1on1 ミーティングに悩む人必見!効果的な進め方とは
コロナ禍をきっかけに、急遽在宅勤務やテレワークを導入したところも多いのではないでしょうか。こうした中、部下の育成に悩む管理職の方が増えているようです。ある調査によれば、管理職の悩みの1位は、ダントツで「部下の育成」(※1)。テレワークによって部下とのコミュニケーションが減り、仕事の進め方が見えにくいということも部下の育成がしづらい要因でしょう。
部下の育成につながる取り組みとして、今注目されているのが「1on1ミーティング」です。「1on1」とは、上司と部下がマンツーマンで定期的に行うという意味。数年前にヤフーが導入したことで話題となり、日本でも広まりつつあります。
1on1ミーティングを導入した会社に行われた調査によると、7割以上が満足していると回答しています。実際に取り組んだ方からは「上司・部下との信頼関係が構築できた」「アドバイスによって部下の行動が変わった」という声も出ています(※2)。
評価面談は普段から行っているけど1on1ミーティングはやり方がよくわからない、という方も多いかもしれません。同じ面談でも進め方やコツは大きく異なります!そこで1on1ミーティングの意味や効果的な進め方、事例についてまとめました。
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1.1on1ミーティングの目的ともたらす効果
1on1ミーティングの目的
評価を目的とした面談では、上司から部下に一方的に話すことがほとんどではないでしょうか。しかし1on1ミーティングでは、あくまで部下が主体となります。部下の抱えている課題をヒアリングしながら本人に自己評価を促し、解決策を探す糸口を見つけてもらうことが目的です。部下が自分自身で考え行動することで、成長につなげるというわけです。
部下の育成といっても、1on1ミーティングは管理目的ではありません。数値目標などを達成したかどうかよりも、プロセスの中で課題があったか、というところに重点を置きましょう。上司が一方的にアドバイスするやり方ではなく、上司は聞き役となって部下が主体的に話すことが部下の成長に役立ちます。
また1on1ミーティングは仕事内容や会社についてだけはなく、プライベートについても語ってもらう場です。これは部下の置かれている状況や、仕事以外の悩みを把握するという意味もあります。
1on1ミーティング5つの効果
部下が自ら現状について語ることは、実はさまざまな効果が期待できます。そこで1on1ミーティングで得られる主な5つの効果を紹介します。
(1) 課題解決スキルの向上など、部下の育成につながる
部下の悩みを聞いた上で自己解決を促すのが、1on1ミーティイングの基本。上司がうまくアシストすることで、部下が自身でも気づかなかった潜在的な課題を知るきっかけになります。さらに対話を通じて部下が自分自身で課題を認識・解決できれば、問題解決スキルの向上が見込めます。こうしたプロセスを繰り返すことで、部下の育成につながるというわけです。
(2)管理職のマネジメントスキルを育成する
1on1ミーティングは、部下だけではなく上司のマネジメント力を成長させる機会でもあります。1on1ミーティングを通じて部下への接し方や能力の引き出し方、適切なサポートのやり方などを学べるというわけです。またメンバーのゴールや置かれている状況を把握できれば、それにあわせてメンバーへ適切な仕事を割り振りできるようになります。
(3)キャリアプランやゴールが明確になり、モチベーションが上がる
メンバーが直面している悩みだけではなく、1on1ミーティングは「これからどうなりたいか、どんな目標・ゴールを持ちたいか」といった内容もヒアリングする場。部下が自分で目標や目指すキャリアを考える機会となり、部下のモチベーション向上・維持につながります。中長期的な人材育成という意味で、効果が期待できます。
なお部下の目指すゴールをより深く理解することで、上司としては例えばメンバーの中で将来のマネージャー候補は誰が適任か、といった人材配置ついても検討できます。
(4)離職率を下げられる
1on1ミーティングは、仕事以外のテーマを話題にしてもOKというルールがあります。部下にプライベートについて語ってもらうことで、例えばチームメンバーの「育児や介護で仕事の両立に悩んでいる」「体調面で心配なことがある」といったことを把握できます。特にここ最近はメンバーによって働く環境が多様化していますよね。仕事が理由ではなく、家庭の事情や心身の問題などで退職する人も増えてきています。1on1ミーティングによって早めにメンバーの環境や体調の変化に気づいて対応できれば、離職率を下げられるというわけです。
(5)チームのコミュニケーション不足を解消する
テレワークでは気軽に雑談できる機会が減り、チームでのコミュニケーションが不足するということも大きな課題。こうなるとチームとしてのゴールが共有しづらく、メンバーがバラバラな目的で行動してしまう状況になりかねません。しかし1on1ミーティングを定期的に行うことでコミュニケーション不足の解消につながり、チーム全体のゴールを共有しやすくなるという効果もあります。
2012年に1on1ミーティングを導入したヤフーの事例
日本の会社で1on1ミーティングを取り入れた事例として、話題になったのがヤフーです。ヤフーでは、人材育成の取り組みとして2012年から「1on1ミーティング」を導入。2017年にはその取り組み内容が書籍化されました。ヤフーでは原則として週1回、30分の1on1ミーティングを行うこととしています。当初は頻度が多すぎると社内の反発もあったそうですが、部下の状況を知るためにはこの頻度が重要だと言います。
またヤフーでは1on1ミーティングを明確に「部下のための時間」と定義しています。ただし部下の話をただ聞くのではなく、部下自身でも気づいていない潜在的な能力を引き出すことが目的。そのためには部下の真意を汲み取り、さらに次の行動へつなげることが重要だと言います。
当社はネガティブな意見もあったそうですが、様々な取り組みを行った結果社内へ浸透。現在ではヤフーにいる約6,000人の社員が1on1ミーティングを実施しています(※3)。
2.1on1ミーティングの効果的な進め方<4つのステップ>
1on1ミーティングは頻度を多くするため、1回あたりの時間が短いという特徴があります。例えばヤフーの場合は1回30分、クックパッドの場合は1回15分となっています。限られた時間で効率的にミーティングを行うためには、やはり進め方がポイント。そこで効率のよい1on1ミーティングの進め方について、4つのプロセスでまとめました。
(1) 目的の共有
まずは1on1ミーティングの定義や目的について、事前に共有しておきましょう。目的が理解されていないとミーティングで上司と部下の認識がズレてしまい、意味のないものになってしまいます。また仕事以外のプライベートについても部下に話してもらうには、普段から信頼関係を築いておくことも必要です。
(2) アジェンダの準備(Plan)
効率的にミーティングを進めるために、欠かせないのが事前準備。通常のミーティングと同じように話すテーマを簡単なアジェンダにまとめておきたいところです。ただしミーティングの目的は、あくまで部下本人が思っていることを引き出すこと。ですからアジェンダも部下自身で作成することが望ましいでしょう。ただし部下自身が「話したい話題がない」という場合は、サンプルとして上司がアジェンダを用意するケースもあります。
(3) 面談の実施(Do)
準備されたアジェンダに沿って、上司が部下へ質問をしながら面談を進めます。1on1ミーティングは会議ではなく、部下に仕事やプライベートについて深く語ってもらうことが目的です。そのため「コミュニケーションの場」という雰囲気作りも大切です。当然ですが信頼できない相手にプライベートなことは話しづらいもの。部下との信頼感を損なわないよう、聞き方などに注意しましょう。
1on1ミーティングでは、部下の真意を引き出すような質問をしていくことが求められます。例えば部下から「失敗した」「悩みがある」といった話題が出た場合、一方的に解決策を伝えるのはNGです。「なぜそう思うのか」「どうしたら解決するのか」を掘り下げることを意識しましょう。1on1ミーティングは指示を出したり、失敗を責めたりする場ではありません。あくまで本人に振り返ってもらい、成長につなげるという視点を持ちましょう。
話を聞くことも大切ですが、実際の業務に落とし込む道筋をつけることも1on1ミーティングのポイントです。どうすれば次の行動に反映できるか、道筋が見えるようサポートしましょう。とはいえ具体的な仕事の目標を立てるのは短時間のミーティングでは難しいですよね。「こんなやり方はどうかな?」という程度にしておきましょう。
こうしたやりとりには、普段の会議とは違うスキルが求められます。あらかじめ外部の専門家などにレクチャーを受けておくことをおすすめします。
(4) フィードバック(Check、Action)
ミーティングに対して部下が満足しているか、改善してほしいことがあるか、をフィードバックすることも大切です。例えばヤフーでは、部下にミーティングのスコアを付けてもらうというやり方で上司に結果をフィードバックしていると言います。上司はこのフィードバックをもとに、次のミーティングで改善していきます。
つまり1on1ミーティングの進め方でも、準備(Plan)、面談実施(Do)、フィードバック(Check、Action)というPDCAサイクルを回していくことが重要です。
1on1ミーティングを実施する頻度は?
プレイングマネージャーのような方は普段の業務が忙しく、なかなかチームメンバー全員と面談する時間が取れない方も多いかもしれません。しかし1on1ミーティングは、頻繁に行うことに重要な意味があります。面談で普段感じていることを語ってもらうには、まずお互いの信頼関係を構築するプロセスが必要。数か月に1回ではなかなかお互いの理解が深まらず信頼関係を築きづらいため、頻繁に行う必要があるというわけです。また1回あたりの時間が短いため、実際の行動につなげるには間が空けずにミーティングを続けることが大切です。
ある調査によれば、1か月以内にミーティングを行っている人が半数以上という結果になっています(※4)。できれば1か月に1回以上の頻度で行いたいところ。ただし仕事の都合によっては、どうしても時間が取れないケースも出てきます。例えばクックパッドでは週1回の実施を基本としているものの、どうしても時間が取れないときは1回スキップすることもあると言います(※5)。基本となる頻度を多く設定するだけではなく、継続していくための工夫も検討しましょう。
3.1on1ミーティングで重要なテーマ設定のコツ
さまざまな効果が期待できる1on1ミーティング。信頼関係を築くことも大切ですが、上司も部下もやり方に慣れていないと、「どんな話題で話せばいいかわからない」ということになりかねません。貴重な時間を使ったのに結局雑談で終わってしまうのは、もったいないですよね。
アジェンダは部下に準備してもらうというのが基本の進め方です。とはいえ実際には部下から話したいテーマが出てこないこともよくあります。そんなときは、上司の方で成長につながるようなテーマをある程度準備しておくことをおすすめします。いくつか代表的な1on1ミーティングのテーマ例を紹介します。
(1)部下の成長をサポートする目的でのテーマ
・仕事内容や仕事の進め方、プロセスで課題に感じていること
・仕事に対する自己評価(成功・失敗)
・これまでの行動の振り返り
(2)部下のキャリアプランをサポートする目的でのテーマ
・業務でやりがいを感じていること
・今後チャレンジしたいこと、目指している資格やキャリア
(3)部下の働く環境をサポートする目的でのテーマ
・帰宅後や休日の過ごし方
・ストレス発散のやり方
・人間関係など、仕事以外で困っていること
(4)組織や会社全体の課題を洗い出す目的でのテーマ
・他のメンバーに対してどう思っているか
・チームや会社の仕事のやり方で気になること
・チームや会社の戦略や方針に納得しているか
最近は新型コロナウイルスの影響で、直接会って仕事をする機会が減っています。オンラインではどうしてもチームメンバーの働く環境が見えづらい、という課題を持つ方も多いでしょう。こうしたケースでは、てテレワークで困っていることをヒアリングして、悩みにアプローチするというやり方も有効ではないでしょうか。
まとめ
コロナ禍をきっかけに、会社の在り方やマネジメントのやり方に変化が求められています。チームメンバーの働き方や考え方が多様化する中、部下を育成するには従来型の目標管理だけでは足りなくなってきていると言えます。信頼関係を築いた上でメンバーの状況を深く理解して、メンバーにあう働き方や業務の進め方をアレンジする。部下の成長には、こうした姿勢が管理職に必要になってきました。
1on1ミーティングはこうしたわかりづらくなっている部下の行動や仕事のやり方、働く環境などをより深く理解できるのが大きなメリット。うまくマネジメントに活用してみてはいかがでしょうか。
<参照>
※1:管理職の悩みダントツ1位は「部下の育成」“部下の成長を感じていない”管理職が5年前の3倍に(ITmediaビジネスオンライン)
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2008/03/news070.html
※2:1on1に対するはたらく側の本音。調査から見える「あるべき姿」とは(エキサイト)
https://www.excite.co.jp/news/article/ds_journal_dsjournal16170/?es=true
※3:「1on1ミーティング」で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション(Yahoo Japan)
https://about.yahoo.co.jp/info/blog/20181011/1on1.html
※4:1on1に対するはたらく側の本音。調査から見える「あるべき姿」とは(エキサイト)
https://www.excite.co.jp/news/article/ds_journal_dsjournal16170/?es=true
※5:週1回×15分でチーム変革!事業を成功に導くクックパッドの振り返り(iXキャリアコンパス)
https://ix-careercompass.jp/article/247/