DXに必要な人材のスキルとは何か?設計、テクノロジー、マネジメントが鍵

現代では、あらゆる産業においてデジタル技術を駆使して新しいビジネスモデルを展開する新規参入者が登場しています。こうしたなかで既存の企業もデジタルトランスフォーメーション(DX)によってビジネスモデルを変革し競争力を強化する必要に迫られています。

実際に多くの企業がデジタル部門を設置し、IT基盤を活用した変革によって競争力の強化を実践しようとしていますが、失敗するケースも。PoCを繰り返すなどある程度の投資は行われるものの、実際のビジネスモデルの変革にはつながらず、失敗してしまうのです。

DXの課題として最も多くの企業が挙げたのが「適切なスキルの獲得」です。多くの企業は自社の社員のITスキルの不足に悩んでいます。
DXに必要なスキルとはいったいどのようなものなのでしょうか。

その鍵は「設計」「テクノロジー」「マネジメント」にあります。

この記事ではDXに必要な人材のスキルとマインド、そして不足している人材の調達方法について解説します。

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1.DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

1)DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味

DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味は、IDC Japan(※1)による以下の定義がわかりやすいです。

    企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンス(経験、体験)の変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

平易な言葉で言うならば「第3のプラットフォームを活用して市場環境の激変に対応できるようにビジネスモデルを調整していくことで競争力を高める」と言った意味になります。さらに第3のプラットフォームに加えてAIなどの新しい技術にも対応する必要があります。

2)第3のプラットフォームの概要

DX(プラットフォームの変化)

ここでいう第3のプラットフォームとはクラウド、モビリティ、ビッグデータ、ソーシャル技術のことを言います。

第1のプラットフォームは「メインフレーム」、第2のプラットフォームは「クライアントサーバーシステム」です。

メインフレームとは大企業の基幹業務を担うような大型コンピュータのことで、1951年に初めて開発されました。

クライアントサーバーシステムとは機能を提供するサーバーと利用者が操作するクライアントをネットワークで接続し、クライアントがサーバーの機能を利用する仕組みです。1980年代ぐらいから導入されるようになりました。

上記の第3のプラットフォームはそれに続く新しいプラットフォームということです。また、これとは別にAIなどの新しい技術が出てきています。

3)第3のプラットフォームの詳細

それぞれの項目について説明します。

DX(第3のプラットフォームとは)

・クラウド

クラウドコンピューティングの略です。ユーザーがハードウェアやソフトウェアを購入せずに、インターネットを通じて、サービスを必要なときに必要なぶんだけ利用する仕組みのことを言います。

・モビリティ

スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン等の移動体通信端末のことです。

・ビッグデータ

一般的なデータ管理ソフトウェアでは扱えないほど膨大で複雑な統計データのことです。

・ソーシャル技術

ソーシャル技術とはツイッター、Facebook、インスタグラム。LINEなどのユーザーとユーザーをつなぐサービスのことです。

これらを効果的に用いて市場環境の激変に耐えうるビジネスモデルの変革を行うことがデジタルトランスフォーメーション(DX)なのです。

また、最近ではAIやIoTなどのさらに新しい技術も出てきて、それらへの対応も求められています。

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2.DX推進に必要な人材のスキル

デジタル技術やAIの活用に詳しい人材だけを集めてもDXは進展しません。DXを具体的に推進していく個別のスキルを持った人材を揃えなければいけないのです。DXを具体的に推進していくスキルには大別すると3つの種類があります。それがビジネス系である「ビジネス・サービス設計」のスキル、技術系の「テクノロジー」スキル、最後に、マネジメント系である「プロジェクトマネジメント(PM)」スキルです。

以下、個別に説明していきます。

DX推進に必要なスキル_

1)ビジネス・サービス設計

ビジネスモデルや業務プロセスを設計するスキル、ユーザーに対する理解や洞察に基づいてフロントエンドのUI/UXやグラフィックを設計するスキル、また、デザインシンキングなどを使ってサービスを設計するスキルのことです。自ら課題発見をし、問題意識を持つような意識が必要になります。DXはビジネスモデルの変革であるため、課題発見が最も重要です。課題発見が上手く出来なければ業務改革自体が始まらないため、課題発見のスキルが非常に重要になります。

2)テクノロジー

データサイエンスやITを駆使してシステムの開発・設計・実装を行うスキルのことです。フロントエンド、バックエンドを実装するプログラミング系のスキル、クラウド活用に関する知識や知見、AIや機械学習の知見などが挙げられます。

3)プロジェクトマネジメント(PM)

組織を体系的に運用していくマネジメントスキルや、スクラムなどアジャイル開発のプロジェクトマネジメントができるマネージャーが必要です。アジャイル開発とはソフトウェア工学の用語で迅速かつ適応的にソフトウェア開発を行う軽量なプロジェクトマネジメント手法のことです。DX推進はスピードを重視しなければいけないためアジャイルのような軽量なプロジェクトマネジメント手法と親和性が高いのです。DX推進のためにはアジャイルのようなスキルを持ったマネージャーも必要になります。

これらの3つのスキルを持つ人材を揃えなければなりません。

3者に共通して必要なのはITやAIの基礎知識データの使い方や統計の手法ユーザー中心主義などです。

特にユーザー中心主義は重要です。ユーザーを中心に考え、ユーザーに共感することでユーザーの本質的なニーズを洗い出すような思考が必要になります。これはただユーザーの言うことを聞くのではなく、ユーザーの言い分の裏に隠された本質的なニーズを探るようなことをしなければいけません。マネージャーからプログラマーまですべての人材がユーザー中心主義である必要があります。

3.DX推進に必要なマインド

DX推進にはスキルだけでなく、適切なマインドも求められます。いえ、むしろマインドのほうがより求められるかもしれません。具体的に必要なのは「挑戦」「主体性」「巻き込み」です。

以下、個別に説明します。

DX推進に必要なマインド_

1)挑戦

DXを推進し業務改革をする上で最も重要なマインドです。DXはIT基盤を用いてビジネスモデルや業務プロセスを変革していく活動ですから、現状維持を志向するマインドではDXになりません。「現状に何か問題点はないか」というクリティカルシンキングによってビジネスモデルや業務プロセスの問題点に目を光らせ、常に新しいものを取り入れていくような精神が求められます。

2)主体性

自らがおかしいと感じたことは率先して提案する、自ら率先してビジネスモデルを変革するという主体性も重要です。マネージャーやプロデューサーからの指示を待つのではなく、常にユーザーの目線で課題に着目し、それを自ら解決していくことで、新しいビジネスモデルが生み出せます。また、デジタル領域は変化が激しいため、常に最新の知識をアップデートしておく必要があります。したがって、新しい知識やスキルを自ら積極的に学んでいく姿勢が必要です。

3)巻き込む力

DXによるビジネスモデルや業務プロセスの変革は1人ではできません。相手の意見をよく聞き、周囲を調整しつつ巻き込む力が必要となります。例えばデザイナーとプログラマーとマネージャーでは全く考え方が違います。自分と異なる意見や考え方をよく理解し、建設的に意見を述べることで、自分と異なる領域の相手を巻き込み、必要となる体制構築や予算確保を牽引する必要があります。

上記の3つがDXの人材に必要なマインドです。特に「挑戦」は極めて重要で、変化を嫌うマインドではDXの根幹が崩れてしまいます。

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4.人材不足を埋めるには?人材調達方法のメリットデメリット

ITベンダー以外の事業会社ではIT人材が常に不足しています。どのようにして人材を確保すればいいのでしょうか。方法としては4つ考えられます。1つ目は社内の人材を育成する方法です。2つ目はベンダーやコンサルタントなどのパートナー企業と協力する方法、3つ目は中途採用で人材を得る方法、4つ目はフリーランスや副業者など外部人材を活用する方法です。

DX人材の調達メリットデメリット

1)社内の人材を育成

社内の人材を育成すると自社に順応した人材を得ることが出来ます。社外の人材は価値観も考え方も千差万別なため自社に合わない人も多々存在しますが、社内の人材を育成するとそのような心配がありません。デメリットはリソースとコストが膨大にかかるという点です。DX推進に必要な人材は多岐にわたるため、それらを全て内製化しているとよほどの大企業でもないかぎり大所帯になりすぎてしまいます。したがって社内では自社に適した先端技術を選別できるゼネラリストを育成し、スペシャリストはアウトソーシングするのが現実的です。

 

2)ベンダーやコンサルタントなどのパートナー

DXをベンダーやコンサルタントに外注することはすぐに高度な人材を確保するために有効な手段です。メリットは必要なときにすぐに人材が得られる点です。しかし、その反面、外部のベンダーやコンサルタントは自社のビジネスモデルの問題点についてなかなか踏み込んで指摘がしにくいといったデメリットがあります。ベンダーやコンサルタントとDXを推進するためには会社間の垣根を超えたワンチームになることが必要です。スキル自体はベンダーやコンサルタントが最も高いです。

 

3)中途採用

中途採用のメリットはすぐに人材が得られ、比較的自社に合った人材を選びやすいという点です。採用したあとは自社の社員になるわけですから、自社の色に染めることができます。デメリットは自社でスキルを吟味して人材を選ばなければいけない点です。それにはDXを推進できるのがどんな人なのか自社が知ってないといけません。自社がまったくの素人では適したDX人材を採用することはできないのです。今からDX人材を中途採用する会社はDXに詳しい人材がほとんど社内にいない場合が多いので、ここでつまづくケースが多いです。

 

4)外部人材(フリーランス・副業)の活用

フリーランスや副業者と業務委託契約を結んで活用する方法です。この方法のメリットは人材の流動性が確保でき、リソースを柔軟に管理できるという点です。採用ではいったん雇ったら簡単に解雇することはできませんが、業務委託契約ならば比較的契約終了が容易なので、市場環境の激変にも対応しやすいです。デメリットは身分の信用度の問題です。フリーランスは後ろ盾がありませんので、最終責任を取れる組織がありません。また、フリーランスの中には新卒でそのままフリーランスになった者もおり、企業社会のマナーや習慣に詳しくない人間が相当数含まれています。さらにフリーランスはどの程度のスキルを持っているか保証がないため、スキルレベルがどの程度かというのを自社で見極める必要があります。またはフリーランスの仲介に入るエージェントもありますので利用してみるといいでしょう。

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まとめ

この記事では、以下の内容について書きました。

(1)DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「第3のプラットフォームを活用して市場環境の激変に対応していくことで競争力を高める」ことです。

(2)DX推進に必要な人材のスキルには「設計」「テクノロジー」「マネジメント」の3つがあります。

(3)DX推進に必要なマインドは「挑戦」「主体性」「巻き込み」です。

(4)不足している人材の調達方法には「社内の人間を育てる」「ベンダーやコンサルなどのパートナー」「中途採用」「外部人材の活用」の4つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

DXの推進は非IT企業が今までにやったことのない変革になるため人材の確保がなかなか難しいです。ここに挙げた4つの方法はどれか1つしかやってはいけないわけではありません。複数の手段を組み合わせて適切に人材を育成・調達していきましょう。

(※1)用語解説一覧(IDC)
https://www.idc.com/jp/research/explain-word