉を加える」または千葉を思い出せないときは「その他を追加」すれば、「MECEになっている」ことになります。

次は「ダブりがない」について。例えば、世代の全体像を捉えようとしたときに、昭和世代、平成世代、ゆとり世代、令和世代、その他世代ととらえると、明らかにゆとり世代がダブっています。これも、「MECEになっていない」ことになります。

MECEは、特に手法の確立された思考ツールではなく、論理的にものごとの全体像を捉えるときに、常に意識する必要がある基本的なスタンスと捉えておけば十分です。

(6)ロジックツリー

ロジックツリーは、ものごとの「要素」「原因」「目的」を細かく細分化し、その全体の構造を明らかにする思考ツールで、作成方法にはルールがあります。

ロジックツリーのイメージは表にある通り。第1階層に、ロジックツリーを使って細分化しようとするテーマを配置します。それを第2階層、第3階層と分解(細分化)を繰り返すのですが、階層の数、一つの要素から分岐する要素の数に制限はありませんので、実際のロジックツリーは、階層の数、要素の数とも複雑になります。

「要素」を分解するロジックツリーの代表例は組織図です。大きな組織を部・課・係に細分化するイメージを想い浮かべてください。

「原因」を追究するロジックツリーは、例えば「商品が売れない」をテーマに据えて、So Why?(それは、なぜ?)と問い掛けながら、その理由を細分化し、根本の原因を探ります。

「目的」を達成するための手段を考えるロジックツリーは、例えば「商品を売る」をテーマに据えて、So What?(そのために、何をする?)と問い掛けながら、その手段を具体化します。

ロジックツリーを作成するときのポイントとしては、常にMECEであることを意識することが求められます。

 

 

ロジカルシンキングのメリットとトレーニング方法

 

では、ロジカルシンキングにはどんなメリットがあるのでしょうか。

 

最大のメリットは、どんな時でも説得力のあるコミュニケーションが可能になるという点でしょう。具体的には、就職や転職の面接、プレゼンテーションや商談・交渉など、ビジネスにおけるあらゆる場面で十分な根拠に裏打ちされた説得力のある意見を出すことができるということです。もちろんコンサルティングの場面でも、より説得力のある指導ができるようになることはいうまでもありません。また、自分自身の理解能力が高まり、情報や知識の吸収が早くなる点も、大きなメリットのひとつです。

 

ロジカルシンキングは、単に本を読んだりコンサルティングファームなどが開催するセミナーに参加するだけではなく、日常の中で繰り返し実践して徐々に身についていくものです。次の項目を意識することが大切です。

(1)結論から話してみる

まず結論を述べ、その後にその理由や判断に至った流れを説明します。会議などビジネスでの会話の際には、常にこの順番を意識しながら発言することが重要です。

(2)日頃から考える癖をつける

「なぜ飲食店のランチタイムは14時までなのか?」「量販店はなぜライバルがいる街に出店するのか?」など些細なことにも疑問を持ち、背景にある事情などを考える癖をつけることが大切です。

(3)ビジネスを分析してみる

周囲のビジネスのシーンで起きていることについて「なぜそれが可能なのか?」を常に推論する癖をつけましょう。例えば、いつも見かける一見変哲もない店舗が何十年も存続している背景には、どのような利益向上の手段があるのかなどをMECE的な思考で推測するといったことです。

 

これらの訓練を少しずつ続けていく癖をつけることも、ロジカルシンキングを身につけるための重要な一歩となるのです。

 

 

効果的な人材育成、教育研修の方法

(1)まずはスキルやノウハウを理解する

ロジカルシンキングは、効率的かつ論理的に仕事をするためのルール集と捉えることができます。従って、ロジカルシンキングを短期間でマスターするためには、まずはそのルールを理解することから始めなければなりません。

とは言うものの、そのルールは静的な知識の暗記だけでは太刀打ちできるものではなく、動的なスキルやノウハウを習得するイメージで取り組む必要があります。

そのためには、ゴルフが上手くなりたいと思えば、ハンドブックを読み漁るよりスクールに通った方が良いのと同じで、ロジカルシンキングも、まずはプロのトレーニングを受けることが習得の近道と言えます。

 

具体的には、外部研修やセミナーに参加して、効率よく優先度の高いスキルやノウハウに絞って習得することから始めると良いでしょう。

外部研修やセミナーを選ぶ際のポイントは、実践的に使えるスキルやノウハウを学べるか否かに尽きます。ただただ知識を詰め込むだけのカリキュラムでは、実務での実効性は期待できないので、実務で使うことを前提としたケーススタディやグループワークが随所に組み込まれたカリキュラムかどうかを見極めましょう。

(2)常に実務で実践する

ロジカルシンキングには、目的や用途に応じてかなりの数のルール(スキル、ノウハウ)がありますので、これを短期間ですべて理解しようとすると間違いなく破綻します。まずは、常に実務に使える最低限のルールを実践するというスタイルで取り組むことが重要です。

ロジカルシンキングも、語学と同じように使わないとすぐに忘れてしまうので、外部研修やセミナーに参加したら、その翌日から積極的に実務で使ってみましょう。

 

実務で取り組む際のポイントは、あらかじめケースごとにアクションを決めて取り組むことです。すでにご紹介したスキルを例にとると、次のようになります。

このようにケースごとのアクションを明文化し、まずは無理せず5つ程度から始めることをおすすめします。

 

ロジカルシンキングのコツさえ掴めば、外部研修やセミナーに参加できなくても関連書籍を読むだけで使えるスキルをどんどん増やせるはずです。

まずはできるところから、知識理解と実務実践を繰り返していきましょう。

 

 

 

 

前述のように、ロジカルシンキングを体系的に示した書籍は『ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル』が有名ですが、これ以外にも論理的思考を養うための解説書は多く存在し、広く知られているものとして次の3つがあります。

 

◇『世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく』/渡辺 健介 著

◇『問題解決プロフェッショナル―思考と技術 新版』/齋藤 嘉則 著

◇『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』/バーバラ ミント 著

 

このうち『考える技術・書く技術』は、「一つのメッセージ(テーゼ)には必ず下部にピラミッド状の要素を配列する」(ダイヤモンド社/出版元)という構造を用いて文章を作成する方法を解説したものです。

しかし、日本語自体がそもそも論理的な言語ではないと昔から言われており、外国語の文章作成技術をそのまま取り入れるのも少し無理があるかもしれません。そのため、場合によっては、論理によってわかりやすい日本語文章の書き方を説いた『日本語の作文技術』(本多 勝一 著)の併読もおすすめです。

 

もはやビジネスパーソンに必須のスキルといっても過言ではないロジカルシンキング。苦手意識のある方も、自分に合った書籍やトレーニング方法で取り入れてみると、意外と楽しく身につけられるかもしれません。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

< 監修者プロフィール >
大野 晴司(おおの せいじ)

東京都立大学(現首都大学東京)卒業後、日産自動車で国内のマーケティング部門や系列ディーラーでの営業マンや本社販促部署長などを経験。中小企業診断士資格取得のために退職、2003年3月資格取得。その後、マーケティングリサーチ会社、自動車関連メーカーを経て、2008年にビズ・エキスパート株式会社を設立。神奈川・東京の中小・中堅企業の営業力・マーケティング力支援のほか、経営企画業務、新規事業支援を主な事業として活動中。また、企業向けセミナー講師なども務める。

ビズ・エキスパート株式会社:http://b-ex.biz/index.html
プロフェッショナリズムインタビュー:https://freeconsultant.jp/workstyle/w020

 

 

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