「選択肢を多く持ち、自分で決断してやりきる」 人一倍の好奇心と向上心を武器に多方面で活躍するフリーコンサルタントの思考とは
自分の中の引き出しを増やしつつ、“面白いこと”や“新しいこと”に取り組むためにいろいろなところに種をまく。『intrapersonal diversity-イントラパーソナル・ダイバーシティ-』とも言えるイノベーティブな活動の根幹にあったのは、「決めてやりきる」というシンプルな思考でした。
みらいワークスがお届けする「プロフェッショナリズム」、今回のインタビューは篠原翔さん。
SAPジャパンやデロイトトーマツコンサルティングで“世界初”や“日本初”となる経験を積んだ後、独立。現在はフリーコンサルタントとして働きつつ、その他にも幅広く活躍していらっしゃいます。「面白いものを生み出すために、敢えて引き出しを増やしている」とおっしゃる篠原さんに、フリーランスとして活動していく上で大切なことや今後目指す方向性など、聞いているだけでワクワクするお話を伺ってきました。
篠原 翔
今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント
大学卒業後、SAPジャパン株式会社にて新卒初・20代初での経営層への価値訴求専門チームに参画し、世界最年少(25才)でプリンシパルへ昇格。MBA進学、在学中の起業の後に、有限責任監査法人トーマツに転職。後にデロイトトーマツコンサルティングに転籍し、戦略的プライシングソリューションの日本市場開発を統括。2016年1月に独立し、ベンチャーキャピタル勤務を経て、フリーランスの経営コンサルタントとして活動したのち、2018年1月アライブスピット株式会社を設立。米国公認会計士、1級色彩コーディネーター、テキーラソムリエ、PDCFA®︎コンサルタント、ケースメソッドインストラクター、FP等の資格を持ち、コンサルタントの他、起業家、投資家、講師、ライター、愛猫家など多くの顔を持つ。
篠原 翔
手に入れたいくつもの“武器”を活かし切るために、独立を決意
フリーコンサルタントとして働く傍ら、米国公認会計士や色彩検定1級をお持ちであったり、テキーラソムリエやライターとしての顔もお持ちであったりと多方面でご活躍中の篠原さんですが、独立されるまではどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか?
篠原さん(以下、敬称略):新卒でSAPジャパンに入社して6年間在籍した後にMBAを取得し、その後監査法人トーマツのM&Aアドバイザリー部門に転職しました。そこからご縁があってデロイトトーマツコンサルティングに転籍し、2016年1月に独立しました。
SAPジャパンでは、営業、営業支援組織の設立を経て、経営層にITの機能ではなく、ビジネスバリューを訴求する価値訴求専門の部隊に異動し、当時世界最年少の25歳でプリンシパルという役職に昇格させていただくなど、幅広い経験をさせていただきました。その後、デロイトトーマツコンサルティングにはその時の経験を買われて市場開発の役割でお声がけいただいたのですが、当時まだ日本では一般的ではなかった「戦略的プライシングソリューション」、いわゆる価格付けに関するコンサルティングを根付かせようというのがミッションで、そこでの経験は今の自分のキャリアにも密接に関わる非常に面白いものでした。
デロイトトーマツコンサルティングを退職して独立するという決断をした背景には、何かきっかけがあったのでしょうか?
篠原:もともと独立志向があったわけではなかったのですが、デロイトには市場開発フェーズを担当するという話で入社したこともあり、2015年末でそのフェーズにある程度目処がつき、新たにプロジェクトが始まるフェーズになったため、「年末でキリもいいから辞めよう」かと。
なるほど。その時に転職ではなく独立を選んだ理由は何だったのですか?
篠原:一言でいえば「フリーでもやっていける」、「仮にだめでも何とかなる」という感覚があったからだと思います。実はMBA在学中にすでに2社起業しており、その時にもデロイトを辞める時にも同じ感覚がありました。「引き合いがある状態」、つまり「いつでも来てください」と言ってくださる企業がある程度あれば、フリーでも、仮にフリーで上手く行かなくても何とでもなるのではという感覚です。
個人的に投資家やライターとしての活動もしていたので「生活資金を稼ぐ手段はたくさんある」とも思っていましたし、また、いろいろな武器を手に入れたことで「一つの組織に属したままでは持っている武器を活かしきれない」と感じるようになったことも、フリーになる道を選んだ理由の一つでした。
強みは“人一倍の好奇心と向上心を持っていること”
現在はフリーコンサルタントとしてプロジェクトに入りながら今後の事業計画を練っている段階とのことですが、ビジネスプランは初めから細かく立てているのでしょうか?
篠原:プランは立てているものの、日々いろいろな話が舞い込んできてどんどん進化してしまうので、プラン通りにならないことの方が多いですね。ただ、そうやって思いもよらないところで面白いことが起こることもある意味想定内というか、そのために意図的にいろいろなところに種をまくようにしている部分があるので、実際に何か起きても「ああ、今回はあれとこれがつながったのか」という感覚です(笑)。
事業計画も作ってはいるものの、強くこだわってはいません。目標はきちんと持っていないと後で反省ができないので必ず設定していますが、プランは随時ブラッシュアップする前提で作っているという感じです。
独立してから気づいたのですが、「ある特定の組織の人」ではなく、プライシングなどの価値訴求専門のコンサルタント、会計士、投資家、色彩コーディネーターなどいろいろな顔がある「個人」であることで、「もしかするとこの話にも興味があるかもしれない」、「この話も面白い方向に展開してくれるかもしれない」と思っていただけることが多くなったようで、より多方面からお声がけいただけるようになり、今はすごく楽しいです。声がかかること自体も嬉しいのですが、それだけではなく、自分が正しいと思うことや社会的に意味があると思うことを何のためらいもなくすぐに始められることが一番ですね。そうやってすぐに始めてしまうからなかなか計画通りに進まないのですが・・・(笑)。
なるほど(笑)。でも「やらないことを決める」というのは難しいですよね。
篠原:すごく難しいですね。最近は「自分でなければできない仕事なのか」、「新しいことなのか」、「社会的に意味のあることなのか」という軸を含めて判断するようにしているので、やることを選ぶ際のハードルは上がってきているのですが、まだまだ絞ることは難しいです。
ただ、以前から「生活のための仕事は40歳までに辞める」と心に決めているので、その時までに生活費は自動的に入ってくる仕組みを作った上で、報酬がなくても「やりたいこと」や「やるべきだと思ったこと」はやるという選択ができる状態にしておきたいと思っています。34歳の今はまだそこまで行けていないので、あと6年のうちに生活のための仕事のウエイトは少しずつ落としていきたいなと。
直近では来年1月に法人を設立予定とのことですが、その会社ではどのようなことを手掛けられるのですか?
篠原:クライアントとなる人や企業が、最も適した場所で輝けるようになるための支援を、特に「価値訴求」の観点を主軸に行なっていきたいと考えています。社名はMBA在学中に起業した1社で監査法人在籍時の規定で一時廃業にした「アライブスピット(Alivespit)」にする予定です。「アライブス(Alive’s)」は「生きとし生けるものの」という意味で、「ピット(pit)」はF1のピットストップのイメージです。手がける範囲は当時より広くなりますが、ロゴマークやビジョンは変わらず、人や企業がより強い光で輝けるように、もしくは自分に合った色で輝けるように、チューンアップ、後押しできる会社にしたいと思っています。実は法人再設立前ですが、応援しているK-1の日菜太選手の入場時ガウンの右肩にAlivespitのロゴがすでに入ってたりします(笑)。MBA在学中に同期と起業したもう1社のプレミアムテキーラ輸入商社は、飲食店経営等に事業範囲を拡大しながら同期が順調に経営を続けているので、こちらも面白いことをたくさん仕掛けていきたいと思います。
篠原さんが最終的に目指している姿はどのような状態なのでしょうか?
篠原:学生時代にタイ・カンボジアの地雷除去活動支援等のNGO活動を通して「思いとビジネスマインドの両方がないと大きな社会課題は解決できない」と感じ、それがきっかけで”Make the World Better by Business”、「ビジネスで世界を変える」という人生のビジョンを掲げたので、そのビジョン実現が最終的な目標です。ビジネスの場以外では、大学・大学院での講演、JPXの起業体験プログラムなどの学生を対象とした活動、ちよだニャンとなる会での猫保護活動や各種自然保護活動など、ボランティア活動にも多く関与していますが、何事も思いだけではなくビジネスの視点、仕組み化して大規模に展開・持続可能な状態にするところまでを目指す意識を常に持ち、よりよい世界を作る支援ができればと考えています。
それにもう一つキーワードを加えるとしたら、常に新しいことをやっていきたいですね。SAPでも世界最年少でのプリンシパル昇格という経験をさせていただきましたし、デロイトでも戦略的なプライシングソリューションの日本展開という日本初の取り組みに参加させていただきましたが、1度きりの人生、どうせやるなら新しいものをどんどん仕掛けていきたいと思っています。
幅広い分野で能力を発揮していらっしゃる篠原さんですが、敢えてご自身の専門性を挙げるとしたら何になりますか?
篠原:仕事の領域という点では経営改革、特に戦略的なプライシング含む「価値訴求」が専門ですが、よりソフトな部分では“人一倍の好奇心と向上心を持っていること”が強みだと思っています。いろいろな視点で幅広い活動ができているのも、好奇心と向上心があるからこそなのかなと。あとは、数ある引き出しの中から面白いことが起こりそうなものを組み合わせて動ける反射神経、決断力、発想力でしょうか。
MBAの修士論文では危機時ではなく平時の変革のリーダーシップをテーマとしました。個人の視点では、現状を変えることが怖いという方もいらっしゃるかもしれませんが、本当の安定というのは“どんな環境変化が起こっても対応できる”状態だと思っているので、状況に応じて変化しながら常に自分の価値を発揮できる人の方が、結果として「安定」していると思いますし、想像以上の「イノベーション」も起きるのではないかと思っています。
大切なのは、選択肢を多く持って自分で決めてやりきること
篠原さんから見て、どのようなタイプの人がフリーランスに向いていると思いますか?
篠原:一言でいえば「自分で決めるのが好き」な人でしょうか。誰かに言われてやるのではなく、自分でジャッジして動くのが好き、ゼロから何をどうするかを決められることに楽しみを覚えられる人。向き不向きというより好みの世界だと思うのですが、そういうことを楽しめる人であれば、フリーランスとして働く方が楽しいのではないかと思います。
確かに、自分で決められる人というのは意外と少ないという印象があります。決断を楽しめるようになるにはどうすればいいのでしょうか?
篠原:小さなことでもいいので、自分で考え抜いて意思決定をする経験をどれだけ持てるかが大事だと思います。「買い物をする」でも「仕事を選ぶ」でもいいのですが、その時にどれだけ自分の軸を持ってジャッジできるか。それをきちんと積み重ねていくことで感覚もシビアになると思いますし、スピードも精度も上がると思います。続けていくことで仮に楽しめるようにはなれなくても、上手くはなるのではないでしょうか。
そういう意味では、起業もいきなり会社を辞めるのではなく週末起業からスタートするのもいいと思います。少しずつでも自分の目指したい方向に進むことで、視野が広がりますし、自分で意思決定しなければならない場面も増えるので。いずれにせよ、自分で決めてやりきるという経験をいかに積むかが大事だと思います。自分で決めて狙って行動したのであれば、仮に失敗しても後悔せず、次に進むことができるはず。これはキャリアの選択にも仕事の仕方にも通じる考え方なのではないかと思います。
ありがとうございます。では最後に、今後独立や起業を考えている方々へのメッセージをお願いします。
篠原:私にとっては、フリーランスになるというのはあくまで手段の一つで、部署異動や転職と同じような感覚でした。目標と現状のギャップを埋めるために課題があり、その課題を解決するために施策があるわけですが、独立するのも起業するのもその施策の中の一つだと思っています。大事なのは、なるべくたくさんの選択肢を持っておくこと、そしてその中で一番いいと思えるものを自分で選ぶ余裕を持っておくことだと思います。
心や身体を壊してまでやるべき仕事はこの世にないと思っているので、受け身を取れる状況だけは作っておいて、あとは「自分の人生だ」という意識を強く持って前に進んでいけばきっと良い結果に繋がるのではないかと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
「引き出しを増やし続け、常に半年後には別人になっていたい」、「将来“こんなはずじゃなかった”とは言いたくない、むしろ“こんなはずだった”を大きく超える面白いことをたくさん起こしていきたい」など、多くの名言が飛び出した今回のインタビュー。「やりたいことが多すぎてなかなか前に進まなくて・・・」と楽しそうにおっしゃる篠原さんの姿がとても印象的でした。
篠原さんは「フリーランスになるというのは、部署異動や転職と同列の選択肢の中の一つだった」とおっしゃっていましたが、同じように考える人はこれから更に増えていくのではないでしょうか。人生の岐路に立った人々が、それぞれにとって最良の働き方を選ぶことができる。そんな社会の実現に向け、みらいワークスはこれからも未来に向かって挑戦するビジネスパーソンを応援します。