<プロ監修>証券出身コンサルのニーズ増!金融人材の転職独立事情

最終更新日:2023/12/26
作成日:2021/11/25

 

近年、証券出身や銀行出身などの経歴を持つ金融系フリーランスコンサルタントのニーズが急増しています。しかし金融業界は独立する人材が少なく、ニーズに対して供給が追いついていない状況です。

転職や独立などのキャリアチェンジを考える方にとって、これは大きなチャンス。やりたい仕事にチャレンジしたり、今の働き方を見直すには絶好の機会と言えます。とはいえ「具体的にどんな案件があるのか」「証券出身というキャリアで独立できるのか」などが気になる方も多いかもしれません。しかし実は、証券出身などのキャリアだけでも大きなアドバンテージになっているのです。

そこで今回は、なぜ最近金融系フリーランスコンサルの求人が増えているのか、その背景とあわせて具体的な案件例や年収例、キャリアプランなどの最新事情を解説します。

 

目次

■証券出身など金融系フリーランスコンサルタントのニーズが急増する背景
(1)IT企業など異業種の金融事業参入が急増
(2)競争激化に伴い、金融業界ではIT活用が課題
(3)法改正によって、今後さらにビジネスの垣根がなくなる

 

■証券出身人材がコンサルタントとして独立した場合の案件・収入例
(1)業務は「システム系」「業務系」「企画系」に分かれる
(2)金融系フリーランスコンサルタントの働き方
(3)金融系フリーランスコンサルタントとして独立した場合の年収

 

■金融系フリーランスコンサルタント案件の事例
(1)証券業界の実例
(2)生命保険業界の実例
(3)異業種参入の実例

 

■金融出身者がコンサルタントとして独立するメリットとデメリット
メリット1:新しいキャリアを築ける
メリット2:自分のやりたい仕事にチャレンジできる
メリット3:会社に頼らない働き方を実現できる
デメリット1:正社員に戻りにくい傾向がある
デメリット2:正社員との違いに戸惑うこともある

 

■金融出身のフリーランスコンサルタントに求められるスキルと経験とは
(1)金融機関での実務経験だけでも強みとなる
(2)ミドルバック業務経験のニーズが高まっている
(3)金融業界で求められるスキルは「調整力」と「自走力」

 

■まとめ

 

※本記事は金融関連プロジェクトを専門に扱う弊社コーディネーターが監修しています。

 

 

証券出身など金融系フリーランスコンサルタントのニーズが急増する背景

証券出身など金融系フリーランスコンサルタントのニーズが急増する背景_1

 

業種の参入法改正海外進出などこれまでにない変化が起こっている金融業界。しかしこの業界では、こうした変化に対応できる人材が少ないのが現実です。こうした中、新たな戦力としてフリーランスのコンサルタントに注目が集まっています。

ここでは金融系フリーランスコンサルタントの求人が急増する理由について、3つのポイントでまとめました。

(1)IT企業など異業種の金融事業参入が急増

日本の金融業界では、異業種からの新規参入が進んでいます。いち早く金融事業に参入した楽天グループも、すでに全体売上の3割以上がFinTech事業(※1)。楽天のように本業で顧客を囲い込んでから金融事業へ参入するパターンが増えています。

 

・メルカリ
2017年スマホ決済サービスを扱う子会社「メルペイ」を設立。後払い決済などのサービスで利用者を伸ばし、今後は決済以外にも取り組むと言います(※2)。

 

・LINE
2018年野村証券グループと提携して「LINE証券」を立ち上げました。さらにみずほ銀行と共同で新銀行の設立を進めています(※3)。

 

・丸井
百貨店を運営する丸井グループも、2018年に子会社「Tsumiki証券」を設立。自社クレジッドカード保持者向けに、ポイントで投信を購入できるサービスなどを提供しています(※4)。

 

こうした他業種から金融事業へ参入する際、大きな課題が人材不足

社内に金融のプロはいないため採用をかけますが、社員採用となると時間がかかりすぎビジネスのスピードが落ちてしまうという問題が起こります。

そこで金融のノウハウや情報を持つ人材として、フリーランスコンサルタントの求人が増えているわけです。

(2)競争激化に伴い、金融業界ではIT活用が課題

新規参入増加で競争が激しくなる中、既存の金融機関が直面している課題IT活用です。

例えば三菱UFJ銀行では、2021年7月に業種やグループの垣根を超えた提携を発表。今後はスマホ対応サービスなど、FinTechに本腰を入れると言われています(※5)。

しかし従来の金融系企業には、FinTechを扱える人材が少ないのも事実。

こうなると社内メンバーだけでは新規事業や新サービス開発を進めるのは困難です。一方、ネットベンチャー企業と協業するとなると、カルチャーが大きく異なるためトラブルになることもあるようです。

そこでプロジェクトをスムーズに進める橋渡し役として、フリーランスコンサルタントに注目が集まっています。

フリーランスコンサルタントは多くのプロジェクトを経験しているため柔軟な対応が可能。金融業界出身なら業界独自の情報やルールにも精通しているため、橋渡し役に最適なのです。

(3)法改正によって、今後さらにビジネスの垣根がなくなる

金融業界のトピックといえば、法改正により2021年11月に始まった「金融サービス仲介業」の創設ではないでしょうか。

これによって、例えば保険会社が証券サービスを始めるなど、業界の垣根がますますなくなっていくことが予想されます。こうした動きに対応するには、社内の人材だけでは当然足りません。つまり金融系コンサルタントの需要は、今後も引き続き高い状況が続くと考えられます。

 

 

証券出身人材がコンサルタントとして独立した場合の案件・収入例

証券出身人材がコンサルタントとして独立した場合の案件・収入例_2

 

ンサルタントとしてのキャリアを考えたとき、まず気になるのが「具体的にどんな仕事があるのか」「収入や働き方はどう変わるのか」といった2つではないでしょうか。ここでは具体的な業務内容や働き方、年収について解説します。

(1)業務は「システム系」「業務系」「企画系」に分かれる

金融系フリーランスコンサルタントの求人は、大きく「システム系」「業務系」「企画系」という3種類に分かれます。

 

・システム系
証券取引システムのような金融業界独自のシステム開発・改修に関わるのがシステム系案件。こういったシステム系案件でも金融独自のルールがからむため専門知識は必須。また現場とコミュニケーションをとる機会も多くあります。そこで証券出身・銀行出身といった金融の知識を持ち、現場経験もある人材のニーズが高まっています。

最近多いのが、WEBサイトやスマートフォンアプリの開発案件。新たな技術を取り入れる機会も多く、スキルと経験を積むことができます。

 

・業務系
業務効率化やサービス改善、デジタル化推進などのプロジェクトを担うのが業務系案件。特に最近は「ミドルバック」業務関連の案件が増えています。ミドルバックは、フロント(営業)とバックオフィスの中間に位置する業務。リスクマネジメント(企業のコンプライアンスや不正取引のチェック)のほか、届け出対応など営業部門のサポートも担います。

融機関が取り扱うサービスや商品が増えていること、リスクマネジメントの重要性が増していることで、さらにミドルバック部門が注目されています。

 

・企画系
FinTech企業や金融へ新規参入する企業に多いのが、新規事業や新サービス開発といった企画系の案件。従来の金融系案件と違い、自身の意見やアイデアをサービスに反映できるのがポイントです。

(2)金融系フリーランスコンサルタントの働き方

金融系フリーランスのコンサルタントの求人では、「プロジェクト型」「社員代替型」という2つのパターンの働き方があります。

 

・プロジェクト型
一定のプロジェクト期間を設け、特定の課題を解決するプロジェクト型。新規事業の企画やシステム開発などの案件ではプロジェクト型が主流です。プロジェクト期間は案件で異なり、半年のものもあれば数年かけて取り組むものもあります。

プロジェクト型はさまざまな案件を経験できるため、スキルアップしやすいのが特徴。またプロジェクトごとに異なるメンバーが集まるため、人脈を広げやすい点もメリットでしょう。

 

・社員代替型
プロジェクト単位ではなく、社員が本来担うべき通常業務を外部人材へ委託するパターン。金融系企業の求人で多いのは、実は社員代替え型です。

他の業界と比べて人材の流動化が進んでいない金融系企業では、「即戦力を見つけづらい」「正社員がすぐに採用できない」といった事情があります。以前は外部人材活用に積極的ではない企業が多かったのですが、人材不足によってフリーランスコンサルタントへ委託するケースが増えてきました。

コンサルタントにとっては、安定して業務を継続できる、社員に近いポジションで業務ができるといった点がメリットです。

(3)金融系フリーランスコンサルタントとして独立した場合の年収

業務内容やスキル・経験によって大きく異なりますが、一般的な金融系フリーランスコンサルタントの年収は1,000万円~2,000万円のレンジ。

「証券システムの専門知識・スキルがある」というように、金融系の中でもさらに専門性が高いと年収1,500万円~2,000万円に上がります。

なお、プロジェクト型の方が、社員代替型と比べて単価は高めに設定されています。

 

 

金融系フリーランスコンサルタント案件の事例

金融系フリーランスコンサルタント案件の事例_3

 

社が支援した実績をもとに、証券業界・生命保険業界・異業種参入(FinTech)という3パターンの実例をご紹介します(※弊社が取り扱った実案件をもとにご紹介していますが、企業名や求人名は実際のものとは異なります)。

(1)証券業界の実例

依頼元:証券会社
業務内容:新規事業の企画・開発

外部人材を募集した理由:ネットベンチャーと協業で新規事業を進めていたものの、進め方やスピード感の違いでプロジェクトが頓挫。また社内にITやプロジェクトマネジメントスキルを持つ人材がいない課題もあり、外部人材の活用を決断しました。

支援内容:外資系証券出身で、FinTech事業経験のあるコンサルタントが参画。ベンチャー企業側とのやりとりのほか、社内調整や要件整理を担当。新会社の設立や当局対応、社内インフラ整備なども支援した結果、プロジェクトの立て直しに成功しました。

(2)生命保険業界の実例

頼元:生命保険会社
業務内容:システム業務支援

外部人材を募集した理由:新システム稼働後マンパワー不足となり、採用を決断。しかしこれまでの人材は短期が多く、入れ変わる度に社内教育が必要という課題があったと言います。効率化を図るため、年単位での長期参画が可能で即戦力となる外部人材を募集しました。

 

取り組み内容:金融業界経験のあるフリーランスコンサルタントが社員代替型で参画。IT戦略策定や予算管理のほか、中期経営計画や人材育成計画などシステム部門の中核業務を担当しました。

(3)異業種参入の実例

依頼元:ヘルスケア事業会社
業務内容:新規事業(FinTech事業)立ち上げ

外部人材を募集した理由:既存事業で得た顧客層へ向けたFinTech事業を企画。しかし金融系の知識・経験を持つ人材が社内には不在。採用をかけたもののヘルスケア企業だったため、金融に強い人材が採用できなかったという事情がありました。

取り組み内容:銀行出身で経営企画経験のあるフリーランスコンサルタントが参画。ビジネスモデルの構築において、業法・業務・システムの金融業界の知識とスキルを活用。新アプリの開発を実現しました。

 

 

金融出身者がコンサルタントとして独立するメリットとデメリット

金融出身者がコンサルタントとして独立するメリットとデメリット_4

 

際に独立して活躍している金融系コンサルタントからは、さまざまなメリットがあったという声を耳にします。しかし当然ですがメリットだけではありません。ここでは独立を考える上で知っておきたいメリットとデメリットをまとめました。

メリット1:新しいキャリアを築ける

証券会社などに勤務していれば、自然と「どう出世するか」という組織ありきのキャリアプランに絞られます。しかしコンサルタントとして独立した場合、より幅広いキャリアを目指すことができます。専門性を高めて企業の顧問になったり、自らベンチャーを起業したりすることも夢ではありません。

また1つの組織の中で働くより多種多様な人と関わるため、人脈や情報が次々と広がっていきます。交流を通じて、自分でも想定していないキャリアに出会える可能性もあります。

メリット2:自分のやりたい仕事にチャレンジできる

金融系企業で若手となると、組織の都合もあり自分のやりたいことにチャレンジできない悩みを持つ方が多いようです。

しかし独立すれば、自分がやりたい仕事を選べるようになります。「新規事業の開発に関わりたい」「ミドルバックに特化した仕事がしたい」というような希望を叶えるには、独立するのが近道と言えます。

メリット3:会社に頼らない働き方を実現できる

金融業界でも競争が進む今、大手であっても安泰とは限りません。若手のときに独立して自分のスキルと経験を磨けば、会社に頼らないキャリアプランも可能です。

現在は金融系フリーランスコンサルタントのニーズが高く、証券出身や銀行出身といった経歴を強みに独立しやすい状況。さらに金融業界では独立する人が少ないため、独立後に競合が少ないのもメリットと言えます。

金融業界は、多様な働き方に対応していない組織が多いのが現状。しかし独立すれば「子育てする時間をもっと取りたい」「本業とは別の仕事で副業を始めたい」など、自分のライフスタイルに合わせた働き方を実現しやすくなります。

デメリット1:正社員に戻りにくい傾向がある

金融業界では、新卒として組織で育て上げる文化が根強くあります。そのため一旦フリーランスになると、正社員として戻るのが難しいというデメリットがあります。

しかしネット系金融機関やFinTech事業会社など、証券出身者を正社員として採用する企業も増えています。転職先を従来の金融機関に限定しなければ、さまざまな求人があるでしょう。

デメリット2:正社員との違いに戸惑うこともある

金融系に限ったことではありませんが、フリーランスは正社員とさまざまな点で違いがあります。フリーランスは固定給与が毎月もらえるわけではありませんし、充実した福利厚生もありません。ローンが組みづらくなることもあり得ます。さらにフリーランスとして働くとなると、本業以外にも営業活動や経理作業を自分でこなす必要があります。

一方で、自分次第でどんどん可能性を広げられるのがフリーランス。

例えば正社員より年収アップを目指したり、よりやりがいのある仕事を探したりすることも可能。また営業や経理といった仕事を自分で行なうことで、経営者として成長できる面もあります。安定性の面ではデメリットのあるフリーランスですが、その分正社員より速いスピードで成長できるのも事実です。

 

 

金融出身のフリーランスコンサルタントに求められるスキルと経験とは

金融出身のフリーランスコンサルタントに求められるスキルと経験とは_5

 

すぐではなくても近い将来の転職や独立を考えるなら、金融系フリーランスコンサルタントに求められるスキルや経験も把握しておきたいところ。ここでは求められるスキルと経験について、最新事情をご紹介します。

(1)金融機関での実務経験だけでも強みとなる

金融業界は、他の業界と比べて専門性が高いのが特徴。さらにコンプライアンスが厳しい、業法をおさえておかなければならないなど金融業界ならではのルールや作法もあります。

他の業界から金融業界へシフトするハードルが高いため、証券出身や銀行出身などの経歴自体が大きな強み。実際に弊社クライアントのほとんどが、求人において「金融業界での実務経験」を要件に挙げています。

(2)ミドルバック業務経験のニーズが高まっている

ンサルの独立というと、営業などフロント経験が重視されるイメージがあるかもしれません。しかし最近重視されているのはミドルバック業務経験ミドルバック業務は、異業種が金融事業に参入する際に必須ですが、ノウハウを持たない企業が多くどうしても外部人材に頼らざるを得ません。

その一方でミドルバック業務経験を持つ人材は転職や独立する方が少なく、ニーズが高いわりに人材が足りていません。今のうちからミドルバック業務を経験しておけば、将来転職や独立の際有利になると考えられます。

(3)金融業界で求められるスキルは「調整力」と「自走力」

金融系プロジェクトは法的なチェックが多く、各部門との細かい調整を担うケースが多くあります。そこでさまざまな部門の間に立って、スムーズにコミュニケーションできる調整力が求められます。

また金融系人材は比較的受け身で仕事をする方が多いこともあり、自らプロジェクトを推進できる人材が重宝されます。こうしたスキルを磨くには、若手のうちからさまざまな種類のプロジェクトを経験しておくことがポイントです。

 

 

まとめ

まとめ_6

 

金融系企業に勤める方は「新しいキャリアに関心はあるけれど、コンサルタントとして独立するには経歴が足りないのでは」と考えている方も多いようです。

しかし金融業界が劇的に変化している中、金融系フリーコンサルタントの求人はこれまでにないほど増しています。将来の独立を考えるなら、今のうちから情報収集など動き出したいところです。

金融系企業に勤め続ければ、ある程度の安定を得られるかもしれません。しかしキャリアは限られ成長しづらいのも事実。特に若手の方は、安定をとるのか、自分の成長を目指すのか、ぜひ一度検討することをおすすめします。

また最近はフリーランスコンサルタントを取り巻く環境も変わってきました。弊社のように、フリーランスの方に特化した支援サービスを手掛けるところも増えています。無料で情報のサービスも多いので、この機会に情報収集からはじめてみてはいかがでしょうか。

 

<参照>
※1:https://www.businessinsider.jp/post-189355
※2:https://newspicks.com/news/2841335/body/
※3:https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1307977.html
※4:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002525.000003860.html
※5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD282XX0Y1A720C2000000/

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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