“Co Learning”で社会を変える! 二足の草鞋を履く斬新なワークスタイルで“挑戦しやすい社会”を目指す
“Co-Working”ならぬ“Co Learning”。そのまったく新しい概念に込めた思いとは?
「コンサルタントのワークスタイル」、今回のインタビューは後藤正樹さん。
コンサルティングファーム2社を経てフリーランスのコンサルタントとして独立した後、現在はベンチャー企業の社員でありながら起業家でもあるという新しいスタイルで仕事をしていらっしゃいます。2016年10月には神保町に“Co Learning Space”として“みらいけん(みらい研究所)”をオープンし、新しいことに一歩踏み出す社会人を応援する事業を展開する後藤さんに、これまでのキャリアや過去の失敗談、今後の事業展望など、様々なお話を伺ってきました。
後藤 正樹
今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント
東京大学文学部卒業後、ベイカレント・コンサルティング、ICMGの2社で経営コンサルタントとしての経験を積んだ後、独立。2012年8月に教育事業を手掛ける株式会社Dream-LINKを設立し、2016年10月には神保町に“Co Learning Space”として“みらいけん”をオープン。現在はデータ分析のベンチャー企業であるセカンドサイト株式会社のディレクターも兼務している。 株式会社Dream-LINK:http://www.dream-link.net/ みらいけん(みらい研究所):http://mirai-lab.org/ セカンドサイト株式会社:http://www.sxi.co.jp/
後藤 正樹
起業家とベンチャー企業の社員という二足の草鞋を履く斬新なワークスタイル
-社会人教育事業を手掛ける株式会社Dream-LINKの代表を務めていらっしゃる後藤さんですが、新卒の時はコンサル業界からキャリアをスタートさせたのですよね。
後藤さん(以下、敬称略):そうですね、新卒ではベイカレント・コンサルティングに就職しました。就活があまりうまくいかず、IBCSとベイカレントから内定をいただいたのですが、ベイカレントは面接官が魅力的であったことと、IBCSよりも社員の裾野が広くていろんな人と会えるのではないかという思いから選びました。
優秀な上司には恵まれていましたが、3年後に全社戦略を社員主導で策定することの大切さを感じ、そのサポートに重きを置くICMGに転職しました。その後ある人に「業務委託で仕事を出すから法人を作るように」と言われて独立して会社を設立しました。でも結局その仕事はなくなってしまったので、独立・起業当初は箱だけあって仕事はない状態だったのです。それで、アルバイトをしたり退職した会社のプロジェクトに入らせていただいたりと兼業しながら、フリーランスのコンサルタントとしても活動を始めました。
当時、大した経験や実績もない僕にいろんなプロジェクトを紹介してくださった方が、現在は独立してセカンドサイトという統計分析の会社を経営していらっしゃるのですが、そこにも立ち上げの時に誘っていただいて。そういう経緯もあって今、そこの社員もやっています。
-起業家でありながら、ベンチャー企業の社員でもあるということですね。こういった働き方を選んだ理由は何だったのでしょうか?
後藤:どちらも興味があり、自分自身として、やりたい事業だというのが前提です。セカンドサイトを選んだ理由は代表の加藤さんと一緒に仕事をしてみたかったというのが第一ですね。もう一つは、起業家として進めて行く教育事業が安定した収益をだせるようになるまでには時間がかかるだろうと思ったので、生活していく上でも固定給をいただけるのはありがたい話だったというのもありました。あとは、統計分析って今後当たり前の分野になっていくと思うので、そこにタッチできるっていうのはいい経験になるとも思いまして。
昨年、Airbnb(エアビーアンドビー)で部屋を貸していたのですが、そうするとC2Cのレビューがどんどん溜まっていきますよね。あれってすごく面白いと僕は思っています。これからスモールビジネスが広がっていくと、ああいうC2Cのレビューでその人の評価が決まって、それが新しい信用情報や仕事の評価とかその人の評価全部につながってくると思っています。そういう時にその大量のデータをどう扱うかっていうと、統計分析とか機械学習、人工知能っていうものは外せなくなってくるわけです。もともとそういう分野にビジネスを感じていたので、そこにダイレクトにタッチできるっていう意味でも、セカンドサイトへの参画は僕の中ですごく面白かったです。
-フリーコンサルタントにもいろんな方がいらっしゃいますけど、後藤さんのような働き方の方は珍しいですね。
後藤:そうですね。まぁ今はフリーコンサルタントですらなく正社員ですけどね(笑)。
僕は「ワークライフバランス」っていう言葉があんまり好きじゃなくて、「ライフ」しかないと思っています。なので、僕としては「ワーク」が2つあるっていう気もあんまりしてなくて、プライベートも含めた「ライフ」の中で自分が興味のあることの時間配分を考えながらやっている感じですね。
-社会人教育のビジネスはいつ頃からやりたいと思っていらっしゃったのでしょうか?
後藤:教育自体は大学に入った頃からずっとやりたいと思っていたのですが、学生の頃はビジネスのことも全然わからないし、とりあえず社会に出てみようと思って、他業界より成長が早いと言われていたコンサル業界を選びました。
2社目のICMGは、会社の強みをクライアントと一緒に考えて、そこからビジョンを立案して経営戦略に落とすコンサルティングをやっている会社になりますが、なぜそこに行きたかったかと言うと「考える主体はクライアントである」という考え方を持っているファームだったからなのです。外様のまま読まれない資料ばっかり作るようなコンサルタントにはなりたくなかったし、やっぱり組織のみんなで考えた戦略に則して仕事をする方が良いのではないかっていう思いも当時はありましたね。
しかし、実際にその形のコンサルティングをやってみると、結局クライアント企業の社員の方一人ひとりにやりたいことがない場合はいい結果を産めないし、仮にマネジメントクラスの人にやりたいことがあっても、メンバークラスにそういうものがなかったら浸透していかないというのを課題として感じていました。そこで、やっぱり個々人が夢や目標を持つことが大事なんじゃないか、そこをサポートするのが僕のやりたいことだなと思って今に至っています。
“2本目の坂”を見つける場としての“Co Learning Space”の立ち上げ
- 今後は後藤さんのように起業家と正社員という二足の草鞋を履いてやりたいことを実現するといったライフワークを追求する方が増えてくると思いますが、やりたいことと稼ぐための仕事との関係性についてはどのように思われますか?
後藤:そもそも僕は、ライフワークとして何がやりたいかが見つかっていない人の方が多いなっていう印象があって。今ライフワークという言葉を使いましたけど、個人的には結局「ライフ」として何をやりたいかだと思っています。僕の言葉で言えば、「自分は人生の中で何を達成したいのだろう?」「何が好きなのだろう?」みたいなことを明確化できていない人の方が圧倒的に多い。だから、自分のやっていることが“やりたいこと”なのか”稼ぐための仕事“なのかも厳密にはわかっていない人の方が多いのではないかと思っています。
ただ、すごく嫌なことでも、ある目的のために必要だからやっているということが明確なら、一定以上ハッピーだと思います。だから必ずしもそこを一致させる必要はないっていうのが僕の持論です。
-2016年10月に神保町に“Co Learning Space”として“みらいけん”をオープンされていますが、そこに込めた思いを教えてください。
後藤:もともと「みんなが目標や夢を持っていて、各人の目標や夢がつながっていく」というのが僕の目指すべき社会であって、Dream-LINKという会社もそれを達成するための箱だと考えています。その中でもみらいけん「みらい研究所」は、社会人が何か新しいことをする時に、なんとなく今のスキルじゃ不安だとか、とにかく一歩踏み出すのが不安だとか、そういった不安を解消するための場になればいいなと思っています。
アウトプットにつながらないのは、やっぱり不安だからだと思うのですが、一方で社会人になるとみんなアウトプットを求めたがるじゃないですか。コワーキングスペースに行っても、「じゃあ、あなたのビジネスって儲かりますか?」とか、「意味は何ですか?」とか。でもそこに行く前に、「勉強だからとりあえずやってみなよ」というフェーズが僕は絶対あると思っています。
とりあえず一歩踏み出してみるとか、内省を重ねるとか、そういうフェーズを僕は“Learning”っていう言葉で表現しているのですが、「みらいけん」はそういった活動をサポートできる場にしたいという僕の思いを、“Co Learning Space”っていう名前に込めています。
別に明確に目標として定まっていなくても、こういうのをやりたいんだよね、ぐらいで良いと思います。みんなで持ち寄ったアイデアがいろんな人にシェアされていって、誰かが「そういう考え方もあるのか」「そういう実現の仕方もあるのか」と思う、そういうゆるい感じでいいと思っています。
-最初の一歩を踏み出せない背景には、単純に怖いとか知識やスキルが足りないとか、いろんな理由があると思うのですが、どのような理由の方が多いと思われますか?
後藤:僕の勝手な想像ですけど、楽観的な人というか、なんとなくこのまま生きられると思っている人ってすごく多いと思います。危機意識もなく、会社員のまま40年ぐらい生きてればなんとなくそのまま死ねるのではないかと思っている人って圧倒的に多い。踏み出せないのは、踏み出す必要がないからだと思います。でも日本の経済はもう危ないし、そもそも国にお金がないので保障系もどんどんシュリンクして、これからもっと生きづらくなっていくと思っています。
先日みらいけんで“伝道師になろう”という自分の好きなことを伝道しよう!というイベントを開催したのですが、その中で都内初の民間人校長として杉並区の和田中学校の校長になられた藤原和博さんの『坂の上の坂』っていう本を紹介しました。要約すると、『坂の上の雲』が書かれた日露戦争の時代はみんな50歳ぐらいで死んだじゃないか、頑張って仕事をしたり戦争へ行ったりして50年生きて死ねたからこそ坂の上に雲が見えたのだ、でも今は人生80年でそれでは死ねないのだから、今登っている坂の上にもう一つ坂を作れるように30代ぐらいから準備をしましょう、という本なのです。新しいことを、何でもいいから準備しようと。セカンドキャリアと言ってもいいのかもしれないのですが、そういう2本目の坂をどうやって気軽に作っていけるかが大事だと思います。
僕はさらに最近じゃもう50歳までだって最初の坂を登れるかわからない世の中になっていると思うので、もっと早くから準備しようよ、しかもやるなら効率よくやった方がいいし、一人でやるよりいろんな人と一緒に楽しんでできた方が楽しいよ、というような坂の作り方を提案できたらいいなと思っています。たくさんの人がいろんなものを交換しながら2本目の坂を見つけられるような場所として、「みらいけん」が機能するようになればうれしいですね。
最初の一歩を踏み出しやすい社会を目指して
-後藤さんにとっての、今までで一番の失敗体験を教えてください。
後藤:一番しんどかったのは転職した2社目の時でしたね。1社目でそれなりにクライアントにも気に入ってもらえていたし、コンサルタントとしては結構いけるのではないかという自信を持って転職したのですが、それが通用しなかったですね。
僕の中でコンサルタントって、自分で考えて答えを創り出すコンサルタントと、クライアントの持っている答えをどう達成するかというのを求めていくコンサルタントの2種類なんです。優秀な戦略コンサルとは自分で答えを考える人だし、マッキンゼーなどだと「お前はどう考えるか」というのが皆さんしみついていらっしゃると思うんですが、それが身についている人とついていない人ではバリューが圧倒的に違う。僕が1社目で得た能力は後者だったのですが、2社目では前者の力を求められていたのです。
転職当初は、前職のやり方のままとりあえずクライアントが求めていることをどう頑張るかというコンサルテーションをしていたので、「正解は探すものではなくて自分で作らなきゃいけないのだ」「僕がどう考えるかが大事なのだ」と気づくまではすごく怒られたし、ダメ出しもされました。でも上司の話にも納得できなくて、そのまま仕事をしているからアウトプットもすごくしょぼい、だから怒られる、でも納得できない、その繰り返しで会社に行きたくなくなって。あれが僕の一番の失敗ですね。
-その状態からどうやって立ち直ったのですか?
後藤:当時は母親が助けてくれて。「納得できないのだったら、あんたが正しいことを証明すればいい。その努力もしてないのに文句言うな」みたいな感じではっぱをかけてくれたのがきっかけですね。それからは、自分の意見を言い切るためにいろんなことをちゃんと調べるようになって、そこから改めて自信を持つようになりました。あれは僕の中では本当に大きな転換でしたね。
-「みらいけん」の今後の展望を是非教えてください。
後藤:コワーキングスペースと違い、「人を集めるための求心力をいかに作っていけるか」というのがチャレンジだと思っています。「ここに来ればいろんな人に会えます」というのをどう作っていくか。そういうものがあれば、僕が常にここにいなくても場が成り立つとも思うので、1年以内に形を作っていきたいなと思っています。
具体的な集客数という点では、月間会員の損益分岐点が50人くらいなので、そこは目指したいなと。神保町で働いている人たちを巻き込んでいくことがポイントなので、まずは飲食営業の許可を取って今カフェに行っている人たちを引っ張ってきて、あとはメディアにも取り上げてもらったり、近所でビラ配りをしたりっていうプロモーションもやっていきたいですね。
-“Co Learning”という概念が広まっていった先にどんな社会を期待していらっしゃいますか?
後藤:とにかく僕は、一歩目がもっと簡単に踏み出せたらいいなと思っています。新しいことを始めてみようという時にもっと気軽さがあればいいなと。“Co Learning”という概念とか“Co Learning Space”が広がっていくってことは、僕の目指す社会に近づいているっていうことだと思うので、そうなればいいなと思いますね。
「みらいけん」に行けば、いろんな生き方に触れられて、いろんな人と交流できて、これくらいなら自分にもできるかもしれないなと思える、そういう場として挑戦する人の後押しができたらいいですよね。
-本日はお忙しい中、貴重なお話ありがとうございました!
起業家でありながら、ベンチャー企業の社員でもある後藤さん。
「ワーク」と「ライフ」のバランスを取っているのではなく「ライフ」の中でやりたいことをやっているだけだという考え方や、“2本目の坂”を気軽に作れる場を用意したいという想いなど、生きることを前向きに楽しむ姿勢が伝わってくる後藤さんのお話に、「こんな生き方があるのか」「こんな考え方があるのか」と思った方も多いのではないかと思います。
「新しいことを始めてみたい」「一歩目を踏み出してみたい」そう思っている方は一度“みらいけん”を訪れてみてはいかがでしょうか。みらいワークスも、新しい働き方や新しい生き方を模索しているあなたを応援していきます。