新規事業のプレゼンを成功させるには?スライド作成や本番でのコツを解説
新規ビジネスの立ち上げで立ちはだかる最初の壁は企業内の承認です。新規ビジネスの計画は社長や役員など経営層に提案をし、決済をもらって初めてオフィシャルな会社の事業としてスタートします。会社の経営層の決済がもらえなかったら単なるアイデアに過ぎません。経営層の説得のためには事業計画書の作成や、プレゼンテーションを成功させ、アイデアを伝える必要があります。そのためには内容を厳選するだけでなく、見た目や伝え方も考慮する必要があります。この記事では新規事業や新規サービスのプレゼンテーションを成功させるためのスライド資料の作成や本番でのコツを解説します。
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1.新規事業プレゼンテーション作成から本番の流れ
新規ビジネスや新規サービスのプレゼンテーションでは準備、作成、本番の3つのフェーズがあります。各段階でのポイントは以下の通りです。
1)準備
- ・企画書や事業計画書の目的を明確にする
- ・企画書や事業計画書のターゲットを理解する
- ・分析データや統計を収集する
- ・いきなりパワーポイントに書き始めずプロットを練る
- ・ストーリーのフレームワークを練る
2)作成
- ・PREP法を意識する
- ・最初に各スライドのタイトルだけを入れる
- ・読ませず、見せる
- ・具体的なエピソードや事例を入れる
- ・1スライド1メッセージ
- ・フォントやカラーを統一する
- ・人間の視線を意識する
3)本番
- ・読み上げではなく自分の言葉で話す
- ・暗唱ではなく対話する
- ・提案の時の姿勢や振る舞いにも気をつける
- ・想定問答を用意しておく
2.【準備】新規事業プレゼンの企画・フレームワークを立てる
このセクションではプレゼン資料や事業計画書のアイデアやフレームワークを練るときのコツを紹介します。
1)目的を明確にする
当然ですがプレゼンテーションの目的が変わると内容も変わります。既存ビジネスや既存サービスの提案と新規ビジネスの提案では全く違ったアプローチをとらなければなりません。既存ビジネスや既存サービスの場合は企業内の人たちはみんな事業や商品、サービスや顧客、開発について経験がありますし、企業内には分析データが蓄積しています。よって、誰が作っても自然とそれなりに客観性のある事業計画書になります。
しかし、新規ビジネスは違います。企業内の多くの人は事業についても顧客についてもサービスについても商品開発についても全くの素人であり、ほとんど知識も経験も何も持っていません。企業内に分析データも蓄積されていません。したがって、必然的に客観的根拠よりもアイデアベースのプレゼンや事業計画書になってしまいがちなのです。よって、説得力のある客観的な分析データをふんだんに用意し、抜けがないようにしっかりと論理を構築しないと社内の人にも信用してもらえません。社内の人に限らず多くの人は新しいアイデアや企画自体に懐疑的な姿勢を持っています。アイデアや企画に懐疑的な姿勢を覆すほどの内容でなければ社内の人を説得できないのです。
2)相手を理解する
プレゼンの相手によってもアプローチの仕方は変わります。社内用のプレゼンなのか社外のステークホルダーに対するプレゼンテーションなのかによっても変わりますし、現場の上司と経営者では扱う情報の粒度も変わってきます。
重要なのは相手への行動の促進です。そのためには相手が望むものが何かを考える必要があります。
例えば現場レベルの上司は最もアイデアや企画の立案者の立場に近い立場です。アイデアや企画の立案者に代わって自社の上層部と交渉する味方となるので、アイデアや企画の立案者が持っている情報やビジョンを全て共有し、理解してもらいましょう。
部門の上司を説得できたら自社の経営層に話が上がるはずです。経営層へのプレゼンテーションで与えられる時間はさらに短く、10分か15分程度になると思われますので、ポイントをかいつまんで説明する必要があります。
3)プロットを作る
プロットとは文学などの創作分野の用語で「ストーリーの軸」のことです。提案においてもこのプロットをちゃんと作成すれば論理の一貫性を保てます。
具体的には以下を決めます。
- 現実、理想、課題を洗い出す。顧客の現実と理想のギャップが課題(ニーズ)であり、これの解決策が新しく開発される商品やサービスとなり、新規事業のニーズとなる。
- 5W2H1Mを定める。5W2HとはWhy(なぜ)、What(なにを)、Who(だれが)、When(いつ)、Where(どこで)、How much(いくら)、How to manage(どのように)、Mission(使命)である。これらを洗い出してきっちりと決めれば、構成要素がぶれずにプレゼンテーションが可能になる。
4)ストーリーを作る
プロットができたらそれを元にストーリーを決めましょう。ストーリーはPREP法という手法を使うとわかりやすく簡潔なプレゼンになります。PREP法とは結論を最初に言うプレゼンのフレームワークです。結論(Point)、理由(Reason)、具体例(Example)、結論(Point)の順番で話を展開します。このようにすると論理が一貫していて無駄が無く、シンプルなストーリーになるのです。特にこのフレームワークは時間が無くて急いでいる人に簡潔にポイントを伝えるのに効果を発揮するので、少ししか時間の取れない経営者に対して有効です。
PREP法を新規ビジネスのプレゼンテーションに落とし込むと
タイトル→事業やサービス、商品開発の内容(どの顧客に何をやるか)→市場や顧客の現状の課題と解決策(なぜ市場や顧客にその事業やサービス、商品開発が必要か)→根拠・裏付け・分析データ→事例・具体例→まとめ→行動喚起
という感じです。ポイントはなぜ顧客にそのビジネスが必要なのかと、顧客に対して何をやるかの説明です。
また、競合他社や類似の市場の事例や具体例(エピソード)を加えるのも重要です。客観的な市場データなどのエビデンスだけでは人は動きません。具体的な事例を加えることで、行動を促す訴求力が増します。
3.【作成】プレゼン資料・スライド作成のポイント
1)最初に各スライドのタイトルだけを入れる
スライド資料やパワーポイントを作る際にはいきなり細かい文章や絵を入れるのではなく、まずはストーリーの各ポイントを各スライドのタイトルに入れ、フレームワークから考えましょう。準備段階で考えたストーリーをスライド資料の構成に落とし込んでいきます。この時、どのポイントにどれくらいの分量をかけるかを考えなければいけません。あれもこれも言いたいことを盛り込んでいるとプレゼンの時間が長くなりすぎてしまいます。どのポイントを何枚のスライド資料で説明するか、プレゼンの時間と説明の粒度を考えながら決めていきましょう。
2)1スライド1メッセージ
1枚のスライドには1つのメッセージだけを入れましょう。情報を詰め込みすぎるとわかりにくくなってしまいます。例えば根拠となる裏付け分析データが3件あるなら1件ずつ3つのスライドに入れます。現状の顧客の課題が3つあるならそれぞれの顧客の課題を1枚ずつのスライドで説明というふうに、1つの話題や事実に1つずつスライドを当てはめるイメージです。無くしても意味が変わらない情報は削りましょう。
3)読ませず、見せる
スライド資料やパワーポイントの文字は大きく書きましょう。メッセージは短くわかりやすいほど効果的です。文章ではなく、図や表や箇条書きを使い、直感的に把握できるようにしましょう。また、図や表や箇条書きもあまりに項目が多すぎると伝わりにくくなるため、多くても7項目までが良いとされています。
4)見やすいフォントやカラーを心がける
フォントにはさまざまなものがありますが、あまりに奇抜なものはスライド資料では読みにくいので、オーソドックスなメイリオやゴシック体を活用しましょう。また、スライド資料のカラーやフォント、イラストは統一性を持たせ、多くの種類を混在させてはいけません。そのようにすると散漫な印象になってしまうからです。
5)人の視線の動きを意識する
デザイン業界には「Zの法則」という言葉があります。顧客がコンテンツを見るときの視線の動きは左上を最初に見て、そこから「Z」の文字を描くように動くのです。スライドを作る際にもこの法則を活用しましょう。
例えば、最も重要で伝えたいメッセージは左上に配置する。補足的な情報になるにしたがって右下に配置していく。あるいは、情報の本体であるグラフや図を左に配置し、説明する文章は右側に配置するなどです。
4.【本番】新規事業プレゼン本番での意識ポイント
1)読み上げではなく自分の言葉で話す
スライド資料にすべての発言やアイデアを書いておいて、本番ではそれを読み上げるだけと言うようなプレゼンテーションの仕方をする方がいますが、これは非常に印象が悪いのでやめましょう。プレゼンの本体はあくまでも担当者がしゃべっている言葉であり、スライドは補足資料であると言う認識を持つことが重要です。
同様に、あらかじめ決めた文章を丸暗記し、プレゼンの場で機械的に暗唱するだけと言うのもよくありません。このようにしてしまうと、人間は無意識のうちに早口になってしまうからです。プレゼンは自分の考えが相手に伝わらないと成功になりませんので、スラスラとしゃべることが第一の目的ではありません。相手に伝わるように、ゆっくりと、適度な間をおきながら、大きな声で話しましょう。
2)聞き手を見て話す
プレゼンをしている間の発表者の目線の動きもポイントです。 特にスライド資料の方ばかりを見て話すのは非常に印象が悪いです。プレゼンを成功させるためには、適度に聴衆の方にも視線を送るようにしましょう。
3)想定質問に対する準備
プレゼンによって新規ビジネスや新規サービスの概要が理解できてくると、今度は細かい部分の疑問が湧いてきます。当然、プレゼンの相手も細かい部分の質問をしてくると思われますので、想定質問を用意し、答えられるように資料や分析データを用意しておきましょう。プレゼンに使うスライド資料は時間やわかりやすさの観点で情報を削がないといけませんが、想定質問のための補足資料ならどれだけたくさんあっても良いので、プレゼンを成功させるためには、そつなく準備しておきたいです。
5.まとめ
この記事では新規事業のプレゼンのやり方について解説しました。せっかく素晴らしい事業を思いついても上司や経営者に伝わらなければ予算も充ててもらえず、形にできません。そのためにはしっかりと伝わりやすいプレゼンが大事です。綿密に準備と作り込みを行い、プレゼンを成功させましょう。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)