フリーランス保護新法の施行でどう変わる?下請法との違いもわかりやすく解説
最終更新日:2025/06/06
作成日:2024/02/19
- ・「フリーランス保護新法ってどんな法案?いつから始まるの?」
- ・「下請法との違いは何?」
という疑問をお持ちではありませんか?
本記事では、疑問の解決のために、以下の内容について解説します。
- ・フリーランス保護新法の詳細
- ・フリーランスガイドラインについて
- ・フリーランス保護新法の対象、違反に伴う罰則
フリーランスとして活動する上で気になる、クライアントとのトラブル対策に、ぜひ本記事をお役立てください。
目次
■フリーランス保護新法の概要
(1)フリーランス保護新法が制定された背景
(2)フリーランス保護新法と下請法の違い
■フリーランス保護新法の対象
(1)フリーランスの定義
(2)対象の取引
■フリーランス保護新法の具体的な内容
(1)書面の作成
(2)支払期日
(3)募集情報
(4)ハラスメント対策
(5)禁止事項の遵守
■フリーランスガイドラインの内容とは?
(1)独占禁止法や下請法との関係
(2)労働関係法令との関係性
フリーランス保護新法の概要

フリーランス保護新法とは、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の通称です。「フリーランス・事業者間取引適正化等法」や「フリーランス新法」、「フリーランス保護法」と呼ばれることもあります。
この法律は、フリーランスとして安心して働ける環境の整備のために策定され、2023年4月28日に国会で可決・成立、5月12日に公布されました。正式に施行されたのは、2024年11月1日です。
フリーランスと発注事業者間の取引適正化、およびフリーランスの就業環境整備を主な目的としています。
フリーランス保護新法が制定された背景
フリーランス保護新法が制定された背景には、働き方の多様化やフリーランス特有のトラブルの増加があります。
フリーランスは業務委託を受ける際、発注事業者に比べて立場が弱く、「報酬未払い」や「不当な契約解除」などの問題が発生しやすいのが現状です。
内閣官房が実施した「フリーランス実態調査結果」によると、11.8%が報酬の支払遅延や未払いを、8.5%が一方的な減額を経験しています。
さらに、厚生労働省や中小企業庁の相談窓口「フリーランス・トラブル110番」では、報酬支払いに関する多くの相談が寄せられています。
こうした問題を解決するために新法が成立し、フリーランスが安心して働ける環境の整備が進められています。
フリーランス保護新法と下請法の違い
フリーランス保護新法と下請法は、適用対象となる取引の範囲が異なります。
下請法で規制対象となるのは、以下の条件に該当する取引のみです。
【取引内容】
- ・物品の製造・修理委託
- ・情報成果物の作成委託
- ・役務の提供委託
【資本金】
<取引内容が物品の製造・修理委託、一部の情報成果物の作成委託、役務の提供委託の場合>
- ・親事業者:3億円超、下請事業者:3億円以下
- ・親事業者:1,000万円超〜3億円以下、下請事業者:1,000万円以下
※一部の情報成果物の作成委託、役務の提供委託:プログラムの作成、運送など
<取引内容が情報成果物の作成委託、役務の提供委託の場合>
- ・親事業者:5,000万円超、下請事業者:5,000万円以下
- ・親事業者:1,000万円超〜5,000万円以下、下請事業者:1,000万円以下
フリーランスに業務委託を行う発注事業者の多くは、資本金が1,000万円以下であり、トラブルが発生した際に下請法を適用できない点が問題でした。
一方、フリーランス保護新法ではすべての事業者が規制対象となり、親事業者の資本金にかかわらず適用されます。
フリーランス保護新法の施行により、より多くのフリーランスと発注事業者間の問題・トラブルの解決が期待されています。
フリーランス保護新法の対象

フリーランス保護新法は、下請法のように資本金の条件はなく、すべてのフリーランスに適用できます。
しかし、「フリーランスの定義は何?」「具体的にどのような取引が対象なの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
本章ではフリーランス保護新法における「フリーランス」の定義や、具体的な取引の例を紹介します。
フリーランスの定義
フリーランスガイドライン上の「フリーランス」の定義は、以下の通りです。
"実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者"
引用:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン
「実店舗」とは、専用の事務所や店舗を指し、自宅の一部や共有型のコワーキングスペース、あるいはインターネット上の店舗は含まれません。
「雇人なし」は、自分ひとり、あるいは自分と同居の親族のみで個人事業をしている状況を指します。
この定義を満たす「フリーランス」であれば、業務委託契約だけでなく、消費者へ物品・サービスの販売を行う人も適用対象となります。
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対象の取引
フリーランス保護新法の適用対象となるのは、フリーランスと発注事業者間の「業務委託」にかかる事業者間取引です。
フリーランス保護新法における「業務委託」の定義は以下の通りです。
"この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。
-
・事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること
-
・事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)"
なお、この定義を満たしていても、取引が「業務委託」に該当しない場合、対象となりません。例えば、販売契約、借金、リース契約、などは、本法の適用対象ではありません。
フリーランス保護新法の具体的な内容

「フリーランス保護新法が施行され、どのような変化が起きたのか?」「具体的に適用されるのはどんな場面なのか?」と気になっている方も多いでしょう。
本章では、フリーランス保護新法の具体的な内容やポイントを解説します。また、発注事業者が、フリーランスに対してどのような対応を求められるのかについても紹介します。
書面の作成
発注事業者がフリーランスに業務委託を行う際は、書面やメール等で取引条件を明示することが求められます。
従来、業務委託契約は書面を作成しなくても成立するものでした。しかし、フリーランス保護新法の施行により、発注事業者はフリーランスへ以下のような条件を明示することが義務付けられます。
- ・委託する業務の内容
- ・報酬額、支払方法、支払期日
- ・発注事業者と受託するフリーランスの名称
- ・業務委託契約の成立日
- ・業務委託契約の完了予定日
- ・業務を行ったり納品したりする場所
- ・納品後に検査をする場合は、その完了予定日
書類、メール、チャットなど形に残るもので業務委託の契約内容を確認できれば、発注事業者とフリーランスの認識の違いを防止できます。
「契約時はこういう約束だったはずだ」「聞いていた話と違う」といったトラブルも回避できるでしょう。
支払期日
フリーランス保護新法では、発注事業者がフリーランスへ報酬を支払う期日についても義務づけています。
発注事業者は成果物等が納品された日から数えて60日以内に、報酬の支払期日を設定し、期日までに支払う必要があります。
もともと下請法には、「60日ルール」としてこのような支払期日が定められていました。しかし、フリーランス保護新法の施行により、下請法適用外の事業者も「60日ルール」と同じように、報酬の支払期日設定と期日内の支払いが求められます。
発注事業者へ報酬の支払期日設定を法的に義務付けることで、フリーランスの報酬における不当な支払いの先延ばしや、未払いを防止できるようになったのです。
万が一報酬が支払われなかった場合も、フリーランス側が法的手段をとることができます。
募集情報
フリーランス保護新法の施行後、発注事業者がインターネット等にフリーランスの業務委託案件の情報を掲載する際は、以下のルールを遵守する必要があります。
- ・虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならないこと
- ・内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと
引用:フリーランスの取引に関する新しい法律が11⽉にスタート!
近年は、クラウドソーシングサイトや求人サイトなどでフリーランスの業務委託の募集をかける企業も多くあります。
しかし、募集の記載内容と実際の契約内容が異なるトラブルが多発しているため、フリーランス保護新法で規制対象となりました。
募集期間中に契約内容の変更が変わった場合は、すみやかに記載情報の更新をする必要があります。発注事業者側が「虚偽ではなく、昔の情報のままになっていた」と弁解をしても、法律違反とみなされる可能性があります。
ハラスメント対策
フリーランス保護新法では、発注事業者側にハラスメント行為に対する対策が義務付けられます。
近年は「パワーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」などが問題になることが多く、相談窓口の設置など対策を強化している企業が増えています。
フリーランス保護新法施行後は、社員だけでなく業務委託先のフリーランスに対してもハラスメント対策が必要です。
取引中のフリーランスもハラスメントの相談窓口が使えるよう整備する、被害時の相談先や担当者を契約時に伝えるなどの対応をとらなければなりません。
禁止事項の遵守
フリーランス保護新法上では、発注事業者がフリーランスへ継続的業務委託をした場合に、法律に定める行為をしてはならないとされています。
具体的には、納品・成果物に対する不当な受領拒否や返品、やり直しの強制、報酬の減額、買いたたきなどです。
個人であるフリーランスと企業・組織である発注事業者の間では、交渉力や立場の差を利用したトラブルが多くあります。
フリーランス保護新法によって発注事業者の不正を規制し、フリーランスの就業環境を整備することが期待されています。
フリーランス保護新法の違反に伴う罰則

フリーランス保護新法によれば、公正取引委員会や中小企業庁長官、および厚生労働大臣は、発注事業者の違反行為に対して、以下の権利を持っています。
- ・助言
- ・指導
- ・報告徴収・立入検査
- ・勧告
- ・公表
- ・命令
発注事業者がこれらの立入検査の拒否や命令違反をした場合は、50万円以下の罰金が科せられます。
また、違反行為をしたのが法人である場合、違反者個人と法人の両方が罰せられる「法人両罰」規定もあります。
参照:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」第5章 罰則
フリーランスガイドラインの内容とは?

2021年3月、フリーランス保護新法の制定に先立ち、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が共同で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下、フリーランスガイドライン)を策定しました。
このガイドラインは、フリーランスが公正な取引環境の中で業務を行えるようにすることを目的としています。フリーランスガイドラインの内容を見ていきましょう。
独占禁止法や下請法との関係
ガイドラインでは、フリーランスと発注事業者間の取引が、独占禁止法や下請法の規定に基づき適切に行われるべきことを明確化しています。
特に、以下の点が重要です。
- ・独占禁止法:発注事業者が市場の公正な競争を損なう行為(優越的地位の濫用、不当な条件の押し付けなど)を行わないこと
- ・下請法:発注事業者が、フリーランスに対して適切な報酬支払いや、契約内容を明示すること
これにより、フリーランスが発注事業者と公正な条件で取引を行うための基盤が整備されます。
労働関係法令との関係性
通常、フリーランスは雇用契約を伴わないため、労働基準法や労働安全衛生法などの労働関係法令の適用対象外です。しかし、以下の場合には「雇用」と判断される可能性があります。
- ・実質的に発注事業者の指揮命令下で業務を行っている場合
- ・契約形態や業務内容にかかわらず、働き方の実態が労働者に近いと判断される場合
この適用基準により、特定のケースでは、フリーランスが労働者と同様の法的保護を受ける可能性があることが示されています。
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まとめ

フリーランス保護新法とは、フリーランスが安心して働ける環境の整備を目的に策定された法律です。
フリーランス保護新法の施行により、業務委託におけるルールが厳格化され、フリーランスがより安心して働ける環境が整備されていくでしょう。
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