【2027年問題とは】SAPコンサルタントは2027年以降どうなる?将来性や求人数について考察
最終更新日:2021/01/08
作成日:2020/10/29
統合基幹業務システム「ERP」のソフトウェアにて、世界トップのシェアを誇る保守期限が2025年から2027年に延長されたSAPの「2027年問題」。2027年問題解消以降のSAP求人の推移が気になります。そこでSAP ERPにおける「2027年問題」を解説するとともに、2027年以降SAPコンサルタントのキャリアや年収がどうなるのか、気になる将来性について探っていきます!
目次
■SAPとSAPコンサルタントに求められる真価
(1)SAPコンサルタントの仕事は新規導入サポートがメイン
(2)スキルや経験を積めば上流過程から関わることも
(3)SAPコンサルタントが持つべき責務
■SAPコンサルの将来性~2027年問題~
(1)SAPの2027年問題とは?
(2)HANA移行プロジェクト増加でンサルタントのニーズも急増
(3)SAPではない他社ERP導入企業が増える可能性も?
(4)中小企業に向けた新たな展開も始めているSAP。将来性は期待大
(5)SAPコンサルタント求人を探すなら今
■SAPコンサルタントという仕事の魅力はどこにあるのか
(1)大手企業とパートナーシップを築くチャンス
(2)上流コンサルになるためには
(3)SAPコンサルタントの2027年以降のキャリア
■SAPコンサルタントの年収レンジと所有スキルの関係を解説
(1)SAP認定資格とその他資格をうまく組み合わせ、効果倍増を期待
(2)1,000万円を超えるレベルを目指すなら
※本コラムは、2021年1月08日に「2027年問題によるSAPコンサルタントの将来性は?」を再構成したものです。
SAPとSAPコンサルタントに求められる真価
(1)SAPコンサルタントの仕事は新規導入サポートがメイン
SAPはERP製品で世界的なシェアを誇る、ドイツのソフトウェアメーカー。ERP(Enterprise Resource Planning)とは、日本では一般的に「統合基幹業務システム」のことを指します。SAP製品はあらゆる企業に必要な会計や物流、販売、人事データなどを一元化。リアルタイムな経営分析を可能としたことでERP製品において圧倒的なシェアを獲得しました。
ただしSAP ERP導入にあたっては、企業ごとのカスタマイズが必要。そこでSAP ERP導入に必要とされる職種がSAPコンサルタントです。SAPコンサルタントはERP導入企業に対して、業務分析や改善提案なども含めた導入をサポート。導入後も実際に業務改善が図れているかをチェックして改善提案も行います。
まっさらな状態でのERP導入というケースはあまりなく、実際にはすでに企業固有の会計システムや販売管理システムが運用されていることがほとんどのようです。既存データをスムーズにSAP のERP製品へ移行させるには、専門知識が求められます。
あわせてSAPのコンサルティングで必要なのが、企業の内情も含め既存システムを精査分析する能力。データベーステーブルのカスタマイズやモジュールの適用などのシステムカスタマイズ業務も含め、ITエンジニアに投げる前にコンサルティングの時点で副次的に行なえるスキルが求められるでしょう。
(2)スキルや経験を積めば上流過程から関わることも
より高度なスキルを持つSAPコンサルタントなら、さらに上流のビジネスコンサルティングから参加するケースもあります。企業経営の中核に入り、組織マネジメントから企業のパートナーとなるためには、ITスキルのみならず経営の専門知識も必要。簡単な道ではありませんが、キャリアによって幅広いフィールドで活躍することも可能です。
(3)SAPコンサルタントが持つべき責務
SAPコンサルタントは、ERP導入においてクライアントの意向を深く理解してシステムの機能を活かすことが求められます。クライアントが現在運用しているシステムを合理化し、経営の効率化を図るのが目的。そのため既存業務の分析も欠かせません。コストだけを考えれば、SAPのERP製品をそのまま使用するのが一番安く導入できるのは事実です。企業は相当のコストをかけてERP導入やカスタマイズを行なうため、それに見合う成果がSAPコンサルタントには求められるというわけです。
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SAPコンサルの将来性~2027年問題~
(1)SAPの2027年問題とは?
SAPコンサルタントの将来性に大きな影響を及ぼすのが、SAPの「2027年問題」。当初SAP社は「SAP ERP(ECC6.0)」の保守期限を2025年としたため、「2025年問題」と言われていました。しかしその後2020年2月、SAPは保守期限を2年延長して保守期限を2027年にすることを発表。そのため現在は「2027年問題」と呼ばれています。日本だけでも導入企業数は約2,000社と言われるECC6.0。これらの企業が2027年までに移行などの対応を迫られるため、多数のメディアでこの2027年問題は取り上げられています。
(2)HANA移行プロジェクト増加でコンサルタントのニーズも急増
2027年で保守期限が切れた後も、ECC6.0を使い続けることはできます。とはいえ保守がないため、万が一システム障害などが起こってしまうと業務システム全体が止まる可能性もあります。そこでECC6.0を利用している企業には、2つの選択肢があります。
1.SAPの新しいERPソフトウェア「SAP S/4HANA」に移行する
2.SAP社ではない他社のERP導入に踏み切る
同じSAPなので1のSAP HANA移行を選択すれば問題ないように見えますが、実はちょっと違います。実は「SAP HANA」はそれ以前のバージョンとは大きく仕様が異なり、別製品と考えるべきと語るメディアもあります。
つまりSAP HANA移行を選んだ場合でも、相当の時間をかけて取り組まなければなりません。そこで懸念されているのがSAP人材の不足。2027年に向けて一斉に移行すれば、プロジェクトに欠かせないSAPコンサルタントが大幅に不足することになります。このSAP人材の不足という課題に対応するため、SAP社の日本法人であるSAPジャパンでは、2019年時点で「今後5年で数千人規模のSAPコンサルタントを育成する」という方針を打ち出しています(※1)。
つまり2027年問題によってSAP HANA移行案件が急増するため、国内でもSAP製品の知識と経験を持つSAPコンサルタントのニーズが急速に高まることは間違いありません。特に「SAP HANA」について精通しているSAPコンサルタントは重宝されるはずです。こうしたSAP人材のニーズ急増に伴い、スキルの高いSAP人材は報酬も上がる可能性が高いでしょう。
(3)SAPではない他社ERP導入企業が増える可能性も?
一方であまりに「SAP HANA」が旧製品と仕様が違うため、SAP製品ではなく他社のERP製品に乗り換える企業が増えることも考えられます。そのため将来的にはSAPのシェアが下がると予想する人もいるのです。「SAP HANA」にはさまざまなメリットがある一方、従来のSAP製品で可能だった他社DB(データベース)の利用ができないといった問題もあるためです。
しかしSAP社では、「SAP HANA」の導入数が順調に伸びていることを強調しています。SAP社によれば、2020年時点で世界の1万3800社以上で「SAP HANA」が導入済みで、今後も数千社で導入が進んでいると言います(※2)。
また保守期限が2年伸びたことで、より時間をかけて「SAP HANA」へ移行できるようになった、という見方もあります(一方で2年間の延長では足りないという声もあり、SAPでは2030年まで保守を延長できる有料サービスも提供する予定)。こうした状況を踏まえると、現時点では2027年以降もSAPのシェアが急速に低下するとは考えにくいのではないでしょうか。2027年以降も、SAPコンサルタントのニーズは継続することが予想されます。
(4)中小企業に向けた新たな展開も始めているSAP。将来性は期待大
SAPコンサルタントに限りませんが、パッケージソフトに関連するコンサルタントの将来性を考える上で、注目すべきはやはりシェアでしょう。
この点SAPは全世界で高いシェアを占め、日本国内でも安定したシェアを誇ります。さらにSAPは大企業のみならず、中小企業に向けた新たな展開も始めています。
2017年からは、SAPジャパンは中堅・中小企業向け市場に新たなビジネス戦略を打ち出しました。従来の直販を主としたモデルにもメスを入れ、特に中小企業向けのパートナービジネスの強化に注力する姿勢を見せています。これにより新たなマーケットが開拓されつつあります。
この中小企業向けの展開は、ERPのクラウド化が大きく影響していると言われています。パッケージ導入には高額な初期投資がかかりますが、クラウド化により初期投資が低く抑えられるようになります。そのためERPマーケットが中小企業にも広がっているのです。つまりコンサルタントとしては、大企業に加えて今後は中小企業向けのプロジェクトも増える算段となります。
(5)SAPコンサルタント求人を探すなら
ニーズの高いSAP人材が高額な案件を探すなら、専門にマッチングを行なっている会社へ人材登録し、参入可能なSAP案件を探すことをおすすめします。こうしたマッチングプラットフォームを利用すれば、フリーランスのコンサルタントやエンジニアが、大企業のSAP案件の情報を得ることも可能です。
SAPコンサルタントという仕事の魅力はどこにあるのか
(1)大手企業とパートナーシップを築くチャンス
SAPコンサルタントの仕事は、企業の経営課題の分析とITシステムによる解決です。システム要件の定義や設計から、実際の開発まで一貫してマネジメントを行なうのが最大のやりがいと言えるでしょう。コミュニケーションスキルも求められますし、論理的思考能力も要求されます。
金融機関など寸分の狂いも許されない業界でもシステム再編の動きが相次いでいるため、国内外企業を含め、名指しで指名されるくらいのコンサルタントを目指したいものです。日本でも圧倒的なシェア数なので、SAPコンサルタントの求人案件は常に存在しますし、高額年収案件など条件の良い案件もあります。
またSAPを導入する企業は中小企業まで広がりを見せているものの、やはり大手企業が中心のため、大企業の経営陣とパートナーシップを築ける機会にもなります。ビジネスの最前線を走る大企業へソリューションを提供するというのは、やりがいある仕事と言えるでしょう。
(2)上流コンサルになるためには
SAPコンサルは、クライアントが競争力をつけ、経営資源を的確にコントロールできるようになることが最大の目的。スキルの高いSAPコンサルタントは経営の内部に入る場合もありますし、上流の工程から関わることも多いようです。
クライアント企業の管理環境を把握し、システム導入後も成果をチェックしながら随時メンテナンスを施していきます。まさに経営の一部に参画するのと同等と言えるでしょう。クライアント企業のビジネスの変化に合わせて随時カスタマイズを行ない、適切なバージョンアップを実行する必要があります。つまりパートナー企業と常に二人三脚で経営課題を解決する姿勢が必要です。
(3)SAPコンサルタントの2027年以降のキャリア
SAPコンサルタントのキャリアを考える上で気になるのが、「2027年問題が終わった後はどうなるのか?」ということではないでしょうか。SAP製品の新規導入が2027年に向けて集中するため、それ以降SAP製品の新規導入は減少することも考えられます。とはいえSAP製品の導入済企業には、その後も保守運用に関わるSAP人材が求められます。そのためSAPコンサルタントの求人は、2027年以降もコンスタントにあると予想できます。
なおSAP製品に限らず、どのベンダーにおいても将来のシェアがどうなるかはわかりません。SAPコンサルタントとしては、もちろんSAP製品に特化したスキルや経験が重要です。とはいえそれだけではなく、「会計分野に強い」というように得意分野やスキルがあれば、将来他社製品を扱うプロジェクトにも応用できるはずです。SAPコンサルタントとしてSAP製品の知識を磨くとともに、自ら得意分野について学ぶモチベーションを持つことが求められます。
SAPコンサルタントの年収レンジと所有スキルの関係を解説
(1)SAP認定資格とその他資格をうまく組み合わせ、効果倍増を期待
やりがいあるSAPコンサルタントの仕事ですが、平均年収にはかなり幅があります。レンジとしては年収500万円、600万円あたりから、高額な方では1,200万円、1,500万円というケースも。これだけの差が出るのには、年収レンジと所有スキルとの関係が挙げられます。
会社に雇用される場合は給与水準にもよりますので一概に言えませんが、同じ職種でありながらどういった点で差が出るかは理解しておきたいところです。
年収レンジと所有スキルの関係を段階的に解説しましょう。
まずSAPコンサルの仕事をするなら、SAP資格の取得が必要です。ただ資格を有しているだけであれば、年収500万円~600万円あたりがスタートになるでしょう。その後いくつかSAP導入プロジェクトを経験することで、年収レンジも700万円前後に上がることが期待できます。そこからチームリーダーなどの立場で実務経験を重ねることで、年収レンジも900万円あたりが見えて来ます。それ以上を目指すなら、数多くのプロジェクトをマネージャーの立場で成功させ、実績を積むことで年収1,200万円の高収入を得られる可能性もあるでしょう。
さらにSAP以外の資格や認定を取得することで、よりキャリアアップにつながります。多岐にわたる仕事の中で資格を取得することは大変ですが、SAP認定資格とその他の資格をうまく組み合わせることで効果は倍増します。
例えば会計認定資格やPMI PMP資格、公認会計士資格などを組み合わせたり、SAPテクノロジー認定資格とITIL資格などを組み合わせたりするケースが考えられます。得意とする分野を絞り込むことで、その道のプロフェッショナルとなることが可能です。
(2)1,000万円を超えるレベルを目指すなら
1,000万円を大きく超える年収を得たい場合には、単にSAP製品の知識を持っている、実績があるというだけでは難しくなります。高額年収を実現するコンサルタントの特徴は、複数の領域をこなせるマルチなスキルがあるか、逆に特定の領域に関してかなり深い専門知識を持つかになります。
例えばIT知識は当然として、会計スキル、販売スキル、ロジスティックスキルなどを保有した上でマネジメントができる人材や、SAP HANAなど最新知識や希少領域の専門知識を持つ人材が挙げられます。
またプロジェクトマネジメントのスキルがあることは大きなアドバンテージ。クライアントとの交渉やベンダーの管理を含めて、プロジェクトを任せられる人材は高評価となるでしょう。また外国語のスキルを持っていれば、グローバル企業の大規模案件に関わる機会も増え年収アップにつながる可能性もあります。
つまり単にSAP製品の知識を持っているだけでは、高年収を狙うのは難しいと言えます。ただIT関連職種の中では、SAPコンサルタントは中長期でのキャリアパスを描きやすい職種だと言われています。コンサルティングファームやベンダー、事業会社でのシステム企画といったポジションでも求人が一定数存在します。これもSAPコンサルタントならではの特徴です。
SAPは、現在ERPの中で世界トップシェアを誇るパッケージソフト。2027年問題によって人材不足が予想される中、SAP人材のニーズは右肩上がりとなっています。また2027年以降も新規導入数は落ち着くものの、SAP導入済み企業の案件はコンスタントにあることが見込まれます。
SAPコンサルタントは企業の業務プロセス見直しや経営改善、業務改善に携わることができるやりがいのある仕事です。最新資格を持つことは転職や独立にもつながりやすく、実際にフリーランスで活躍するSAPコンサルタントも多くなってきました。さらに専門知識を活かし、ビジネスの根幹に関わるコンサル案件で活躍するプロフェッショナル人材が増えることが予想されます。
<参照>
※1:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/01901/
※2:https://it.impress.co.jp/articles/-/19249
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)