インサイドセールスとは?種類と注目を集める背景や活用事例

作成日:2022/01/27

近年、インサイドセールスに注力する企業が増えています。インサイドセールスが広まった背景にはコロナ禍の影響と、ほかにも要因があります。また、インサイドセールスの業務は多岐にわたり、大きく2つに分類できます。導入時には、業務内容とそれぞれの特徴をつかんだ上で戦略を立てましょう。インサイドセールス活用の成功事例とともに解説します。

 

 

目次

■インサイドセールスとは

 

■インサイドセールスの種類とは
(1)BDR:新規開拓型営業型とは
(2)SDR:反響型営業型とは

 

■インサイドセールスが広がった7つの背景
(1)人材確保が困難なため
(2)ビジネスの競争が激化したため
(3)サブスクリプションサービスが増えたため
(4)情報の取り扱いが変化したため
(5)感染症拡大への対策のため
(6)コミュニケーションツールの開発が進んだため
(7)働き方改革への対応のため

 

■インサイドセールスとほかの営業スタイルとの違い
(1)従来型の営業手法との違い
(2)フィールドセールスとの違い
(3)テレフォンアポインターとの違い

 

■インサイドセールス導入の成功事例3選
(1)株式会社カオナビ
(2)株式会社i-plug
(3)ウイングアーク1st株式会社

 

■インサイドセールス導入で顧客と社員の満足度アップにつなげよう

 

インサイドセールスとは

インサイドセールスとフィールドセールス同席の会議

 

インサイドセールスとは、営業の課題解決を目的に、複数のスタッフが電話やメール、SNS、Web会議システムを駆使しながら、顧客と非対面でコミュニケーションをおこなう営業手法です。内勤型営業とも呼ばれています。非対面型営業の施策をインサイドセールスという場合もありますし、担当部門や担当者をインサイドセールスと呼ぶ場合もあります。

 

一方で相手先を直接訪問する営業手法は、外勤型営業あるいはフィールドセールスと呼ばれています。営業担当者が見込み客の選定やアプローチ、アポイント獲得、訪問、受注、フォローまでを一貫して担当する、従来の営業スタイルのことです。

 

フィールドセールスは、顧客や取引に対して、「一人の担当者や一部署が責任を持てる」というメリットがあるものの、「アプローチできる数に限界がある」「成約率の高い顧客に絞った営業ができない」というデメリットがあります。

 

 

インサイドセールスの種類

インサイドセールスの種類は2種類

 


インサイドセールスは大きく「BDR(新規開拓型)」と「SDR(反響型)」に分けられます。それぞれの特徴を理解し、最適な手法を選べば効率的な営業が実現できるでしょう。

(1)BDR:新規開拓型営業型とは

「BDR」とは「Business Development Representative」の略称で、アウトバウンド型あるいは新規開拓型といわれています。

 

「BDR(新規開拓型営業型)」は自社で設定したターゲットに、電話やメール、DMなどを使いながら新規開拓をおこなう営業手法です。自社から積極的に働きかけることで、見込み客にアプローチします。

(2)SDR:反響型営業型とは

「SDR」とは「Sales Development Representative」の略称で、インバウンド型あるいは反響型と呼ばれています。

 

「SDR(反響型営業型)」はWebサイトや問合せフォームなどを通じて、見込み客に関心を持ってもらい誘導する営業手法です。すでにニーズを示している見込み客に能動的に営業を行うスタイルなのでスピード感が重視されます。

 

 

インサイドセールスが広がった7つの背景

社会問題を憂うビジネスマン

 

インサイドセールスが急速に広まった背景や要因から、現在のビジネスシーンではどのような課題があるのか推測できます。そこには、コロナウイルス感染拡大の影響のほか、日本が抱える社会問題や時流の変化があるようです。インサイドセールスが広まった背景・要因を7つ紹介します。

 

(1)人材確保が困難なため

従来の営業手法は、企業が営業担当者を多数確保し、ひたすら営業活動をさせるスタイルでした。しかし、現在は少子高齢化や若年層の人材不足により、多くの企業が人材確保に苦戦しています。営業に適切な人材確保の困難や採用コストの増大といった課題があるからです 

 

インサイドセールスを導入すれば、ファーストアプローチやSDRアクションからの取りまとめ、営業先の情報整理、カスタマーサポートなどはインサイドセールス、対面での営業や取引先・顧客への訪問はフィールドセールスなど分業が可能です

 

IT技術やツールの発展のおかげで、インサイドセールス部門のスタッフには出社の義務は生じないケースは少なくありません。電話やインターネット回線があれば、取引相手と対面する必要が生じない業務の遂行には、支障がないからです。

 

そのため、いわゆる「眠れる人材」とよばれる育児や介護中の人、都市部から離れた地方に住む人々でも、インサイドセールススタッフとして大手企業で活躍するケースが見られるようになってきました。インサイドセールスは、人員のリソースに不安のある企業、人材不足から事業存続の危機に陥っている企業にとっては有効な手段なのです。

(2)ビジネスの競争が激化したため

現在、テクノロジーの進化や画期的なサービス・商品の登場により、あらゆる業種において競争が激しくなっています。また、投資家・ユーザー双方からの期待値もあがり、企業は成果を出し続けなければなりません。

 

従来のような、1人の営業担当者が、新規開拓・営業・受注・フォローまで全ての営業活動をおこない、さらに報告書類もまとめるようなスタイルでは、当然時間的にも体力的にも、限界が生じます。狭く深いコミュニケーションを取れますが、多様化するビジネスシーンで成果を出し続けることはさまざまな面で厳しいでしょう。

 

インサイドセールスを導入し、営業活動を分業することで、各役割の担当者に責任を振り分けられます。一人一人の負担の軽減につながり、集中すべき業務に絞って、より生産性の高い営業活動を実現につながります。また、距離のハードルを超え、遠方への営業活動も可能です。

(3)サブスクリプションサービスが増えたため

新たな料金形態として、サブスクリプションサービスが登場しました。サブスクリプションサービスとは、ソフトウェアやクラウドサービスを中心に「月額〇〇円使い放題」といった料金形態を提案するタイプのサービスです。

 

サブスクリプションサービスは比較的安価で、導入や解約がしやすい傾向があります。営業コストが掛かる対面型営業よりは、カスタマーサービスやインバウンドへの対応、潜在顧客へのメール・電話での営業などのインサイドセールスの充実に適しているといわれています。

 

実際、サブスクリプションサービスを提供している企業の多くは、インサイドセールスを導入しています

(4)情報の取り扱いが変化したため

近年、顧客情報は機密情報として以前と比べるとより厳重に取り扱われています。それにより従来の営業手法では顧客情報が扱えない場面が出てきました。また、インターネットの普及により、個人の顧客であっても自ら企業や商品・サービスについて調べられる時代になりました。

 

1企業内であっても顧客についての情報交換が容易ではなくなったこと、同時に顧客がリーチできる企業や製品の情報が変化したというわけです。担当者が出向いてフィールドセールスを行うよりも、SDR型のインサイドセールスを導入し顧客や取引先からの問い合わせに、手厚く対応するスタイルが求められているといえるでしょう。

(5)感染症拡大への対策のため

2020年初頭から世界的なコロナウイルス感染症の拡大により、出社や対面型営業を控え、テレワークを導入する企業が増えました。それに伴い、訪問型の営業スタイルより、電話やオンライン会議ツールを用いた営業が好まれるようになり、実際、こうしたインサイドセールスのみでも十分な収益を上げている企業は少なくありません。

 

自社スタッフの身の安全や安心を確保できることから、福利厚生といった意味でも在宅ワークが見直されています。インサイドセールスは、在宅ワークでも通用する営業スタイルなので感染症拡大下の状況では、最適といえるでしょう。

(6)コミュニケーションツールの開発やDX化が進んだため

メールやSNS・チャットツール・オンライン会議ツール、などさまざまな非対面型のコミュニケーションツールはビジネスシーンで欠かせないものとなりました。また、地方の中堅都市などでもDX化がすすみ、全国的にもインサイドセールスを導入しやすい環境が整備されつつあります。オンラインで契約書を取り交わせるオンライン契約管理システムの台頭などもインサイドセールスが普及した背景の一つといえるでしょう。

 

こうしたツールを用いることで、取引先や顧客と予定や目的をすり合わせた上で時間を共有できるため、双方にとってスケジュールが組みやすかったり、アピール範囲を絞った商談ができたりといった利点があります。商談確約前のインサイドセールス段階で相手の反応から確度を判断し、戦略を練ることも可能です。

(7)働き方改革への対応のため

インサイドセールスは、政府が掲げる「働き方改革」にも一役買っています。場所や、場合によっては時間の制約を受けずに働くこともできるため、通勤や長時間勤務が困難なシチュエーションの人、地方在住の人でも活躍の機会が与えられます。

 

また、インサイドセールス人材は出社が必ずしも必要ではなくなることで家庭で過ごす時間が増え、ライフワークバランスが取りやすくなる面もあります。相対的に見てフィールドセールス人材の労働条件とバランスをとる必要はありますが、結果として、一人一人の負担軽減につながり、働き方改革への実現に近づくでしょう。

 

 

インサイドセールスとほかの営業スタイルとの違い

インサイドセールス営業スタイル

 

インサイドセールスのメリットばかりを紹介してきましたが、コロナ前であれば「インサイドセールスだけで営業成果が上がるケースはまれ」と考えられていました。実際、インサイドセールスは、「従来型の営業手法」「フィールドセールス」「テレフォンアポインター」と組み合わせて戦略を練るのが効果的です。 

 

それぞれの営業スタイルの特徴やインサイドセールスと組み合わせることで補えあえる弱点などを解説します。

(1)従来型の営業手法との違い

従来型の営業手法とは、フィールドセールスのみを指すのではなく、一人、もしくは数人の営業担当者が見込み客の選定、電話やメールでのアプローチ、アポイント獲得、訪問、受注、アフターフォローといった一連のプロセスをすべて担当する営業手法を指しています。インサイドセールスは、こうした営業プロセスの内勤型でも補える部分だけを担うポジションです。

 

従来型の営業手法では、「アプローチできる顧客に数的にも距離的にも限界がある」「確度の高い顧客に集中して営業できない」といったデメリットがあったでしょう。

 

インサイドセールスを導入し分業することで、数をこなし、遠隔へのアプローチも可能です。営業担当者は、確度の高い商談のみに注力できるようになるでしょう

(2)フィールドセールスとの違い

フィールドセールスは、対面で見込み客や顧客とコミュニケーションをとるのが使命でインサイドセールスとは反対の営業活動を主に担っています。難度の高い交渉や深い対話、などに適しています。また、日本のビジネスシーンでは直接訪問することが長く主流だったため、「訪問が当然」と考える保守的な文化の企業や顧客もいます。

 

ただし、フィールドセールスには移動に時間や交通費がかかり、フィールドセールス担当者の疲弊にも直結します。

 

一方、インサイドセールスは、移動せずに非対面でコミュニケーションが取れるため、経費や営業担当者の負担軽減がはかれます。場面や商談の内容・金額に応じて、インサイドセールスとフィールドセールスの使い分けが求められるでしょう。

(3)テレフォンアポインターとの違い

テレフォンアポインターのおもな目的はアポイントの獲得です。「架電リストをベースにアポイントを何件獲得したのか」が成果測定の指標となります。

 

一方、インサイドセールスにはアポイント獲得も大事な仕事の一つとして任される場合がありますが、売上金額や契約更新率、顧客満足度、いわゆるカスタマーサクセスなども成果指標の対象です。インサイドセールスは、アポイントが取れるかどうかだけではなく、継続的な関係構築や案件創出、ヒアリングや情報提供など多岐に渡るというわけです。

 

インサイドセールスにアポイント獲得までさせるのか、別にテレフォンアポインターの部門を作るのかには、企業の考え方によって違いがあります。

 

 

インサイドセールス導入企業の事例3選

インサイドセールス導入成功した企業

 

インサイドセールスを導入している企業の具体的な事例を紹介しましょう。ここでは「株式会社カオナビ」「株式会社i-plug」「ウイングアーク1st株式会社」以上の3社について解説します

(1)株式会社カオナビ

「株式会社カオナビ」は、クラウド上で人材を管理するシステム「カオナビ」を提供している企業です。本社は東京都港区虎ノ門にあり、2008年に設立されました(※1)。

 

カオナビでは、セールス組織を「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つのプロセスに分けています。

 

カオナビのインサイドセールスは、マーケティング部門が掘り起こした見込み客に対してナーチャリングと商談化した顧客のヒアリングまでを担当しています。その後、訪問や継続的な関係構築が必要な業務はフィールドサービスが引き継ぎます。

 

カオナビのインサイドセールスは、テレアポ的な役割ではなく司令塔的な役割を担っているのです。

(2)株式会社i-plug

「株式会社i-plug(アイプラグ)」は、新卒採用に特化した「OfferBox」というダイレクトリクルーティングサービスを提供しています。本社は大阪市淀川区にあり、2012年4月に設立されました(※2)。

 

i-plugのインサイドセールス部門は、専門企業からアウトソーシングしています。以前は、自社メンバーでインサイドセールスを行っていましたが、期待したようなリードもアポも獲得できず苦戦したそうです。社内で検討を重ね、インサイドセールスを外部に委ねることでその後の成果に繋がりました。

 

アウトソーシングを機に改善したポイントは、量より質にこだわった点です。相手先が関心を持つようなコンテンツを一斉配信し、適切なタイミングでアプローチをする営業スタイルにしたのです。自分たちから無理に距離を縮めるのではなく、相手にとって圧迫感のない距離感を保った上で提案につなげています。

(3)ウイングアーク1st株式会社

「ウイングアーク1st株式会社」は、企業を対象にした帳票製品・BI製品・クラウドサービスを提供している企業です。創業は2004年3月で、本社は東京都港区六本木にあります(※3)。

 

ウイングアーク1stでは、アポ取得代行に特化したアウトソーシングサービス「APO-HUNTER」を活用し、インサイドセールス部門をまかなっています。「APO-HUNTER」とは、ウイングアーク1stと資本業務提携契約を結ぶ「SALES ROBOTICS株式会社(旧商号:株式会社WEIC)」が提供するインサイドセールスサービスです。

 

そのため「APO-HUNTER」にウイングアーク1stが提供しているビジネス向けダッシュボード「MotionBoard Cloud」が標準バンドルされています。

 

 

インサイドセールス導入で顧客と社員の満足度アップにつなげよう

インサイドセールスを活用でアップしたKPI

 

インサイドセールスは、従来の営業スタイルをフィールドセールス・インサイドセールスで分業して、顧客や取引先とより広く深い関係を構築するために必要な部門だと考えるのが良いでしょう。結果として、企業の人材確保や働き方改革にもつながります。

 

インサイドセールスを導入するときは、どのような分野を担わせるのがよいか、もしくはフィールドワークスの担当者から引き継げる業務はどこか、などの見極めが必要です。インサイドセールスの強味を生かして、営業成績だけでなく、顧客や社員の満足度のアップにつなげましょう。

 

<参照>

※1:https://www.kaonavi.jp/company/

※2:https://i-plug.co.jp/company/info/

※3:https://www.wingarc.com/company/data.html

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

 

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