「売上につながるブランディング」の追求により企業の成長を促進

作成日:2017年2月24日(金)
更新日:2018年6月13日(水)

海外生活での原体験から飛び込んだブランディングの道。その先にある実現したい世界とは?

「コンサルタントのワークスタイル」、今回のインタビューは佐々木綾さん。
本コーナー初の女性のコンサルタントでいらっしゃる佐々木さんは、一貫して企業のブランディングとマーケティングに携わってこられ、約1年前には株式会社Blueを設立して独立されました。主に海外から日本へのインバウンド事業のプロジェクトに関わっていらっしゃるそうですが、どのような経緯でブランティング、マーケティングの分野を志向され、そして現在はどのようなお仕事をなさっているのでしょうか。

佐々木 綾

今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント

大学卒業後、株式会社ブランド総合研究所に入社し、地域の特産物のブランディング等に従事。その後、ジャパン・マーケット・インテリジェンス株式会社(現GMOリサーチ株式会社)にて外資系企業の市場調査・分析及び戦略的ソリューションの提供を経験し、株式会社シー・アイ・エーへマーケティング・マネージャーとして転職。国内外の企業のブランディング及びリブランディング業務に携わると同時に、日本市場進出に関するプロジェクトや中国市場におけるリブランディング・プロジェクトなどを担当。「おしゃれなブランド」ではなく、しっかりお金を生み出すことのできる「独自性のあるブランド」をもっと日本に増やしたいという想いから、2016年1月に株式会社Blueを設立。 株式会社Blue:http://www.blue-branding.com//

佐々木 綾

高校時代の留学経験が原体験

-一貫してマーケティングとブランディングをご専門とされている佐々木さんですが、この道を選ばれた理由は何だったのでしょうか?

佐々木さん(以下、敬称略):最初のきっかけは高校時代のアメリカ留学に遡るのですが、トヨタやホンダの車が街にあふれ、ソニーやパナソニックの電化製品が身の回りにたくさんある環境であるにもかかわらず、それらが日本で作られているものだということを周りの10代のアメリカ人は全然知らなかったのです。それで、「自分たち日本人はマクドナルドとかケンタッキーがアメリカから来ていると知っているのに、なんでこの子たちは自分たちの身の回りにあるものが日本から来ていることを知らないのだろう」という気持ちを抱えたまま帰国したところ、大学生の時、『なぜみんなスターバックスに行きたがるのか?』という本でブランディングという概念に出会って、「私がやりたいのはこれだ!」と。

それから本格的にブランディングのことを勉強しはじめて、新卒で地域のブランディングをする会社を選んだのがキャリアの始まりです。当時から今に至るまでずっと、自分としてはブランディングが専門領域なのですが、ブランディングの仕事にはマーケティングも必ずついてきますし、マーケティングをするにはリサーチが必須ということで、結果的にこの3本柱でずっと仕事をしてきています。

-ブランディングとマーケティングとリサーチの関係性というのはどのように考えていらっしゃいますか?

佐々木:ひとことで言うと、ブランディングは「未来の会社の売上に貢献するためのイメージ戦略」、マーケティングは「現在のマーケット規模を拡大するための戦略」、リサーチは「現在を把握すると同時に未来を導くためのツール」であると考えています。ブランディングもマーケティングも、売上につながらなければ意味がありませんし、両者をうまくかけ合わせていかないと、どっちつかずになったり、片方だけで終わったりして、無駄な投資になってしまいます。そして、そうならないためには前提となるリサーチも絶対に必要です。そういった意味で、この3つは切っても切り離せない関係だと思います。

-なるほど。マーケティングとリサーチを切り分けて考えるというのは新しいですよね。

佐々木:おっしゃるとおりですね。正直なところ、マーケティングはリサーチをしなくてもできなくはないのです。ただ、だからこそ私は敢えて切り離しています。そうしないと、特に日本のお客様は、リサーチにお金をかけることを嫌がる傾向があるので。「自分たちのことは自分たちが一番よく分かっているからリサーチの必要はない」と言われることが非常に多いのです。

-それは日本ならではの反応なのでしょうか?

佐々木:そうだと思いますね。海外の企業の方はリサーチにお金をかけているところが多いと思います。日本にあるグローバル展開をしている企業は相当のコストをかけていて、マーケティングリサーチのための予算も部隊も持っているところが多いという印象があります。

たとえばある化粧品メーカーでは、広告を作る際、イメージは世界共通であっても、キャッチコピーは地域によって少しずつ変えているそうです。世界各地のマーケットに訴求できる色を出すのが目的だそうですが、そういった対応も、事前にしっかりリサーチしないと検討すらできないのです。

専門とする業界・業種は敢えて作らない

-得意にされているマーケットなどはありますか?

佐々木:よく聞かれるのですが、実はまったく決まっていないのです。こうお答えするとネガティブな捉え方をする方もいらっしゃるのですが、ひとつのマーケットのことしかわからない方がむしろネガティブなことなのではないかと私は思っています。今やひとつの業界・業種だけに特化するのではなく多様な事業を展開している大企業も多いですよね。例えばアップルにしても、パソコンだけを売っているわけではありません。そうなると、戦わなければならないフィールドはひとつではありませんし、ブランディングもマーケティングも幅広く対応できないと成長は見込めません。そういった意味でも、私はこの業種だけに特化しています、というスタンスではだめなのではないかなと思っています。それをやってしまうと日本の企業は生き残っていけない。

たとえばプジョーが最初は製粉業からスタートしたという話がいい例ですが、それと同じように、もともと違う業種から発展した企業というのも多いですよね。むしろそういった柔軟な考えを持てた企業だけが大きくなるのかもしれないと思うと、われわれコンサルタント側も同じように幅広い分野をカバーできないといけないなと思っています。

-確かに、ソニーも今やエンターテインメントと金融の会社になりましたね。あれもブランドが確立されていたからこその転換だったのかもしれませんね。

佐々木:そうですね。特にモノからサービスへの移行というのは一番難しい分野のひとつだと思います。この仕事をしていると、コンサルタントの私たちから見ると信じられないようなすごい技術を持っている企業さんが「いやいやこんな技術、マーケットは別に何とも思わないと思うよ」とおっしゃる場面によく遭遇します(笑)。日本人の謙虚な部分が出すぎているのか、自社の強みをわかっていらっしゃらないのか。そこを理解していただくのが意外と難しいのですが、でもそういう時にこそ、別の業界のこともわかっているコンサルタントが役に立つのではないかなと思っています。

-現在はどのようなプロジェクトに携わっていらっしゃるのでしょうか?

佐々木:インバウンドのプロジェクトが多いですね。意外に思われるかもしれないのですが、新しいテクノロジーを使った商品の中でも、特にファッション関連の商品の場合、「日本で受ければ見込みがある」と考えられているものが世界にはたくさんあって、日本のマーケットは世界の評価を見るためのパイロットとして使われるケースが非常に多いのです。最近はそういうファッション寄りのデジタルツールのプロジェクトのご相談などをいただいています。

やはり欧米の方々は日本のことをよくわかっていらっしゃらないので、偏った情報に基づいた偏った日本のイメージをもとにデザインやコミュニケーション手法を開発してしまうのです。でも、「海外から来たかっこいいものイコール素敵なものだ」というのは日本の消費者に多く見られる考え方のひとつなので、そういう意味で欧米の色も入れたほうがいいというアドバイスをしたり、ではどの要素が日本と掛け合わせられるのかという共通項を見つけたり、“日本人から見ると欧米系のかっこ良さに見えて、かつ海外では「なるほど、これが日本のクールなのか」というふうに捉えてもらえるデザインの落としどころはどこなのか”ということをディレクションしたり、というのが具体的な仕事です。

コンサルタントの本当の価値をあぶりだしたい

-独立はいつ頃から考えていらっしゃったのでしょうか?

佐々木:自分から積極的に「独立したい!」と思っていたというよりは、将来は双子の妹と一緒に何かやってほしいと昔から父に言われていた影響で独立を考えるようになったのですが、それでも正直、30代で独立するとは思っていませんでした。ただ、「広告寄りのブランディング」か「デザイン寄りのブランディング」という2つの道しかないように見える日本の市場に個人的に限界を感じていたことと、前職の社内で抱えていた解決しがたい課題や周りの方々からの勧めなども重なり、「いい機会だし、じゃあ独立しようかな」と気楽な感じで思いまして(笑)。

でも、今考えるといいタイミングだったと思います。ちゃんとしたブランディングとはどういうものかということを伝えていくのも非常に時間のかかる仕事なので、早いうちに始められたのはよかったかなと思いますね。

-独立されて大変なことや苦労されていることは何ですか?

佐々木:やはり資金面でしょうか。定期的にお仕事をいただければラッキーですが、そういうプロジェクトはそんなに多くないので、その点が一番厳しいですね。それもあって今、定期的にお金が入ってくるようなプラットフォームを作る構想を練っています。ある程度安定してきたら、コンサル業と2本柱でやっていきたいなと。

-プラットフォームとはどのようなものを考えられているのですか?

佐々木:私、コンサルティングはやはり高いと思いますよね(笑)。別にそれが悪いというわけではなく高くていいと思います、それだけの価値のあるものなので。ただ、そこを正しく評価できない人たちが行き詰まっている現状もあるのかなと。特に海外進出は今やもうコンサルを通さないと取り組めない時代です。そういった側面を考慮すると、コンサルタント抜きで海外のプロフェッショナルと繋がることができるようなBtoB寄りのネットワークが必要だと感じています。その結果、「やはり自分たちではこれが良いのか悪いのか判断できないね」という結論に至った段階でコンサルタントに頼んでもらえればいいのかなと。企業側も、そうやって実体験を通して必要性を感じて、初めてどのコンサルタントに依頼すればいいのかを検討できると思うので。

企業の方々にそういう経験をしていただけると、私たちが抱かれがちな「コンサルタントはうさんくさい」というイメージも少しは払しょくできるのかなという点にも密かに期待しています(笑)。

 

-本日はお忙しい中、貴重なお話ありがとうございました!

ずっと独立したいと思っていたというわけではなく、いろいろなタイミングが重なって「じゃあ独立してみるか」という比較的軽やかな気持ちで独立を決意したとおっしゃる佐々木さん。専門とする業界・業種を敢えて絞らないというスタンスや、コンサルタントを介さずに海外進出を可能にする仕組みを作りたいという展望からは、ご自身のコンサルタントとしてのプライドが垣間見えました。

このようにブランディングとマーケティングのスペシャリストである佐々木さんですが、それでも定期的にお仕事を取り続けるというのはなかなか難しいとのこと。挑戦したい事業の構想をお持ちのコンサルタントの方々が、一日でも早くその夢に向けた一歩を踏み出せるようなサポートを、これからもみらいワークスは行なっていきたいと考えています。