カスタマージャーニーマップとは?作り方やおすすめツールを紹介
最新更新日:2025/07/15
作成日:2017/11/22
サービス設計やアプリケーション開発現場で今注目を集めている「ユーザーエクスペリエンス」(UX=ユーザー体験)。
ユーザーエクスペリエンスの向上策として、顧客の行動・心理を把握するツールのひとつが「カスタマージャーニーマップ」です。最近では、さまざまな分野でカスタマージャーニーマップの活用が進んでいます。
例えば2016年に出版された書籍「The Customer Journey」では、全日空やレクサス(トヨタ自動車)などの国内企業が、カスタマージャーニーマップ活用事例として紹介されています。
今回は、カスタマージャーニーマップの基礎知識や具体例、作り方などをまとめました。
カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップは、顧客がサービスを利用するときのプロセスを時系列でまとめた図のこと。旅行地図に見立てて「カスタマージャーニーマップ」と呼ばれます。
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動や心理状態を可視化するための資料。顧客への理解を深めることで、ユーザーエクスペリエンス向上につながります。
カスタマージャーニーマップの具体例
次に、カスターマージャーニーマップの具体例を見ていきましょう。
具体例1.民泊サービス「Aribnb」のカスタマージャーニーマップ
日本でも最近PRに力を入れているAirbnb。このカスタマージャーニーマップでは、友人と海外旅行の計画を立てる日本人という設定で作成されています。
サービス利用時のフェーズごとに行動や思考、感情が整理されています。図で可視化することで、顧客がつまづきやすいポイントが把握できます。
具体例2.鉄道会社「Rail Europe」のカスタマージャーニーマップ
コンサルティング会社Adaptive Pathによるカスタマージャーニーマップ。鉄道の乗車体験を表しています。
英語版でやや項目が複雑なため一見すると見づらいのですが、顧客の行動とともに「THINKINIG」や「FEELING」といった項目で感情面の動きもまとめています。
カスタマージャーニーマップのメリット
続いて、カスタマージャーニーマップを作成するメリットを紹介します。
1. 顧客の行動・心理をイメージしながら、問題点の洗い出しができる
顧客の行動だけではなく心理状態も考えることで、「顧客が購入するきっかけ」や「購入に至らなかった理由」などを深堀りできます。
また、課題の解決策を考えるときもどのタイミングでどの手法がふさわしいかなど、具体的にイメージしやすくなります。
2. 一連のプロセスを俯瞰してみることができる
1つのプロジェクトでも、開発担当・プロモーション担当というように担当が分かれていることが一般的です。
問題点を探すとき、たいていは担当する部分のみチェックすることが多いのではないでしょうか。カスタマージャーニーマップを作った場合、顧客の行動プロセス全体を俯瞰してみることができます。
担当しているところ以外でもチェックできるため、新たな気付き、解決策のアイデア発掘にもつながります。サービス全体・ブランド全体の見直しをするときにも有効です。
3.プロジェクトメンバー間での認識ズレが起きにくい
プロジェクトの企画・設計を行なう際、なかなか関係者の意見がまとまらないことも多いですよね。
カスタマージャーニーマップで顧客の行動や心理状態を可視化しておけば、メンバー間で課題の共有がしやすいというメリットがあります。
カスタマージャーニーマップを作る前に、顧客イメージをペルソナで明確に!

カスタマージャーニーマップを作る上で欠かせないのが、どんな顧客像にするかということ。そこで架空の顧客「ペルソナ」を作り、行動や心理をイメージしやすくするのが一般的です。
ペルソナは想像だけでも作ることはできますが、まずは仮説を立ててから実際に顧客へ調査し、検証しながらペルソナを設定していくと、実態に近いペルソナになります。
ペルソナがずれていると、その後のカスタマージャーニーマップ自体の有効性が低くなってしまいます。ある程度入念にペルソナを設定しておき、まとめるまでの経緯も残しておくと安心です。
ペルソナで設定する際の項目例
- ・基本的な年齢や性別などの属性
- ・仕事関連:勤務先、役職、勤続年数、仕事内容、目標
- ・生活関連:住まい、年収、家族構成
- ・ライフスタイル:趣味、1日の生活パターン、欲しいもの、現在の悩み
- ・経歴:学歴、転職歴
ペルソナを設定する際は実在する人物として行動や心理を考えるため、名前や顔写真を追加するのが一般的です。
カスタマージャーニーマップの作り方

ペルソナにて顧客イメージがまとまったら、顧客の行動や心理パターンを整理してきましょう。
例えば、株式会社パソナの新卒採用Webサイトリニューアル案件では、以下の5つのステップでカスタマージャーニーマップを作成しています。
STEP01:顧客行動の収集
STEP02:考えていること、感じていることの収集
STEP03:課題のディスカッション
STEP04:顧客行動と媒体の清書
STEP05:課題の抽出
顧客体験は幅広いため、できるだけさまざまな立場のメンバーが参加するのがポイントです。異なる視点で意見を出し合うことで、精度の高いカスタマージャーニーマップになります。
カスタマージャーニーマップ作成支援ツールも登場

カスタマージャーニーマップの作り方としては、付箋やホワイトボードを使ってまとめるのが一般的。
ただ、最近ではカスタマージャーニーマップを自動で作成してくれるツールも登場しています。代表的なツールを2つご紹介します。
Experience Fellow
実際に顧客にサービス体験をしてもらい、その時の気持ちをアプリで登録してもらうという英語版のツール。
蓄積された顧客体験データは自動的に分析され、カスタマージャーニーマップができあがるというものです。
Marketing Cloud
セールスフォースドットコムのデジタルマーケティングツール「Marketing Cloud」にも、カスタマージャーニーマップを作る機能が備わっています。単体で使うものではなく、あくまでMarketing Cloudとして利用する前提です。
デジタルマーケティング分野においても、まずはカスタマージャーニーマップを使って戦略を立てるという手法が広がっていることがわかります。
まとめ
ユーザーエクスペリエンスを重視する企業が増える中、今後もカスタマージャーニーマップを導入してサービス向上を目指す企業が増えることが予想されます。
カスタマージャーニーマップは、一般的にマーケティングで使われる手法。ただ、IT案件の戦略立案やシステム設計などにも活用できる可能性があります。
これからフリーコンサルタントとして独立起業予定の方は、カスタマージャーニーマップをコンサルティング業務に取り入れてみてはいかがでしょうか?コンサルティングの付加価値アップにもつながるかもしれません。
(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)
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